36 / 38
- ファンタジア王国と王都フィル -
古代魔法と疑惑の眼差し
しおりを挟む
「……それにしても、軽すぎる」
見目麗しいエルフ様はそう言ってその端正な眉をひそめた。
家では何も食べさせてもらえないのか?と言われて慌てて首を振る。
「ち、ちが…!残飯だけど、コックに貰って…」
言ったのがまずかったのかもしれない。
「アクラス家ではご飯も満足に食べさせて貰えないのか?」
自分がやったしまった失態にサッと青ざめる。
「…まだ顔色が悪いな。なにを勘違いしているか想像するに容易いが、別にお前に怒っているわけじゃない」
「え?」
「いや、なんでもない。気にするな」
もしかして、実は… いい人?
「……あの、自分で歩けます」
「その脚でか?」
さっき、派手に転んだだろう?と言われて初めて足から血が出ていることに気が付いた。
ズキズキと急に痛み出す脚の怪我に顔をしかめていると、クラウド様はふぅ、と小さく息を吐いて僕の傷口にそっと手を翳し、
『щпожЫЭЖξδεζι――… 』
「(これは… 古き言葉!)」
エルフの言葉とは違う古代魔法の詠唱に目をぱちくりとさせる。淡く光がその手の平から放たれると瞬く間に傷口が塞がっていて…
「どうだ?」
「痛くない…です」
「あ、ありがとうございます」
古代魔法は今、この世界では失われつつある文明の一つである。…というのも、その名のとおり、古き時代に使われていた魔法が主であり、今現在使われている現代魔法よりも遥かに力が凌ぐからだ。
遥か昔の大戦により、多くの書物が焼失した…。その多くのものが古代魔法の禁術書だと聞く。それにより、師から弟子へと口伝による方法で… ごく一部の、限られた者にしか伝わっていないそれはまさしく秘術に近いものだった。そしてそれは大抵、精霊が視える者で・・・
それは即ち、
(く…っ!)
そう、不本意ながら私にも扱えるんです…!それも、師もいないというのに、何の因果か、頭にスラスラと知識が入っていて… 本当この世界の神様の嫌がらせとしか思えません!!
ただでさえ、魔法が使えるというのが厄介な上に、精霊まで視える… あげく、限られた者しか扱えることが出来ない古代魔法を扱えるということが公にバレてしまったら… 破滅です!!!身の破滅という未来しか見えないんですがっっ!!
それに、あの根の腐った親にこれがバレてしまえばどんな悪事に利用されるか、たまったものじゃありません!!だから、ずっと魔法を使えることを隠してきました。練習も周りに人がいないことを確認した上でやってきましたが、ハッキリ言ってその練習も必要性が感じられないほど自分で言うのもあれですが、完璧で…
だから、エルフが、クラウド様が古代魔法を使っているのを目の当たりにしても特に驚きもなにも感じませんでした。
…そう、それが、
「古代魔法を見ても大して驚かないんだな?」
まさか自分の未来をある意味、変えることになるだなんて… 誰も思わないじゃないですか!
「え、っ」
ハッとして自分の犯した失態にようやく気づく。
「普通の人間は古代魔法を使えない。目の前で見せても驚かないなんて大したものだな」
「え、あっ…!お、驚いて声が出なかったんです!!その魔法は使える人がいないという話なのに、目の前でお目に掛かれるなんて…」
慌てて苦し紛れに咄嗟に思いついた私の言い訳に、気のせいでしょうか… エルフ様のその瞳が何もかもを見抜くように細く細められたのは──。
……どうしてか。このとき、嫌な予感が背中を駆け抜けた。
見目麗しいエルフ様はそう言ってその端正な眉をひそめた。
家では何も食べさせてもらえないのか?と言われて慌てて首を振る。
「ち、ちが…!残飯だけど、コックに貰って…」
言ったのがまずかったのかもしれない。
「アクラス家ではご飯も満足に食べさせて貰えないのか?」
自分がやったしまった失態にサッと青ざめる。
「…まだ顔色が悪いな。なにを勘違いしているか想像するに容易いが、別にお前に怒っているわけじゃない」
「え?」
「いや、なんでもない。気にするな」
もしかして、実は… いい人?
「……あの、自分で歩けます」
「その脚でか?」
さっき、派手に転んだだろう?と言われて初めて足から血が出ていることに気が付いた。
ズキズキと急に痛み出す脚の怪我に顔をしかめていると、クラウド様はふぅ、と小さく息を吐いて僕の傷口にそっと手を翳し、
『щпожЫЭЖξδεζι――… 』
「(これは… 古き言葉!)」
エルフの言葉とは違う古代魔法の詠唱に目をぱちくりとさせる。淡く光がその手の平から放たれると瞬く間に傷口が塞がっていて…
「どうだ?」
「痛くない…です」
「あ、ありがとうございます」
古代魔法は今、この世界では失われつつある文明の一つである。…というのも、その名のとおり、古き時代に使われていた魔法が主であり、今現在使われている現代魔法よりも遥かに力が凌ぐからだ。
遥か昔の大戦により、多くの書物が焼失した…。その多くのものが古代魔法の禁術書だと聞く。それにより、師から弟子へと口伝による方法で… ごく一部の、限られた者にしか伝わっていないそれはまさしく秘術に近いものだった。そしてそれは大抵、精霊が視える者で・・・
それは即ち、
(く…っ!)
そう、不本意ながら私にも扱えるんです…!それも、師もいないというのに、何の因果か、頭にスラスラと知識が入っていて… 本当この世界の神様の嫌がらせとしか思えません!!
ただでさえ、魔法が使えるというのが厄介な上に、精霊まで視える… あげく、限られた者しか扱えることが出来ない古代魔法を扱えるということが公にバレてしまったら… 破滅です!!!身の破滅という未来しか見えないんですがっっ!!
それに、あの根の腐った親にこれがバレてしまえばどんな悪事に利用されるか、たまったものじゃありません!!だから、ずっと魔法を使えることを隠してきました。練習も周りに人がいないことを確認した上でやってきましたが、ハッキリ言ってその練習も必要性が感じられないほど自分で言うのもあれですが、完璧で…
だから、エルフが、クラウド様が古代魔法を使っているのを目の当たりにしても特に驚きもなにも感じませんでした。
…そう、それが、
「古代魔法を見ても大して驚かないんだな?」
まさか自分の未来をある意味、変えることになるだなんて… 誰も思わないじゃないですか!
「え、っ」
ハッとして自分の犯した失態にようやく気づく。
「普通の人間は古代魔法を使えない。目の前で見せても驚かないなんて大したものだな」
「え、あっ…!お、驚いて声が出なかったんです!!その魔法は使える人がいないという話なのに、目の前でお目に掛かれるなんて…」
慌てて苦し紛れに咄嗟に思いついた私の言い訳に、気のせいでしょうか… エルフ様のその瞳が何もかもを見抜くように細く細められたのは──。
……どうしてか。このとき、嫌な予感が背中を駆け抜けた。
47
あなたにおすすめの小説
メインキャラ達の様子がおかしい件について
白鳩 唯斗
BL
前世で遊んでいた乙女ゲームの世界に転生した。
サポートキャラとして、攻略対象キャラたちと過ごしていたフィンレーだが・・・・・・。
どうも攻略対象キャラ達の様子がおかしい。
ヒロインが登場しても、興味を示されないのだ。
世界を救うためにも、僕としては皆さん仲良くされて欲しいのですが・・・。
どうして僕の周りにメインキャラ達が集まるんですかっ!!
主人公が老若男女問わず好かれる話です。
登場キャラは全員闇を抱えています。
精神的に重めの描写、残酷な描写などがあります。
BL作品ですが、舞台が乙女ゲームなので、女性キャラも登場します。
恋愛というよりも、執着や依存といった重めの感情を主人公が向けられる作品となっております。
転生したら最強辺境伯に拾われました
マンスーン
BL
現代日本人・東堂裕太が目を覚ますと、そこは異世界。クズな婚約者に魔力を限界まで搾取され、ボロボロになって森に捨てられる悲惨な青年・ルカに転生していた。
死を覚悟した裕太だったが、そんな彼を拾い上げたのは、帝国最強の武力を誇り「氷の死神」と恐れられる辺境伯・ラーク。
聞いてた話と何か違う!
きのこのこのこ
BL
春、新しい出会いに胸が高鳴る中、千紘はすべてを思い出した。俺様生徒会長、腹黒副会長、チャラ男会計にワンコな書記、庶務は双子の愉快な生徒会メンバーと送るドキドキな日常――前世で大人気だったBLゲームを。そしてそのゲームの舞台こそ、千紘が今日入学した名門鷹耀学院であった。
生徒会メンバーは変態ばかり!?ゲームには登場しない人気グループ!?
聞いてた話と何か違うんですけど!
※主人公総受けで過激な描写もありますが、固定カプで着地します。
他のサイトにも投稿しています。
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい
翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。
それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん?
「え、俺何か、犬になってない?」
豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。
悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼不定期連載となりました。
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
白いもふもふ好きの僕が転生したらフェンリルになっていた!!
ろき
ファンタジー
ブラック企業で消耗する社畜・白瀬陸空(しらせりくう)の唯一の癒し。それは「白いもふもふ」だった。 ある日、白い子犬を助けて命を落とした彼は、異世界で目を覚ます。
ふと水面を覗き込むと、そこに映っていたのは―― 伝説の神獣【フェンリル】になった自分自身!?
「どうせ転生するなら、テイマーになって、もふもふパラダイスを作りたかった!」 「なんで俺自身がもふもふの神獣になってるんだよ!」
理想と真逆の姿に絶望する陸空。 だが、彼には規格外の魔力と、前世の異常なまでの「もふもふへの執着」が変化した、とある謎のスキルが備わっていた。
これは、最強の神獣になってしまった男が、ただひたすらに「もふもふ」を愛でようとした結果、周囲の人間(とくにエルフ)に崇拝され、勘違いが勘違いを呼んで国を動かしてしまう、予測不能な異世界もふもふライフ!
穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜
春凪アラシ
BL
「平穏に生きたい」だけなのに、
癖強イケメンたちが俺を狙ってくるのは、なぜ!?
トラブルを避ける為、夢魔の血を隠して学園生活を送るフレン(2年)。
彼は見た目は天使、でも本人はごく平凡に過ごしたい穏健派。
なのに、登校初日から出会ったのは最凶の邪竜後輩(1年)!?
他にも幼馴染で完璧すぎる優等生騎士(3年)に、不良だけど面倒見のいい悪友ワーウルフ(同級生)まで……なぜか異種族イケメンたちが次々と接近してきて――
運命の2人を繋ぐ「刻印制度」なんて知らない!
恋愛感情もまだわからない!
それでも、騒がしい日々の中で、少しずつ何かが変わっていく。
個性バラバラな異種族イケメンたちに囲まれて、フレンの学園生活は今日も波乱の予感!?
甘くて可笑しい、そして時々執着も見え隠れする
愛され体質な主人公の青春ファンタジー学園BLラブコメディ!
月、水、金、日曜日更新予定!(番外編は更新とは別枠で不定期更新)
基本的にフレン視点、他キャラ視点の話はside〇〇って表記にしてます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる