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53_フィルの思うこと
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リトルたちが学園へ戻って1週間以上が経った。静かになったのは良いことだ。最近はリトルが魔法に失敗するたびに大きな声を出していたから。
「ヒルエ様とリトル様がいなくなって寂しいですね」
「寂しくねぇ」
「強がっても良いことはありませんよ。フィル様から連絡したら良いではないのですか。仕事も捗らないですし」
リムの言う通り目の前には進まない仕事の山があった。
「なんかあったら連絡してくるさ」
「だったら仕事をしてください」
「うるせぇ」
仕事に背を向けた俺にリムは大きなため息をつく。
「ヒルエ様に連絡しては?」
「…お前がしろ」
「…かしこまりました」
とことん呆れた目で俺を見るが知ったことはない。リムはポケットから携帯を出してヒルエへかけ始める。ちゃっかりスピーカーで。
「もしもし、ヒルエ様ですか?」
《ああ、どうせリトルのことでフィルが心配してるんだろ。リトルは元気だぜ。魔法は失敗してるがな》
「それは何よりです」
《ただ…7つの大罪が学園へ転校してきた。まぁ、フィルなら知ってると思うけど》
「…元気ならそれで良い。あんまり神経質になるな」
「…チッ、切るぞ」
ブチッ
「短気なやつだな」
切れたケータイを見ながら俺は呟いた。どうしてあんな風に育ってしまったのか。あ、近くに獲物がいるからか。
「…」
リムは渋い顔をしてケータイを見ている。
「7つの大罪…。お前はこのワードを聞いて何を思う。不安か?」
「…そうですね。7つの大罪に良いイメージはありません」
「…そうか。でもな、真実はその心まで語らないんだぜ」
「…どういう意味ですか?」
「さぁな、仕事するか」
俺は目の前に積み上げられた仕事に手を伸ばす。崩れる前に終わらせよう。溜まったら余計面倒になる。
「あなたはいつも意味深なことを言うくせに全てを語りはしない」
不服そうな顔でリムが言う。性格上、全てを知っておきたいのだろう。
「良い男はそういうもんだ。それに、そんなに難しいことじゃない。そうだな。リトルなら無意識に出来るだろうな」
「フィル様はリトル様と7つの大罪が関われば良いと思っておられるのですか?」
「俺が望もうが、望まなかろうが、あいつは関わるさ。これは必然だ。その結果がどうなるかは誰にも分からない」
「必然…」
物語は動き始めた。もう止まりはしない。なら、出来るだけ安全な道を進めるように、出来るだけ幸福な結末を迎えられるようにするだけだ。
「それでも、俺たちはリトルを守るさ。だってあいつは俺たちの天使だからな」
「…そうですね」
緩やかに微笑むリム。爽やかな風が俺たちの背中を押すように窓から流れてきた。
「ヒルエ様とリトル様がいなくなって寂しいですね」
「寂しくねぇ」
「強がっても良いことはありませんよ。フィル様から連絡したら良いではないのですか。仕事も捗らないですし」
リムの言う通り目の前には進まない仕事の山があった。
「なんかあったら連絡してくるさ」
「だったら仕事をしてください」
「うるせぇ」
仕事に背を向けた俺にリムは大きなため息をつく。
「ヒルエ様に連絡しては?」
「…お前がしろ」
「…かしこまりました」
とことん呆れた目で俺を見るが知ったことはない。リムはポケットから携帯を出してヒルエへかけ始める。ちゃっかりスピーカーで。
「もしもし、ヒルエ様ですか?」
《ああ、どうせリトルのことでフィルが心配してるんだろ。リトルは元気だぜ。魔法は失敗してるがな》
「それは何よりです」
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「…元気ならそれで良い。あんまり神経質になるな」
「…チッ、切るぞ」
ブチッ
「短気なやつだな」
切れたケータイを見ながら俺は呟いた。どうしてあんな風に育ってしまったのか。あ、近くに獲物がいるからか。
「…」
リムは渋い顔をしてケータイを見ている。
「7つの大罪…。お前はこのワードを聞いて何を思う。不安か?」
「…そうですね。7つの大罪に良いイメージはありません」
「…そうか。でもな、真実はその心まで語らないんだぜ」
「…どういう意味ですか?」
「さぁな、仕事するか」
俺は目の前に積み上げられた仕事に手を伸ばす。崩れる前に終わらせよう。溜まったら余計面倒になる。
「あなたはいつも意味深なことを言うくせに全てを語りはしない」
不服そうな顔でリムが言う。性格上、全てを知っておきたいのだろう。
「良い男はそういうもんだ。それに、そんなに難しいことじゃない。そうだな。リトルなら無意識に出来るだろうな」
「フィル様はリトル様と7つの大罪が関われば良いと思っておられるのですか?」
「俺が望もうが、望まなかろうが、あいつは関わるさ。これは必然だ。その結果がどうなるかは誰にも分からない」
「必然…」
物語は動き始めた。もう止まりはしない。なら、出来るだけ安全な道を進めるように、出来るだけ幸福な結末を迎えられるようにするだけだ。
「それでも、俺たちはリトルを守るさ。だってあいつは俺たちの天使だからな」
「…そうですね」
緩やかに微笑むリム。爽やかな風が俺たちの背中を押すように窓から流れてきた。
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