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58 亜人
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預言者様と会った後にカラシフに捕まったため、先日は他の重要な人物に会えなかった。
今日もサーシャと王城へと出向く。王妃にアンナとの関係がなんとかなりそうだということを報告し、公式に政務に復帰することになった。この時間稼ぎができただけでもアンナには外交カードとしての価値があったということか。
ムサエフ将軍とも軍事について意見交換をした。鎧の生産は順調だが、肝心の武器が足りないとのこと。さらに次はチュノス相手に攻城戦になるかもしれないということだった。
「野戦ならやりようがあるでしょうが・・・城ですか・・・」
「ペテルグが一度も落としたことが無い強固な城です。タージですらこの城には近づきません。前回の戦いの時に放棄した砦などとは比較にならない堅牢さです」
砦を潰して前哨地とすることと、城を落とすことをひとつに考えないといけないか。戦力差は7:3でチュノスの方が上。とてもじゃないが勝負を賭けられる数字ではない。
「城の図面はありますか?」
「諜報部が頑張ってくれました。これです」
ムサエフ将軍の言葉を聞いて、サーシャの顔に一瞬誇らしい笑みが浮かんだ。
レンガと石を組み合わせた方形の城か。城壁は高く理に適っているな。これ・・・正攻法で落ちるのか?堀があったらどう落としたらいいのか分からないぞ・・・
「穴を掘って内側からかく乱するか・・・巨大な石を吹っ飛ばして城壁ごと破壊するか・・・」
ダメだな。戦力差を決定的に埋めれるような方法ではない。地図を見たところ不利を埋められるような地形でも無い。この城が落とせればチュノスの王城まであと一歩だが・・・
「マハカムと同盟を結ぶか・・・いずれにせよペテルグ一国だけでは落ちる気がしませんね」
「異世界人の知恵をもってもダメですか」
「今のペテルグの戦力では勝てないという話です」
ムサエフ将軍は、おそらく王からこの城の攻略を考えるように指示されたのだろうな。当事者なのにやる気が無さすぎる。
「前回同様にチュノスが攻めてきたら国境を守る、でいいでしょう。まだまだこの国は弱すぎます」
ムサエフ将軍はやっぱり無理なのか、という表情をした。
「そういえば先日カラシフが面白い話をしてきましたよ。兵を使わない戦いで来年にはリーベリと戦うかもしれないので意見を聞きたいとか。あれってアラヒトさんの考えですよね?ああいう戦い方は異世界では一般的なのでしょうか?」
「戦争は最後の手段と考えるのが一般的でしたね。外交のいち手段と考える上で、ああいう戦い方もあるということです。統治への移行も比較的ラクでしょうからね」
「なんというか・・・武人としてはスッキリする戦い方ではありませんな」
「王もそう言うかもしれませんね。ですがペテルグが生き残る方向で考えた方がいいと思います。スッキリするために戦争するワケでは無いですからね。勝手に相手が負けてくれるのが理想的です」
ムサエフ将軍は軍人らしく高らかに笑った。
「それでは我々の仕事が無くなりますな」
「あまりに青く理想的に聞こえるでしょうが、軍人の仕事が無くなるのであれば誰も殺されずに済むでしょう。治安維持だけで済むような世界が理想的ですね」
俺は俺の女たちが死なないようにしたいのだ。チュノスを倒すことは必要だが、別に戦争がしたいワケじゃない。
ノックの音が聞こえてから、見知った顔が入ってきた。たしか王妃様付けの小間使いだったな。
「アラヒトさん、こちらにおられますか?」
「なんでしょうか?」
「王妃様がお呼びです。ムサエフ将軍とサーシャ様もともに私に付いてきてください」
ムサエフまで一緒に?ただ事では無いな。
いつも密談する別室で王妃と王、それにカラシフ宰相が待っていた。あの人は・・・たしか記憶官か。公文書として残らない重要な話があるということか。
「アラヒト。私たちとお前に客だ」
ずんぐりむっくりとした肉体、顔中を覆うヒゲ、小柄だが頑丈そうな肉体。これは・・・
「初めまして。アラヒトと申します」
「畏まらないで頂きたい。ドワーフ族族長代理、ハリスと申す」
すげぇ・・・ホンモノのドワーフか・・・
「異世界人があのチュノスの侵攻を退けたことは既に聞き及んでいる。我々にも是非知恵を貸して頂きたい」
「見返りはドワーフの製鉄技術とペテルグ国内での鉄の探索だそうだ」
来た。ようやく鉄だ。
「まずはお話を伺いましょう」
今日もサーシャと王城へと出向く。王妃にアンナとの関係がなんとかなりそうだということを報告し、公式に政務に復帰することになった。この時間稼ぎができただけでもアンナには外交カードとしての価値があったということか。
ムサエフ将軍とも軍事について意見交換をした。鎧の生産は順調だが、肝心の武器が足りないとのこと。さらに次はチュノス相手に攻城戦になるかもしれないということだった。
「野戦ならやりようがあるでしょうが・・・城ですか・・・」
「ペテルグが一度も落としたことが無い強固な城です。タージですらこの城には近づきません。前回の戦いの時に放棄した砦などとは比較にならない堅牢さです」
砦を潰して前哨地とすることと、城を落とすことをひとつに考えないといけないか。戦力差は7:3でチュノスの方が上。とてもじゃないが勝負を賭けられる数字ではない。
「城の図面はありますか?」
「諜報部が頑張ってくれました。これです」
ムサエフ将軍の言葉を聞いて、サーシャの顔に一瞬誇らしい笑みが浮かんだ。
レンガと石を組み合わせた方形の城か。城壁は高く理に適っているな。これ・・・正攻法で落ちるのか?堀があったらどう落としたらいいのか分からないぞ・・・
「穴を掘って内側からかく乱するか・・・巨大な石を吹っ飛ばして城壁ごと破壊するか・・・」
ダメだな。戦力差を決定的に埋めれるような方法ではない。地図を見たところ不利を埋められるような地形でも無い。この城が落とせればチュノスの王城まであと一歩だが・・・
「マハカムと同盟を結ぶか・・・いずれにせよペテルグ一国だけでは落ちる気がしませんね」
「異世界人の知恵をもってもダメですか」
「今のペテルグの戦力では勝てないという話です」
ムサエフ将軍は、おそらく王からこの城の攻略を考えるように指示されたのだろうな。当事者なのにやる気が無さすぎる。
「前回同様にチュノスが攻めてきたら国境を守る、でいいでしょう。まだまだこの国は弱すぎます」
ムサエフ将軍はやっぱり無理なのか、という表情をした。
「そういえば先日カラシフが面白い話をしてきましたよ。兵を使わない戦いで来年にはリーベリと戦うかもしれないので意見を聞きたいとか。あれってアラヒトさんの考えですよね?ああいう戦い方は異世界では一般的なのでしょうか?」
「戦争は最後の手段と考えるのが一般的でしたね。外交のいち手段と考える上で、ああいう戦い方もあるということです。統治への移行も比較的ラクでしょうからね」
「なんというか・・・武人としてはスッキリする戦い方ではありませんな」
「王もそう言うかもしれませんね。ですがペテルグが生き残る方向で考えた方がいいと思います。スッキリするために戦争するワケでは無いですからね。勝手に相手が負けてくれるのが理想的です」
ムサエフ将軍は軍人らしく高らかに笑った。
「それでは我々の仕事が無くなりますな」
「あまりに青く理想的に聞こえるでしょうが、軍人の仕事が無くなるのであれば誰も殺されずに済むでしょう。治安維持だけで済むような世界が理想的ですね」
俺は俺の女たちが死なないようにしたいのだ。チュノスを倒すことは必要だが、別に戦争がしたいワケじゃない。
ノックの音が聞こえてから、見知った顔が入ってきた。たしか王妃様付けの小間使いだったな。
「アラヒトさん、こちらにおられますか?」
「なんでしょうか?」
「王妃様がお呼びです。ムサエフ将軍とサーシャ様もともに私に付いてきてください」
ムサエフまで一緒に?ただ事では無いな。
いつも密談する別室で王妃と王、それにカラシフ宰相が待っていた。あの人は・・・たしか記憶官か。公文書として残らない重要な話があるということか。
「アラヒト。私たちとお前に客だ」
ずんぐりむっくりとした肉体、顔中を覆うヒゲ、小柄だが頑丈そうな肉体。これは・・・
「初めまして。アラヒトと申します」
「畏まらないで頂きたい。ドワーフ族族長代理、ハリスと申す」
すげぇ・・・ホンモノのドワーフか・・・
「異世界人があのチュノスの侵攻を退けたことは既に聞き及んでいる。我々にも是非知恵を貸して頂きたい」
「見返りはドワーフの製鉄技術とペテルグ国内での鉄の探索だそうだ」
来た。ようやく鉄だ。
「まずはお話を伺いましょう」
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