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59話
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カイさんが別れ際に言った。
「レイン、お前を連れ去ろうとした悪い奴らはもう捕まえた。安心して侯爵達に文句を言ってこい」
「えっ?」
「リドラー伯爵もうちの国の公爵達も捕らえた。お前を害する者はいない……ただまだ一人気になる奴がいるんだが……そこがはっきりしない。そいつはお前のことを大切に思っているはずだ…害することはないと思うんだが……」
私の手に小さな小瓶を渡された。
「何かあったらこれを使え」
「これは?」
「お前を守ってくれる魔法の薬さ」
いつものニヤッと笑った顔がちょっと怖かった。
「これ……死なないですよね?」
「おう、お前が殺人犯になることはない…はずだ」
「さ、殺人?」
「わはははっ、まだ16歳の小娘に人殺しはさせないさ。その薬は大したことはない、相手がちょっと苦しむくらいだ、その間に逃げろ、全速力で!若いお前にだから使えるんだ」
「はぁ……わかりました」
ほんと、みんな肝心なことは教えてくれない。相手は誰なの?
そう思っているのがわかったのか
「そいつは何もしないかもしれない、まぁ、俺の思い過ごしかもしれない」
と、苦笑いをした。
よくわからないけど、「ありがとうございます。カイさん、まだこの国にいますか?」と聞いた。
よくわからないことで心配するより、カイさんが突然いなくなることの方が心配だった。
「あと少しかな、後始末したら国に帰るよ」
「……そうですよね」
やっと心許せる人ができたのに……寂しい……
「レイン、そんな寂しそうな顔をするな。お前がひとりだと感じて寂しくなったらいつでもうちに来い。でもその前にお前はもっと身近なところに目を向けてみろ、見えていないものが見えてくるはずだ」
私はアレックス兄様がいるであろう騎士団がいる鍛錬場へと向かった。
たくさんの騎士達が訓練をしているところをそっと覗くと奥の方で訓練をしている兄様がいた。
今日は話し合いがあったので兄様も仕事はお休みしていた。私が突然部屋を出て行ったので兄様も体を鍛えるためにここにやはりきていた。
することがないとつい自分の好きなことでもしようと思ってしまう。兄様も私と同じなのよね。
近くにいた騎士にお願いをして兄様を呼び出してもらった。
「レイン!」
「兄様……さっきはあんな酷い態度をとってしまって申し訳ありませんでした」
「……うん、レインからすればこれまでの俺たち家族の態度に不信感しかないのはわかってる。ずっと君を間違ったやり方で守ろうとしていたことを反省している。君が狙われていることをきちんと話していればレインを傷つけずにすんだと思う」
私は首を横に振る。
違う……私は意地を張ってた。
愛されないなら嫌われてるなら、もういい。私だってあなた達のことなんてなんとも思っていない。
そうやって突っぱねて自分を守ってきた。
「兄様……私、もう一度話を聞きたいです。今度は逃げません」
自分の傲慢な態度を反省して頭を下げて許しをこう。
「申し訳ありませんでした」
「レイン、そんなに何度も謝るな。お前が嫌でなければ侯爵家に行こう。きちんと話をしよう、許せなければ許さなくていい」
兄様の声はとても優しかった。
私は素直に頷いて兄様と共に久しぶりに侯爵家の屋敷へと向かった。
門番から嫌な顔をされることなく通された。
ここを出てからまともに侯爵家に入ることも出来なかったことを思い出す。
学園に通うためと言ってこの屋敷から逃げ出した。そしてお母様が持ってきた結婚話をなんとかしようと何度も訪れて中に入れてもらえなかった。
思い出すと辛いことばかり。だけど、料理長や庭師のおじちゃん、優しいメイドだっていた。アレックス兄様やキース兄様と笑って過ごした時間もそこにはあった。
目を逸らし逃げてばかりだった。
屋敷に着くとお父様が執務室で仕事をしていた。
「レイン……」
兄様が先触れで私が帰ってくることを知らせてくれていたようだ。
「そこに座りなさい」
執務室にあるお客様用の大きなソファに座ったらすぐにメイドがお茶の用意をしてくれた。
久しぶりの紅茶の味に思わず「美味しい」と声が出た。
「うん、レインはこの紅茶が好きだったからな」
「はい、好きです」
覚えてくれていることに驚いた。
いつも好んで飲んでいた紅茶は濃厚なコクと甘い香りで色は深みのある赤褐色でミルクをたっぷり入れて飲むのがお気に入りだった。
そのあとお父様は私の忘れた記憶について詳しく話してくれた。
私は……狙われていたんだと今更ながら自覚した。
そして……先生が……デュオス先生が私の兄だと教えてもらい、びっくりしすぎて驚きを隠せなかった。
「デュオス先生が?で、でも、先生は……」
カリーナ様と隠れてお付き合いをしていたわ。それに……兄様……
「兄様……カリーナ様との婚約は……」
なんてこと……私は自分のことばかりで兄様の婚約のことを忘れていた。
お二人は愛し合っていたのに……でも……デュオス先生は……
どう言ったらいいのか言い淀んでしまった。
「レインはカリーナとデュオス殿のことを知ってるんだよね?」
「…………はい」
「気にしなくていいよ、俺も知ってるから」
「知ってる?」
「うん、カリーナに近づくために俺は婚約した。デュオス殿は情報を聞き出すためにカリーナに近づいたんだ」
「近づく?え?」
理解できずに私は兄様の顔を見つめた。
「レイン、お前を連れ去ろうとした悪い奴らはもう捕まえた。安心して侯爵達に文句を言ってこい」
「えっ?」
「リドラー伯爵もうちの国の公爵達も捕らえた。お前を害する者はいない……ただまだ一人気になる奴がいるんだが……そこがはっきりしない。そいつはお前のことを大切に思っているはずだ…害することはないと思うんだが……」
私の手に小さな小瓶を渡された。
「何かあったらこれを使え」
「これは?」
「お前を守ってくれる魔法の薬さ」
いつものニヤッと笑った顔がちょっと怖かった。
「これ……死なないですよね?」
「おう、お前が殺人犯になることはない…はずだ」
「さ、殺人?」
「わはははっ、まだ16歳の小娘に人殺しはさせないさ。その薬は大したことはない、相手がちょっと苦しむくらいだ、その間に逃げろ、全速力で!若いお前にだから使えるんだ」
「はぁ……わかりました」
ほんと、みんな肝心なことは教えてくれない。相手は誰なの?
そう思っているのがわかったのか
「そいつは何もしないかもしれない、まぁ、俺の思い過ごしかもしれない」
と、苦笑いをした。
よくわからないけど、「ありがとうございます。カイさん、まだこの国にいますか?」と聞いた。
よくわからないことで心配するより、カイさんが突然いなくなることの方が心配だった。
「あと少しかな、後始末したら国に帰るよ」
「……そうですよね」
やっと心許せる人ができたのに……寂しい……
「レイン、そんな寂しそうな顔をするな。お前がひとりだと感じて寂しくなったらいつでもうちに来い。でもその前にお前はもっと身近なところに目を向けてみろ、見えていないものが見えてくるはずだ」
私はアレックス兄様がいるであろう騎士団がいる鍛錬場へと向かった。
たくさんの騎士達が訓練をしているところをそっと覗くと奥の方で訓練をしている兄様がいた。
今日は話し合いがあったので兄様も仕事はお休みしていた。私が突然部屋を出て行ったので兄様も体を鍛えるためにここにやはりきていた。
することがないとつい自分の好きなことでもしようと思ってしまう。兄様も私と同じなのよね。
近くにいた騎士にお願いをして兄様を呼び出してもらった。
「レイン!」
「兄様……さっきはあんな酷い態度をとってしまって申し訳ありませんでした」
「……うん、レインからすればこれまでの俺たち家族の態度に不信感しかないのはわかってる。ずっと君を間違ったやり方で守ろうとしていたことを反省している。君が狙われていることをきちんと話していればレインを傷つけずにすんだと思う」
私は首を横に振る。
違う……私は意地を張ってた。
愛されないなら嫌われてるなら、もういい。私だってあなた達のことなんてなんとも思っていない。
そうやって突っぱねて自分を守ってきた。
「兄様……私、もう一度話を聞きたいです。今度は逃げません」
自分の傲慢な態度を反省して頭を下げて許しをこう。
「申し訳ありませんでした」
「レイン、そんなに何度も謝るな。お前が嫌でなければ侯爵家に行こう。きちんと話をしよう、許せなければ許さなくていい」
兄様の声はとても優しかった。
私は素直に頷いて兄様と共に久しぶりに侯爵家の屋敷へと向かった。
門番から嫌な顔をされることなく通された。
ここを出てからまともに侯爵家に入ることも出来なかったことを思い出す。
学園に通うためと言ってこの屋敷から逃げ出した。そしてお母様が持ってきた結婚話をなんとかしようと何度も訪れて中に入れてもらえなかった。
思い出すと辛いことばかり。だけど、料理長や庭師のおじちゃん、優しいメイドだっていた。アレックス兄様やキース兄様と笑って過ごした時間もそこにはあった。
目を逸らし逃げてばかりだった。
屋敷に着くとお父様が執務室で仕事をしていた。
「レイン……」
兄様が先触れで私が帰ってくることを知らせてくれていたようだ。
「そこに座りなさい」
執務室にあるお客様用の大きなソファに座ったらすぐにメイドがお茶の用意をしてくれた。
久しぶりの紅茶の味に思わず「美味しい」と声が出た。
「うん、レインはこの紅茶が好きだったからな」
「はい、好きです」
覚えてくれていることに驚いた。
いつも好んで飲んでいた紅茶は濃厚なコクと甘い香りで色は深みのある赤褐色でミルクをたっぷり入れて飲むのがお気に入りだった。
そのあとお父様は私の忘れた記憶について詳しく話してくれた。
私は……狙われていたんだと今更ながら自覚した。
そして……先生が……デュオス先生が私の兄だと教えてもらい、びっくりしすぎて驚きを隠せなかった。
「デュオス先生が?で、でも、先生は……」
カリーナ様と隠れてお付き合いをしていたわ。それに……兄様……
「兄様……カリーナ様との婚約は……」
なんてこと……私は自分のことばかりで兄様の婚約のことを忘れていた。
お二人は愛し合っていたのに……でも……デュオス先生は……
どう言ったらいいのか言い淀んでしまった。
「レインはカリーナとデュオス殿のことを知ってるんだよね?」
「…………はい」
「気にしなくていいよ、俺も知ってるから」
「知ってる?」
「うん、カリーナに近づくために俺は婚約した。デュオス殿は情報を聞き出すためにカリーナに近づいたんだ」
「近づく?え?」
理解できずに私は兄様の顔を見つめた。
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