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24 マッチョさん、グランドマスターと手合せする
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練習場に行くとトレーニングをしていた人たちがザワつきだした。グランドマスターが練習場で直々に手合せをすることが珍しいのかもしれない。ソロウの練習場よりも広いが、設備はソロウとほとんど同じだ。というよりも、こちらが本元で他のギルドが本部を真似ているのだろう。
「さてと。防具も無いようであれば、寸止めで力量を図るしかないか。木刀を使いなさい。」
そう言われても、相手は老人で防具もつけていない。
「あー、ワシのことなら大丈夫。キミくらいなら防具をつける必要もない。そこのアホのように万一も無い。安心してかかってきなさい。」
急にドロスさんの圧が強くなった。やはり武器を持つとドロスさんは急に怖くなる。
「いきます。」
視線をぼやけさせ、袈裟切りからの小手を狙う。袈裟切りをしようと下ろそうとした瞬間に、腕が動かなくなった。ドロスさんの木刀が私の右手首を押さえている。モーションの途中で、筋肉が力を木刀に伝える前に押さえられたのか?気配すら感じられなかった。いつの間に動いていつの間に止められたのかすら分からない。
「ふむ。技量的には素人が少し剣術を習った程度だな。力は強いのだろうが、相手に力を出させない抑え方をされたら結果はこうなる。」
こういう技術もあるのか。研鑽を積んだ技術とは凄いものだな。
「あまりこういう服は好ましくないな。筋肉の動きでキミがなにをやりたいのか丸見えになってしまう。魔物の場合はここまで読み切ることは無いだろうが、人間の武芸者相手ではやられてしまうぞ。マントを身に付けるだけでも相手はかなりやりづらくなるから、せめてマントくらい使いなさい。」
そう言われても私は別に人類最強みたいなものを目指しているワケではない。
「いや、そんな技が使えるのは師匠だけですって・・・」
「ワシにできることなら、他の人間でもできるということだろう。」
「筋肉の動きと呼吸から相手の動き方を察知して、まばたきした瞬間に脱力して懐に踏み込んで、敵に力を出させないように身体を木刀で押さえるなんて、できないですって・・・俺も練習しましたけれど察知までしかできませんでしたよ・・・」
フェイスさん、読むことはできるのか。それだけでも凄いな。
ふーむ、筋肉の動きと呼吸か。
ということは、随意筋を動かせばフェイントとして使えるのではないだろうか?ちょっとだけ試してみたい。
「もう一本お願いします。」
「うん?なにか考えがあるみたいだな。よし、来なさい。」
「はい!」
さっき使った筋肉なら私も筋肉も憶えている。一息吐いて、呼吸を整える。息を吸って、止める。呼吸から読ませないためだ。まばたきも気合いで止める。役者は自分の意思でまばたきをコントロールできるという。随意筋であるならば、私にもできるかもしれない。一本目で動かした筋肉を動かす。
来た。動きがかろうじて見える。相撲の立ち合い、いやこれはバスケットボールのドライブのような超低空姿勢だ。スピードも凄いが身長差も相まってこれでは見えないはずだ。気合いでまばたきを止めていなければ消えたように見えていたはずだ。
懐に入ってくるであろうことは想定していた。最短最速ルートでまずは一本どうにか当てる。木刀の柄をドロスさんの身体に落とす。
「あ、イカン。」という言葉とともに、ドロスさんは左手で私のみぞおちを強打する。呼吸が乱された。それと同時にドロスさんの右手の木刀で私の木刀は飛ばされた。
「すまんの。大丈夫かねマッチョ君。」
「大丈夫です。少し痛いですが。」
急所を打たれて痛かったが、怪我をしたワケではない。しかしなんという判断の速さと手刀の速さだ。あっさり剣を捨てて、手刀で私の動きを止めに来た。こういうところが武芸者とただのトレーニーとの差だ。
「いま、なにをやったんだ・・・というか、なんで師匠がマッチョに一発食らいそうになったんだ・・・」
「フェイントじゃよ。腕を上げるときに使う筋肉を一瞬だけ動かして、ワシが誘導された。」
「師匠が誘導?なんですかそれ・・・」
「武芸というよりも、曲芸に近いものだな。久々に剣で怪我をするところだった。焦ってマッチョ君にも怪我をさせるところだったわい・・・」
あながち間違った指摘ではない。前に居た世界では、余興がわりに大胸筋を動かしてくれなどと頼まれたりしていたからだ。やっていることは変わらない。
「剣聖と言われた師匠でも初めて見るものですか?」
「うむ。筋肉でああいう事ができるものなのだな。あえて筋肉だけを動かしてフェイントにするとは、この年でも学べることはあるわい。あー、マッチョ君。今日はここまでだ。きちんと防具をつけないと、キミが怪我をする。」
たしかにそうだな。
「分かりました。ありがとうございました。」
「うん、後日もっとやろう。なかなか面白そうだ。で、ここにはもう一人、きちんと防具をつけている弟子がいるワケだ。」
フェイスさんがあからさまにビビっている。いやまぁドロスさん相手にビビらない人間などいないだろう。相当怖かったぞ。
「じゃぁ少しもんでやろう。フェイス来い。」
フェイスさん、死なないでくださいよ・・・
「さてと。防具も無いようであれば、寸止めで力量を図るしかないか。木刀を使いなさい。」
そう言われても、相手は老人で防具もつけていない。
「あー、ワシのことなら大丈夫。キミくらいなら防具をつける必要もない。そこのアホのように万一も無い。安心してかかってきなさい。」
急にドロスさんの圧が強くなった。やはり武器を持つとドロスさんは急に怖くなる。
「いきます。」
視線をぼやけさせ、袈裟切りからの小手を狙う。袈裟切りをしようと下ろそうとした瞬間に、腕が動かなくなった。ドロスさんの木刀が私の右手首を押さえている。モーションの途中で、筋肉が力を木刀に伝える前に押さえられたのか?気配すら感じられなかった。いつの間に動いていつの間に止められたのかすら分からない。
「ふむ。技量的には素人が少し剣術を習った程度だな。力は強いのだろうが、相手に力を出させない抑え方をされたら結果はこうなる。」
こういう技術もあるのか。研鑽を積んだ技術とは凄いものだな。
「あまりこういう服は好ましくないな。筋肉の動きでキミがなにをやりたいのか丸見えになってしまう。魔物の場合はここまで読み切ることは無いだろうが、人間の武芸者相手ではやられてしまうぞ。マントを身に付けるだけでも相手はかなりやりづらくなるから、せめてマントくらい使いなさい。」
そう言われても私は別に人類最強みたいなものを目指しているワケではない。
「いや、そんな技が使えるのは師匠だけですって・・・」
「ワシにできることなら、他の人間でもできるということだろう。」
「筋肉の動きと呼吸から相手の動き方を察知して、まばたきした瞬間に脱力して懐に踏み込んで、敵に力を出させないように身体を木刀で押さえるなんて、できないですって・・・俺も練習しましたけれど察知までしかできませんでしたよ・・・」
フェイスさん、読むことはできるのか。それだけでも凄いな。
ふーむ、筋肉の動きと呼吸か。
ということは、随意筋を動かせばフェイントとして使えるのではないだろうか?ちょっとだけ試してみたい。
「もう一本お願いします。」
「うん?なにか考えがあるみたいだな。よし、来なさい。」
「はい!」
さっき使った筋肉なら私も筋肉も憶えている。一息吐いて、呼吸を整える。息を吸って、止める。呼吸から読ませないためだ。まばたきも気合いで止める。役者は自分の意思でまばたきをコントロールできるという。随意筋であるならば、私にもできるかもしれない。一本目で動かした筋肉を動かす。
来た。動きがかろうじて見える。相撲の立ち合い、いやこれはバスケットボールのドライブのような超低空姿勢だ。スピードも凄いが身長差も相まってこれでは見えないはずだ。気合いでまばたきを止めていなければ消えたように見えていたはずだ。
懐に入ってくるであろうことは想定していた。最短最速ルートでまずは一本どうにか当てる。木刀の柄をドロスさんの身体に落とす。
「あ、イカン。」という言葉とともに、ドロスさんは左手で私のみぞおちを強打する。呼吸が乱された。それと同時にドロスさんの右手の木刀で私の木刀は飛ばされた。
「すまんの。大丈夫かねマッチョ君。」
「大丈夫です。少し痛いですが。」
急所を打たれて痛かったが、怪我をしたワケではない。しかしなんという判断の速さと手刀の速さだ。あっさり剣を捨てて、手刀で私の動きを止めに来た。こういうところが武芸者とただのトレーニーとの差だ。
「いま、なにをやったんだ・・・というか、なんで師匠がマッチョに一発食らいそうになったんだ・・・」
「フェイントじゃよ。腕を上げるときに使う筋肉を一瞬だけ動かして、ワシが誘導された。」
「師匠が誘導?なんですかそれ・・・」
「武芸というよりも、曲芸に近いものだな。久々に剣で怪我をするところだった。焦ってマッチョ君にも怪我をさせるところだったわい・・・」
あながち間違った指摘ではない。前に居た世界では、余興がわりに大胸筋を動かしてくれなどと頼まれたりしていたからだ。やっていることは変わらない。
「剣聖と言われた師匠でも初めて見るものですか?」
「うむ。筋肉でああいう事ができるものなのだな。あえて筋肉だけを動かしてフェイントにするとは、この年でも学べることはあるわい。あー、マッチョ君。今日はここまでだ。きちんと防具をつけないと、キミが怪我をする。」
たしかにそうだな。
「分かりました。ありがとうございました。」
「うん、後日もっとやろう。なかなか面白そうだ。で、ここにはもう一人、きちんと防具をつけている弟子がいるワケだ。」
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