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66話
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「今度の王家の夜会に出席するんだって?」
レイモンド殿下が一人で昼食を食べていたら前の席に座ってきた。
「はい」
「ふうん、夜会とかに興味がないのかと思ってた」
「興味は……ありません」
「なのに?」
「お母様が心配されているんです。デビュタントもまだだと知って」
「え?それもしてないの?」
「まぁ、侯爵家から逃げてましたから」
なんとなく驚かれ過ぎて曖昧に答えた。
レイモンド殿下も私の事情は知ってるくせに大袈裟じゃない?
「エスコートは?」
エスコート………そんなの考えてなかったわ。
「…………」
「決まってないの?」
「ドレスはお母様がお揃いでと言ってましたけど」
「お揃い……夫人と?それ大丈夫?」
「もちろん全く一緒ではないですよ。同じ生地を使ってデザインは変える予定です」
「ああ、それはよかった。夫人が若作りするのも気持ち悪いけど、レインがおばさんドレスを優雅に着る姿を想像するのもちょっと……ね?」
そんなの勝手に想像しないでほしい。
ジトっと殿下を冷たい目で見てから視線を逸らし食べることに集中した。
もう勝手に想像でもなんでもすればいいわ。
さっさと食べて仕事に戻ろう。
「ねぇ、レイン、そのエスコートの相手、僕じゃだめかな?」
思わず食べるのをやめて殿下の顔を覗き込むようにみた。
「はっい??」
「うん、決めた。僕が君のエスコートをするよ。僕には婚約者はいないし、君は僕の部下だからね。理由としては変ではないでしょう?」
にこりと笑う殿下の笑顔は何か悪巧みでもしているようで怖い。
「あの……私、とりあえず参加したらさっさと帰るつもりなんですけど」
「えっ?だめだよ。僕と踊らないと、それに多分君の保護者を自認しているカイ殿も踊ると言い出すと思うよ。侯爵家に関しては……うん、君がどうしたいかだけどね?」
「………」
侯爵家とは微妙な空気だけど、多分以前よりはマシになってる。
「殿下……お気持ちだけで十分です」
「だめだよ、決定事項だから。君のデビュタント、少し遅れてしまったせいで周りの貴族に侮られては困るからね。君が遅れたのは優秀な文官で忙しい外務部での仕事のせいだから、華々しくデビューするのを王家も後押ししていることを示しておかないと!レイン、君の価値はとても重要で高いことを周りに周知させ戒めておかなければいけないんだ」
「そんな大袈裟な」
なんだか頭が痛くなりそう。
「君はとても優秀な文官なんだ。そして侯爵令嬢でもありモリス国の王族の血も引いているんだ」
「なんだか私ではない、別の人の話みたいですね」
苦笑していると殿下が大きな溜息をついた。
「レイン、いいかい?君は色々狙われていたんだ。まだ何があるかわからない。だからこそ君が王家と関わりがあること、そしてたくさんの人に守られていることを示しておく必要がある」
真剣な顔でレイモンド殿下に言われると流石に私自身も自分の今の状態を考えさせられた。
まだまだ何かある?
そういえばカイさんからも何かあった時はこれを使えと小さな小瓶を渡されていた。
今もお守りだと思ってポケットに忍ばせている。
カイさん曰く『魔法の薬』らしい。
「ありがとうございます。殿下のお手を煩わせることになりますがお願いしてもよろしいでしょうか?」
「もちろんだよ。ドレスは母君が作ってくれるのだったら僕は君にアクセサリーを贈ろう」
「それは……何かあるもので十分間に合います」
「うん、だけど、王子である僕のエスコートの相手が見窄らしいと困るからね」
「ひどい!そこまでへんな格好で出席しません!」
「わかってるよ!だけどぜひ贈らせてくれ。君のデビュタントの記念に、上司として、ね?いいだろう?」
結局殿下に甘えることになった。
エスコートのことは殿下の方から侯爵家に伝えてくれることになった…………のだけど。
アレックス兄様は「俺がエスコートするつもりだったのに」とかなりご機嫌斜めになっていた。
キース兄様も「なんでレイモンド殿下が?」とやはりご立腹のようで、私に手紙で文句を言ってきた。
無視無視!返事すらしなかった。
お義父様は「そうか……」とムスッとしていた。
三人ともそれぞれ自分がエスコートしようと思ってくれていたようだけど、言ってくれなきゃそんなことわからない。
私は「上司と参加します」と言い切ってなんとかその場をおさめた。
そして夜会の日は仕事をお休みして侯爵家へと朝から向かった。
ついてすぐにメイドのアリッサとミナが私の体を磨き上げてくれた。
昼食は「軽めにしておいてください」とあまり食べさせてもらえなかった。
コルセットで締め上げられドレスを着た。
髪の毛も高く結い上げられアップにして、髪飾りをつけた。殿下にいただいたネックレスと同じ宝石のヴァイオレットサファイアが使われている髪飾りでとても華やかで可愛らしい。
ネックレスももちろん金のネックレスにたくさんのヴァイオレットサファイアが使われていて………つけるだけで、首がおもたい。
うん、普段の生活だったら絶対身につけたくない重たさだわ。
ドレスのポケットにはカイさんからもらったお守りの小瓶も忍ばせた。
なんとなく、何かあったら……とつい不安になってしまった。
だってあまりにも順調に何事もなく過ごし過ぎているんだもの。
私の周りでは私にはわからないようにいつの間にか害を与えようとした人たちが捕まった。
話では聞いていても実はあまり実感がない。
知らない見えないところであまりにも手際良く捕まりいなくなった。
実感として感じるのはカリーナ様が私に関わってこなくなったことくらいなのだ。
そっと小瓶を握り「何もありませんように」と心の中で祈った。
そして準備が終わるころ両親と兄様二人が私の部屋に来た。
「レイン、とても綺麗よ」
「ああ」
「うん、レインは何を着ても綺麗だ」
「まぁ、いいんじゃない」
それぞれの感想を聞いて私はクスクスと笑った。
うん、感想もその人に合った感想の言葉だわ、とひとり笑いを堪えた。
そして応接室へ行くとレイモンド殿下がお迎えに来てくれていた。
「レイン、とても綺麗だよ」
レイモンド殿下は少し照れたように自分の顔を触り始め、私の髪飾りを見てから目を逸らした。
殿下が珍しい。
自分がプレゼントした宝石をつけていたから照れたのかしら?
レイモンド殿下が一人で昼食を食べていたら前の席に座ってきた。
「はい」
「ふうん、夜会とかに興味がないのかと思ってた」
「興味は……ありません」
「なのに?」
「お母様が心配されているんです。デビュタントもまだだと知って」
「え?それもしてないの?」
「まぁ、侯爵家から逃げてましたから」
なんとなく驚かれ過ぎて曖昧に答えた。
レイモンド殿下も私の事情は知ってるくせに大袈裟じゃない?
「エスコートは?」
エスコート………そんなの考えてなかったわ。
「…………」
「決まってないの?」
「ドレスはお母様がお揃いでと言ってましたけど」
「お揃い……夫人と?それ大丈夫?」
「もちろん全く一緒ではないですよ。同じ生地を使ってデザインは変える予定です」
「ああ、それはよかった。夫人が若作りするのも気持ち悪いけど、レインがおばさんドレスを優雅に着る姿を想像するのもちょっと……ね?」
そんなの勝手に想像しないでほしい。
ジトっと殿下を冷たい目で見てから視線を逸らし食べることに集中した。
もう勝手に想像でもなんでもすればいいわ。
さっさと食べて仕事に戻ろう。
「ねぇ、レイン、そのエスコートの相手、僕じゃだめかな?」
思わず食べるのをやめて殿下の顔を覗き込むようにみた。
「はっい??」
「うん、決めた。僕が君のエスコートをするよ。僕には婚約者はいないし、君は僕の部下だからね。理由としては変ではないでしょう?」
にこりと笑う殿下の笑顔は何か悪巧みでもしているようで怖い。
「あの……私、とりあえず参加したらさっさと帰るつもりなんですけど」
「えっ?だめだよ。僕と踊らないと、それに多分君の保護者を自認しているカイ殿も踊ると言い出すと思うよ。侯爵家に関しては……うん、君がどうしたいかだけどね?」
「………」
侯爵家とは微妙な空気だけど、多分以前よりはマシになってる。
「殿下……お気持ちだけで十分です」
「だめだよ、決定事項だから。君のデビュタント、少し遅れてしまったせいで周りの貴族に侮られては困るからね。君が遅れたのは優秀な文官で忙しい外務部での仕事のせいだから、華々しくデビューするのを王家も後押ししていることを示しておかないと!レイン、君の価値はとても重要で高いことを周りに周知させ戒めておかなければいけないんだ」
「そんな大袈裟な」
なんだか頭が痛くなりそう。
「君はとても優秀な文官なんだ。そして侯爵令嬢でもありモリス国の王族の血も引いているんだ」
「なんだか私ではない、別の人の話みたいですね」
苦笑していると殿下が大きな溜息をついた。
「レイン、いいかい?君は色々狙われていたんだ。まだ何があるかわからない。だからこそ君が王家と関わりがあること、そしてたくさんの人に守られていることを示しておく必要がある」
真剣な顔でレイモンド殿下に言われると流石に私自身も自分の今の状態を考えさせられた。
まだまだ何かある?
そういえばカイさんからも何かあった時はこれを使えと小さな小瓶を渡されていた。
今もお守りだと思ってポケットに忍ばせている。
カイさん曰く『魔法の薬』らしい。
「ありがとうございます。殿下のお手を煩わせることになりますがお願いしてもよろしいでしょうか?」
「もちろんだよ。ドレスは母君が作ってくれるのだったら僕は君にアクセサリーを贈ろう」
「それは……何かあるもので十分間に合います」
「うん、だけど、王子である僕のエスコートの相手が見窄らしいと困るからね」
「ひどい!そこまでへんな格好で出席しません!」
「わかってるよ!だけどぜひ贈らせてくれ。君のデビュタントの記念に、上司として、ね?いいだろう?」
結局殿下に甘えることになった。
エスコートのことは殿下の方から侯爵家に伝えてくれることになった…………のだけど。
アレックス兄様は「俺がエスコートするつもりだったのに」とかなりご機嫌斜めになっていた。
キース兄様も「なんでレイモンド殿下が?」とやはりご立腹のようで、私に手紙で文句を言ってきた。
無視無視!返事すらしなかった。
お義父様は「そうか……」とムスッとしていた。
三人ともそれぞれ自分がエスコートしようと思ってくれていたようだけど、言ってくれなきゃそんなことわからない。
私は「上司と参加します」と言い切ってなんとかその場をおさめた。
そして夜会の日は仕事をお休みして侯爵家へと朝から向かった。
ついてすぐにメイドのアリッサとミナが私の体を磨き上げてくれた。
昼食は「軽めにしておいてください」とあまり食べさせてもらえなかった。
コルセットで締め上げられドレスを着た。
髪の毛も高く結い上げられアップにして、髪飾りをつけた。殿下にいただいたネックレスと同じ宝石のヴァイオレットサファイアが使われている髪飾りでとても華やかで可愛らしい。
ネックレスももちろん金のネックレスにたくさんのヴァイオレットサファイアが使われていて………つけるだけで、首がおもたい。
うん、普段の生活だったら絶対身につけたくない重たさだわ。
ドレスのポケットにはカイさんからもらったお守りの小瓶も忍ばせた。
なんとなく、何かあったら……とつい不安になってしまった。
だってあまりにも順調に何事もなく過ごし過ぎているんだもの。
私の周りでは私にはわからないようにいつの間にか害を与えようとした人たちが捕まった。
話では聞いていても実はあまり実感がない。
知らない見えないところであまりにも手際良く捕まりいなくなった。
実感として感じるのはカリーナ様が私に関わってこなくなったことくらいなのだ。
そっと小瓶を握り「何もありませんように」と心の中で祈った。
そして準備が終わるころ両親と兄様二人が私の部屋に来た。
「レイン、とても綺麗よ」
「ああ」
「うん、レインは何を着ても綺麗だ」
「まぁ、いいんじゃない」
それぞれの感想を聞いて私はクスクスと笑った。
うん、感想もその人に合った感想の言葉だわ、とひとり笑いを堪えた。
そして応接室へ行くとレイモンド殿下がお迎えに来てくれていた。
「レイン、とても綺麗だよ」
レイモンド殿下は少し照れたように自分の顔を触り始め、私の髪飾りを見てから目を逸らした。
殿下が珍しい。
自分がプレゼントした宝石をつけていたから照れたのかしら?
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