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第8章~誤解
しおりを挟む「アレックスは私の事、好き?」
青年は耳を疑った。今、好きか聞いたのか? 今まで頭をしめていた物が空っぽに消えてしまった感覚だった。
「あっ、えっと、えっ?」
気付いたら拍子抜けな変な声が漏れていた。
「ごめんなさい。邪魔したわ。今の、忘れて?」
「バタン」と音を立てて少女は出て行った。すれ違った時にピンクの薔薇のペンダントを付けていたのが見えた。こんな時になんだが、彼女がまた愛おしく思えた。
だが、今ので彼女に自分の気持ちが気づかれていたと自覚した。きっと驚いたんだろうな。直ぐに否定しなかったから彼女は泣きそうな顔をした。普通に兄の様に思っていた男がまさか自分を好きなんて思いもしなかったろう。
こんなに儚いものなのか? 恋心って物は。正直、振られるのは分かっていたのに、実際に目の当たりにすると比べ物にならないほど辛い。
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アレックスはエーデルワイス夫妻に呼ばれた。
「アレックス、ごめんなさいね。急に呼び出して。」
「いいえ、構いませんよ。それより、話って?」
「ここからは、私が言うよ。」
とエーデルワイス氏言った。
「実はシャルロットとの結婚の事なんだが、ミスターハイスラーと話し合ってね。君に来年から私のアメリカのビジネスを手伝って欲しいんだ。で、つまり結婚はまた先の話になりそうだという事なんだが。構わないかな? 後に私が引退するまではアメリカの支社を君に任したいのだ。引退したら、本社のつもりだ。」
「僕には都合の良すぎるくらいの話です。是非やらせて下さい。」
「もう、後戻りは出来なくなるよ。」
「構いません。覚悟は出来ています。」
「それを聞いて安心したよ。」
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それからロージーとはまるで何も無かった様になっている。そして時は流れ、アメリカへ引っ越す日が来た。
「気をつけて下さいね。成功を祈っております。」
と笑顔で言った彼女が少し寂しそうだった事に喜んでいる嫌な自分がいる。
「ありがとう。」
「まぁ、私には何も言ってくださらないの? アレックス、浮気したら承知しませんからね。」
とシャルロットが冗談めかしに言った。
「ははっ。心配しないで下さい。きっと、そんな暇無いほど忙しいですよ。では、行ってきます。」
青年は姉妹に1人ずつハグし、車に乗った。
「今度、私がアメリカに行く時は、嫁入りね。ふふっ。」
シャルロットがまた冗談めかしに呟きながら、家へ入って行った。
「そう、ね。」
ロージーはただ小さくなる車を眺めていた。
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