【完結】大好きな幼馴染には愛している人がいるようです。だからわたしは頑張って仕事に生きようと思います。

たろ

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44話。  ロード編 ⑥

 ダリアはかなり酷い怪我だった。

 だけど俺が助けてやることもできなかった。目の前で他の人に抱えられて連れて行かれる姿を黙って見ていることしかできない。

「仕方がなかったんだ」
「俺たちは頑張ったんだ」
 事件の解決に対してそんなことを言う騎士達。

 みんな目の前で犠牲になったダリアのことを見ようとしない。一人が犠牲になっただけでこの街に蔓延る『薬』をなくすことができた。
 大元であるザイール伯爵達も捕まえることができた。

 だからダリア一人の犠牲は仕方がない。誰もがそう言って目を背けた。

 ーー俺はなんのためにこの警備隊に入ったんだっけ?

 学校を卒業するから仕事として騎士を目指したのは確かだけど、幼い頃、ダリアが絵本を読んでいていつもかっこいい騎士に憧れるのを横で見ていた。
 俺もダリアの憧れる騎士になれたら、ダリアに好きになってもらえるかななんて思った。

 ーーそう、全てはダリアだった。

 任務とはいえカリナの恋人役になるのを我慢できたのは騎士団に入れる近道だと思ったから。

 まだまだ警備隊に入って数年の俺の安月給では結婚して家族を養うことなんて出来ない。
 ダリアとずっと一緒にいるために…そう思った。

 でも結果はダリアの心を傷つけてダリアの体を傷つけて、嫌われるだけだった。


 ダリアが入院中、何度も病院に顔を出した。

 今どんな状態なのか心配で。
 だけど会いに行くことはしなかった。ダリア自身も、もう俺に会いたくないだろう。

 仕事で街を巡回していても、鍛錬をしていても、なんだか虚しくて他の騎士たちを見ながらかっこよかった憧れとの騎士の姿が今ではただの格好だけで中身が伴わない姿にしかみえない。

 詰め所に戻り休憩中、ジャックが話しかけてきた。

「事件が解決したから騎士団に戻る予定だ。ロードも昇進して騎士団に入ることになる。ダリアちゃんにもう一度会いに行ってみたら?」

 俺はジロッとジャックを睨んだ。
 ジャックとは仕事仲間として付き合ってきた。すぐに気が合い話しやすくて、貴族なのに対等に付き合ってくれた。だから互いの名前を呼べた。
 ダリアに近づけない俺の代わりにジャックが何度か接触したのも俺のためだった。だけどジャックもダリアに惹かれ始めていた。

「ジャックはもうわかってるだろう?ダリアは俺のことを嫌ってるし許さないよ。あいつは俺を拒否してる……」

「………ダリアちゃんは頑張り屋だし真面目だし優しいし、とても可愛い。僕はロードが羨ましいよ。君にはまだ幼馴染という立場があるんだ、二人にしか分かり合えない関係がある」

 ジャックは少し寂しそうに俺をみた。

「僕はもうすぐ騎士団に戻る。そして父親に決められた女性と結婚することになる。決められた人生をただ進むしかない。貴族の息子として生まれた僕は貴族としてしか生きていけない。
 好きな子に好きだといえないし、目の前で泣いている彼女に手を差し伸べてあげることはできない」

 ジャックは話すのを一旦やめた。大きな溜息と共に……また話し始めた。
 
「ロード……君は今回の事件のある意味、犠牲者だと思う。上の者達は君がカリナの恋人役をしたことで事件の解決が早まったと喜んではいるけど、そのせいでロードのプライベートが犠牲になっているとは思っていない。
 いや、ロードのこともまたダリアと同じで多少の犠牲は致し方がないと思っている……僕はいずれ王立騎士団の団長を目指している。この腐った騎士団を変えていきたい。騎士団長を始めとして貴族が中心となった騎士団は貴族重視の考えが当たり前。
 平民の人達のためにあるはずの警備隊も、トップの人たちは自分たちが騎士団へ昇進するための足掛がりなだけ。ロード達下の者が犠牲になってでも事件を解決させるのも、少しでも上の人たちの心証をよくするためのものでしかない」

「………あんたがそんなことを言っていいのか?」

 俺たちにとって貴族……特に高位貴族達は雲の上の人。ジャックだって今は子爵の爵位を受けているけど本当は侯爵家の子息。
 だが、ジャックは実力も兼ね備えている。
 いずれはこの国の騎士団を纏め上げられるだろうと言われている有力な候補の一人。

「ロード、騎士を辞めないで僕と共に上を目指さないか?」

 ジャックは俺が騎士に対してもう未練がないのに気づいている。

 俺が騎士を辞めるつもりでいることに。
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