リトル君の魔法学園生活

鬼灯

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59_悪夢

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俺は魔力玉を使って戻りヒルエに事の次第を説明した。

「ヒルエは知ってたんだろう?7つの大罪について」

「まぁな。バカなお前とは違って優秀だから」

否定できないのが悔しい。確かにヒルエはSだけど頭が良いのだ。

「俺、あいつらになんかしたかな…」

「トラブルメーカーだから仕方ないだろ。避けて通れないなら真正面から行くしかないぜ」

「いやだ…絶対避けてやる」

「…あいつらの目的はトワイライトだ。お前はトワイライトの方を警戒した方がいい」

いつにもなく真面目なトーンで言われて焦った。こんな怖い顔をしたヒルエは見たことがない。

「そ、そんなこと言ったって俺、トワイライトが誰か知らないし…」

「…早く寝ろ。明日も学校だ」

ヒルエは部屋から出て行った。なんなんだいったい…俺の周りはどうなっちゃったんだ。

「トワイライト…」

少しずつ、少しずつ歯車が狂って行く。最悪だ。

——————

「痛い、やめて、やめて貴方!」

その部屋には男と女がいた。部屋に響くのは派手な打音と2人の女の悲鳴。

「うるさい。うるさい」

不意にそんな声が聞こえて隣の部屋を見ると少年が耳を塞いで縮こまっていた。

不気味な光景に俺は吐き気がした。景色は反転する。暗い部屋、その中にポツリ少年がいる。なんなんだこの光景は…。

「俺は何もしてない。俺は何もしないんだから」

少年は虚ろな目でそう呟く。俺はその場から逃げ出した。


「うわああ」

俺はベットから飛び起きた。なんて夢だ。気持ち悪い。俺はトイレに駆け込む。

「おええ」

胃の中に何も無いのか出てくるのは胃液だけ。最悪な朝だ。


「おい、どうしたんだ?」

声をかけてきたのはナツメ先輩だった。部屋にいるなんて珍しい。

「ちょっと、嫌な夢を見ちゃって、おえ」

「なんだそりゃ。夢ぐらいで情けない」

そう言いながら、ナツメ先輩は背中をさすってくれる。

「ありがとうございます」

「吐かれて部屋の備品が汚れたら大変だからな」

なんだそれは。もっと俺のことを心配してくれ。まぁ、ナツメ先輩らしいけど。

「だいぶ良くなりました」

「感謝しろ」

「ありがとうございます」

「…良くなったんなら俺はもう行く。あとはヒルエを頼れ」

「はい」

ナツメ先輩はそのまま部屋を出て言った。俺はトイレから出てリビングの椅子に座る。俺は誰の夢を見たんだ。

「はぁ…」

ため息をついて目を閉じると人に気配がした。

「ヒルエ?」

「違うよ」

ヒルエだと思って話しかけたが、どうやら違ったようだ。この声はセルトだ。ナツメ先輩が入れたんだろうか。

「セルト、おはよう」

「おはよう。リトル。ヒルエから聞いたよ。7つの大罪について知っちゃったんだね」


「セルトも知ってたのか?」

「うん。知ってたよ。ねぇ、お願いリトル。居なくならないで…」

セルトは俺を抱きしめると泣きそうな声でそう言った。

「なんで俺がいなくなるんだよ」

セルトはその質問に応えようとはしない。ただただ存在を確かめるように抱きしめる。

「リトルが居ないと生きていけない。だから、僕はリトルを絶対守るから。これは誓いだ」

「ありがとう、セルト」

大袈裟だと思った。けれど、真剣に言うセルトの言葉を否定する事はできなかった。

「トワイライト……」

小さな声でセルトは呟いた。その言葉は俺以外の者に聞かれることなく部屋の静寂に溶けていった。
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