【完結】大好きな幼馴染には愛している人がいるようです。だからわたしは頑張って仕事に生きようと思います。

たろ

文字の大きさ
32 / 60

32話。

 おばちゃんが絵本をパラパラめくり、その後1ページずつ読んでいる姿をわたしはドキドキしながら見つめていた。

「これ、ダリアが書いたの?」

「はい……働いているお屋敷の坊っちゃまに読み聞かせをしていて、旦那様が気に入ってくださって出版社の人に話をしてくれたんです。
 それで絵本を出すことになって、出来上がったのでおばあちゃんとおばちゃん達に報告したくて村に帰ってきたんです」

「そう……素敵ね。おばあちゃんも喜んだでしょう」

「実はまだ伝えていなくて……恥ずかしいのとタイミングがなくて」

「伝えてないの?もう!早く見せてあげて!とても素敵な絵本よ!絶対喜ぶから!」
 おばちゃんの勢いに「うん」と返事をした。

「それはそうとディーンはどうして知ってるの?」

「いろんな貴族の屋敷を出入りしてるし、情報は商売の要だからね。それにバイザード卿とは懇意にしてるから」

「そうなのね、ロードからは何も聞いていなかったからダリアの絵本のこと知らなかったわ」

「あっ………」なんて言おう。

「………最近、ロードとは会っていないんです」

 口籠もり声が小さくなってしまう。

「どうしたの?あんなに仲が良かったのに」

 ヘラっと笑って誤魔化そうとした。

「ロードが嫌がるダリアに無理やり何かしたの?あいつ我慢できなくてついに手を出して嫌われたの?」
 おばちゃんが訳のわからないことを言い出した。

「違う、違う!ロードには好きな人がいるの。だから幼馴染でしかないわたしが邪魔をしたらいけないから……それだけなの」

「はあああ?ロードに好きな人?ダリアのことでしょう?」

「わたし?」
 ーーそれは(偽)恋人だったから?おばちゃんその話を知ってるのかしら?

「わたしではないわ。ロードは毎日彼女のために送り迎えをしたり休日はデートをしたりしてるの。そんな二人の仲を幼馴染のわたしがうろついたら迷惑になるから最近は会っていないの」

「ロードが他の女の子とデート?嘘でしょう?信じられないわ。だってダリアとやっと付き合いだしたって聞いてるのに!」

 ーーあっ……知ってたんだ……(偽)だと話さなきゃ。

 仕方なくおばちゃんに話した。その横にはディーン様もいる。
 本当はディーン様にまで話したくなかったけど、おばちゃんの怒りは収まらないし、ディーン様に席を外して欲しいと頼むと「僕は聞いても大丈夫だよ」と言ってそのまま。

「はあああああ?(偽)?何それ?」
 おばちゃんの怒りは説明する前よりさらに酷くなった。

 ディーン様は話を聞いて「ロードの奴、ダリアに話してないの?」と意味のわからないことを言い出した。

「話してないとは?」

「うーん、僕からは話すことはできない。多分ロードも話すことができないでいるんだと思う。ロードはかなりヘタレだけど、ダリアのこと幼馴染以上に大切にしてるはずなんだよね」

「ほんと、ヘタレね!だけど他の女と浮気するなんて我が息子とはいえ絶対に許さないわ。それにダリアのことを(偽)の恋人にするなんて許せない!」

「おばちゃんそんなに怒らないで。わたしやっと諦めがついたの、だからもう大丈夫」

「ダリアはずっとロードが好きだったんだろう?本気で諦めるの?」

「だって、あんなに可愛くて明るいカリナさんとお付き合いしてるんだよ?二人で仲良く歩く姿だって何回も見てる。わたしのことなんて幼馴染でしかないもの、諦めるしかないじゃない!」

 思わずディーン様に八つ当たりをしてしまった。

「ごめん、ダリアだって傷ついてるんだよね。じゃあ、ロードの代わりに俺と付き合う?そしてロードの前でイチャイチャして見せようか?」

「へっ?イチャイチャ?わたしが?」
 想像してみて首を横に振った。

「無理です!嫌です!ロードにそんな姿見せたくない!いくら振られたからってそんなことしたくないです!」

「いい案だと思ったんだけどな。ロードが焦る顔見たかったし」

「ロードのことなんか気にしないで、この際だからディーンとイチャイチャしなさい!」
 おばちゃんまで言い出した。

「わたし、ロードのことずっと好きだったんです。振られたからってすぐに他の人となんて付き合えない!」

「わかったわかった、ダリアそんな顔しないでくれよ」

 そう言ってハンカチを手渡された。

 気づかなかったけど……涙が溢れていた。

「…………ありがとう……ございます」

「僕、ロードの情報色々知ってるんだけど、ダリアには今話すことができないんだ。ヘタレでダリアのことを傷つけてるけど、あいつのこと信じられないかもしれないけど、もう少しだけ諦めないで待ってて欲しい。ま、意地悪でロードの前でダリアと仲良くする姿見せてやりたかったけどね」

 ディーン様の言葉の意味はよくわからない。でも何か事情があるということはわかった。

 諦めないでと言われたけどロードの気持ちがわたしにはないのは事実。

 でもカリナさんと付き合いだしたこと、ロードの口からハッキリと告げられるまでは待とう。そして失恋したら……しばらくは恋はもういいかな。

 先輩達や街でよく絡まれた彼女達のことを思い出した。人付き合いの苦手なわたしにはかなりしんどい日々だった。









感想 168

あなたにおすすめの小説

私は既にフラれましたので。

椎茸
恋愛
子爵令嬢ルフェルニア・シラーは、国一番の美貌を持つ幼馴染の公爵令息ユリウス・ミネルウァへの想いを断ち切るため、告白をする。ルフェルニアは、予想どおりフラれると、元来の深く悩まない性格ゆえか、気持ちを切り替えて、仕事と婚活に邁進しようとする。一方、仕事一筋で自身の感情にも恋愛事情にも疎かったユリウスは、ずっと一緒に居てくれたルフェルニアに距離を置かれたことで、感情の蓋が外れてルフェルニアの言動に一喜一憂するように…? ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。

これ以上私の心をかき乱さないで下さい

Karamimi
恋愛
伯爵令嬢のユーリは、幼馴染のアレックスの事が、子供の頃から大好きだった。アレックスに振り向いてもらえるよう、日々努力を重ねているが、中々うまく行かない。 そんな中、アレックスが伯爵令嬢のセレナと、楽しそうにお茶をしている姿を目撃したユーリ。既に5度も婚約の申し込みを断られているユーリは、もう一度真剣にアレックスに気持ちを伝え、断られたら諦めよう。 そう決意し、アレックスに気持ちを伝えるが、いつも通りはぐらかされてしまった。それでも諦めきれないユーリは、アレックスに詰め寄るが “君を令嬢として受け入れられない、この気持ちは一生変わらない” そうはっきりと言われてしまう。アレックスの本心を聞き、酷く傷ついたユーリは、半期休みを利用し、兄夫婦が暮らす領地に向かう事にしたのだが。 そこでユーリを待っていたのは…

【完結】王子妃候補をクビになった公爵令嬢は、拗らせた初恋の思い出だけで生きていく

たまこ
恋愛
 10年の間、王子妃教育を受けてきた公爵令嬢シャーロットは、政治的な背景から王子妃候補をクビになってしまう。  多額の慰謝料を貰ったものの、婚約者を見つけることは絶望的な状況であり、シャーロットは結婚は諦めて公爵家の仕事に打ち込む。  もう会えないであろう初恋の相手のことだけを想って、生涯を終えるのだと覚悟していたのだが…。

とまどいの花嫁は、夫から逃げられない

椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ 初夜、夫は愛人の家へと行った。 戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。 「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」 と言い置いて。 やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に 彼女は強い違和感を感じる。 夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り 突然彼女を溺愛し始めたからだ ______________________ ✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定) ✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです ✴︎なろうさんにも投稿しています 私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ

私の容姿は中の下だと、婚約者が話していたのを小耳に挟んでしまいました

山田ランチ
恋愛
想い合う二人のすれ違いラブストーリー。 ※以前掲載しておりましたものを、加筆の為再投稿致しました。お読み下さっていた方は重複しますので、ご注意下さいませ。 コレット・ロシニョール 侯爵家令嬢。ジャンの双子の姉。 ジャン・ロシニョール 侯爵家嫡男。コレットの双子の弟。 トリスタン・デュボワ 公爵家嫡男。コレットの婚約者。 クレマン・ルゥセーブル・ジハァーウ、王太子。 シモン・グレンツェ 辺境伯家嫡男。コレットの従兄。 ルネ ロシニョール家の侍女でコレット付き。 シルヴィー・ペレス 子爵令嬢。 〈あらすじ〉  コレットは愛しの婚約者が自分の容姿について話しているのを聞いてしまう。このまま大好きな婚約者のそばにいれば疎まれてしまうと思ったコレットは、親類の領地へ向かう事に。そこで新しい商売を始めたコレットは、知らない間に国の重要人物になってしまう。そしてトリスタンにも女性の影が見え隠れして……。  ジレジレ、すれ違いラブストーリー

あなたには彼女がお似合いです

風見ゆうみ
恋愛
私の婚約者には大事な妹がいた。 妹に呼び出されたからと言って、パーティー会場やデート先で私を置き去りにしていく、そんなあなたでも好きだったんです。 でも、あなたと妹は血が繋がっておらず、昔は恋仲だったということを知ってしまった今では、私のあなたへの思いは邪魔なものでしかないのだと知りました。 ずっとあなたが好きでした。 あなたの妻になれると思うだけで幸せでした。 でも、あなたには他に好きな人がいたんですね。 公爵令嬢のわたしに、伯爵令息であるあなたから婚約破棄はできないのでしょう? あなたのために婚約を破棄します。 だから、あなたは彼女とどうか幸せになってください。 たとえわたしが平民になろうとも婚約破棄をすれば、幸せになれると思っていたのに―― ※作者独特の異世界の世界観であり、設定はゆるゆるで、ご都合主義です。 ※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。教えていただけますと有り難いです。

人の顔色ばかり気にしていた私はもういません

風見ゆうみ
恋愛
伯爵家の次女であるリネ・ティファスには眉目秀麗な婚約者がいる。 私の婚約者である侯爵令息のデイリ・シンス様は、未亡人になって実家に帰ってきた私の姉をいつだって優先する。 彼の姉でなく、私の姉なのにだ。 両親も姉を溺愛して、姉を優先させる。 そんなある日、デイリ様は彼の友人が主催する個人的なパーティーで私に婚約破棄を申し出てきた。 寄り添うデイリ様とお姉様。 幸せそうな二人を見た私は、涙をこらえて笑顔で婚約破棄を受け入れた。 その日から、学園では馬鹿にされ悪口を言われるようになる。 そんな私を助けてくれたのは、ティファス家やシンス家の商売上の得意先でもあるニーソン公爵家の嫡男、エディ様だった。 ※マイナス思考のヒロインが周りの優しさに触れて少しずつ強くなっていくお話です。 ※相変わらず設定ゆるゆるのご都合主義です。 ※誤字脱字、気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません!

最近彼氏の様子がおかしい!私を溺愛し大切にしてくれる幼馴染の彼氏が急に冷たくなった衝撃の理由。

佐藤 美奈
恋愛
ソフィア・フランチェスカ男爵令嬢はロナウド・オスバッカス子爵令息に結婚を申し込まれた。 幼馴染で恋人の二人は学園を卒業したら夫婦になる永遠の愛を誓う。超名門校のフォージャー学園に入学し恋愛と楽しい学園生活を送っていたが、学年が上がると愛する彼女の様子がおかしい事に気がつきました。 一緒に下校している時ロナウドにはソフィアが不安そうな顔をしているように見えて、心配そうな視線を向けて話しかけた。 ソフィアは彼を心配させないように無理に笑顔を作って、何でもないと答えますが本当は学園の経営者である理事長の娘アイリーン・クロフォード公爵令嬢に精神的に追い詰められていた。