56 / 133
56 マッチョさん、旅に出る
しおりを挟む
私はフェイスさんに、ドワーフの里での出来事を話した。フェイスさんはものすごく楽しそうに聞いてくれるな。
「へぇー。魔物災害に固有種が二体。精霊の恩寵を受けた勇者まで出てきたのか。で、精霊の恩寵をもらえる場所まで見つけたと。んで初代王の高炉の復元かぁ。お前は面白そうでいいなぁ。ソロウのギルマスはヒマだぞ。そこそこ強くなってきたギルドメンバーを鍛え上げるのはまぁまぁ面白いけれどな。」
「ですが、どうにも私は戦うのには向いていないのではないかと考えるようになりまして。」
フェイスさんが呆れ顔になった。なにかヘンなことでも言ったのだろうか?
「あのなぁ。俺から一本取れて、剣聖に鍛え上げてもらえる戦士なんてそうそういないぞ?人間の中ではお前は飛び切りに強い方なんだよ。ソロウのギルドメンバーが多少強くなったとはいえ、俺から一本取ったやつなんかまだいないんだからな。」
私はけっこう強かったのか。あんまり自覚が無かった。
「お前の場合、やたら固有種に当たるからなぁ。あれは倒しきれなくても恥でもなんでもねぇんだよ。そもそも人間ひとりで倒せるような強さじゃねぇし、抑え込めて時間を稼げたら上出来だ。だいたい死人も出てないだろうが。」
「まったく強さの実感が湧かないんですよねぇ。」
「はぁぁ・・・ヘンなところで手間がかかるな、お前。やっぱりあれか。敵を倒した数が足りねぇのかなぁ・・・逃げちゃうもんなぁ・・・」
フェイスさんがなにやら考え込んでいる。
「よし、俺も休暇を取ろう。マッチョ、お前の休暇はあと何日だ?」
「今日も含めて14日分ですが。」
「その休暇、俺が貰うぞ。お前に見てもらいたい場所もあるし、ついでに自信もつけさせてやる。」
そういうやつを求めてソロウに寄ったワケでは無いのだが。
「ちょっと話が変わりますけれど、以前に遺跡で初代王の暗号文を見たって話をしていましたよね?それってどこですか?この話を聞きに来たんですよ。」
「都合がいいな。お前に見せたい場所があるってのも、そこが通り道だ。ついでに見ていけばいい。」
なかば強引に決められたが、私はフェイスさんと休暇を使って旅に出ることになった。
「ギルマスとマッチョさんとご一緒させていただくなんて光栄っす!」
ツイグも連れていくことになった。途中から水や食料が手に入らなくなるので、荷物持ちが必要なのだそうだ。ぷらぷらしていたので聞いてみたら二つ返事でついて来た。装備を整え、いつものハムをいちおう15日分。けっこうな重量になったが旅先で食料が手に入らないのであれば仕方が無い。
「で、どこ行くんすか?」
「タベルナの先のさらに先。限界領域までだ。」
「ま、マジっすか・・・あのー俺・・・」
「来るんだよな?」
「は、はいっす・・・」
ツイグがビビりまくっている。
「どういう所なんですか、そこ。」
「人間というか、どの種族もそこから先までは行けないっていう場所だ。俺たち冒険者の限界を知る場所でもある。水と食料がそこから先は手に入らないからな。」
つまり人間が生きていくことのできない場所まで旅をするのか。
「そこになにがあるんですか?」
「あそこにも初代王の痕跡があるんだ。初代王ですらそこから先には進めなかったと言われている。一度お前も行った方がいいと思ってな。人間が人間の小ささを知るには、あそこに行くのが一番だ。」
僻地の極みみたいな場所に行くのか。あんまり楽しそうな旅という感じでは無いなぁ。
「いや、それよりもトロールっすよ・・・シャレになんないっす・・・」
その魔物の名前は初めて聞いたな。今まで行った土地では出なかった魔物だ。
「だからいいんじゃねぇか。魔物災害も起きないからマッチョが行っても問題無いしな。」
うーん。なんだかイヤな予感がする。
「トロールってどういう魔物なんですか?」
「俺の知る限り飛び切りのアホだ。連携もしないで襲ってくるんだが、倒しても倒しても引かねぇし逃げねぇ。つまり魔物災害自体が起きねぇ。」
「つまり、ずーっとトロールに襲われ続けるんです。昼も夜も関係なく・・・」
ぜんぜん楽しそうな旅では無いな。ひたすらしんどそうだ。
「ゴブリンを100匹倒しても自分の強さに納得できないんだろ?好きなだけトロールを倒して自信をつけたらいい。他の魔物と違って逃げないしな。」
もう少しやり方が無かったのだろうか?
いや、荒療治もまたひとつの方法だな。筋トレで肉体に変化が起きることで自信がつくように、魔物を倒すことを積み重ねて自身の強さに自信をつけていくしかないのかもしれない。
「へぇー。魔物災害に固有種が二体。精霊の恩寵を受けた勇者まで出てきたのか。で、精霊の恩寵をもらえる場所まで見つけたと。んで初代王の高炉の復元かぁ。お前は面白そうでいいなぁ。ソロウのギルマスはヒマだぞ。そこそこ強くなってきたギルドメンバーを鍛え上げるのはまぁまぁ面白いけれどな。」
「ですが、どうにも私は戦うのには向いていないのではないかと考えるようになりまして。」
フェイスさんが呆れ顔になった。なにかヘンなことでも言ったのだろうか?
「あのなぁ。俺から一本取れて、剣聖に鍛え上げてもらえる戦士なんてそうそういないぞ?人間の中ではお前は飛び切りに強い方なんだよ。ソロウのギルドメンバーが多少強くなったとはいえ、俺から一本取ったやつなんかまだいないんだからな。」
私はけっこう強かったのか。あんまり自覚が無かった。
「お前の場合、やたら固有種に当たるからなぁ。あれは倒しきれなくても恥でもなんでもねぇんだよ。そもそも人間ひとりで倒せるような強さじゃねぇし、抑え込めて時間を稼げたら上出来だ。だいたい死人も出てないだろうが。」
「まったく強さの実感が湧かないんですよねぇ。」
「はぁぁ・・・ヘンなところで手間がかかるな、お前。やっぱりあれか。敵を倒した数が足りねぇのかなぁ・・・逃げちゃうもんなぁ・・・」
フェイスさんがなにやら考え込んでいる。
「よし、俺も休暇を取ろう。マッチョ、お前の休暇はあと何日だ?」
「今日も含めて14日分ですが。」
「その休暇、俺が貰うぞ。お前に見てもらいたい場所もあるし、ついでに自信もつけさせてやる。」
そういうやつを求めてソロウに寄ったワケでは無いのだが。
「ちょっと話が変わりますけれど、以前に遺跡で初代王の暗号文を見たって話をしていましたよね?それってどこですか?この話を聞きに来たんですよ。」
「都合がいいな。お前に見せたい場所があるってのも、そこが通り道だ。ついでに見ていけばいい。」
なかば強引に決められたが、私はフェイスさんと休暇を使って旅に出ることになった。
「ギルマスとマッチョさんとご一緒させていただくなんて光栄っす!」
ツイグも連れていくことになった。途中から水や食料が手に入らなくなるので、荷物持ちが必要なのだそうだ。ぷらぷらしていたので聞いてみたら二つ返事でついて来た。装備を整え、いつものハムをいちおう15日分。けっこうな重量になったが旅先で食料が手に入らないのであれば仕方が無い。
「で、どこ行くんすか?」
「タベルナの先のさらに先。限界領域までだ。」
「ま、マジっすか・・・あのー俺・・・」
「来るんだよな?」
「は、はいっす・・・」
ツイグがビビりまくっている。
「どういう所なんですか、そこ。」
「人間というか、どの種族もそこから先までは行けないっていう場所だ。俺たち冒険者の限界を知る場所でもある。水と食料がそこから先は手に入らないからな。」
つまり人間が生きていくことのできない場所まで旅をするのか。
「そこになにがあるんですか?」
「あそこにも初代王の痕跡があるんだ。初代王ですらそこから先には進めなかったと言われている。一度お前も行った方がいいと思ってな。人間が人間の小ささを知るには、あそこに行くのが一番だ。」
僻地の極みみたいな場所に行くのか。あんまり楽しそうな旅という感じでは無いなぁ。
「いや、それよりもトロールっすよ・・・シャレになんないっす・・・」
その魔物の名前は初めて聞いたな。今まで行った土地では出なかった魔物だ。
「だからいいんじゃねぇか。魔物災害も起きないからマッチョが行っても問題無いしな。」
うーん。なんだかイヤな予感がする。
「トロールってどういう魔物なんですか?」
「俺の知る限り飛び切りのアホだ。連携もしないで襲ってくるんだが、倒しても倒しても引かねぇし逃げねぇ。つまり魔物災害自体が起きねぇ。」
「つまり、ずーっとトロールに襲われ続けるんです。昼も夜も関係なく・・・」
ぜんぜん楽しそうな旅では無いな。ひたすらしんどそうだ。
「ゴブリンを100匹倒しても自分の強さに納得できないんだろ?好きなだけトロールを倒して自信をつけたらいい。他の魔物と違って逃げないしな。」
もう少しやり方が無かったのだろうか?
いや、荒療治もまたひとつの方法だな。筋トレで肉体に変化が起きることで自信がつくように、魔物を倒すことを積み重ねて自身の強さに自信をつけていくしかないのかもしれない。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
異世界ママ、今日も元気に無双中!
チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。
ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!?
目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流!
「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」
おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘!
魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!
少し冷めた村人少年の冒険記 2
mizuno sei
ファンタジー
地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。
不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。
旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。
異世界ほのぼの牧場生活〜女神の加護でスローライフ始めました〜』
チャチャ
ファンタジー
ブラック企業で心も体もすり減らしていた青年・悠翔(はると)。
日々の疲れを癒してくれていたのは、幼い頃から大好きだったゲーム『ほのぼの牧場ライフ』だけだった。
両親を早くに亡くし、年の離れた妹・ひなのを守りながら、限界寸前の生活を続けていたある日――
「目を覚ますと、そこは……ゲームの中そっくりの世界だった!?」
女神様いわく、「疲れ果てたあなたに、癒しの世界を贈ります」とのこと。
目の前には、自分がかつて何百時間も遊んだ“あの牧場”が広がっていた。
作物を育て、動物たちと暮らし、時には村人の悩みを解決しながら、のんびりと過ごす毎日。
けれどもこの世界には、ゲームにはなかった“出会い”があった。
――獣人の少女、恥ずかしがり屋の魔法使い、村の頼れるお姉さん。
誰かと心を通わせるたびに、はるとの日常は少しずつ色づいていく。
そして、残された妹・ひなのにも、ある“転機”が訪れようとしていた……。
ほっこり、のんびり、時々ドキドキ。
癒しと恋と成長の、異世界牧場スローライフ、始まります!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる