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42話。
旦那様が病室に来てくださって、わたしの事情聴取が始まった。
そこにはロードもバイザード様もいなかった。もちろんわたし自身も二人に会いたがらなかったことを考慮されて、今ここに来ているのは騎士団の団長と警備隊の団長の二人だった。
わたしの話を聞くというよりも、まずは先に頭を下げてこられた。
「こちらの不手際でダリア殿に迷惑をかけて申し訳なかった」
「警備隊の考えた作戦が功を奏して売人やその裏で操っていた奴らを一掃出来た。だがそこに一般人であるダリアさんを巻き込む形になりすまなかった」
お二人とも、貴族の方達。平民で若い小娘でしかないわたしに頭を下げるのは屈辱だろう。なんとなくそれが見てとれた。
それでも彼らなりに謝ってくれたのだから、許すしかないのだろう。というよりもわたしには許す権利すらない気がする
だってすぐに「ではその時の状況を聴きたい」と話はすぐに変わってしまった。
わたしは一言も発することはなかった。
ううん、この人達は平民であるわたしが被害に遭っても然程何も感じてはいない。
それがこの社会。わたしはお屋敷の中で旦那様やミサさん達に大切にされ過ぎて現実を忘れていただけなのだ。
「君たち、形だけの謝罪なのだからこちらも形だけ顔合わせしたのだからもう帰っていただこう」
旦那様が扉の方へと指差した。
ミサさんがその扉を開けて「どうぞお引き取りください」と言って帰るように促した。
「な、なんだ?こちらは二人の長が態々顔を出してやったんだ。それも平民如きに謝罪までしたというのに。この街に蔓延る薬をなくすために動いた我々に感謝されることはあってもそんな態度を取られるようなことはあり得ない」
「我々は一人を守っているわけではない。たくさんの民を守るために働いている。多少の犠牲に対しては仕方がないことだと思っている。それでもこうして謝罪に来ただけでも誠意を示していると思って欲しい」
ーーそうなんだ、そんなものなんだ。
なぜか腑に落ちた。
威圧感が凄くてわたしが何も発言出来ないのはこの方達の国をそして人々を守るという自負からきているのだと。
「一人もまともに助けられないのに何がたくさんの民を守るだ。お前達のその傲慢な考えが犯罪をさらに助長しているんだ」
「あなたに何がわかる我々の苦労が!」
「わたしが誰だかわかっていて言っているのか?」
旦那様の目が怖い。
わたし達使用人の前では常に厳しくも優しいお方……なのに今日の旦那様は最初から怖かった。
「やめろ」
ハッとなった騎士団長が警備隊の団長が言い返すのを慌てて止めた。
「なんでこんなことを言われなきゃならないんですか?我々は頑張っているじゃないですか!」
騎士団長に詰め寄る団長に対して旦那様が言った。
「わたしが騎士団にいる時は上からものを言う時は下をきちんと見てから言ったものだ。下を……一人一人を大切にするようにと俺はお前達に伝えてきたと思っていたんだが、騎士団長のマリウス、君は忘れてしまったようだね」
「………やはり貴方は……お名前が変わられていたのでわかりませんでした」
「騎士団長、お知り合いですか?」
「バルス子爵……以前は……ヘイヴン侯爵家の次男で第一騎士団の団長でした……ご結婚されて引退して……」
「正解だな。君とは部隊が違ったが僕の顔くらいは覚えてくれていると思っていたのに全く気がついてもらえなかったようだね」
「申し訳ありません。以前の団長は常にピリピリとして近寄りがたく今とは雰囲気が違って見えました」
「ははっ、歳を取ればそれなりに変わっていくもんさ。可愛い息子のおかげで怖さは減ったはずだ。だけど騎士団をやめても騎士団を見守っていたつもりだ。だからこそ君たちの頑張りもわかっている、わかっているからこそその傲慢な考え方は見逃せない」
「………やめた貴方にはわからない。貴族達の身勝手な考えや行動でわたし達騎士がどれだけ振り回されているのか。今回の薬もやっとの思いで尻尾を掴みここまで捕まえることができたのです。確かにダリアさんには悪いことをしたと思いますが、わたしは仕方がなかったと思っております」
「あ……あの……」
旦那様が本当に怒り出してしまう。そう思ったわたしは思い切って口を開いた。
「ダリア、すまない。君のことなのに放ってついムキになって話してしまっていたようだ。ダリアとしては彼らの謝罪をどう思っているんだ?」
「………謝罪は本心からの言葉が大事です。心のこもらない謝罪なら必要ないと思っています」
旦那様はわたしの言葉ににこりと笑った。
「と言うことなんで、君たちにはさっさと部屋を出て行ってもらいたい。あ、謝罪は要らないが慰謝料はしっかり請求させてもらうからね?嫁入り前の女の子をこんな酷い状態にしたんだ。心ない謝罪より現実味のあるしっかり形の残るものを要求させてもらうよ」
団長達は「失礼します」とだけ言うと病室を出て行った。
旦那様は「ダリア、すまないね。やはり事情聴取なんて受け入れなければよかった。嫌な思いだけさせてしまった」と後悔の言葉を口にした。
「わたしは旦那様やミサさんのお気持ちだけで十分嬉しかったです。それに一度は受け入れないと向こうはずっと言ってきたでしょうからお二人が付き添ってくれたこと感謝しかありません。ありがとうございました」
★ 短編から長編に変更させていただきます。
すみません。いつものように話が長くなってしまいました。
もう少しお付き合いくださいね。
いつも読んでいただきありがとうございます。
たろ
そこにはロードもバイザード様もいなかった。もちろんわたし自身も二人に会いたがらなかったことを考慮されて、今ここに来ているのは騎士団の団長と警備隊の団長の二人だった。
わたしの話を聞くというよりも、まずは先に頭を下げてこられた。
「こちらの不手際でダリア殿に迷惑をかけて申し訳なかった」
「警備隊の考えた作戦が功を奏して売人やその裏で操っていた奴らを一掃出来た。だがそこに一般人であるダリアさんを巻き込む形になりすまなかった」
お二人とも、貴族の方達。平民で若い小娘でしかないわたしに頭を下げるのは屈辱だろう。なんとなくそれが見てとれた。
それでも彼らなりに謝ってくれたのだから、許すしかないのだろう。というよりもわたしには許す権利すらない気がする
だってすぐに「ではその時の状況を聴きたい」と話はすぐに変わってしまった。
わたしは一言も発することはなかった。
ううん、この人達は平民であるわたしが被害に遭っても然程何も感じてはいない。
それがこの社会。わたしはお屋敷の中で旦那様やミサさん達に大切にされ過ぎて現実を忘れていただけなのだ。
「君たち、形だけの謝罪なのだからこちらも形だけ顔合わせしたのだからもう帰っていただこう」
旦那様が扉の方へと指差した。
ミサさんがその扉を開けて「どうぞお引き取りください」と言って帰るように促した。
「な、なんだ?こちらは二人の長が態々顔を出してやったんだ。それも平民如きに謝罪までしたというのに。この街に蔓延る薬をなくすために動いた我々に感謝されることはあってもそんな態度を取られるようなことはあり得ない」
「我々は一人を守っているわけではない。たくさんの民を守るために働いている。多少の犠牲に対しては仕方がないことだと思っている。それでもこうして謝罪に来ただけでも誠意を示していると思って欲しい」
ーーそうなんだ、そんなものなんだ。
なぜか腑に落ちた。
威圧感が凄くてわたしが何も発言出来ないのはこの方達の国をそして人々を守るという自負からきているのだと。
「一人もまともに助けられないのに何がたくさんの民を守るだ。お前達のその傲慢な考えが犯罪をさらに助長しているんだ」
「あなたに何がわかる我々の苦労が!」
「わたしが誰だかわかっていて言っているのか?」
旦那様の目が怖い。
わたし達使用人の前では常に厳しくも優しいお方……なのに今日の旦那様は最初から怖かった。
「やめろ」
ハッとなった騎士団長が警備隊の団長が言い返すのを慌てて止めた。
「なんでこんなことを言われなきゃならないんですか?我々は頑張っているじゃないですか!」
騎士団長に詰め寄る団長に対して旦那様が言った。
「わたしが騎士団にいる時は上からものを言う時は下をきちんと見てから言ったものだ。下を……一人一人を大切にするようにと俺はお前達に伝えてきたと思っていたんだが、騎士団長のマリウス、君は忘れてしまったようだね」
「………やはり貴方は……お名前が変わられていたのでわかりませんでした」
「騎士団長、お知り合いですか?」
「バルス子爵……以前は……ヘイヴン侯爵家の次男で第一騎士団の団長でした……ご結婚されて引退して……」
「正解だな。君とは部隊が違ったが僕の顔くらいは覚えてくれていると思っていたのに全く気がついてもらえなかったようだね」
「申し訳ありません。以前の団長は常にピリピリとして近寄りがたく今とは雰囲気が違って見えました」
「ははっ、歳を取ればそれなりに変わっていくもんさ。可愛い息子のおかげで怖さは減ったはずだ。だけど騎士団をやめても騎士団を見守っていたつもりだ。だからこそ君たちの頑張りもわかっている、わかっているからこそその傲慢な考え方は見逃せない」
「………やめた貴方にはわからない。貴族達の身勝手な考えや行動でわたし達騎士がどれだけ振り回されているのか。今回の薬もやっとの思いで尻尾を掴みここまで捕まえることができたのです。確かにダリアさんには悪いことをしたと思いますが、わたしは仕方がなかったと思っております」
「あ……あの……」
旦那様が本当に怒り出してしまう。そう思ったわたしは思い切って口を開いた。
「ダリア、すまない。君のことなのに放ってついムキになって話してしまっていたようだ。ダリアとしては彼らの謝罪をどう思っているんだ?」
「………謝罪は本心からの言葉が大事です。心のこもらない謝罪なら必要ないと思っています」
旦那様はわたしの言葉ににこりと笑った。
「と言うことなんで、君たちにはさっさと部屋を出て行ってもらいたい。あ、謝罪は要らないが慰謝料はしっかり請求させてもらうからね?嫁入り前の女の子をこんな酷い状態にしたんだ。心ない謝罪より現実味のあるしっかり形の残るものを要求させてもらうよ」
団長達は「失礼します」とだけ言うと病室を出て行った。
旦那様は「ダリア、すまないね。やはり事情聴取なんて受け入れなければよかった。嫌な思いだけさせてしまった」と後悔の言葉を口にした。
「わたしは旦那様やミサさんのお気持ちだけで十分嬉しかったです。それに一度は受け入れないと向こうはずっと言ってきたでしょうからお二人が付き添ってくれたこと感謝しかありません。ありがとうございました」
★ 短編から長編に変更させていただきます。
すみません。いつものように話が長くなってしまいました。
もう少しお付き合いくださいね。
いつも読んでいただきありがとうございます。
たろ
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