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12_ゲーム
しおりを挟む「ギル、今日泊まって行けよ」
カレーをみんなで仲良く食べた後、俺はギルにお泊まりを勧めた。イケメンだが、ギルは良いやつだからもっと仲良くなれればと思う。
「良いのか?」
「良いよ。セルトも泊まっていくだろうし」
セルトは一度部屋に戻って準備を整えてまた来るだろう。
「でも、もう1人同室者がいるだろう?」
「ああ、気にするな。帰ってくる事が珍しいから」
ナツメ先輩は生徒会の役職に就いているからもう一部屋、生徒会メンバー共同の部屋が用意されている。会議なんかもそこでする事があるみたいで、先輩はほぼそこにいる。俺としては有難いことだ。
「じゃあ、お言葉に甘えて…」
「よし!そうと決まれば風呂行こうぜ!」
ここには共同のお風呂がある。大きくて広い露天風呂だ。24時間やっているが、朝の5時から1時間だけ掃除のため使えない。
「いや、俺は部屋の風呂でいい。共同のものは夜中以外使わないようにしているんだ」
「マジか…。お前も大変だな」
「まぁ、しょうがねぇな。闇属性はそういうもんだ」
お風呂道具を用意しながら言ったヒルエに俺は頭を叩く。
パシン
「いってな…何しやがんだ平凡」
「うるせい、平凡。八つ当たりだ」
ヒルエの言ったことは正しい。闇属性はいつも隠れながら生きている。俺は知ってるその姿を。
「俺に構わず、みんなで行ってきてくれ」
「…ヒルエ先にゲームしてから行こうぜ」
「…別にいいけど」
ヒルエと俺はゲームをセットし始める。やっぱりみんなで入りたいしな!ギルも心なしか嬉しそうだし良かった。
「ギルもやるだろ!」
「ああ」
「んじゃ、ギルこのコードそこに繋いでくれ」
ピンポーン
「セルトだ」
寮の部屋はオートロックだから面倒くさいんだよな…俺は玄関にセルトを迎えに行く。セルトは部屋に入ると、ゲームの準備をしている2人の間に座った。
「ゲームするの?僕負けないよ!」
「はっ、リトルには勝てるかもしれねぇが俺には勝てねぇよ」
「分かんないよ?ギルもいるし、もしかしたらヒルエ負けちゃうかもね」
「あぁ?そんなわけないだろ」
その自信はどっから来るんだよ。
「じゃあ、勝った人がリトルと一緒のベットに寝る権利もらえるっていうことにしない?」
「俺を巻き込むなよ!」
「いらねー…。でも、お前らには負けねぇよ」
「俺も頑張らせてもらう」
俺のベット狭いんだから、そんな罰ゲームみたいなのしなくて良いだろうが!
「んじゃ、一本勝負な」
「良いよ」
「俺も構わない」
3人は俺に構わずどんどん話を進めていく。
「ふざけんなよ…!こうなったら俺が勝ってやるからな」
「はっ、平凡が粋がってんじゃねぇよ。ここにいるメンツ見てみろ」
学年上位の成績を修める中身非凡な平凡。
剣の腕を学園に認められたイケメン。
噂では魔力量は相当らしい闇属性のイケメン。
「…これはゲームだから。勝てる!」
いくら周りのスペックが高くても!
「勝てるかねぇ~」
「勝てるさ…!」
「ごめんね、リトル。君に負けるわけにはいかないから、かける言葉が見つからないよ…」
目を伏せながら言う姿は儚げで可憐。イケメンめ。いくらセルトでも今だけは敵に見えるぞ!
「リトル。俺はこのゲームをあんまりやった事がない。だから、きっと俺より強いさ」
「ギル…!」
俺はギルに抱きつく。
「お前が俺の仲間であると心強いよ。魔力量高いらしいし」
「魔力量とゲーム技術は関係ねぇだろ」
「そういえば、ギルは魔力測定どうだったの??」
そういえば、聞いてなかったな。Aとかありそうだよな、ギルは!
「俺はSだったよ」
…………………………。
「え?Sなの?え?じゃあ、お前来月からS組!?…」
「いや…今のままだ」
「え…?」
「…おおかた、S組に闇属性は上がれねぇんだろうぜ」
ヒルエがそう言うとギルは困ったように笑った。
「ちょっと、コウヤ先生とこ行ってくる」
「ムダだよ、リトル。残念だけど、この世界じゃ実力より家柄や身分が大事にされてるんだから」
「良いとこのお坊ちゃんが少し愚痴を言えばその通りになるんだよ」
ギルは闇属性ってだけでS組に入れないのか。実力は十分にあるのに…。この世界は納得いかないことばっかりだ。
「良いんだ。S組のように特別訓練を受けるのは面倒だし、リトルと違うクラスになるのは嫌だしな」
「ギル…」
お前、すごいよ。
「この話は終わりだ。ゲームをやろう」
「そうだね。はい、リトル、ギル」
セルトはコントローラーを俺たちに渡す。ヒルエはすでに1コンを占領し、サクサクと進めている。
「んじゃ、始めようぜ。ベット争奪戦」
「リトル付きだよ」
「自信ないな…」
負けられない戦いが今、始まった…?
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