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22 マッチョさん、ソロウを離れる
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「うううう、マッチョさん、すいませーん・・・」
「ツイグ、お酒はほどほどに。できれば飲まないほうが筋肉は大きくなります。」
「了解っす。完全にお酒は止めれないでしょうけれども、しっかり憶えておくっす・・・」
隣に座っているツイグが吐きそうな顔で話している。昨日は調子に乗ってかなり飲んでいたからなぁ。そして私が馬車を運転するハメになっている。昨日習ったばかりなのに。
ハムを送ってもらう話は、私が出資した額を村が返すまでの利子としてタダで送ってもらえることになった。これでよほどの僻地ではない限り、当面どこに行ってもタンパク質の心配は無い。前途洋々だ。
利子など要らなかったのだが、タベルナ村の住人からすれば村の恩人にお金まで無利子で借りる、というワケにもいかないだろう。ありがたく利子をいただくことにした。できればハムブルクの製法も知りたかったが、村長の許可無しには教えられないし、そもそも村長しか知らないそうだ。よい回復食だったので、作り方を是非とも知りたい。
昨日休ませてもらった宿、あれは普通に宿だった。普通であることに驚いた。半年かそこらでここまで街が発展していることが凄い。次にもし会う機会があったら、あの村長さんは村長ではなく町長になっているかもしれない。
しかし素晴らしい発展の仕方だった。筋肉に必要な栄養と仕事がすべて揃っていた。旅になど行かないで、タベルナ村でのんびりと肉体労働をしながら筋トレをするような日々を送ってもいい気がした。もはや故郷に帰ることも無いだろう。あの村が私の第二の故郷になるのかもしれない。
ソロウに着いたらツイグに馬車の返還業務をやってもらい、私は武器屋さんへと向かった。装備を金属製へと変えることと、私の防具について打ち合わせをしたい。
「こんにちはー。」
「あ、マッチョさん。こんにちは。斧の方はもう仕上がってますよ。」
べったりついた魔物の血のりが消えて、ピカピカに仕上がっている。鞘についていた汚れも綺麗になった。お気に入りの革靴を磨きに出して帰ってきた時のようにご機嫌だ。
「いい仕上がりですね。鎧のほうは今後、金属製のものを使うことにしました。またお手数ですが、よろしくお願いします。」
「あれ。マッチョさん二日後にはソロウを出るんですよね?」
ああそうか。間に合わないのか。皮鎧だって急がせてしまったものな。
「二日ではできませんよね。じゃぁ皮鎧の方を着ていきます。金属製の鎧は、出来次第でいいので王都へ送っていただけますか?」
「うーん・・・それがですね。鎧のほうはけっこうダメージが大きくて。金額はそれほどでもないんですが、工程がほぼ作り直すのと同じ程度の日数になりそうなんですよ。なんか内側からも外側からも、かなり大きな力が加わったみたいで。マッチョさん出かけていたみたいですし、保留になっているものに手を加えるわけにもいきませんでしたし。」
・・・あれ。
ということは、私は鎧なしで王都に行かなくてはいけないのか?
「まぁマッチョさんの恰好は宗教上の正装というお話でしたし、その恰好で問題無いんじゃないでしょうか。」
私はこの街に来たときと同様に、短パンとタンクトップでこの街を出ていかないといけないのか。
しかも今度は大斧を背負っている。より不審者めいた見た目じゃないだろうか。子どもの頃にやったゲームで、これに似たような恰好のモンスターが出て来たような気がする。
「この服で王都へ行っても、大丈夫でしょうか?」
「宗教上の正装っていうお話を聞いてなければ、かなり怪しい人に見えちゃうかもしれないですね。デカい斧を背負ってますし。」ダメじゃないか。
「なにかこう、私が着られるような服ってすぐにできないですかね?」
「うーん、鎧の時ですらアレでしたからねぇ。二日でどうこうっていうのはちょっと・・・」
やはりこの恰好で行くしかないのか。
ソロウを離れる朝が来た。
宿の主人に挨拶をし、朝食を摂り、ギルドへと向かった。
「おい、なんだその恰好は。装備を整えておけって言ったよな?」
タンクトップに短パンに革製の靴。それに毛皮のマントに大斧。そりゃフェイスさんも怒る格好だ。
「修理が間に合わなかったんですよ。」
「あー、吹っ飛ばされてたもんな。鎧の替えなんて持ってないか。しかしその恰好で王都に入れるのか・・・」
そこはもうフェイスさんに頼るしかない。
「いちおう宗教上の正装なので、フェイスさん口添えお願いします。」
色々と不本意でこの恰好なのだ。宗教上の正装という話も間違いではない。
「ツイグ、お酒はほどほどに。できれば飲まないほうが筋肉は大きくなります。」
「了解っす。完全にお酒は止めれないでしょうけれども、しっかり憶えておくっす・・・」
隣に座っているツイグが吐きそうな顔で話している。昨日は調子に乗ってかなり飲んでいたからなぁ。そして私が馬車を運転するハメになっている。昨日習ったばかりなのに。
ハムを送ってもらう話は、私が出資した額を村が返すまでの利子としてタダで送ってもらえることになった。これでよほどの僻地ではない限り、当面どこに行ってもタンパク質の心配は無い。前途洋々だ。
利子など要らなかったのだが、タベルナ村の住人からすれば村の恩人にお金まで無利子で借りる、というワケにもいかないだろう。ありがたく利子をいただくことにした。できればハムブルクの製法も知りたかったが、村長の許可無しには教えられないし、そもそも村長しか知らないそうだ。よい回復食だったので、作り方を是非とも知りたい。
昨日休ませてもらった宿、あれは普通に宿だった。普通であることに驚いた。半年かそこらでここまで街が発展していることが凄い。次にもし会う機会があったら、あの村長さんは村長ではなく町長になっているかもしれない。
しかし素晴らしい発展の仕方だった。筋肉に必要な栄養と仕事がすべて揃っていた。旅になど行かないで、タベルナ村でのんびりと肉体労働をしながら筋トレをするような日々を送ってもいい気がした。もはや故郷に帰ることも無いだろう。あの村が私の第二の故郷になるのかもしれない。
ソロウに着いたらツイグに馬車の返還業務をやってもらい、私は武器屋さんへと向かった。装備を金属製へと変えることと、私の防具について打ち合わせをしたい。
「こんにちはー。」
「あ、マッチョさん。こんにちは。斧の方はもう仕上がってますよ。」
べったりついた魔物の血のりが消えて、ピカピカに仕上がっている。鞘についていた汚れも綺麗になった。お気に入りの革靴を磨きに出して帰ってきた時のようにご機嫌だ。
「いい仕上がりですね。鎧のほうは今後、金属製のものを使うことにしました。またお手数ですが、よろしくお願いします。」
「あれ。マッチョさん二日後にはソロウを出るんですよね?」
ああそうか。間に合わないのか。皮鎧だって急がせてしまったものな。
「二日ではできませんよね。じゃぁ皮鎧の方を着ていきます。金属製の鎧は、出来次第でいいので王都へ送っていただけますか?」
「うーん・・・それがですね。鎧のほうはけっこうダメージが大きくて。金額はそれほどでもないんですが、工程がほぼ作り直すのと同じ程度の日数になりそうなんですよ。なんか内側からも外側からも、かなり大きな力が加わったみたいで。マッチョさん出かけていたみたいですし、保留になっているものに手を加えるわけにもいきませんでしたし。」
・・・あれ。
ということは、私は鎧なしで王都に行かなくてはいけないのか?
「まぁマッチョさんの恰好は宗教上の正装というお話でしたし、その恰好で問題無いんじゃないでしょうか。」
私はこの街に来たときと同様に、短パンとタンクトップでこの街を出ていかないといけないのか。
しかも今度は大斧を背負っている。より不審者めいた見た目じゃないだろうか。子どもの頃にやったゲームで、これに似たような恰好のモンスターが出て来たような気がする。
「この服で王都へ行っても、大丈夫でしょうか?」
「宗教上の正装っていうお話を聞いてなければ、かなり怪しい人に見えちゃうかもしれないですね。デカい斧を背負ってますし。」ダメじゃないか。
「なにかこう、私が着られるような服ってすぐにできないですかね?」
「うーん、鎧の時ですらアレでしたからねぇ。二日でどうこうっていうのはちょっと・・・」
やはりこの恰好で行くしかないのか。
ソロウを離れる朝が来た。
宿の主人に挨拶をし、朝食を摂り、ギルドへと向かった。
「おい、なんだその恰好は。装備を整えておけって言ったよな?」
タンクトップに短パンに革製の靴。それに毛皮のマントに大斧。そりゃフェイスさんも怒る格好だ。
「修理が間に合わなかったんですよ。」
「あー、吹っ飛ばされてたもんな。鎧の替えなんて持ってないか。しかしその恰好で王都に入れるのか・・・」
そこはもうフェイスさんに頼るしかない。
「いちおう宗教上の正装なので、フェイスさん口添えお願いします。」
色々と不本意でこの恰好なのだ。宗教上の正装という話も間違いではない。
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