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7.2日目
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翌朝、俺は家を出て学校に向かっていた。
(いじめを何とかすると言ったって、どうすればいいんだ)
学生時代、自分に対するいじめも何とかできなかったことを思い出した。
(うまくいくとは思えないが……昨日川村さんの家に招待されたし、やるしかないか)
しかし、考えがまとまらない内に、学校についてしまった。
(まだ何もアイデアがない……)
まだ始業まで時間があったので、校舎の周りをうろつきながら考えてみることにした。
(それに、女子グループと仲良くできなければ、いじめを止めたって楽しくはならないんじゃないか。川村さんは見た感じ貧乏だし、いじめがなくなったところで貧乏じゃなくなる訳でもないしな)
この問題の難しさを考えたところで、校舎裏の花壇にくると、水やりをしている短髪の女子生徒がいた。
(おっ?この子もかなり美人だな……。この学校には何人も美人がいるのか)
向こうが俺に気づいた。
「お、おはようございます……」
俺がそういうと、彼女はじょうろから水を流しながらじっとこっちを見ていた。しばらくその姿勢だったので、
「あの、水、出てるけど」
というと、彼女は、慌てて花壇の方を見て、水を止めた。そして、またこっちを向くと怒ったように言った。
「何か用ですか?」
俺は彼女の怒っている様子に驚いて、
「なっ、何でもないよ……」
と返した。
「そうですか」
彼女はまた花壇に向き直って水やりを始めたので、俺もその場を去ることにした。
(先輩かな?)
学生証を見たときに、俺は2年生だった。彼女はクラスの人よりも大人びた雰囲気だったので、3年生かもしれない。
(そろそろ教室に行くか)
……
「ひろPおっはよー」
隣の席の糸洲がテンションが高めに挨拶してきた。
(同族が転校してきてうれしいということなのだろうか。迷惑な話だ。)
俺はそう思いながら、チラっと川村さんの席の方を見た。すると川村さんもこっちを見ていたが、俺が見たのに気付くと目をそらしてタブレットの方を見てしまった。
(こっちを向いてたのは、いじめに対して何かしろってことなんだろうが、まだ何も思いついてないんだよな)
そう考えていると、女子が小声で言ってくる。
「カワブ、まだひろP狙ってるんじゃない?あんまり困ったらセクハラって先生に言った方がいいよ」
「え?……ま、まあ、困ったらな」
俺は言い返すこともできず、ただうなずくことしかできなかった。
「そういえば、昨日の動画見た?」
「え?」
「グループチャットに上がってるよ」
「何が?」
そういわれて俺は自分の電話でSNSを開き、クラスのグループチャットにある動画を見た。そこには、川村さんの告白シーンが映っていた。
「え……」
「かわいそうだよね。一生晒(さら)されるんじゃない」
そういってその女は笑った。
(かわいそうって思ってたら笑わないよな)
「これって、消す方法とかないの?」
「消せないよ。それに多分皆保存してるし」
「そ……そうだよな」
(消せないのか。保存……もできるのか。)
それを聞いた俺は、自分もその動画を保存しようと思った。……だって、川村さんに自分が告白されているシーンは何回も見たいから。
俺は休憩時間中、トイレに行ったときに、震える手でその動画を自分の電話に保存した。
(俺って、最悪だな。いじめをなくすどころか、彼女がいじめられている様子を保存するなんて。でも、消せないんだから仕方ないよな)
自分にそんな言い訳をしながら、グループチャットの参加者を見てみたが、クラスの人はほとんど入っているのに、やはり川村さんの名前はなかった。
(いじめを何とかすると言ったって、どうすればいいんだ)
学生時代、自分に対するいじめも何とかできなかったことを思い出した。
(うまくいくとは思えないが……昨日川村さんの家に招待されたし、やるしかないか)
しかし、考えがまとまらない内に、学校についてしまった。
(まだ何もアイデアがない……)
まだ始業まで時間があったので、校舎の周りをうろつきながら考えてみることにした。
(それに、女子グループと仲良くできなければ、いじめを止めたって楽しくはならないんじゃないか。川村さんは見た感じ貧乏だし、いじめがなくなったところで貧乏じゃなくなる訳でもないしな)
この問題の難しさを考えたところで、校舎裏の花壇にくると、水やりをしている短髪の女子生徒がいた。
(おっ?この子もかなり美人だな……。この学校には何人も美人がいるのか)
向こうが俺に気づいた。
「お、おはようございます……」
俺がそういうと、彼女はじょうろから水を流しながらじっとこっちを見ていた。しばらくその姿勢だったので、
「あの、水、出てるけど」
というと、彼女は、慌てて花壇の方を見て、水を止めた。そして、またこっちを向くと怒ったように言った。
「何か用ですか?」
俺は彼女の怒っている様子に驚いて、
「なっ、何でもないよ……」
と返した。
「そうですか」
彼女はまた花壇に向き直って水やりを始めたので、俺もその場を去ることにした。
(先輩かな?)
学生証を見たときに、俺は2年生だった。彼女はクラスの人よりも大人びた雰囲気だったので、3年生かもしれない。
(そろそろ教室に行くか)
……
「ひろPおっはよー」
隣の席の糸洲がテンションが高めに挨拶してきた。
(同族が転校してきてうれしいということなのだろうか。迷惑な話だ。)
俺はそう思いながら、チラっと川村さんの席の方を見た。すると川村さんもこっちを見ていたが、俺が見たのに気付くと目をそらしてタブレットの方を見てしまった。
(こっちを向いてたのは、いじめに対して何かしろってことなんだろうが、まだ何も思いついてないんだよな)
そう考えていると、女子が小声で言ってくる。
「カワブ、まだひろP狙ってるんじゃない?あんまり困ったらセクハラって先生に言った方がいいよ」
「え?……ま、まあ、困ったらな」
俺は言い返すこともできず、ただうなずくことしかできなかった。
「そういえば、昨日の動画見た?」
「え?」
「グループチャットに上がってるよ」
「何が?」
そういわれて俺は自分の電話でSNSを開き、クラスのグループチャットにある動画を見た。そこには、川村さんの告白シーンが映っていた。
「え……」
「かわいそうだよね。一生晒(さら)されるんじゃない」
そういってその女は笑った。
(かわいそうって思ってたら笑わないよな)
「これって、消す方法とかないの?」
「消せないよ。それに多分皆保存してるし」
「そ……そうだよな」
(消せないのか。保存……もできるのか。)
それを聞いた俺は、自分もその動画を保存しようと思った。……だって、川村さんに自分が告白されているシーンは何回も見たいから。
俺は休憩時間中、トイレに行ったときに、震える手でその動画を自分の電話に保存した。
(俺って、最悪だな。いじめをなくすどころか、彼女がいじめられている様子を保存するなんて。でも、消せないんだから仕方ないよな)
自分にそんな言い訳をしながら、グループチャットの参加者を見てみたが、クラスの人はほとんど入っているのに、やはり川村さんの名前はなかった。
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