美醜逆転した異世界でおっさんは無自覚ハーレムを作ってしまう

仙道

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28.月光

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 彼らと別れると、私はメイドと車に乗り込んだ。

 窓から彼らが見えなくなるまで見送ってから、車を発車させた。

 ふと、彼が座っていた隣の席が気になって、反対側の窓を見るふりをして、その席に座りなおした。

 私は向かいに座るメイドの視線に気づいた。彼女は冷めた目でこっちを見ていたように見えたので、私は取り繕(つくろ)うようにいった。

「何よ、私はこっち側の景色が見たかったの」

 メイドが呆れたように答える。

「まだ何も言ってませんが。それに、これだけ暗いと何も見えないでしょう?」

 窓の外を見ると、日が暮れて辺りは暗くなってきていた。私は自分の顔が、沈み損ねた夕日のように赤くなっていくのを感じた。

……

 車を降りてから屋敷の門をくぐると、夜だというのに、屋敷も庭も、全てが輝いて見えた。

 私は寝る準備を終えてベッドに入った。ベッドに持ち込んだかばんを抱きしめて、取っ手の部分に頬ずりをした。

「クフ」

 今日彼が持ってくれていたそのカバンの中に、私のちっぽけな人生が詰まっているような気がした。

 カバンを抱きながら、何となく、窓の外の夜空を見上げた。

 満月だった。

 その周りの空が、なんとなく白ずんだようになっているのを、私は上気した頭を冷ますように、ぼーっと眺めていた。

「柴田様……」

 彼と初めて会った夜のことを思い出していた。夜なのに、あの月よりもずっと明るいものがそこにはあって、次の夜も、その次の夜も、どんな暗闇だって、彼に出会う前の昼よりもずっと明るく感じたんだ。

 もし彼に会ったのが本当に昼だったとしたら、彼とうっかりぶつかることもなかったし、話すこともできなかったかもしれない。

……ううん、きっと、それだけじゃない。

 村の子供たちにいじめられてなければ、あんなに魔術を勉強することもなかっただろう。
 教会に追われていなければ、冒険者になることも、この街に来ることもなかっただろう。

 まるで何かに導かれるように。

 私はそうやって、今までのつらい人生をひとつひとつ思い出していった。
 頼れるものもいないのに、私に向けられる負の感情に、そして自分自身の負の感情に、押しつぶされそうな毎日だった。
 何もかもが、漆黒のように塗りつぶされた人生。

 でも、今はその全てが愛おしい。

「そんなことはない、ロゼマリアはとても綺麗だ」

 想像したことすらなかった、魔法みたいな言葉。
 私が期待していたのなんて、せいぜい、「頑張ったね」とか、「偉いね」とか、そんな安っぽくて、暖かい言葉。そんな言葉ですら、「死の魔女」にかけようなんて人は、今まで一人もいなかった。

 でも彼は言ったんだ。
 まるで、こうなることが、出会う前からわかってたみたいに。
 これが生きる喜びなんだって、最初から決まってたみたいに。

……そうだよ。

 きっとこの光が、夜の闇に濡れた私の人生を、何よりも輝かせてくれるんだ。
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