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32話 セフィル編 5 ブロアの手紙
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ブロアにまた恋をした。
幼い頃の淡い初顔を拗らせながらも、王太子殿下の婚約者として過ごすブロアを遠くから見つめることしかできなかった。
いつかはそんな恋心もなくなるだろう。いつかは誰かと実家の伯爵家のためにどこかの誰かと政略結婚をするしかないだろう。
そう思いながらも騎士を目指し騎士になり遠くから見守っていたのに、婚約破棄され悪い噂を流されながらも否定もせずに過ごすブロアが気になっていた。
そんな時、またブロアと再会した。それもブロアが酔っ払いの男に襲われそうになった。
元々細い体がさらに細くなって、少しでも触れれば折れてしまいそうだった。俺が守ってやりたい。
だけど、年下で伯爵の次男でしかない俺では釣り合わない。
わかっているのにいつも目が彼女を探していた。
そんな時、騎士団の剣術の大会で3位になった。団長達は強すぎて参加しない大会とはいえそれなりに大きな大会で、高位貴族達の騎士団から声をかけられる者も多い。中には団長として声をかけられたり、令嬢との婚約の打診を受ける者もいてみんな張り切って大会に臨む。
俺はもちろんブロアのシャトワ公爵に目が留まればいいとわずかな期待はあった。
俺はブロアを守りたくて騎士になりたかった。その夢が叶うかもしれないと、毎回思いながら大会に出ていた。
そして、シャトワ公爵の目に留まった。それもブロアの婚約者として。
夢だと思った。現実ではないと。
だって年下で爵位も下で次男で、俺が婚約できるなんて無理な話だった。
だけど噂でしかない醜聞のせいでブロアの婚約の話は上手くいっていなかったらしい。
本人も婚約に対して意欲的ではないし、男性の方も尻込みして話がまとまらないで終わっていたと聞いた。
俺は父上にすぐに快諾するように言った。
月に一回の顔合わせの時、どんなことを話せばいいのか分からずつい無口になってしまう。だけど彼女は俺が話しやすいようにと騎士団のことや剣術のことを聞いてくれる。
そんな優しさもまた好感が持ててさらに好きになる。
リリアンナのことはずっと父上達にこれ以上は自分は力になれないと言い続けていた。妹のように思ってはいても、彼女からの好意を感じているだけに俺には受け入れられないのだからあまり彼女に会いに行くのはよくない。
醜聞になるし、ブロアの耳に入り気にするかもしれない。
なのに父上も母上も軽く考えていた。
リリアンナは俺が顔を出せば機嫌が良くなる。だからうちの両親に泣きついた。両親もリリアンナのことは娘のように可愛がっているのでなかなか無碍にできなかった。
そしてやっとリリアンナのことも片がついたと思っていたら婚約解消を言われ俺は焦った。
毎日のようにブロアに会いに行くのに追い返されて、やっと会えると思ったらブロアはいない。それも傷を負っていなくなっている。
手紙の内容は……
婚約解消のための書類は弁護士に渡してある。あとは俺のサインを書けば成立するとのこと。違約金のことやお詫びの言葉が書かれていた。
そして探さないでほしい。愛するリリアンナと幸せになってほしいと書かれていた。
「なんで……俺はリリアンナのことなんて愛していない。愛しているのはずっとずっとブロアだけなのに……」
手紙を読んだ俺はブロアの手紙を捨てることもできずに握りしめた。
サイロが……
「やっぱりあなたはお嬢を愛していたんですね?」
「当たり前だ。ずっとずっと忘れられなくて諦められなくて、愛さずにいられない。大切な人なんだ」
幼い頃の淡い初顔を拗らせながらも、王太子殿下の婚約者として過ごすブロアを遠くから見つめることしかできなかった。
いつかはそんな恋心もなくなるだろう。いつかは誰かと実家の伯爵家のためにどこかの誰かと政略結婚をするしかないだろう。
そう思いながらも騎士を目指し騎士になり遠くから見守っていたのに、婚約破棄され悪い噂を流されながらも否定もせずに過ごすブロアが気になっていた。
そんな時、またブロアと再会した。それもブロアが酔っ払いの男に襲われそうになった。
元々細い体がさらに細くなって、少しでも触れれば折れてしまいそうだった。俺が守ってやりたい。
だけど、年下で伯爵の次男でしかない俺では釣り合わない。
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そして、シャトワ公爵の目に留まった。それもブロアの婚約者として。
夢だと思った。現実ではないと。
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本人も婚約に対して意欲的ではないし、男性の方も尻込みして話がまとまらないで終わっていたと聞いた。
俺は父上にすぐに快諾するように言った。
月に一回の顔合わせの時、どんなことを話せばいいのか分からずつい無口になってしまう。だけど彼女は俺が話しやすいようにと騎士団のことや剣術のことを聞いてくれる。
そんな優しさもまた好感が持ててさらに好きになる。
リリアンナのことはずっと父上達にこれ以上は自分は力になれないと言い続けていた。妹のように思ってはいても、彼女からの好意を感じているだけに俺には受け入れられないのだからあまり彼女に会いに行くのはよくない。
醜聞になるし、ブロアの耳に入り気にするかもしれない。
なのに父上も母上も軽く考えていた。
リリアンナは俺が顔を出せば機嫌が良くなる。だからうちの両親に泣きついた。両親もリリアンナのことは娘のように可愛がっているのでなかなか無碍にできなかった。
そしてやっとリリアンナのことも片がついたと思っていたら婚約解消を言われ俺は焦った。
毎日のようにブロアに会いに行くのに追い返されて、やっと会えると思ったらブロアはいない。それも傷を負っていなくなっている。
手紙の内容は……
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そして探さないでほしい。愛するリリアンナと幸せになってほしいと書かれていた。
「なんで……俺はリリアンナのことなんて愛していない。愛しているのはずっとずっとブロアだけなのに……」
手紙を読んだ俺はブロアの手紙を捨てることもできずに握りしめた。
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「やっぱりあなたはお嬢を愛していたんですね?」
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