リトル君の魔法学園生活

鬼灯

文字の大きさ
98 / 102

98_暴食の罪

しおりを挟む
薄暗い部屋に響く嗚咽に目が眩む。
少年はただ食べては吐いてを繰り返す。

「シスター、僕もう……」

「そう、じゃあ最後にこれを食べましょう...。美味しいリンゴよ」

「はい、シスター」

少年は1口、リンゴを食べた。少年の喉をリンゴが通過したと思ったら、吐血した。真っ赤に拡がっていく血に少年は戸惑う。

「シ、スター……ぐほぉ」

「失敗かしら……」

少年はゆっくりと呼吸する 。少しづつ落ち着いてきたが、目眩と吐き気は止まらない様子で倒れ込む。

「まぁ、なんて事なの!成功よ!私たちは最高の兵器を手に入れたわ!早く血を抜いて!殺してはダメよ」

少年は仰向けに寝かされると、注射針を刺されて血を抜かれる。おぞましい光景に口は開いたまま塞がらない。

「シスター……僕はいつから、1人なんだろう……」

「●▲、貴方は……最初から1人よ」

天使のような笑みを浮かべてシスターは言った。

「ねぇ、教えてあげるあなたの存在意義。その血の価値を。貴方は一生血を抜かれる運命なのよ」

「僕は神様に……」

「そう愛されたの。他の兄弟が何人も死んだけれど、貴方だけが生き残ったの」

目眩と吐き気はどうなったのだろうか、少年は少し目の色がはっきりとした。

「兄弟……あぁ、そうだ。皆はなんで……兄さんは!?」

「死んだわ。貴方たちは生まれた時から毒を食べ続けていたの。色々な毒を毎日摂取してた。毒に耐えられず、他の兄弟はみんな死んでしまったわ」

「なんで、毒を……。食べれば神に愛されるんじゃないの!?」

「貴方の体液が全て毒を含んでる。生まれてからずっと毒に体を慣らして、様々な毒を混ぜ合わせた。それは解毒不可能な完全オリジナルの毒!これで私たちは戦争に勝てるわ!」

「神様……」

少年は目を閉じる。よく見れば顔色が悪い。血を抜かれて貧血になっているんだ。

「神様……神様……僕は1人なんかじゃないですよね。神様……」

少年は虚ろな目で神に問いかける。

「神様……そうですよね...。僕は食べることで救われますよね。お許しください、神様……」

少年はシスターにゆっくり近づく。シスターは天使のような笑みで両手を広げる。

「神に愛された●▲、私達を救ってくれてありがとう。ご飯は美味しかったかしら?」

少年は力弱く微笑むとシスターに流れるように口付けをした。シスターの顔は真っ青になる。その口を舌ごと噛みちぎる。

「ぐふぉ…」

シスターは血を吐く。周りのシスターはすぐさま駆け寄る。駆け寄ったシスターに少年が手首を噛み切って血をかける。周りはパニックになった。

地獄絵図だ。吐血し吐瀉し、死んでいく。
やがて少年だけが瀕死の状態で残った。

「香しい血の匂い。その特別な血に誘われて、やって来ました。私は暴食の悪魔、ベルゼブブ」

「ヒュー、ヒュー」

「おやおや、死にそうですね?生きたいですか?」

少年は首を振って拒否をする。

「行きたくないと?困った困った、僕は君と契約するのに死なれてはねぇ。貴方は願いはないのですか?」

「ヒュー、どうして僕は1人なんだ、ろう」

「仲間が欲しいのですか?」

少年は首を振る。

「もう、なに、も食べたくないのに……本当に美味しい味を知りたい……。兄さんが教えてくれた幸せの味……。兄さん、僕はいつからひとりなんだろう……」

「分かりました!その願い、私が叶えてあげましょう!貴方は血を飲めば、生きていける体に生まれ変わるのですよ。幸せの味はそこから探しましょ」

少年はそのまま悪魔に抱かれて寝台に運ばれる。少年の傷は少しづつ回復していく。

「僕は兄弟が欲しいよ……」

「それも叶えましょうねぇ。」

悪魔は少年の手首から滴る血を飲む。血を飲み干した先に、黄色い薔薇が咲く。

「貴方の肌は病的に白いですから、黄色のバラが良くお似合いですよ。さぁ、これから貴方は血を飲んで生きるのです。手始めにどうぞ、シスターの血を」

悪魔は少年の口に血を運ぶ。少年は虚ろな目で口に端から血を零しながら少しづつ飲む。

「神様……。食べない僕を、こんな僕を愛してください」

「悪魔が愛してあげるさ」

抱きしめる悪魔に少年は目を閉じた。グラ……君が物を食べないのは、残酷な記憶の代償だったんだ...。
しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

そんなの聞いていませんが

みけねこ
BL
お二人の門出を祝う気満々だったのに、婚約破棄とはどういうことですか?

逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、 隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。 しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです… オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が なかたのでした。 本当の花嫁じゃない。 だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>

生まれ変わりは嫌われ者

青ムギ
BL
無数の矢が俺の体に突き刺さる。 「ケイラ…っ!!」 王子(グレン)の悲痛な声に胸が痛む。口から大量の血が噴きその場に倒れ込む。意識が朦朧とする中、王子に最後の別れを告げる。 「グレン……。愛してる。」 「あぁ。俺も愛してるケイラ。」 壊れ物を大切に包み込むような動作のキス。 ━━━━━━━━━━━━━━━ あの時のグレン王子はとても優しく、名前を持たなかった俺にかっこいい名前をつけてくれた。いっぱい話しをしてくれた。一緒に寝たりもした。 なのにー、 運命というのは時に残酷なものだ。 俺は王子を……グレンを愛しているのに、貴方は俺を嫌い他の人を見ている。 一途に慕い続けてきたこの気持ちは諦めきれない。 ★表紙のイラストは、Picrew様の[見上げる男子]ぐんま様からお借りしました。ありがとうございます!

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

劣等アルファは最強王子から逃げられない

BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。 ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。

2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~

青ムギ
BL
「俺は、生涯お前しか愛さない。」 その言葉を言われたのが社会人2年目の春。 あの時は、確かに俺達には愛が存在していた。 だが、今はー 「仕事が忙しいから先に寝ててくれ。」 「今忙しいんだ。お前に構ってられない。」 冷たく突き放すような言葉ばかりを言って家を空ける日が多くなる。 貴方の視界に、俺は映らないー。 2人の記念日もずっと1人で祝っている。 あの人を想う一方通行の「愛」は苦しく、俺の心を蝕んでいく。 そんなある日、体の不調で病院を受診した際医者から余命宣告を受ける。 あの人の電話はいつも着信拒否。診断結果を伝えようにも伝えられない。 ーもういっそ秘密にしたまま、過ごそうかな。ー ※主人公が悲しい目にあいます。素敵な人に出会わせたいです。 表紙のイラストは、Picrew様の[君の世界メーカー]マサキ様からお借りしました。

転生したようだけど?流れに身を任せていたら悪役令息?として断罪されていた――分からないまま生きる。

星乃シキ
BL
発作の後に目覚めたら、公爵家嫡男の身体だった。 前世の記憶だけを抱えたまま生きるレイは、ある夜、男の聖女への嫌がらせの罪で断罪される。 だが図書室の記録が冤罪を覆す。 そしてレイは知る。 聖女ディーンの本当の名はアキラ。 同じ日本から来た存在だった。 帰りたい聖女と、この身体で生きるレイ。 秘密を共有した二人は、友達になる。 人との関わりを避けてきたレイの人間関係が、少しずつ動き始める。

処理中です...