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48 マッチョさん、翻訳者を派遣する
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ソロウの武器屋さんが来る前に、私は翻訳チームの進捗を確かめに行った。
かなりの数の写本を作るだけに留まらず、彼らはロゴスを中心として独自の辞書まで作り始めていた。ざっくり見せてもらったが瑕疵は無かった。どれだけ優秀だというのだ。
「うんざりするほど写本ができましたね。私がこれをぜんぶ読むんですか・・・」
「それなのですが、写本分はもう仮訳が出来てまして。」
写本と彼らが訳したテキストを読む。ふむ。分からない単語のところは空欄にしてある。これならかなりラクができそうだ。これまたざっくりと目を通したが、初代王が人族を統一する以前のものがかなり多い。この時代、既に初代王はトレーニングをしていたのだろうか?
「古そうな記述から翻訳を始めたのですか?」
「ええ。時系列が分からないと、あとの時代の言葉も分からなくなると思いまして。」
「ああ、たしかにそうですね。なるほど。」
魔王やトレーニングについての記述については、もっと後になってから出てくるだろう。魔王関連の記述が優先されるべきだが、前後の文脈が分からないと魔王についての記述も分からないかもしれない。彼等の方法を否定する理由もないし、この方向で続けさせてみよう。
彼等は私以上に文書の内容に興奮していた。
ほとんど謎だった初代人間王の業績が、その人間王自身の手で書かれているのだ。まったく謎だった英雄の生き方が分かるというのは、この世界に生きる人たちにとって自らのアイデンティティを確認することと同義であろう。
街道整理、諜報の強化、貧民の救済、水車や風車の利用、資源としての山の経営方針などが主に書かれていた。
しかしこれは、他国と戦うための内政戦術では無いな。
強国にいかに負けずに、かつ、いかに追いつくかを考えた末の発想に見える。こんなところから人族の統一国家まで向かっていくというのか?
「初代王の時代にどうやって人族を統一したのか、伝承も無いのですか?」
「無かったんです。だから興奮しているんですよ!」
「具体的な政策について書かれていますからね。国の歴史がひっくり返りますよ!」
「興奮して外部に出さないように。王の裁可が出てから表に出しましょう。」
「はい!」
どうやって統一を無し得たのか分からないが、ともかくこうやって統一国家がある以上、初代王は人族の統一という偉業を成し遂げたことは間違いが無い。
「そうだ。この翻訳チームの中で技術的な文書に強い人は誰ですか?」
「ロゴスですね。彼の父親はドワーフにまで会いに行って鍛治技術を習ってきた人でしたし、弟さんはソロウで鍛冶職人をやっているハズですよ。」
どこかで聞いたような話だ。
「あの威勢のいい武器屋さんでしょうか?」
「そうですそうです!」
ふーむ。兄なのに鍛冶職人を継がなかったのか。
仕事を継がなかった理由など聞かない方がいいな。誰にだってやりたくない事はある。ドワーフの肉体を見たいがために、慣れない外交官の真似事をしなければいけない状況だってあるのだ。
「ロゴスなら一人で作業をしても大丈夫でしょう。ドワーフ国で初代人間王が書いた技術文書を見せてもらいました。これらと同じ言語で書かれていてたいした量ではないのですが、技術的な文書なので私には読めませんでした。ロゴス、ドワーフ国へ行ってそれを翻訳してもらえませんか?私にも読めないレベルで、この世界で初めて読み解かれるテキストですが。」
「やります!行かせてください!」
おおお、と声が上がる。ドワーフ国と聞いて渋るかと思ったが、即答か。
まだ読み解かれていない古文書を読み解こうとしているのだ。ロゴスはこの世界の歴史に名を刻むことになるかもしれない。
「翻訳の下準備はドワーフ国に滞在しているあいだに私が済ませました。細部を向こうの技術者と詰めて、実際になにを作ることができるのかやってみてください。」
「おお、そこまでやっていただけたのでしたら、ドワーフの里の翻訳の方が早くできてしまうかもしれません。すごく楽しみです!初代王の時代には今以上の技術があった可能性がある、という見方もありますからね!」
「翻訳が終わったら、図も含めて写本を持ち帰ってください。ドワーフ王の許可はとってあります。」
「分かりました。さっそく明日にでも出立します。なにが書いてあるのか楽しみです!」
武器っぽいものもいくつかあったが、実際にはトレーニング機材だ。まぁここでは黙っておこう。
弟さんが人間王やドワーフ王に近々会う話も、まぁ黙っていてもいいだろう。兄弟で話があるなら二人で勝手にやるだろう。ややこしそうな人の家の事情に首を突っ込むものではない。
かなりの数の写本を作るだけに留まらず、彼らはロゴスを中心として独自の辞書まで作り始めていた。ざっくり見せてもらったが瑕疵は無かった。どれだけ優秀だというのだ。
「うんざりするほど写本ができましたね。私がこれをぜんぶ読むんですか・・・」
「それなのですが、写本分はもう仮訳が出来てまして。」
写本と彼らが訳したテキストを読む。ふむ。分からない単語のところは空欄にしてある。これならかなりラクができそうだ。これまたざっくりと目を通したが、初代王が人族を統一する以前のものがかなり多い。この時代、既に初代王はトレーニングをしていたのだろうか?
「古そうな記述から翻訳を始めたのですか?」
「ええ。時系列が分からないと、あとの時代の言葉も分からなくなると思いまして。」
「ああ、たしかにそうですね。なるほど。」
魔王やトレーニングについての記述については、もっと後になってから出てくるだろう。魔王関連の記述が優先されるべきだが、前後の文脈が分からないと魔王についての記述も分からないかもしれない。彼等の方法を否定する理由もないし、この方向で続けさせてみよう。
彼等は私以上に文書の内容に興奮していた。
ほとんど謎だった初代人間王の業績が、その人間王自身の手で書かれているのだ。まったく謎だった英雄の生き方が分かるというのは、この世界に生きる人たちにとって自らのアイデンティティを確認することと同義であろう。
街道整理、諜報の強化、貧民の救済、水車や風車の利用、資源としての山の経営方針などが主に書かれていた。
しかしこれは、他国と戦うための内政戦術では無いな。
強国にいかに負けずに、かつ、いかに追いつくかを考えた末の発想に見える。こんなところから人族の統一国家まで向かっていくというのか?
「初代王の時代にどうやって人族を統一したのか、伝承も無いのですか?」
「無かったんです。だから興奮しているんですよ!」
「具体的な政策について書かれていますからね。国の歴史がひっくり返りますよ!」
「興奮して外部に出さないように。王の裁可が出てから表に出しましょう。」
「はい!」
どうやって統一を無し得たのか分からないが、ともかくこうやって統一国家がある以上、初代王は人族の統一という偉業を成し遂げたことは間違いが無い。
「そうだ。この翻訳チームの中で技術的な文書に強い人は誰ですか?」
「ロゴスですね。彼の父親はドワーフにまで会いに行って鍛治技術を習ってきた人でしたし、弟さんはソロウで鍛冶職人をやっているハズですよ。」
どこかで聞いたような話だ。
「あの威勢のいい武器屋さんでしょうか?」
「そうですそうです!」
ふーむ。兄なのに鍛冶職人を継がなかったのか。
仕事を継がなかった理由など聞かない方がいいな。誰にだってやりたくない事はある。ドワーフの肉体を見たいがために、慣れない外交官の真似事をしなければいけない状況だってあるのだ。
「ロゴスなら一人で作業をしても大丈夫でしょう。ドワーフ国で初代人間王が書いた技術文書を見せてもらいました。これらと同じ言語で書かれていてたいした量ではないのですが、技術的な文書なので私には読めませんでした。ロゴス、ドワーフ国へ行ってそれを翻訳してもらえませんか?私にも読めないレベルで、この世界で初めて読み解かれるテキストですが。」
「やります!行かせてください!」
おおお、と声が上がる。ドワーフ国と聞いて渋るかと思ったが、即答か。
まだ読み解かれていない古文書を読み解こうとしているのだ。ロゴスはこの世界の歴史に名を刻むことになるかもしれない。
「翻訳の下準備はドワーフ国に滞在しているあいだに私が済ませました。細部を向こうの技術者と詰めて、実際になにを作ることができるのかやってみてください。」
「おお、そこまでやっていただけたのでしたら、ドワーフの里の翻訳の方が早くできてしまうかもしれません。すごく楽しみです!初代王の時代には今以上の技術があった可能性がある、という見方もありますからね!」
「翻訳が終わったら、図も含めて写本を持ち帰ってください。ドワーフ王の許可はとってあります。」
「分かりました。さっそく明日にでも出立します。なにが書いてあるのか楽しみです!」
武器っぽいものもいくつかあったが、実際にはトレーニング機材だ。まぁここでは黙っておこう。
弟さんが人間王やドワーフ王に近々会う話も、まぁ黙っていてもいいだろう。兄弟で話があるなら二人で勝手にやるだろう。ややこしそうな人の家の事情に首を突っ込むものではない。
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