【完結】裏切られた私はあなたを捨てます。

たろ

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67話

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 レイモンド殿下のエスコートで馬車に乗った。馬車の中でレイモンド殿下は黙ったまま私の顔をじっと見つめた。

「殿下……どうなさいました?」

「………うん?あ……ああ……レイン、君はカイ殿にもらった小瓶はまだ持っているの?」

「知っていらっしゃったんですね。はい……お守りなのでずっと持ち歩いております」

 カイさんとレイモンド殿下は色々話をしているのかしら?

「うん、そっかぁ、迷わず身の危険を感じたら使うんだよ」

 とても優しく微笑む殿下の顔はなぜか少しだけ辛そうにみえた。

 どうしたんだろう………

 馬車の揺れがとても気持ちがいい。

 王城は侯爵家から馬車ですぐに着く。ただ、城内に入ってからの方が会場まで着くのに時間がかかる。

 朝から忙しなく準備に追われ疲れたのかしら?

 とても眠たい……ウトウトとしてはいけないのに……

 耳元で「レイン、ごめん」と聞き慣れた声が聞こえた。

 ごめんってなに?

 何もされていないのに……ただ、眠いだけ……











 冷たい。

 頬に冷たい水が落ちてきた。


 目を開けると真っ暗な……部屋?物置?よくわからないけどジメジメした床に寝かされていた。

「さ、寒い」

 薄いドレスしか着ていない。肌寒く、暗い部屋を目を凝らしてみた。

 窓はなくジメジメとした部屋は、おそらく地下ではないかと思われる。

 殿下はどうしているのだろう?

 今は……どのくらいの時間が経ったのだろう。

 怖いのに、なぜか冷静に今の状況を考えることができる自分がいた。

 カイさんに何度も何かあるといけないから気をつけろと言われていたからかしら?

 だけど……殿下は大丈夫なのかな?

 ここには今誰もいない。

「誰か……いませんか?」

 声が響いていた。やはり地下に閉じ込められているような気がする。

「寒い……」

 どうしよう、助けに来てくれそうな人はいないわよね。

 私の人生っていつもこんなふうに巻き込まれてばかりなのよね。

 リドラー伯爵もいなくなってカリーナ様に狙われることもなくなって少しだけ安心していたのに。

 殿下まで巻き込まれて、なんとお詫びしたらいいのかしら?

「はあ……これからどうしようかしら?」

 のんびりため息を吐きながらも暗さに目が慣れてきたので周りを観察した。

 頑丈な木の扉があるけど、何も置かれていない石で作られた地下室のようだ。

 換気用に壁に穴のようなものが空いていてそこから月明かりなのかほんの少し外の灯りが入ってきていた。

 何もない床に座り込んでいるとさらに体が寒くなる。

 仕方なく体を動かすことにした。

 柔軟体操をして少しでも体を温めていると扉を開ける音がした。

 灯のランプを持った男が数人現れた。

「ほお、元気なご令嬢だね」

 私の方へと灯りを向け、なんともいやらしい目つきで私の体をなめるように見た。

 気持ち悪い!!

 思わず声に出そうになるのをグッと堪えた。
 後ろにいる男たちもニヤニヤと笑っている。

 よく見ると一人の男は……

「え?嘘………貴方は……宰相…様?」

 どうしてここに?

 混乱する私に宰相は舐め回すようにいやらしい目でもう一度私を見た。

「驚いた顔も美しいな。最近はその紫の瞳を隠してしまってとても寂しいと思っていたんだ」

「な、何を……言ってるのですか?」

「ずっと君を私のコレクションとして欲しかったんだ。一度失敗してからはなかなか侯爵の守りが堅くて君を私のものにできなかったんだ」

「…………??」

「忘れたのかい?ああ、記憶をなくしたんだったな。あの馬車の事故で。
 君の両親は頭から血を流して死にかけていたな。君を隠そうとするからバチが当たったんだ、御者達がわざと馬車の事故を起こした。御者達は君の両親と兄上を殺して君だけは殺さなかった。それは私がそう命令したからだ。なのにあの男達は君を殺すか奴隷商に売ろうと考えた、顔を見られたから」

「…………どうして?なぜ両親を殺さないといけなかったの?」

 …………思い出した………
 私は……忘れていたことを全て思い出した。

 憎き男達のことを!

 あの大雨の日、御者のおじちゃんと知らないおじちゃん達が私を殺すか売ろうと言っていた。私が顔を見てしまったから。

 そこにやってきたのが、この男……宰相だった。そしておじちゃん達と揉めて周りにいた人たちがおじちゃん達を殴りつけ私を連れ去ろうとした。

 兄様は大怪我をしているのに、必死で止めようとして殴られた。

『にいさま!!』

 泣きじゃくる私は何もできなくて雨の中震えていた。にいさまに駆け寄ろうとしたけど阻止されて……私は絶望の中、意識朦朧となり……諦めて気を失った。

 その後お義父様に助けられた?



「必要だったのは紫の瞳を持った君だけだ、他は邪魔でしかなかった。なのに金を渡したのにあの男達は君に顔を見られたと怯んで慌てて殺すか売ろうと言い出した。ちょうど引き取りに行った私はそこで揉めてしまった。揉めさえしなければ君は私のものだった。すぐにあの男達を殺そうとしたんだが、そこにバイセム侯爵と騎士達がやってきたので仕方なく君を放置して身を隠したんだ」

「酷い……」

「何が酷い?君がその瞳を持って生まれたことの方が酷いことだろう?その瞳がどれだけの価値があると思っているんだ?バイセム侯爵のところの娘の瞳は多少魅力的だったが、何度か犯して仕舞えば面白みもなくつまらない娘だった」

 唾をぺっと吐き捨てた。

「そんな時本物の紫の瞳を持つ少女がモリス国にいると耳にした。そして私が攫った娘のバイセム侯爵家に身を隠すと聞いた。
 ははは、面白い話だろう?
 バイセム侯爵は私が自分の娘を攫って犯した犯人だと知らずに態々陛下に報告に来たんだ、セーラ・シトラーとデュオス・シトラーを匿うとね、セーラは紫の瞳を持つ少女なので何があっても守らなければいけないと言ってたんだ」

「貴方は狂ってるわ」

 腹が立った。なぜ?この男のせいで私の……人生は狂った。両親だって死ななくてすんだはずなのに……

「当たり前だろう?ずっと手に入れたくてなんとか手に入れようとしたのに、バイセム侯爵は君を常に守ってあまり外に出そうとしなかった。学園にいる間も君は隠れて護衛がつけられていた。手を出したくてもたくさんの学生がいるから攫うことができない、文官になって私の近くに来たんだ、やっと私のものにできると思ったらレイモンド殿下が君の上司として常にそばにいるし、外務部の奴らが君を守っていた」

 私はそんなに守られていたの?気づかなかった……お父様は私が狙われていたことはご存知だった、でも宰相のことは?

「今回はレイモンド殿下と取引をしたんだ」

「取引?殿下と?」

 どういうこと?

 私は……殿下に……嘘?どうして?





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