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49話。 ロード編 ⑨
バルス子爵からの言葉を受けて俺は決心した。
騎士をやめない。
ジャックが騎士団に戻る時に俺も騎士団へ移ることになった。これからはジャックは俺の上司でバイザード卿と呼ぶようになる。
バイザード卿の直属の上司は騎士団長ではなくバルス子爵になっていた。
バルス子爵は、以前騎士団長を務めていたことから、外から騎士団を変えていくことになる。中からはバイザード卿を主にして若手の貴族の子息達が変えていこうと動き始めた。
俺は平民ではあるが、警備隊から騎士団に移ったことで二つの内情を知る者としてみんなと共に改革の輪に参加させてもらった。
腐った考えの今の騎士団長や警備隊の団長はすぐに変わることはできない。それなりの場数を踏んで経歴を重ねてきて団長になっているため、簡単には引き摺り下ろせない。
それは副団長や隊長たちも同じ。
しかしその中には俺たち改革派の人もいる。
すぐに変えられないのはわかっているが、みんなが変わろうとしている。
「お前達、生意気なんだよ」
団長派の先輩達に毎日こき使われ、クタクタになりながらも、組織自体の意識改革は下にいる俺たちから少しずつ変わっていく。
上の者達のように、貴族ありきの考えから平民だろうと関係なく国民を守るという根本の信念をもう一度改めて心に刻み仕事をする。
ただそれだけのことなのに、気がつけばそれぞれが困った人に手を差し伸べることが増えつつある。
困った人たちが目につくようになった。
今まで見て見ぬ振りしていたはずなのに。
貴族からの圧力はなかなか減らないが、あの団長達ですら俺たち若い者の動きに多少は気持ちが動いたのか俺たちが民のために動くことを無理やり止めなくなった。
以前なら「お前達、出世に影響しない仕事なんて適当でいいんだ」「評価される仕事を優先的に行え」と口うるさく言っていた。
貴族が、街で多少やらかしても「目をつぶれ」「見逃してやるんだ」が当たり前の警備隊だった。
貴族が平民の女性を多少襲おうと、平民が貴族に殴られようと貴族が捕まることはなかった。
それがおかしいと誰も思わないのが警備隊だった。
騎士団は大きな事件に対して動くので、貴族に対してはきちんと罪を問う。ただ平民のためにはあまり関心を持たない。
大きな事件を解決するためには多少の平民の犠牲は仕方がない。
その考えが今の団長は特に強い。
バルス子爵の頃は、犠牲はあってもなんとか減らそうと動いていたらしい。
街の治安も今よりもよかったと言っている。
上が変われば良くも悪くもなる。
だけど、信念を持っていれば、根本は変わらない。
バルス子爵達の考えに感銘を受けた俺たちは少しずつ変わっていった。
ダリアには……
会っていない。
だけど毎日手紙を書いた。
返事は来なくてもいい。
毎日どんなことをして過ごしたか、何気ないことを書いた。
読んでくれているかわからない。
俺は今やるべきことをやって、日々を過ごす。
ダリアがいつか俺に会ってもいいと言ってくれるまで。ダリアに手紙なんてまともに書いたことがなかった。
多分ダリアは「ロード、もういい加減に手紙なんていらないわ」と呆れているだろう。
今日は仕事が休みで久しぶりに街に買い物に出かけた。
寮で過ごしているので食べることには困らない。最近は飲み会にはあまり参加しない。
飲んでバカやって騒ぐのも楽しいと思わなくなった。
警備隊の頃はダリアが街にお遣いに来ているかもしれないと仕事中でもよくダリアの姿を探していた。
今は探しても見つけることはない。
ダリアは拐われてからあまり外に出ることはない。それくらい怖かったのだろう。思い出すと自分の不甲斐なさに悔しさが募る。
「あっ……ここの本屋……」
ダリアは昔っから本が好きだった。今は使用人の仕事は辞めて、絵本作家としてバルス子爵の屋敷で暮らしている。子爵が投資している出版社が絵本を出してくれていると言っていた。
騎士団でも子持ちの人達がダリアの名前を知っているくらいの人気絵本作家になっている。
俺は本屋に入るといつもダリアが好んで読んでいた小説のコーナーに行った。
『ロード、この本はね、外国から入ってきた小説でなかなか手に入らないの。はあー、高い!わたしのお給料が飛んじゃうわ』
ーー俺が買おうか?
その言葉を何度も飲み込んだ。
ダリアは人に頼るのが嫌いだ。甘えることも嫌がる。
両親が亡くなり、おばあちゃんとの暮らしはとても質素だった。俺の家が裕福だったから、両親は何かとダリアに手助けしていた。
だけどダリアは感謝しながらも本当はとてもつらそうにしていた。
『わたしにはまだなんの力もないけど、大人になったら自分の力で生きていきたいの。おばあちゃんにもわたしが楽させてあげたい』
子爵家で働き出したダリアは、おばあちゃんが嫌がっても仕送りを続けた。まだまだ安い給金なのに自分の物は我慢していつもおばあちゃんのために仕送りをしていた。
安いアパートを借りて自炊して無駄なお金は使わない。だけど他人に甘えない。あんなに頑張るダリアに優しく接する人は多かった。だけど頑張り屋のダリアを蔑む人もいた。
そんな人たちに対してダリアはいつも『わたしは何もできないの、取り柄がないから』と諦めていた。
自己肯定感が低いダリアが子爵家で認められ、絵本作家としての才能を開花させた。
ダリアがいつもいた場所から少し移動すると……そこにはダリアの絵本が置かれていた。
絵本を手に取る。
ダリアらしい優しい話。
俺……ダリアに会いたくて仕方がない。
ずっとずっとダリアの横にいたのは俺なのに……もう一年近く会えていない。
ダリアに嫌われてもフラれてももう一度会いたい。
気がつけば子爵家の屋敷へと走っていた。
騎士をやめない。
ジャックが騎士団に戻る時に俺も騎士団へ移ることになった。これからはジャックは俺の上司でバイザード卿と呼ぶようになる。
バイザード卿の直属の上司は騎士団長ではなくバルス子爵になっていた。
バルス子爵は、以前騎士団長を務めていたことから、外から騎士団を変えていくことになる。中からはバイザード卿を主にして若手の貴族の子息達が変えていこうと動き始めた。
俺は平民ではあるが、警備隊から騎士団に移ったことで二つの内情を知る者としてみんなと共に改革の輪に参加させてもらった。
腐った考えの今の騎士団長や警備隊の団長はすぐに変わることはできない。それなりの場数を踏んで経歴を重ねてきて団長になっているため、簡単には引き摺り下ろせない。
それは副団長や隊長たちも同じ。
しかしその中には俺たち改革派の人もいる。
すぐに変えられないのはわかっているが、みんなが変わろうとしている。
「お前達、生意気なんだよ」
団長派の先輩達に毎日こき使われ、クタクタになりながらも、組織自体の意識改革は下にいる俺たちから少しずつ変わっていく。
上の者達のように、貴族ありきの考えから平民だろうと関係なく国民を守るという根本の信念をもう一度改めて心に刻み仕事をする。
ただそれだけのことなのに、気がつけばそれぞれが困った人に手を差し伸べることが増えつつある。
困った人たちが目につくようになった。
今まで見て見ぬ振りしていたはずなのに。
貴族からの圧力はなかなか減らないが、あの団長達ですら俺たち若い者の動きに多少は気持ちが動いたのか俺たちが民のために動くことを無理やり止めなくなった。
以前なら「お前達、出世に影響しない仕事なんて適当でいいんだ」「評価される仕事を優先的に行え」と口うるさく言っていた。
貴族が、街で多少やらかしても「目をつぶれ」「見逃してやるんだ」が当たり前の警備隊だった。
貴族が平民の女性を多少襲おうと、平民が貴族に殴られようと貴族が捕まることはなかった。
それがおかしいと誰も思わないのが警備隊だった。
騎士団は大きな事件に対して動くので、貴族に対してはきちんと罪を問う。ただ平民のためにはあまり関心を持たない。
大きな事件を解決するためには多少の平民の犠牲は仕方がない。
その考えが今の団長は特に強い。
バルス子爵の頃は、犠牲はあってもなんとか減らそうと動いていたらしい。
街の治安も今よりもよかったと言っている。
上が変われば良くも悪くもなる。
だけど、信念を持っていれば、根本は変わらない。
バルス子爵達の考えに感銘を受けた俺たちは少しずつ変わっていった。
ダリアには……
会っていない。
だけど毎日手紙を書いた。
返事は来なくてもいい。
毎日どんなことをして過ごしたか、何気ないことを書いた。
読んでくれているかわからない。
俺は今やるべきことをやって、日々を過ごす。
ダリアがいつか俺に会ってもいいと言ってくれるまで。ダリアに手紙なんてまともに書いたことがなかった。
多分ダリアは「ロード、もういい加減に手紙なんていらないわ」と呆れているだろう。
今日は仕事が休みで久しぶりに街に買い物に出かけた。
寮で過ごしているので食べることには困らない。最近は飲み会にはあまり参加しない。
飲んでバカやって騒ぐのも楽しいと思わなくなった。
警備隊の頃はダリアが街にお遣いに来ているかもしれないと仕事中でもよくダリアの姿を探していた。
今は探しても見つけることはない。
ダリアは拐われてからあまり外に出ることはない。それくらい怖かったのだろう。思い出すと自分の不甲斐なさに悔しさが募る。
「あっ……ここの本屋……」
ダリアは昔っから本が好きだった。今は使用人の仕事は辞めて、絵本作家としてバルス子爵の屋敷で暮らしている。子爵が投資している出版社が絵本を出してくれていると言っていた。
騎士団でも子持ちの人達がダリアの名前を知っているくらいの人気絵本作家になっている。
俺は本屋に入るといつもダリアが好んで読んでいた小説のコーナーに行った。
『ロード、この本はね、外国から入ってきた小説でなかなか手に入らないの。はあー、高い!わたしのお給料が飛んじゃうわ』
ーー俺が買おうか?
その言葉を何度も飲み込んだ。
ダリアは人に頼るのが嫌いだ。甘えることも嫌がる。
両親が亡くなり、おばあちゃんとの暮らしはとても質素だった。俺の家が裕福だったから、両親は何かとダリアに手助けしていた。
だけどダリアは感謝しながらも本当はとてもつらそうにしていた。
『わたしにはまだなんの力もないけど、大人になったら自分の力で生きていきたいの。おばあちゃんにもわたしが楽させてあげたい』
子爵家で働き出したダリアは、おばあちゃんが嫌がっても仕送りを続けた。まだまだ安い給金なのに自分の物は我慢していつもおばあちゃんのために仕送りをしていた。
安いアパートを借りて自炊して無駄なお金は使わない。だけど他人に甘えない。あんなに頑張るダリアに優しく接する人は多かった。だけど頑張り屋のダリアを蔑む人もいた。
そんな人たちに対してダリアはいつも『わたしは何もできないの、取り柄がないから』と諦めていた。
自己肯定感が低いダリアが子爵家で認められ、絵本作家としての才能を開花させた。
ダリアがいつもいた場所から少し移動すると……そこにはダリアの絵本が置かれていた。
絵本を手に取る。
ダリアらしい優しい話。
俺……ダリアに会いたくて仕方がない。
ずっとずっとダリアの横にいたのは俺なのに……もう一年近く会えていない。
ダリアに嫌われてもフラれてももう一度会いたい。
気がつけば子爵家の屋敷へと走っていた。
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