異世界マッチョ

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25 マッチョさん、身の振り方を考える

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 グランドマスターに促されて、立派な応接セットへ座る。綺麗な秘書さんがお茶とお茶菓子を持ってきてくれた。ドロスさんが資料を持って上座へ座る。
 「あーいい汗かいたわい。」
 フェイスさんはボロボロですけれどね。
 「さて。わざわざギルド本部まで来てもらったのは、例の魔物災害と固有種の件だ。軍の報告書は読ませてもらった。あれは正式にオークキングと認められたそうだ。」
 「あー、その話なんですが。オークキングは伝説の魔物とされていましたよね。もともとソロウ近辺に伝説級の魔物が居たというよりも、追い詰められて生まれたとか、あるいはできたとか、そういう表現の方がしっくり来る気がします。まぁ俺の感想なんですがね。」
 「現場に居た者の感覚は馬鹿にはできんよ。やはり魔王が復活する前兆だとか、そういう類の不気味さを感じたということだな?」
 「そうです。ああいう大型固有種が出ること自体が、特別な意味を持っているのではないのだろうかと。俺とマッチョのどちらかがいなければソロウは落ちてましたよ。軍では倒せなかったでしょう。」
 もと将軍だけあって、フェイスさんはきちんと考えて話せるんだな。戦いにしか興味が無い人だと思っていた。
 「しかしなぁ。魔王が封じられた時代から数百年は経っているのだ。おとぎ話や伝説レベルの話を前に、王や他の種族たちが危機感を持てると思うか?」
 「まぁ無理でしょうな。ケツに火がつかないと誰も動かないでしょう。ましてや魔王など本当にいると信じている人間は、為政者の側に立たないでしょうから。」
 「魔石のサイズから推測するに、建国以来最大級と言ってもいいレベルの魔物だったそうだ。あの魔石の大きさで状況を判断してもらうしかないかもしれん。ま、相手が魔王なら打つ手もないだろうから、現状維持で魔物を退治していく方向になるだろう。」
 「初代王の伝説の通りであれば、精霊の恩寵を賜った種族が出てくるかもしれませんね。」
 「精霊伝説が本当であればな。」
 ああ、ずいぶん前に村長に聞いた話だな。人間王は、魔王を封じた勇者の一行の子孫なんだったっけか。
 ん?一行?
 ということは、人間王の他にも勇者の一行がいたということになる。種族ということは、人間以外だったのかもしれない。そういえば公衆浴場で龍族の浴衣をもらったな。他にどういう種族がいるんだろう?

 「ああそうだ。マッチョ君。キミ、なにか言ってないことがあるんじゃないのかね?魔物災害の絡みで。」
 なんだろう。
 あっ!あれか?魔物が勝手に逃げたやつか・・・
 「依頼を解決した帰り道で、街道とかでたまーに魔物が逃げていったりしてました。」
 「やっぱり報告漏れがあったか・・・通常の五倍の規模の魔物災害など、ワシも初めてでな。」
 「すみません。これ報告しないとマズかったのでしょうか?遠目でなにか動いたように見えたものを魔物が逃げたというのも、ちょっと言いづらくて。」
 魔物が逃げただけで村が救われる世界なのだ。ややこしい話にはしたくなかったが、結果としてややこしくしてしまったようだ。
 「謝る必要も報告の必要も無いよ。これも本来ならギルドマスターの仕事だ。」
 フェイスさんがビクリと動く。さすがにもう一度しごき倒されることは無いだろうと思うが。
 「ギルドメンバーの力を正確に把握し、ギルドメンバーが魔物に対してどう影響するのか考えるのもギルドマスターの仕事のうちだ。まぁキミの場合はワシから一本取りかけたり、フェイスから一本取ったり、オークキングを倒したり、技量と比べて本来の強さみたいなものがイマイチ分かりづらい。フェイスを責めるのも酷な話というものだ。実際のところ魔物災害は起きてしまったが、キミたち二人で大物を仕留めたワケだし、咎めるわけにもいかんわい。」
 あの魔物災害は、ほぼ私が引き起こしたものだったのか。まったく可能性として無いとは思っていなかったが、実際に言葉にされるとけっこうイヤな響きだ。私が適当に歩くだけで災害が起きるのか。
 「それで師匠に頼みがあるのですが。」
 「マッチョ君の事だろう?彼はひとまずギルド本部付けにして、ワシが鍛えよう。ソロウに帰ってもやる事が無いだろうしな。」
 どうにかするって、こういう事だったのか。
 「それに、彼は軍の管轄下に置かれることになるかもしれん。その辺を歩いているだけで魔物災害を引き起こすほどの火力を遊ばせておく理由も無いだろう。ワシが提督のままだったら、あえてこのカンチュウ周辺を歩かせて、魔物災害を人為的に起こすことも考える。王都防衛分の戦力を他に回せるからな。王都でも最近は物資の流通に影響が出始めていてな。」
 うーん、なんか道具みたいな扱いになるのか。それはイヤだなぁ。軍隊からの召集を断ったら、軍隊に追われたり拘束されたりするのだろうか。
 「あー、マッチョ君の意思はできるだけ尊重する形で話を進める。軍属に気が乗らないなら、軍ではなくギルド本部付けで私の直轄の冒険者として扱ってもいい。ただ、やはり普通の冒険者のようにどこへでも行けるというかたちにはワシでも許可できん。キミが行く先ではかなり高い確率で魔物災害が起きてしまうのだからな。」
 この世界での行動に制限がついてしまった。まぁ今までもそんなに街の外へ出歩いてはいなかったので、いまいちピンと来ていないのだが。
 「軍隊となると内情などが分からないので、ギルド本部付けということで話をつけてもらえないでしょうか?ギルドメンバーとしての仕事なら少しは分かりますし。」
 「ではそのように手配しよう。今日付けでキミはギルド本部の人間だ。軍から圧力があったらワシが対処しよう。」
 「師匠、すみません。」
 「ありがとうございます、ドロスさん。」
 ソロウからは離れたが、王都でギルドメンバーとして活動できるようだ。
 
 「ああそうだ。もう一件。人間王が明日キミたち二人と会ってみたいそうだ。」
 フェイスさんが盛大にお茶を噴いた。師匠に噴かないように我慢しようとしたので、ムチャクチャむせている。私は軽くフェイスさんの背中を叩いた。
 「私とフェイスさんに。用件はなんでしょうかね?」
 私のほうは、わざわざこの世界の人間の最大権力者と話したいことなど特に無い。
 「まぁ王都でも大型固有種出現と撃破の件はけっこう話題になっていたからな。固有種の解剖やらの結果を聞いて、見たことも無い大きさの魔石を見たら、現場にいた人間の話が聞きたくなったのではないのかな。」
 「マッチョ、お前その恰好で人間王とも会うのか・・・」
 「うーむ、たしかにマズい気もするが、なんだか変わった宗教を信仰しているのだと聞いている。宗教上の正装ということであれば、ワシから話を通しておけばなんとか・・・なるか?」
 「王都とはいえ、さすがにお前のサイズの服が簡単にあるとは思えないからなぁ・・・」
 おそらくこの国の歴史上初めて、私はタンクトップに短パンという恰好で王に謁見することになる。
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