【完結】裏切られた私はあなたを捨てます。

たろ

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58話

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「おい!なんで真面目に仕事をしてるんだ!」

 私の肩に手を置いて耳元で呆れた声が聞こえる。

「………仕事中です」

「今日は昼上がりのはずだろう?」

「うるさいですわ」

「おい!」

「もう!うるさい!仕事中です!」

 私は仕方なく手を止めて横にいるカイさんを睨む。

 さっきまで居なかったくせに!

 居てくれたら……少しは気持ちも違ったのに……完全に八つ当たりだとわかってる。

 声を聞いたらさっきまで気が張っていたはずなのに、もう泣いてしまいそう。

 周りの視線を無視してつい声を荒げた私。

 周りの人たちは心配そうにこちらの様子を窺っていた。

「……ごめんなさい……」
 シュンとなりすぐに謝罪した。

「少し話そうか?」

 カイさんが髪をクシャッと触る。

 彼もどうしようかと躊躇っているようだった。

「……はい……あの、少し席を外してもよろしいでしょうか?」

 上司は「今日は元々昼上がりだろう?」と了承してくれた。

「レイン、そのまま今日はもう上がっていいから、帰れ」とぶっきらぼうに上司に言われた。

「ありがとうございます」

「気をつけて」
「明日な」

 先輩達の優しい声にコクッと頷いてカイさんの後について行った。

 王城内にある庭園の四阿へと連れて行かれた。

「話は聞いた。レイン、お前が怒っている理由は?」

 ああ、そうだ。私は怒っている。
 でも理由はみんな知らない。

 だって誰にも伝えていないもの。

 なのにわかって欲しいなんて……無理なこと……

「カイさん………私……自分が誰なのかどうして狙われたのか……何故護衛がつかないといけないのか、自分の本当の親のことも……知りたかった……だけど……知ってしまわないほうがいいことだってあるって……わかって……周りにどんなに優しい人たちがいても、もうダメで……」

 涙がポロポロと溢れてきた。

「一番……大切な……友達が……お父様にお金で雇われていて……苦しかったと思う。私のことを逐一報告させられて……お金のことで……苦しかったと思うんです……」

「侯爵が雇ったのか?馬鹿だな」

「………はい」

「その子は苦しんだんだろうな」

「…………はい」

「だけどそれを知ってお前はもっと苦しんでるんだろう?」

「…………は……い」

「ばぁか、そんな顔するな」

 くしゃくしゃな顔をしている私。

「鼻水が………」

 グシュグシュっと鼻を啜る。

「なぁ、レイン、お前は素直じゃない。すぐに人前で気が強いフリをする。それはお前が傷つきたくないから、本当はすっげえ弱くて優しすぎるんだよな」

「………気が強いのは…確かです。でも優しくもないし、弱くなんてない……」

「お前、本当はあの侯爵の愛情をずっと求めてたんだろう?」

「そんなことないです。だって私は嫌われてます、ミシェルのことだって、監視するために……」

「俺さ、お前がうちの国の奴から狙われてるからお前の護衛もかねてそばにいたんだけど、以前からお前のこと知ってたんだ。まぁなかなかこの国にずっといられなかったけど、お前、子供ん時から侯爵のこと、じっと見つめてたよな」

「…………」

「王宮に家族で顔出した時、お前まだ10歳くらいだったかな。アレックスの手を握ってたけど、ずっと侯爵の背中ばかり見つめてた。侯爵と一瞬目が合うとすっげえ嬉しそうな顔したのが印象的だった。
 俺にも娘がいるんだ。嫁の連れ子だけど。娘って可愛いんだよ、血なんて繋がっていなくてもさ。侯爵だって、お前が楽しそうにキース達と遊んでる姿をすっげえ優しい顔して見てたぞ。
 お前ら血は繋がってないのに、素直じゃないところだけそっくりだな」

「お父様のことなんて……嫌いです」

「ああ、そうだよな。嫌いだよな。あの男、嫁の顔色ばっかり窺ってお前のこと蔑ろにしてたもんな。あの嫁、心が病んで、レインのこと、大切な娘だと思ってるはずなのに、自分の娘じゃないと暴れ出したり、逆にレインのこと、大切な娘、いや人形だからと閉じ込めようとしたり、なかなか大変な嫁だからな」

「お母様が?」

 確かに思い起こせばおかしいと感じることはあった。でもあまり接点がなかったから……

「侯爵が嫁をあまりレインと会わせないようにしてたからな。やれパーティーだ夜会だ、旅行だと外に出して、レインから遠ざけていたもんな」

「なんでカイさんがそんなに知ってるんですか?」

「俺か?俺の仕事は暗躍することだからな。だけどミシェルのことは知らなかった……すまない、お前の心を守ってやれなかったな」

「えっ?」

 カイさんがニヤッと笑った。

「お前みたいなお嬢様にはわからない仕事さ。まぁ今回はお前を攫おうとしている奴らを捕まえるのが仕事なんだ。ついでに目の前にいる可愛い娘の心も救ってやろうかと思って、な?」

「カイさん……って何者?」

「一応、オリソン国の王兄だよ、ついでに言えば国王の使いっ走りの今はただの平民さ」

 カイさんと話してたら、哀しい気持ちも苛立ちもなんだか気が抜けて……

「はああ、もうっ!なんだかどうでもよくなっちゃう……ミシェルに嫌われて捨てられて……もう生きてても意味ないやと思ってるのに……カイさんと話してたら……」

「なぁ、侯爵が……この国が嫌になったらうちに来るか?うちは、なんでか家出娘が住んでたりするんだ。いつでも遊びに来い。うちの嫁も娘もついでに家出娘の女騎士もいるんだが、賑やかで楽しいぞ」

「ふふ、カイさんのお家かぁ、楽しそうですね。カイさんってお父様よりお父様みたい」

「そうだろう?俺っていい父親だと思うんだよな、娘達は認めてないけど」

「………私、きちんと向き合わなきゃいけないですよね。話をちゃんと聞いていないし……途中で投げ出して逃げてました」

「ミシェルだったか?その子はずっと罪悪感の中辛かったんだと思うぞ。お前に嫌われたかったんだろうな、やり方はちょっとえげつないけど」

「ふふふ、私、ミシェルのこと……どんなに酷いことを言われても……嫌いになれないんです……それよりも……ミシェルがお父様に私のせいで利用されて…それがとても悔しい」

「侯爵にボロクソ言ってやれ。嫌いだって、酷い奴だって。思ってること言ってやれ。どうしても侯爵のこと許せなかったら俺が一生動けない体にしてやるよ。
 溜め込んで無視するより心の中に溜まってる気持ちを全部吐き出せ。それでこの国に居づらくなったらうちに来い。いつでも美味いもん食わせてやるから、な?」

 そうだよね。私らしくないよね。

 うじうじして……

 だけどカイさんの話の中に……なんだか怖い言葉が混じってた気がする……







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