リトル君の魔法学園生活

鬼灯

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97_朝食にスープを

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「美味しいでしょ、○○」

「はい、美味しいです」

修道院の一室、1人で食事をとる少年はやせ細っている。

「しっかり食べれば病気は良くなるからね」

「はい、ありがとうシスター」

優しい笑顔を浮かべたと思ったら、少年は急に咳き込む。血が口から零れる。

「あらあら大変、今薬を持ってくるわ」

シスターがその場から離れる、少年は再び食事を食べ始める。

「ご飯を食べれば、病気が治る……あれ、僕はいつから1人なんだろう…」

食べ進める手は震えている。

「気持ち悪い、美味しくない……ダメ、食べないと、僕は神に愛されない。美味しいよ、美味しい」

言い聞かせながら食べる食事に吐き気がする。よく見れば食事の量が異常だ。10人前くらい用意されている。

ガチャ

「シスター、薬は……」

「〇〇、神に愛されるためですよ、薬を飲んで、さぁお食べなさい」

シスターは薬を料理に混ぜ込むと少年の口にねじ込む。むせ返り、嘔吐してもその食事が終わることは無い。

そこで俺の意識は途切れた。




-----------------



俺はゆっくり体を起こす。胸焼けがする。また吐いてしまいそうだ。トイレに向かい、胃の中を空にする。いつも来てくれるヒルエがいない。それを寂しく感じる。

少し吐いて楽になった。リビングに向かうとグラがいた。

「リトル君……。共鳴が始まりましたね。朝食を作ったんです。良かったら食べませんか?ヒルエ君には席を外してもらってますから」

「ありがとう……。ごめん」

ヒルエが来なかったのは、グラに言われてたからか。グラの泣きそうな顔に俺は申し訳なさが溢れる。誰だって過去を見られるのは嫌だよな……。

「この朝食……」

「僕が食べていた頃の朝食です。まぁ、量は違いますが……。パン、卵、ベーコン、そして……スープ」

スープの色が濁っている。確かに夢で見たスープの色も濁っていた。


「それには何も入ってませんよ。1口どうぞ」

俺は1口スープを飲む。味は美味しい。

「それにはって……」

「リトル君、これはまだ憶測ですが、共鳴するために僕たちがリトル君に過去を明かすのはタブーです。共鳴に必要なのはやっぱり、リトル君自身の意識のようですから。知ってることを知ろうとは思えないでしょ?」

「気分がいいものじゃないよな…」


「良いのです。神が僕に裁きを与えているだけです。僕の罪は食えない」

「つ……み……」

目が霞む。やっぱりスープの中になにか入ってたんじゃ……。


「おやすみなさいリトル君。僕の罪を見てきてください。アーメン」


手を組みあわせ、シスターのように祈るグラを最後に俺の意識は無くなった。


















グラside









リトル君の意識は無くなる。

ガチャ


「おい……」

自身の部屋からヒルエ君が出てきた。とても不服そうな顔をしている。

「睡眠薬です」

「急ぎすぎだろ。まだ1週間しかたっていない」

「今共鳴したのは、色欲、強欲 、嫉妬。昨日はセルト君に共鳴しかけた……。条件がわかった以上、急ぐべきです。デイブレークは待ってはくれません。それに、私の過去が1番マシです。神の許しを受けて行ったことですから」

「神ね...」

ヒルエ君はリトル君の傍に行き前髪を撫でる。

「僕も共鳴の準備をしてきます」

「準備?」

みそぎです」


僕は2人を残して部屋を後にする。部屋から出ると膝から床に座る。共鳴の影響かしんどい。まぁ、それだけじゃない。致死量を超える睡眠薬を僕も飲んでいる。

「グラ……」

「ルクスリア……」

ルクスリアは僕を抱える。体が小さくてよかった。

「ルクスリア……お願いします。僕を儀式の間に……」

「分かってるわ」

ルクスリアが教会に向かって歩き出す。前からはミーナ先生とコウヤ先生が走っていた。ヒルエ君に呼ばれたのだろう。

「大丈夫か?」

「えぇ、大丈夫よ。私に任せて。それよりリトちゃんの心をお願いね。私、何もできないから」

「お前達も辛いだろうよ。何もできないのは……な、ミーナ?」

「はい、私達も同じですね」

コウヤ先生は僕の頭を一撫ですると走って部屋に向かっていく。

「ルクスリア……僕もう……」

「辛いわね、急ぎましょう」

ルクスリアは転送魔法で儀式の間に連れて行ってくれた。

「ララに誓って……」

久しく口にしてない言葉が口からこぼれた。そう、最近はリトル君のことで忙しくて皆口にしてなかった。僕たちはララに誓って……この任務を完遂しなければいけない。

「ララに誓って……ね。どうしましょう。私、とても悲しくなるの、その言葉。前は何も思わなかったのに」

ルクスリアは僕を儀式の間に用意された寝台に寝かせた。

「さぁ、グラ……。行ってらっしゃい。過去と向き合う時間に」

目元を手で覆われ、僕の意識は完全に失った。
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