【完結】大好きな幼馴染には愛している人がいるようです。だからわたしは頑張って仕事に生きようと思います。

たろ

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4話。

 坊ちゃまは毛布を被り横に座るわたしの顔を目をキラキラさせて見ている。

 ーーーこんな状態で眠ってくれるのかしら?

「坊っちゃま、今夜はどんな本がいいですか?冒険の本?おとぎ話?それともわたしが考えた本?」

「ダリアがかんがえた?それって、どんな、ほんなの?」

「えっと、あの、わたし、本が大好きで絵を描くのも好きなので、時間がある時にちょっとだけ絵本を書いているんです」

「ダリアのえほん、みたい!!」

 ーーーうっ、ついこの可愛らしい目を見て思わず言ってしまったけど……

「面白くないかもしれません……それでもよければ………」

「うんっ!おもしろくなくても、いいよ」

 ーーーそれはそれで……嬉しくないかも……

「えー、では……」

 床に置いていたわたしの絵本をパラパラとめくってみせた。

「これ……うさぎさん?」

「はい、そして、これが、オオカミさんです」

「ダリアってえが、じょうずだね」

「ほんとですか?嬉しいです‼︎」

「はやく、おはなし、して!」

「はいっ!」

 最後まで読み終わる頃にはリオン様はもう夢の中。わたしはもう一度毛布をしっかり肩までかけて「おやすみなさいませ」と声をかけて部屋を出た。

 時間はもう夜の9時。
 家に帰るにはかなり暗いし怖い。なので使用人部屋に今日から泊まることになった。

 突然家に帰れなくなったので、今日の昼間必要な荷物だけは取りに行った。

 大家さんにも事情を話して家を引き払うかもしれないと話した。ただすぐには動けないのでしばらくは家賃を払い続けてそのままにしておくつもり。

 要らない家具の処分もしないといけないし………ロードに事情を説明しないといけない。

 そして…その時はお別れになるのかな。

 もともと(偽)の恋人だもの。簡単に終わる関係。

 ロードからもらったプレゼントはそのまま部屋に置いている。今彼からのプレゼントを見てしまうと、切なくて涙しか出ないんだもん。

 もしかしたらプロポーズしてもらえるかもしれないなんて甘いことを考えてたバカなわたし。
 ロードの優しさに勘違いしていつか結婚できるかもなんて思っていた。(偽)の恋人が厚かましくも夢見てしまった。

 たまにわたしを見るロードの瞳に、ちょっとだけわたしのことを愛してくれているかも?なんて勘違いをしてしまっていたんだよね。




 この屋敷で暮らすようになって一週間………

 もちろんロードから連絡なんてない。

 一度借りっぱなしの家に行ってみたけど、手紙なんて入ってなかった。

 そうだよね、ロードは今『彼女』に夢中なんだもの。

 今街で評判の『彼女』は、ほんの少し前まで貴族令嬢だった人。

 男爵令嬢だった『彼女』は、よくわからないけど平民になってしまった。

 よくわからないけど、婚約者には愛する人がいたらしい。その愛する人に嫌がらせをして婚約破棄をされた。そして自分の地位が大切な父親に捨てられて平民になったらしい。

 だけど『彼女』は平民になっても明るくてとても可愛らしい人。今では食堂で働いていて、みんなの人気者になっている。

 ロードもそんな『彼女』に夢中らしい。

 ロードのことを想っている女の子達がわたしのところへ来ては、

「ロードさんがカリナさんとデートをしていたわ」
「毎日彼はカリナさんの家に通っているらしい」
 など、いろんな噂話をまたわたしのために言いに来てくれる。

 その度にわたしは作り笑いでーー
「そうですか……」と答えるしかない。

 だってロードに「どうして?」とか「『彼女』が好きなの?」なんて聞く権利はない。

 わたしはどうしても『彼女』のことを『彼女』としか言えない。名前を言ってしまえば、ロードが『彼女』のところへ本当に行ってしまう気がする。

 わたしがどんな風に思おうとロードの気持ちはロードの自由なのに……

 誤魔化すように仕事に夢中になったフリをして坊っちゃまと過ごす日々。

「ダリア、だっこ」

 最近坊っちゃまは甘えてきてくれるようになった。

 屋敷の中で坊っちゃまの面倒をみる係はミサさん。
 ミサさんは40歳を過ぎたこの屋敷ではベテランの人。厳しくも優しい先輩の一人。

 坊っちゃまを産んでから身体を壊して坊っちゃまが1歳の時に奥様は亡くなったらしい。
 わたしは奥様が亡くなった後にこの屋敷で働き出したので詳しい事情はわからない。

 だけど坊っちゃまは、お母様がいなくて寂しいはずなのに我儘も言わない。旦那様がお忙しくても我慢して屋敷の使用人達といつもニコニコとして過ごしている。

 3歳なのに、まだ我慢なんてしなくていいと思うのに、坊っちゃまは笑顔で過ごす。

 だけど、ミサさんとわたしは知っている。

 書庫に来てはお父様が来るのを待っているのを。

 書庫でお父様を見つけた時の坊っちゃまの笑顔は、私たちに向ける作り笑いではない。本当に嬉しそう。一緒に本を読んでいる姿はとても幸せそうで何度も胸がギュッと苦しくなる。

 だから今日もせっせと坊っちゃまのために夜な夜な絵本を書いている。

 その絵本(もどき)を坊っちゃまに披露するとそれは喜んでくれる。

「ダリアって、すっごいねっ!」

 もうこのまま坊っちゃまのためにおそばで働き続けるのもいいかもしれない。






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