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52話
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「ぶはっ!」
カイさんが笑った。
酷い……なんで笑うの!
頬を膨らませムスッとした私の頬に手を触れたのはカイさんで、「怒るな、すまんすまん」とまた笑った。
「私、真剣に話を聞こうと思っているのに」
「レイン、俺はお前と付き合いが浅い。その俺が説明するわけにはいかない」
カイさんがもっともな事を言う。
「カイ殿、レインに説明するのは俺たちではダメだと思う」
レイモンド殿下もカイさんを見て頷いた。
「だったら……誰に…兄様?」
いつもは護衛についている兄様、だけど今日は殿下二人といるため、護衛がそれぞれについているので兄様は別の任務についている。
セリウス殿下が「レイン、君はモリス国のご令嬢だよ、そして僕の幼馴染だったんだ」と言いだした。
「えっ?」
記憶がない私にはセリウス殿下をじっと見てもやはり思い出せない。
「どうせ全て伝えるなら僕がはとこだと知っておいてほしいからね」
「……はとこ……私……にも親族がいたんだ……一人ではない?」
「お前は意地っ張りだから、ずっと肩肘張って一人だと思ってきたんだろうけど、みんなお前のこと大切に思ってるんだぞ」
レイモンド殿下がガシガシと私の髪の毛をくしゃくしゃにした。
「もう、やめてください!」
「うん?すまない、とりあえず、きちんと話す場を設けよう。セリウス殿下の帰国まであと一週間しかないから早めに、な?だから泣くな」
「………泣いてません」
恥ずかしさからまたムスッとしてしまった。
寮に帰り、明後日きちんと話してくれることになった。
この前襲われた男の件や私が何か狙われているかもしれないと言われて護衛してもらっている件などまとめて話すと言われた。
周りで何かが起きている、そして私もその何かに巻き込まれている。
知りたくても誰も教えてくれなかった。
「私って何者なのか……」
ベッドで寝転んで買ってきたパンをちぎって一口口に放り込んだ。
こんなお行儀悪い食べ方、人前ではできないな、と思いつつもう一口。
食欲はあまりないけど何か口に入れておかないと明日の仕事がきつい。
外はもう暗くなってきた。部屋の中を見回す。
ベッドとクローゼット。ミニキッチンとバスルームとトイレ、あとは小さめのテーブルと椅子が二脚あるだけの部屋。
これが私の全て。
実家と縁を切っている私にとってここが私がいるべき場所でここにあるものだけが私の持ちもの。
幼い頃は私は拾われて誰かもわからず養女にしたと言われていた。キース兄様に特に。
あれって子供特有の意地悪だったのよね。
でも父の言葉の端々に私の素性は知っているのだろうと思わせる言葉もあり多分私が誰なのかわかってるのだろうと思っていたけど、聞いても誤魔化されるし聞けない空気感もあり、私自身記憶のない中で聞いたところで、聞いても仕方がないと諦めていた。
そう、知ることが怖くて、今を壊すことが怖かった。
あの家族に執着していたのは私自身。否定して逃げているくせに、家族と認めてもらえない自分が惨めで、……辛くてそれなら自分から目を逸らそうと思った。
学生の時はミシェル達に依存して小さな自分の世界に逃げ込んで、今は必死で仕事に逃げ込んでいた。
自立すると言いながらレイモンド殿下や上司、先輩達の優しさに甘えて今も過ごしている。
なんだかちっぽけなプライドを必死で守りながら生きてるのに気がついて、落ち込む。
自分を知った時、私はこれからどうなるんだろう。どうするんだろう。
不安の中、窓の外を眺めていると、扉がノックされた。
「……はい?」
寮の管理人さんが手紙を持ってきてくれた。
そう言えば今朝管理人さんに手紙が届いていると言われていたのに、帰りに取りに行くと言って忘れていた。
手紙はミシェルからだった。
ミシェルはもうすぐ結婚する。
自分が稼いだお金でプレゼントを買ったので彼女にお祝いとして贈った。
今は王都に婚約者と社交シーズンで来ている。ただ仕事が忙しすぎてなかなか会う時間がない。とりあえずお祝いだけは贈ったけど、会えるなら会いたい。
ミシェルも時間を作って会いたいと手紙に書かれていた。そして話したいことがあると。
なんだろう、話したいことって。まさか結婚前に赤ちゃん?それとも兄妹のことで何か報告?
カイさんが笑った。
酷い……なんで笑うの!
頬を膨らませムスッとした私の頬に手を触れたのはカイさんで、「怒るな、すまんすまん」とまた笑った。
「私、真剣に話を聞こうと思っているのに」
「レイン、俺はお前と付き合いが浅い。その俺が説明するわけにはいかない」
カイさんがもっともな事を言う。
「カイ殿、レインに説明するのは俺たちではダメだと思う」
レイモンド殿下もカイさんを見て頷いた。
「だったら……誰に…兄様?」
いつもは護衛についている兄様、だけど今日は殿下二人といるため、護衛がそれぞれについているので兄様は別の任務についている。
セリウス殿下が「レイン、君はモリス国のご令嬢だよ、そして僕の幼馴染だったんだ」と言いだした。
「えっ?」
記憶がない私にはセリウス殿下をじっと見てもやはり思い出せない。
「どうせ全て伝えるなら僕がはとこだと知っておいてほしいからね」
「……はとこ……私……にも親族がいたんだ……一人ではない?」
「お前は意地っ張りだから、ずっと肩肘張って一人だと思ってきたんだろうけど、みんなお前のこと大切に思ってるんだぞ」
レイモンド殿下がガシガシと私の髪の毛をくしゃくしゃにした。
「もう、やめてください!」
「うん?すまない、とりあえず、きちんと話す場を設けよう。セリウス殿下の帰国まであと一週間しかないから早めに、な?だから泣くな」
「………泣いてません」
恥ずかしさからまたムスッとしてしまった。
寮に帰り、明後日きちんと話してくれることになった。
この前襲われた男の件や私が何か狙われているかもしれないと言われて護衛してもらっている件などまとめて話すと言われた。
周りで何かが起きている、そして私もその何かに巻き込まれている。
知りたくても誰も教えてくれなかった。
「私って何者なのか……」
ベッドで寝転んで買ってきたパンをちぎって一口口に放り込んだ。
こんなお行儀悪い食べ方、人前ではできないな、と思いつつもう一口。
食欲はあまりないけど何か口に入れておかないと明日の仕事がきつい。
外はもう暗くなってきた。部屋の中を見回す。
ベッドとクローゼット。ミニキッチンとバスルームとトイレ、あとは小さめのテーブルと椅子が二脚あるだけの部屋。
これが私の全て。
実家と縁を切っている私にとってここが私がいるべき場所でここにあるものだけが私の持ちもの。
幼い頃は私は拾われて誰かもわからず養女にしたと言われていた。キース兄様に特に。
あれって子供特有の意地悪だったのよね。
でも父の言葉の端々に私の素性は知っているのだろうと思わせる言葉もあり多分私が誰なのかわかってるのだろうと思っていたけど、聞いても誤魔化されるし聞けない空気感もあり、私自身記憶のない中で聞いたところで、聞いても仕方がないと諦めていた。
そう、知ることが怖くて、今を壊すことが怖かった。
あの家族に執着していたのは私自身。否定して逃げているくせに、家族と認めてもらえない自分が惨めで、……辛くてそれなら自分から目を逸らそうと思った。
学生の時はミシェル達に依存して小さな自分の世界に逃げ込んで、今は必死で仕事に逃げ込んでいた。
自立すると言いながらレイモンド殿下や上司、先輩達の優しさに甘えて今も過ごしている。
なんだかちっぽけなプライドを必死で守りながら生きてるのに気がついて、落ち込む。
自分を知った時、私はこれからどうなるんだろう。どうするんだろう。
不安の中、窓の外を眺めていると、扉がノックされた。
「……はい?」
寮の管理人さんが手紙を持ってきてくれた。
そう言えば今朝管理人さんに手紙が届いていると言われていたのに、帰りに取りに行くと言って忘れていた。
手紙はミシェルからだった。
ミシェルはもうすぐ結婚する。
自分が稼いだお金でプレゼントを買ったので彼女にお祝いとして贈った。
今は王都に婚約者と社交シーズンで来ている。ただ仕事が忙しすぎてなかなか会う時間がない。とりあえずお祝いだけは贈ったけど、会えるなら会いたい。
ミシェルも時間を作って会いたいと手紙に書かれていた。そして話したいことがあると。
なんだろう、話したいことって。まさか結婚前に赤ちゃん?それとも兄妹のことで何か報告?
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