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第14話「自由と忠誠」
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翌朝、宿のベッドで目を覚ましたミオは、まず自分の首に手をやった。 そこにあるはずの冷たく重い鉄の感触がない。 代わりに触れたのは、ガーゼが当てられた自分の温かい肌だけだった。
「……夢じゃないんだ」
彼女は窓から差し込む朝日を眩しそうに見つめた。 奴隷として捕まり、薄暗い地下牢や森の中を連れ回されていた彼女にとって、まともなベッドと朝日は遠い記憶の中のものだった。
扉がノックされ、俺が入室する。 手には食堂から運んできた朝食のトレーを持っていた。
「起きたか」
「あ……カズヤ」
ミオが慌てて身を起こそうとするが、まだ体が重いのかふらついた。
「無理に動くな。昨日の今日だ、体力は戻りきっていない」
「……平気だ。これくらい」
強がりを言うが、トレーから漂う焼きたてのパンとスープの香りに、彼女の鼻がピクピクと動く。 俺はサイドテーブルにトレーを置いた。
「食え。食わないと働けない」
「……いいの? こんなに」
「必要経費だ」
ミオはおずおずとパンを手に取り、一口かじった。 その瞬間、彼女の瞳孔が開く。あとは獣のような勢いだった。 スープを啜り、肉料理を平らげ、パンを水で流し込む。 見ていて気持ちのいい食いっぷりだ。
完食して一息ついたミオは、満足げに腹をさすり、それから居住まいを正して俺を見た。
「……美味かった。ありがとう」
「どういたしまして」
「それで、これから私はどうすればいい? 奴隷として働くのか? それとも……」
「勘違いするな」
俺は椅子に座り、足を組む。
「お前はもう奴隷じゃない。首輪は外れた。法的には逃亡奴隷のままだが、あの首輪がない以上、お前を縛る証拠はない。どこへでも好きなところへ行けばいい」
この世界では、奴隷の所有権は魔道具である首輪によって管理されている。それが破壊されれば、所有権の証明は不可能になる。 ミオは驚いた顔をした。
「自由……ってことか?」
「そうだ。森へ帰るなり、他の街へ行くなり好きにしろ」
俺は試すように言った。 もしここで去るなら、それまでの縁だ。だが、昨日の働きを見る限り、彼女はそんな選択をしないと確信していた。
ミオは自分の首を撫で、それから窓の外の青空を見た。 そして視線を俺に戻す。その瞳には、昨日までの怯えや不信感はなく、強い意志の光が宿っていた。
「……行かないよ」
「ほう?」
「あんたは、私の命を買い戻してくれた。あのままなら、私は野垂れ死ぬか、捕まって殺されていた」
彼女はベッドから降り、俺の前に立った。 そして、猫人族にとって最大の敬意を示す動作なのだろう、片膝をつき、自分の首筋を俺にさらけ出すように頭を垂れた。
「自由になったこの命、あんたのために使うよ。私の目も、耳も、この爪も、全部あんたの道具にしてくれ」
『道具』。 その言葉は、俺がサラやリーナに求めた役割そのものだった。 だが、ミオのそれは自虐ではない。自らの意思で選び取った、誇り高い決意表明だ。
「あんたの背中は、私が守る。あんたが敵を見つける前に、私が見つける。あんたが欲しいものは、私が先に見つけてくる」
「重い忠誠だな」
「嫌か?」
「いや、悪くない」
俺はインベントリから一冊の本を取り出した。 昨日、宝箱から入手した『スキル書:シャドウステップ』だ。
「なら、まずはこれを使え」
「これは……?」
「スキル書だ。使うと『シャドウステップ』を覚える。影に潜んで移動できる暗殺術だ」
ミオが目を見開く。 スキル書は高価だ。ましてや希少な暗殺系のスキルとなれば、金貨百枚でもきかないだろう。
「こ、こんな高いもの……私なんかに……」
「俺の道具になるんだろう? なら、切れ味は鋭い方がいい」
「……っ!」
ミオは震える手で本を受け取った。 そして、本を胸に抱きしめ、潤んだ瞳で俺を見上げる。
「分かった。絶対、強くなる。あんたの役に立つ、最高の斥候になってみせる」
彼女が本を開くと、ページが光となって彼女の体へ吸い込まれていった。 ステータスを確認する。
【名前:ミオ】
【スキル:隠密行动Lv4、罠解除Lv3、索敵Lv4、短剣術Lv3、夜目、シャドウステップLv1(New)】
完璧だ。 これで彼女は、敵陣の只中でも生存し、情報を持ち帰ることができるようになった。
「よし、準備ができたらギルドへ行くぞ。リーナとサラが待っている」
「うん! ……マスター」
ミオが呼び方を変えた。 少し照れくさそうに、でも嬉しそうに、彼女は俺の後に続く。 首輪の跡はまだ痛々しいが、彼女の足取りは羽が生えたように軽やかだった。
ギルド前の広場で、サラとリーナが待っていた。 俺たちの姿を見つけると、二人はパッと表情を明るくして駆け寄ってくる。
「ミオちゃん! 体はもういいの?」
「ご飯食べた? お腹空いてない?」
「う、うるさいな……。平気だよ。飯も食ったし」
ミオはぶっきらぼうに答えるが、尻尾が正直に揺れている。 サラがニカっと笑って、ミオの頭を鷲掴みにして撫で回した。
「よかったわねー! これで正式メンバーね! よろしく、ちっさいの!」
「頭撫でるな! あとちっさいって言うな!」
「はいはい。仲良くしましょうね」
リーナが苦笑しながら間に入る。 騒がしい連中だ。 だが、これで必要な駒は全て揃った。
前衛の『絶対防御』サラ。 後衛の『弾幕射手』リーナ。 遊撃の『影移動』ミオ。 そして、全ての急所を見抜き、最強の装備を供給する俺。
どんなダンジョンでも、どんなボスでも攻略できる体制が整った。 俺は空を見上げる。 アルディアの街の上空は、今日も澄み渡っている。
「行くぞ。今日はギルドで依頼を受ける」
「了解、マスター!」
三人の声が重なる。 俺の異世界攻略は、ここから加速する。 俺はこの世界にある全ての「欲しいもの」を、遠慮なく奪い尽くすつもりだ。 最強のパーティと共に。
「……夢じゃないんだ」
彼女は窓から差し込む朝日を眩しそうに見つめた。 奴隷として捕まり、薄暗い地下牢や森の中を連れ回されていた彼女にとって、まともなベッドと朝日は遠い記憶の中のものだった。
扉がノックされ、俺が入室する。 手には食堂から運んできた朝食のトレーを持っていた。
「起きたか」
「あ……カズヤ」
ミオが慌てて身を起こそうとするが、まだ体が重いのかふらついた。
「無理に動くな。昨日の今日だ、体力は戻りきっていない」
「……平気だ。これくらい」
強がりを言うが、トレーから漂う焼きたてのパンとスープの香りに、彼女の鼻がピクピクと動く。 俺はサイドテーブルにトレーを置いた。
「食え。食わないと働けない」
「……いいの? こんなに」
「必要経費だ」
ミオはおずおずとパンを手に取り、一口かじった。 その瞬間、彼女の瞳孔が開く。あとは獣のような勢いだった。 スープを啜り、肉料理を平らげ、パンを水で流し込む。 見ていて気持ちのいい食いっぷりだ。
完食して一息ついたミオは、満足げに腹をさすり、それから居住まいを正して俺を見た。
「……美味かった。ありがとう」
「どういたしまして」
「それで、これから私はどうすればいい? 奴隷として働くのか? それとも……」
「勘違いするな」
俺は椅子に座り、足を組む。
「お前はもう奴隷じゃない。首輪は外れた。法的には逃亡奴隷のままだが、あの首輪がない以上、お前を縛る証拠はない。どこへでも好きなところへ行けばいい」
この世界では、奴隷の所有権は魔道具である首輪によって管理されている。それが破壊されれば、所有権の証明は不可能になる。 ミオは驚いた顔をした。
「自由……ってことか?」
「そうだ。森へ帰るなり、他の街へ行くなり好きにしろ」
俺は試すように言った。 もしここで去るなら、それまでの縁だ。だが、昨日の働きを見る限り、彼女はそんな選択をしないと確信していた。
ミオは自分の首を撫で、それから窓の外の青空を見た。 そして視線を俺に戻す。その瞳には、昨日までの怯えや不信感はなく、強い意志の光が宿っていた。
「……行かないよ」
「ほう?」
「あんたは、私の命を買い戻してくれた。あのままなら、私は野垂れ死ぬか、捕まって殺されていた」
彼女はベッドから降り、俺の前に立った。 そして、猫人族にとって最大の敬意を示す動作なのだろう、片膝をつき、自分の首筋を俺にさらけ出すように頭を垂れた。
「自由になったこの命、あんたのために使うよ。私の目も、耳も、この爪も、全部あんたの道具にしてくれ」
『道具』。 その言葉は、俺がサラやリーナに求めた役割そのものだった。 だが、ミオのそれは自虐ではない。自らの意思で選び取った、誇り高い決意表明だ。
「あんたの背中は、私が守る。あんたが敵を見つける前に、私が見つける。あんたが欲しいものは、私が先に見つけてくる」
「重い忠誠だな」
「嫌か?」
「いや、悪くない」
俺はインベントリから一冊の本を取り出した。 昨日、宝箱から入手した『スキル書:シャドウステップ』だ。
「なら、まずはこれを使え」
「これは……?」
「スキル書だ。使うと『シャドウステップ』を覚える。影に潜んで移動できる暗殺術だ」
ミオが目を見開く。 スキル書は高価だ。ましてや希少な暗殺系のスキルとなれば、金貨百枚でもきかないだろう。
「こ、こんな高いもの……私なんかに……」
「俺の道具になるんだろう? なら、切れ味は鋭い方がいい」
「……っ!」
ミオは震える手で本を受け取った。 そして、本を胸に抱きしめ、潤んだ瞳で俺を見上げる。
「分かった。絶対、強くなる。あんたの役に立つ、最高の斥候になってみせる」
彼女が本を開くと、ページが光となって彼女の体へ吸い込まれていった。 ステータスを確認する。
【名前:ミオ】
【スキル:隠密行动Lv4、罠解除Lv3、索敵Lv4、短剣術Lv3、夜目、シャドウステップLv1(New)】
完璧だ。 これで彼女は、敵陣の只中でも生存し、情報を持ち帰ることができるようになった。
「よし、準備ができたらギルドへ行くぞ。リーナとサラが待っている」
「うん! ……マスター」
ミオが呼び方を変えた。 少し照れくさそうに、でも嬉しそうに、彼女は俺の後に続く。 首輪の跡はまだ痛々しいが、彼女の足取りは羽が生えたように軽やかだった。
ギルド前の広場で、サラとリーナが待っていた。 俺たちの姿を見つけると、二人はパッと表情を明るくして駆け寄ってくる。
「ミオちゃん! 体はもういいの?」
「ご飯食べた? お腹空いてない?」
「う、うるさいな……。平気だよ。飯も食ったし」
ミオはぶっきらぼうに答えるが、尻尾が正直に揺れている。 サラがニカっと笑って、ミオの頭を鷲掴みにして撫で回した。
「よかったわねー! これで正式メンバーね! よろしく、ちっさいの!」
「頭撫でるな! あとちっさいって言うな!」
「はいはい。仲良くしましょうね」
リーナが苦笑しながら間に入る。 騒がしい連中だ。 だが、これで必要な駒は全て揃った。
前衛の『絶対防御』サラ。 後衛の『弾幕射手』リーナ。 遊撃の『影移動』ミオ。 そして、全ての急所を見抜き、最強の装備を供給する俺。
どんなダンジョンでも、どんなボスでも攻略できる体制が整った。 俺は空を見上げる。 アルディアの街の上空は、今日も澄み渡っている。
「行くぞ。今日はギルドで依頼を受ける」
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