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58話。 最終話 ①
『ダリア………僕と結婚してくれないか?』
旦那様がそう言ったのはつい最近のこと。
わたしの頭にポンっと手を置いて……耳元で『真面目に考えてみて欲しい……おやすみ』と言われた。
坊っちゃまの本の読み聞かせを終えて、自分の部屋へと戻る時のことだった。
最近は旦那様もお忙しくされていてなかなか坊っちゃまに会いに来れなかった。
坊っちゃまも寂しそうにしていた。
久しぶりに部屋を訪ねてきて嬉しそうにする坊っちゃま。わたしもそんな二人の姿をみて嬉しくてつい微笑んでしまう。
そして、突然のプロポーズ。
旦那様が立ち去った廊下で一人固まったままのわたし。
旦那様は……亡くなった奥様を今も愛しているのは有名な話。
使用人の間ではみんなそう思っている。
それなのに………
それに、あの大人の色気!すご過ぎる!
わたしは思わずポーッとなってしまった。
だって、未亡人から若い子まで、旦那様の妻の地位を狙っている人達がたくさんいることは知っていた。
それを軽く躱していた旦那様。
女性の噂すらなかった。だからみんな奥様を愛しているのだと思っている。
なのに……わたし?
うん、だから、わかった。納得した。
坊っちゃまのためなのだと。坊っちゃまがわたしに懐いているのは自他共に認めている。坊っちゃまのためなんだと思った。
確かに……旦那様と結婚すればずっと坊っちゃまのそばにいられる。
ロードは?もう幼馴染としての関係に戻りつつある。それなら……
ロードとは昔の関係に戻って、坊っちゃまの母になるのもいいのかも……
ロードともきちんと話をしよう。そう思って話したのに……
やっぱりロードと話すと感情的になる。
つい言わなくてもいいことまで言ってしまった。
旦那様にプロポーズされたことも本当は言わなくてもいいのに……
ーーーーーー
「バルス子爵……お話があります」
俺はダリアを忘れられるのだろうか……ダリアがバルス子爵を選ぶのなら、二人の幸せを祝ってやらないといけない。
「ロード?どうした?」
「…………ダリアに……結婚を申し込んだと聞きました……」
ーーそれは本当ですか?愛してるんですか?利用しようとしてるんじゃないですか?
聞きたいことはいっぱいあるのに、俺はその言葉を飲み込んだ。
「それは君に何か関係があるのかい?」
「知ってますよね?俺とダリアの関係?」
「幼馴染?だと言うことかな?」
「違っ………いません」
悔しかった。違うと言いたいのに、幼馴染でしかない。偽の恋人なんて馬鹿なことを言ったから、恋人じゃない。それにダリアを傷つけたことは全て知られている。
なんの言い訳もできない。
「君が心配してるのは僕がダリアをいいように利用しようと思っているんじゃないかと言うことだよね?」
「………はい」
俺は頷くことしかできなかった。
「君に言うべきことではないと思ってはいるが、納得しなさそうだから言っておくよ。
僕は真面目で頑張り屋のダリアに惹かれている。亡くなった妻をもちろん愛しているよ。でも、今はそれ以上にダリアに惹かれている。
彼女は平民だけど僕は再婚になるからね、そこは厳しくない。再婚なら平民でもそこまで問われることはない。特にダリアは絵本作家として活躍していて貴族の間でも人気のある作家なんだ。
美しくて聡明で才能に溢れているダリアを欲する男は僕以外にもたくさんいると思うよ」
バイザード卿や俺の従兄弟のディーンもダリアに惹かれていたことは知っていた。太陽の家を手伝う騎士の何人かもダリアに想いを寄せているのは知っている。
「ダリアにまだ返事をもらっていませんが、俺は騎士を辞めて村に帰ろうと思っています。出来ればダリアも連れて帰りたいと彼女に伝えました」
「騎士を辞めるのか?」
「もともと辞めるつもりでいました。でも中途半端で逃げるのは嫌でした。なんとか騎士団も安定してきたし、太陽の家も軌道に乗ってきたし、俺は、次は生まれた村で実家の仕事を手伝いながら困っている人たちに手を差し伸べられることはないか探そうと思っています」
バルス子爵はダリアが思っている以上にダリアのことを本気で愛しているのだとわかった。坊っちゃまの世話をして欲しくて妻に望んだのではなく、ダリアを愛しているから妻として望んだ。
俺はダリアの意思を尊重するしかない。
ーーー
ごめんなさい。
話が長くなりました。
明日……
旦那様がそう言ったのはつい最近のこと。
わたしの頭にポンっと手を置いて……耳元で『真面目に考えてみて欲しい……おやすみ』と言われた。
坊っちゃまの本の読み聞かせを終えて、自分の部屋へと戻る時のことだった。
最近は旦那様もお忙しくされていてなかなか坊っちゃまに会いに来れなかった。
坊っちゃまも寂しそうにしていた。
久しぶりに部屋を訪ねてきて嬉しそうにする坊っちゃま。わたしもそんな二人の姿をみて嬉しくてつい微笑んでしまう。
そして、突然のプロポーズ。
旦那様が立ち去った廊下で一人固まったままのわたし。
旦那様は……亡くなった奥様を今も愛しているのは有名な話。
使用人の間ではみんなそう思っている。
それなのに………
それに、あの大人の色気!すご過ぎる!
わたしは思わずポーッとなってしまった。
だって、未亡人から若い子まで、旦那様の妻の地位を狙っている人達がたくさんいることは知っていた。
それを軽く躱していた旦那様。
女性の噂すらなかった。だからみんな奥様を愛しているのだと思っている。
なのに……わたし?
うん、だから、わかった。納得した。
坊っちゃまのためなのだと。坊っちゃまがわたしに懐いているのは自他共に認めている。坊っちゃまのためなんだと思った。
確かに……旦那様と結婚すればずっと坊っちゃまのそばにいられる。
ロードは?もう幼馴染としての関係に戻りつつある。それなら……
ロードとは昔の関係に戻って、坊っちゃまの母になるのもいいのかも……
ロードともきちんと話をしよう。そう思って話したのに……
やっぱりロードと話すと感情的になる。
つい言わなくてもいいことまで言ってしまった。
旦那様にプロポーズされたことも本当は言わなくてもいいのに……
ーーーーーー
「バルス子爵……お話があります」
俺はダリアを忘れられるのだろうか……ダリアがバルス子爵を選ぶのなら、二人の幸せを祝ってやらないといけない。
「ロード?どうした?」
「…………ダリアに……結婚を申し込んだと聞きました……」
ーーそれは本当ですか?愛してるんですか?利用しようとしてるんじゃないですか?
聞きたいことはいっぱいあるのに、俺はその言葉を飲み込んだ。
「それは君に何か関係があるのかい?」
「知ってますよね?俺とダリアの関係?」
「幼馴染?だと言うことかな?」
「違っ………いません」
悔しかった。違うと言いたいのに、幼馴染でしかない。偽の恋人なんて馬鹿なことを言ったから、恋人じゃない。それにダリアを傷つけたことは全て知られている。
なんの言い訳もできない。
「君が心配してるのは僕がダリアをいいように利用しようと思っているんじゃないかと言うことだよね?」
「………はい」
俺は頷くことしかできなかった。
「君に言うべきことではないと思ってはいるが、納得しなさそうだから言っておくよ。
僕は真面目で頑張り屋のダリアに惹かれている。亡くなった妻をもちろん愛しているよ。でも、今はそれ以上にダリアに惹かれている。
彼女は平民だけど僕は再婚になるからね、そこは厳しくない。再婚なら平民でもそこまで問われることはない。特にダリアは絵本作家として活躍していて貴族の間でも人気のある作家なんだ。
美しくて聡明で才能に溢れているダリアを欲する男は僕以外にもたくさんいると思うよ」
バイザード卿や俺の従兄弟のディーンもダリアに惹かれていたことは知っていた。太陽の家を手伝う騎士の何人かもダリアに想いを寄せているのは知っている。
「ダリアにまだ返事をもらっていませんが、俺は騎士を辞めて村に帰ろうと思っています。出来ればダリアも連れて帰りたいと彼女に伝えました」
「騎士を辞めるのか?」
「もともと辞めるつもりでいました。でも中途半端で逃げるのは嫌でした。なんとか騎士団も安定してきたし、太陽の家も軌道に乗ってきたし、俺は、次は生まれた村で実家の仕事を手伝いながら困っている人たちに手を差し伸べられることはないか探そうと思っています」
バルス子爵はダリアが思っている以上にダリアのことを本気で愛しているのだとわかった。坊っちゃまの世話をして欲しくて妻に望んだのではなく、ダリアを愛しているから妻として望んだ。
俺はダリアの意思を尊重するしかない。
ーーー
ごめんなさい。
話が長くなりました。
明日……
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