目覚めたそこはBLゲームの中だった。

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- ファンタジア王国と王都フィル -

収穫祭と謎の声

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「───そうか、不思議だな?聞いた私の言い方も悪かったが、よくあれが古代魔法だとわかったな」

「え…?」


「お前のその年齢ならば魔法全てを熟知しているはずがない。ならば、まだ習得していない魔法もあるだろうに、まして、古代魔法がどんなものか知らない者がほとんど。けど、お前は私の古代魔法を見ても驚かないんだな?という質問に『驚いて声が出なかった。その魔法は使える人がいないと聞いていたから』と答えた」


「あ…っ」

その言葉に、自分でも顔色が蒼白になるのを感じた。思わず、きゅっと目を閉じて構えてしまう私は自分自身、なんでこんなに情けないのか、本当に嫌になる…っ

そう、構えていたはずなのに、頭上から聞こえたフッと笑う声が聞こえてきたかと思えば、また先ほどの浮遊感を感じた。



「──いや、そんなことはどうでもいいな。お腹が空いているのだろう?今日は国を挙げて収穫祭をやっている。…おいで、何か食べよう」


「え、えぇっ!?」

なんで、また急に!?…じゃなくて!!!フラグ!フラグが立つから!!

「お、下ろし…『名前』ク、クラウド様!」


「ふむ… まあ、今はそれでいいか」

いや、いやいやいや!!!よくないですよ!乱立!!フラグの乱立しちゃうから!!

「ん?ああ、こうして抱えたほうが早いだろう?それに、収穫祭真っ只中の王都は人が特に多い。お前くらいの幼な子は特に攫われやすい。手を繋ぐのもいいが、こうして抱えたほうが無難だろう」


「ぐ…っ」

「それに、アクラス家の悪業は有名だ。それこそ、恨む者が多いくらいにはな。その子供が護衛も無しに出歩いていると知れれば、その恨みの矛先をまだ子供であるお前に向ける者もいるだろう」


「……」


もはや、正論すぎて、ぐうの言葉も出ない。確かにそうです。アクラス家に恨みを、憎む者は多い。その矛先が護衛も付けずに出歩いている無防備な子供に向かうのは当然のことだ。

ほら、着いたぞ、と言われて顔を上げると、


いつもは以上に活気付く王都の姿で、たくさんの屋台とたくさんの人たちでごった返していた。

だけど、ふと気付く。


「なんで… 誰も…」

何も言わないのでしょうか?少し歩くだけで、悪名高きアクラス家とその役立たずの子供と侮蔑を含んだ目と悪意ある感情をぶつけられるのはいつものことなのに。『こっちの飴はどうだい?』と笑顔で声を掛けてくれる屋台のおばさんからまるで悪意も感じられない。

きょとんとした表情で思わずクラウド様の顔を見上げる。

「ああ、認識阻害の魔法を掛けておいた」

思いもしなかった答えに、目をパチパチさせる。


「え?」

「アクラス家とお前は名が通り過ぎていたからな。まあ、私も見た目で騒がれるのが面倒でな、せっかくの収穫祭なんだ。楽しまないと損だろう?」


クラウド様はそう言うと、フッと端正な顔立ちで微笑んだ。

「……あ、ありがとうございます」


認識阻害、ですか。…うっかりしていました。

「さて、何が食べたい?」

「え、あ… でも、お金が…」


そう、あの家で子供に興味が無く、残飯しか貰えなかったあの両親から当然、お小遣いも貰えるはずもなく、そんな自分が少し惨めに思えた。

「なんだ、そんなことを気にしていたのか。私が出すから気にしなくていい」


「ですが、」

家に帰っても私には返せるものがない、そう項垂れていると、

不意に頭をぽんぽん叩かれた。

「子供がそんなことを気にするな」


……私、そこまで小さな子供ではないんですが。

「それに、お前は軽すぎる。お前くらいの子供はもっと大人に甘えるべきだというのに、まあ、あの家だからな… ふむ」



片腕に私を乗せたまま、一つ目の屋台に視線を向けると、器用にもう片方の手で顎先に手を添えて考え込むクラウド様は突如として顔を上げた。

「ふむ、これはなかなか美味いぞ?」


りんご飴というものだ、と告げるクラウド様は小さく微笑んだ。


「……りんご飴?」

この世界にもあるんだ、と思ったと同時に、前の世界で作られたゲームの中の世界なんだから、あの世界にあったものが存在していてもおかしくないのか、と思い直しす。

「………」

何故でしょうか、ふと悲しくなる。そういえば、前世でお祭りに行った時、姉ちゃんによく買ってもらってたっけ?

橘 悠タチバナ ユウだったときの記憶と感情が不意に甦る。前は前と、今は今だともう割り切れたはずなのに… ほろり、と零れ落ちる涙が止まらない。


『───あなた、まだ、あんなクズのことを引きずってるのですか?』

Σ!?


「は、え…っ!?」

一瞬、ふくかいちょーの声が聞こえた気がした。


「どうした?」

優しく涙を拭うエルフだけで、副会長はいない。…いや、そもそもこの世界にいるはずがない。


「なんでもないです…」

これ以上、悠としての感情と記憶に惑わされたくないのに、あの懐かしい声にまたあの二人に会いたいと思ってしまうのはどうしてでしょうか?

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