トゥーリとヌーッティ<短編集>

御米恵子

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トゥーリの片想い

1.リュリュのため息

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「はぁ……。片想いって切ないですわ」
 窓縁に腰掛けているオコジョ姿の雪の精霊リュリュは、窓から外の風景を眺めながら、周囲に聞こえるように呟いた。
 冬のある日の正午過ぎ。
 アキの部屋にはリュリュと、赤リス姿の風の精霊アレクシと小熊の妖精ヌーッティの三人がいた。トゥーリは、一階で遅めの昼食の支度をしているアキの手伝いをしているため部屋にはいなかった。
 窓の外、リュリュの視線の先には仲睦まじく手を取って歩いているカップルが一組いた。羨ましそうにカップルを見ているリュリュの側へ、ふわりと宙を飛んで赤リス姿の風の精霊アレクシがやってくる。
 アレクシはこほんと咳払いを一つすると照れながらリュリュに声をかける。
「どうかな。僕とデー……」
「結構です」
 リュリュはアレクシの言葉を遮って、申し出であろうそれを断った。
 うな垂れるアレクシの元へ、ビスケットを頬張っていたヌーッティが食べかすを床に撒き散らしながらやってくる。
 ヌーッティはアレクシの肩をぽんっと叩いた。
「しかたないヌー。リュリュはトゥーリが好きなんだヌー」
 ヌーッティの発言にリュリュは頬を赤く染め、
「やめてください! そんなにはっきり言われると照れてしまいますわ!」
 恥ずかしそうな挙動で、ばしっとヌーッティの背中をぶっ叩いた。
 ヌーッティは困惑した面持ちで、もじもじしているリュリュを見やった。そして、言ってはいけないーーアレクシでさえも気づいていながら口にしないあの一言を言ってしまう。
「でも、トゥーリはアキが好きなんだヌー」
 リュリュの動きがぴたりと止まる。
 リュリュの雰囲気の変化にヌーッティでさえも気がついた。
 その表情はおぞましい顔つきへと変貌していた。
「アキ? あの居候の人間のことでしょうか?」
 鼻息荒いリュリュの威圧感に気押されて、ヌーッティは一本後退る。
「い、いそうろうじゃなくて友だちだヌー。トゥーリはアキのことが……ふごぅ⁈」
 アレクシがヌーッティの口を手で塞いだ。
 リュリュは両手の鋭利な爪を出した。
「……ぶっ刺す」
 素早い動きで、ヌーッティとアレクシが止める間もなく、リュリュはドアへと駆けていく。そこへ、
「ごめん、遅くなった。お昼ごはんにしよう」
 ドアを開けてアキが部屋へ入ってきた。
 走っているリュリュがアキの顔面めがけてジャンプする。
「覚悟!」
 リュリュの鋭い爪がアキに迫る。
 その時、
「リュリュ! 危ないよ! どいて!」
 アキの肩からひょこっとトゥーリが顔を出した。
 リュリュの瞳にトゥーリが映るやいなや、リュリュは身体を捻って華麗に宙を舞い、床に着地した。
「トゥーリ様。お待ちしておりましたわ」
 にっこりと微笑んでトゥーリを見る。
「いきなり飛びつくのは危ないよ。アキ、みんなのごはん持ってきてるんだし」
「そうですわね。気をつけなくちゃ。リュリュったらいけない子」
 そう言ってリュリュは両頬を両手でぱんと叩いた。出していた爪を隠しながら。そして、ちらとアキを見ると、鋭い目つきで舌打ちをした。
 その光景を怯えながら見ていたヌーッティとアレクシは予感した。今日、何かが起こると。他方、襲いかかられそうになったアキも嫌な予感を抱いたのであった。
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