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第4話 ベルーガでの朝。

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翌朝、久しぶりにゆっくり体を休める事ができたおかげか体がとても軽い。

昨日たくさん泣いてしまったから、目が腫れていないか心配だったが...鏡を見てみるが腫れていない。良かった。

さすがに泣き腫らした顔で国王様にご挨拶とか嫌だもんね。

部屋の中をキョロキョロ見回していると、ドアをノックする音が聞こえてきた。

返事をすると、たくさんの侍女らしき女性が部屋に入ってきた。

「 おはようございますアンジェリーナ様。本日よりアンジェリーナ様の侍女を務めます、侍女長のマルタと申します。この者達はアンジェリーナ様担当の侍女でございます。侍女一同を代表いたしまして、マルタがご挨拶申し上げます。」

侍女長のマルタが、侍女一同を代表して挨拶を述べた。

そして、マルタが頭を深く下げ、一礼すると...マルタに続き、侍女達が皆深く頭を下げた。


「これより国王陛下に謁見する為の準備を致します故、アンジェリーナ様の御身に触れる許可を頂けますでしょうか?」

さすが王城の侍女...礼儀正しい。

私なんて...アレンフラールの王太子に見向きもされなかった哀れな元婚約者なのに..。
それに追われる厄介者でしかないのに。

こんなに最高な待遇を受けて、私は...この国の為に何かお返しできるだろうか?

「許可します。こんな私の為に、朝早くからありがとうございます。よろしくお願いします。あまり硬い口調は苦手なのでもう少し気軽に声をかけて貰えると嬉しいです。」

私がニコリと微笑むと、侍女達の数人がヘナヘナと座り込んでしまった。

( なんて美しい笑顔。なんてお優しい方なのかしら...。お辛い思いをされて傷ついていらっしゃるのに、私達にまで心配りを...なんて健気でお優しいお方なのかしら..。)

( これは我が城の威信にかけてアンジェリーナ様を美しく着飾らせなければ...!アンジェリーナ様の美しさを皆に知らしめるわよ!!)

侍女達のやる気に火を着けたことにアンジェリーナは全く気付いていなかった。

香油を混ぜた湯が張られたバスタブで体中を磨かれる。
湯から上がると念入りにマッサージされる。

そして、化粧品やクリームで全身余すとこなく、入念な手入れがなされた。

体中から良い香りがする。

とても良い香りの香油ね。

血行も良くなり体がぽかぽかする...。

我が家の侍女も素晴らしかったが、ベルーガの侍女の技術はもっと素晴らしかった。

悲しいことに、アレンフラールの王城では王太子が私を冷遇していたせいなのか、侍女は全く私に見向きもせず...自分の身支度は自分でこなしていた。

こんな手厚い対応はされたことがなかったのである。

そして今は、絶賛お着替え中。
侍女達はこっちの宝飾品が良いのではないか?この髪型が良いのではないか?と張り切っており、私は人形のように着飾らされていた。

用意されたドレスは、ふんわりとしたレースと花をモチーフにしたプリンセスラインのオフショルダーのドレスだった。

私の白銀の髪と、空色の瞳に合うアイスブルーのドレス。
どう見てもとんでもない高級なドレスであろう。

こんなに至れり尽くせりで、私は段々不安になってくる。

私など...こんな待遇を受けられる身ではないのに。

支度が終わる頃、侍女が支度が終わったと知らせに行った。

鏡を見ると、どこぞのお姫様のような女性が立っていた。


えっ...?これが私!?

侍女により磨き上げられたその姿はまるで別人の様だった。

「こんなに美しく磨き上げてくれてありがとう。」

私は微笑み、侍女達に声をかける。
侍女達はとても誇らしげにニッコリした笑顔を浮かべた。

しばらくするとノックする音が聞こえる。

返事をすると、騎士が3名入って来た。

昨日の緑髪の騎士様と、茶色の髪の騎士様、赤髪の顔に傷がある騎士様だった。

「アンジェリーナ様おはようございます。本日よりアンジェリーナ様の護衛騎士を務めます、レイナート・フリューゲルです。」

緑髪の騎士様は、レイナート様。

昨日、私のエスコートをしてくれた騎士様ね。

とても紳士的で知的な雰囲気の騎士様。とても礼儀正しい。
たぶん...身分がお高い方ではないかしら?

「姫さん昨日ぶりだな?俺はレイトン・アルガード。今日から姫さんの護衛騎士担当だからよろしくな!」

茶色髪の騎士レイトンは、二人の騎士からまた殴られていた。

彼はとても気さくな方みたい。

人懐こい感じで大型犬みたいね。
なんだかとても憎めない感じ。

私は思わずクスクスと笑ってしまった。

「レイトン様はそのままで構いません。その方が私も気が楽なので、どうかそのままで。」

二人の騎士は頭を下げるが、レイトンはガハハと笑っていた。

あんまり堅苦しいと疲れてしまうから...1人くらいはレイトン様くらい気さくな方がいるとほっとするのよね。

「アンジェリーナ様おはようございます。私は、ギルガー・ロトリクスと申します。本日より護衛騎士を務めさせて頂きます。よろしくお願い致します。」

赤髪の顔に傷のある騎士様はギルガー様。
見た目は厳ついけど、とても優しそうな笑顔で礼儀正しい。

大きな熊さんみたいで身長は大きいけど....全然怖い感じはしない。とても紳士的な優しい方ね。

「朝早くからありがとうございます。よろしくお願いします。」

ニコリと微笑むと、レイトンが昨日同様に蹲った。

( 今日ただでさえ可愛いのに...笑顔ヤバい。萌え死ぬ...。)

レイトンの行動に頭をかかえる二人の騎士様。

騎士様としてはいけない行動なんだろうけどなんだか本当に憎めない方ね。

それに竜騎士様で、たぶん私担当の騎士様達...。
竜騎士の中でも、相当な腕前の騎士様であると思う。

これだけ国賓級の扱いをされれば嫌でも気づいてしまう。

これだけ手を尽くされるととても不安になるわ。

何もお返し出来ていないのが、とても不甲斐ない。


不安になりつつも、とうとう国王陛下との謁見の時間は来てしまった。



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