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序章 英国フォルティア学院

一皮向けたら…

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「ふ…っう、…ッ!ク、クリフェイド…っっ」



「お父さん…」

だけど、彼を放って置けなくて…


お父さんの袖を引っ張る。



「ケイは… 優しいね。彼は可哀想な人だよ、本当に‥。彼が叫んでいる『クリフェイド』という子供はもういないのにね…。だって、彼は…

――…自分の子供の言葉に耳を傾けなかった。信じなかったばかりに、追い詰められて彼の子供は… いなくなってしまったんだよ。まったく、可哀想な話だよ。彼が他人の子供の戯言なんかを信じるばかりにあの子に耳を向けなかったばかりに… 本当に酷い話だ」



彼にも聞こえるように、そう話すお父さんは…


口の端を吊り上げていた。



それを見て、お父さん… 否、この人が少し怖いと思った。
思わず、ほんの一瞬ビクッ!と僕の体が震えたことに気づいたのだろうお父さんは僕にもそのまま酷薄の瞳を向ける…


「おや、どうしたんだい?体が震えているようだが… あぁ!もしかして、寒いのかな?」

ヒクッと表情が引き攣る。


僕は確かにお父さんというものを知らない。ずっと欲しいと思っていた『お父さん』。街中で仲良さそうな親子連れを見る度に羨ましく見ていた僕…

だけど、


この人を基準として考えるなら、お父さんという存在はもしかしたら僕が想像していたのより、ずっと… 怖い存在なのかもしれない。さっきも和かに笑っていたけれど、街中の親子連れも仲良さそうにしていたけれど、

一皮向けたら、きっとこんな感じになるのだろうか。


だとしたら、僕はずっと羨ましく思っていたものは何だったのか…。僕は勘違いしていたのかもしれない。

『お父さん』というものはきっと怖い存在に違いない!!←



――‥ こうして、ウィンディバンクの知らぬ間に、『親子』という溝がさらに深まっていたことなど、当の本人は知る由もなかった。

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