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68話
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「………殿…下と取引とは?」
目は見開き唇は震える。
私の中でレイモンド殿下は絶対的に信用している人だ。
ずっと揶揄ったりふざけて私を弄ったりしてはいつも大笑いして……でも何かあると一番先に心配して声をかけてくれる。
たくさん仕事を振ってきて鬼上司!と何度叫んだか。
だけど隣にいると安心する人。
まだ恋心まではいかないけど、いつか彼を好きになってしまう……そんな気持ちが芽生え始めたところだった。
ああ、そっか……どうせ叶わない恋なのだから。
取引……信用していたのに裏切られ私を切り捨てて……でも…殿下からすれば自分の立場がうまくいけばいいのか……
私を宰相に渡してまで欲しいものとはなんなのだろう?
取引って何?
「ふはははっ、殿下に裏切られたと思っているのか?あのお方は元々冷淡な考えをお持ちだ。君の上司になったのは君を守るためでもあり、君からの信用を得るためでもあったんだ」
それは、どういうこと?
「君はあまり人を信用しない、だけど親しくなった者には心を開く、それも隙だらけらしいな。そこを殿下は狙ったんだ。私が君を欲しがっているのを知って殿下から提案してきた。
君を私に渡す代わりに王太子ではなく第二王子であるレイモンド殿下の後ろ盾になって欲しいと頼まれたんだ」
「レイモンド殿下は……王位を欲しているのですか?」
「殿下はとても優秀だ。王太子殿下に何かあればレイモンド殿下が王位につくことになる。そう何かあれば、わかるだろう?」
ニヤリといやらしく嗤う宰相の顔が気持ち悪い。
レイモンド殿下が本当にそんなことをお望みなの?
いつも兄である王太子殿下のことを話す時、とても尊敬しているのが手に取るようにわかった。
誇らしげに瞳をキラキラさせて王太子殿下の自慢話をいつもしていた。
『兄上のために僕はもっと政治のことやこの国のことを知らなければいけないんだ』
『他国との関係がもっと友好になれば我が国にとってメリットをもたらす。農作物の技術を交換し合えるし、新しい文化を取り入れることもできる。
我が国にはない作物も輸入できるし、我が国が誇る織物も他国へ高い値段で輸出できれば国が潤うことになる』
いつも殿下は国のことを民のことを考えていた。
私的感情で動く人ではない。
だからこそ信じられない。
「殿下は……兄である王太子殿下を尊敬しております。そんなことをするお方ではありません」
私は宰相を睨みつけるように言った。
「レイン嬢、君はどんな幻想を殿下に抱いているのか知らないが、人間はそんなに綺麗な生き物ではない。みんな目の前にある欲望に抗うことなんてできない、私利私欲に目が眩むのは人として致し方がないことだ」
「………信じません!」
「はっ、今からレイン嬢が体験すればそんな気持ちも綺麗さっぱり消えてなくなるよ」
そう言って宰相が私の腕を掴んだ。
ポケットに入れている小瓶を取ろうと手を動かした。なのに両手を掴まれ縄で縛られた。
どうしよう。カイさんがくれた小瓶をもっと早く取り出しておけばよかった。
宰相の話をムキになって訊いてしまった。
悔やみながらも縛られた両手をなんとか動かして縄を緩めようとした。
「無駄だ」
宰相は好色そうな目で舌をぺろっと出し唇を舐めた。
気持ち悪い、気持ち悪い。
嫌だ、すっごく嫌だ。見られるのも息がかかるのも嫌だ。
カイさん、助けてよ!
アレックス兄様、助けて!
いつも文句ばかり言うけど、キース兄様、たまにはかっこよく助けに来て!
デュオス兄様!お義父様!
もう、誰でもいいから助けて!!
いつも突っぱねて素直じゃないから誰も助けに来てくれないのかな。
宰相は両手を縛られた私を抱きかかえた。
気持ち悪い。その手が少しでも体に触れているのが嫌だ。
抱きかかえているのに、私の太ももを触った。
「やっ!やめて!!」
「ああ、暴れるな。今は何もしないよ。後でゆっくり君の処女をもらってあげるからね?しっかり気持ち良くなる薬を使って、もう逃げたくなくなるくらいたっぷりと可愛がってやるよ」
「や、やだ!!」
地下から上の部屋へと連れて行かれた。
抱きかかえられてある間、気持ち悪くて吐きそうになった。
吐けばよかったかしら?
ここはどこ?
よく見るととても豪華な部屋に連れて行かれた。手を縛られて入るけど足は何もされていないので自由に歩けた。
ブラウンの落ち着いた高級な家具に、白を基調とし繊細な刺繍が施されたとても美しいカーテン、ソファも高級な革で作られている。
ここは、宰相の屋敷?
ご家族がいらっしゃるはず……確か奥様と娘さんがいたと思う。知られないの?わかるわよね?
あんな変態の家族で幸せなのかしら?
窓から外を見ると結構な高さだ。
逃げ出すのは難しそう。
外は真っ暗だけど庭園は明かりが灯されていてとても幻想的な美しさだった。
危機に陥っているのに不思議に冷静だ。
のんびりと綺麗と思えるなんて。
なんとかこのロープを外して逃げ出さなきゃ。
誰かに助けを求めたいけど、私が連れ去られたことを知っているのはレイモンド殿下だけ。
夜会に訪れていないことがみんなにわかっても体調が悪く別の部屋で休んでいると殿下が言えば誰も疑わないだろう。
しばらくは私が連れ去られたことを誰にも気づかれない。
それは助けが来ないと言うこと。
あんな変態おじさんに私の大切な処女を易々と奪われるなんて絶対嫌!
それなら舌を噛んで死んでやる!!!
「ねぇ誰か?私……も、漏れそうなの!」
恥ずかしいなんて言ってられない!
ここは誰かに声をかけなきゃ!!
私は扉の向こうにいるであろう、誰かに声をかけた。
このロープをなんとか解いてもらわなきゃ!!
目は見開き唇は震える。
私の中でレイモンド殿下は絶対的に信用している人だ。
ずっと揶揄ったりふざけて私を弄ったりしてはいつも大笑いして……でも何かあると一番先に心配して声をかけてくれる。
たくさん仕事を振ってきて鬼上司!と何度叫んだか。
だけど隣にいると安心する人。
まだ恋心まではいかないけど、いつか彼を好きになってしまう……そんな気持ちが芽生え始めたところだった。
ああ、そっか……どうせ叶わない恋なのだから。
取引……信用していたのに裏切られ私を切り捨てて……でも…殿下からすれば自分の立場がうまくいけばいいのか……
私を宰相に渡してまで欲しいものとはなんなのだろう?
取引って何?
「ふはははっ、殿下に裏切られたと思っているのか?あのお方は元々冷淡な考えをお持ちだ。君の上司になったのは君を守るためでもあり、君からの信用を得るためでもあったんだ」
それは、どういうこと?
「君はあまり人を信用しない、だけど親しくなった者には心を開く、それも隙だらけらしいな。そこを殿下は狙ったんだ。私が君を欲しがっているのを知って殿下から提案してきた。
君を私に渡す代わりに王太子ではなく第二王子であるレイモンド殿下の後ろ盾になって欲しいと頼まれたんだ」
「レイモンド殿下は……王位を欲しているのですか?」
「殿下はとても優秀だ。王太子殿下に何かあればレイモンド殿下が王位につくことになる。そう何かあれば、わかるだろう?」
ニヤリといやらしく嗤う宰相の顔が気持ち悪い。
レイモンド殿下が本当にそんなことをお望みなの?
いつも兄である王太子殿下のことを話す時、とても尊敬しているのが手に取るようにわかった。
誇らしげに瞳をキラキラさせて王太子殿下の自慢話をいつもしていた。
『兄上のために僕はもっと政治のことやこの国のことを知らなければいけないんだ』
『他国との関係がもっと友好になれば我が国にとってメリットをもたらす。農作物の技術を交換し合えるし、新しい文化を取り入れることもできる。
我が国にはない作物も輸入できるし、我が国が誇る織物も他国へ高い値段で輸出できれば国が潤うことになる』
いつも殿下は国のことを民のことを考えていた。
私的感情で動く人ではない。
だからこそ信じられない。
「殿下は……兄である王太子殿下を尊敬しております。そんなことをするお方ではありません」
私は宰相を睨みつけるように言った。
「レイン嬢、君はどんな幻想を殿下に抱いているのか知らないが、人間はそんなに綺麗な生き物ではない。みんな目の前にある欲望に抗うことなんてできない、私利私欲に目が眩むのは人として致し方がないことだ」
「………信じません!」
「はっ、今からレイン嬢が体験すればそんな気持ちも綺麗さっぱり消えてなくなるよ」
そう言って宰相が私の腕を掴んだ。
ポケットに入れている小瓶を取ろうと手を動かした。なのに両手を掴まれ縄で縛られた。
どうしよう。カイさんがくれた小瓶をもっと早く取り出しておけばよかった。
宰相の話をムキになって訊いてしまった。
悔やみながらも縛られた両手をなんとか動かして縄を緩めようとした。
「無駄だ」
宰相は好色そうな目で舌をぺろっと出し唇を舐めた。
気持ち悪い、気持ち悪い。
嫌だ、すっごく嫌だ。見られるのも息がかかるのも嫌だ。
カイさん、助けてよ!
アレックス兄様、助けて!
いつも文句ばかり言うけど、キース兄様、たまにはかっこよく助けに来て!
デュオス兄様!お義父様!
もう、誰でもいいから助けて!!
いつも突っぱねて素直じゃないから誰も助けに来てくれないのかな。
宰相は両手を縛られた私を抱きかかえた。
気持ち悪い。その手が少しでも体に触れているのが嫌だ。
抱きかかえているのに、私の太ももを触った。
「やっ!やめて!!」
「ああ、暴れるな。今は何もしないよ。後でゆっくり君の処女をもらってあげるからね?しっかり気持ち良くなる薬を使って、もう逃げたくなくなるくらいたっぷりと可愛がってやるよ」
「や、やだ!!」
地下から上の部屋へと連れて行かれた。
抱きかかえられてある間、気持ち悪くて吐きそうになった。
吐けばよかったかしら?
ここはどこ?
よく見るととても豪華な部屋に連れて行かれた。手を縛られて入るけど足は何もされていないので自由に歩けた。
ブラウンの落ち着いた高級な家具に、白を基調とし繊細な刺繍が施されたとても美しいカーテン、ソファも高級な革で作られている。
ここは、宰相の屋敷?
ご家族がいらっしゃるはず……確か奥様と娘さんがいたと思う。知られないの?わかるわよね?
あんな変態の家族で幸せなのかしら?
窓から外を見ると結構な高さだ。
逃げ出すのは難しそう。
外は真っ暗だけど庭園は明かりが灯されていてとても幻想的な美しさだった。
危機に陥っているのに不思議に冷静だ。
のんびりと綺麗と思えるなんて。
なんとかこのロープを外して逃げ出さなきゃ。
誰かに助けを求めたいけど、私が連れ去られたことを知っているのはレイモンド殿下だけ。
夜会に訪れていないことがみんなにわかっても体調が悪く別の部屋で休んでいると殿下が言えば誰も疑わないだろう。
しばらくは私が連れ去られたことを誰にも気づかれない。
それは助けが来ないと言うこと。
あんな変態おじさんに私の大切な処女を易々と奪われるなんて絶対嫌!
それなら舌を噛んで死んでやる!!!
「ねぇ誰か?私……も、漏れそうなの!」
恥ずかしいなんて言ってられない!
ここは誰かに声をかけなきゃ!!
私は扉の向こうにいるであろう、誰かに声をかけた。
このロープをなんとか解いてもらわなきゃ!!
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