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127 マッチョさん、告白する
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私が異世界人であることには、それほど驚かれはしなかった。どうにもこの世界の一般的な人族と私は違って見えていたようだ。言われてみたらたしかに異世界人でも違和感は無いな、という程度の受け入れ方だった。体形以外はそれほどの違いは無かったと思うのだが。
魔王の封印方法については絶句していた。魔王と戦い魔力を切れさせ、その瞬間に大精霊の力で魔王をこの大陸に封印する。その時から私は大精霊の力が続く限り、この大地に魔王を封印し続ける。封印が成功しようが失敗しようが、私はもう帰れないのだ。
「マッチョさん・・・あんまりじゃないですか・・・」
ロキさんは泣きそうだ。
「・・・どうにかならぬのか?」
「他に方法があればいいんですが・・・」
「そういうのはイヤだニャァ・・・」
「私もです。いかに大精霊に選ばれたからといっても・・・残される側も辛いですよ。」
だが、他にも伝えなければいけない話がある。
「もう一つ大事な話があるんです。精霊の力が弱まっているという話はしましたね?これが最後の魔王封印になるかもしれません。」
「最後ってどういうことなのかニャ?」
「数百年後になるでしょうが、再び魔王を封印するほどの力を大精霊が持っていないということです。」
また静かになってしまった。
我々は魔王を封印しにこの地までやってきた。だが封印が成功しても根本的な解決にはならないのだ。
「魔王の封印なんて止めて帰ってしまいましょうか?マッチョさんが犠牲になるなんて・・・」
「魔王がこの大陸にいる限り、魔物はより多くより強力なものが出てくるはずです。辛いですがやはり封印はしなくてはいけません。私たちの責務です。」
「だーかーらー、そういうのはイヤだニャァ・・・」
「ロキ殿、ミャオ殿。それ以上は言わないでくれないか・・・我も揺らぐ・・・」
いいタイミングでジェイさんが止めてくれた。私も悲しむ仲間の姿を見て揺らぎそうになった。
「そんなに悪くなかったですよ、私の人生。前の世界で一度死んだはずなのにいい仲間に巡り合えましたし。トレーニングも続けられました。それにこの身体です。一生を賭けてもこの肉体を体験することはできなかったでしょう。」
実際に今の私の身体を作りあげようと思ったところで、人の力でどうにかなる類のものでは無い。筋肉ではなく腱や関節の方が耐えられないだろう。トレーニーであった時の私は人間という生物だったのだ。種としての限界をトレーニングで超えることはできない。
「マッチョ殿。マッチョ殿が居た世界の話を聞かせてもらえないだろうか?そもそもその世界ではマッチョ殿のように筋肉についての知識や鍛錬法をよく知っているのが普通なのだろうか?」
私は夢中になって筋トレの話をした。ランドクルーザー岡田との出会い、トレーニーとしての日々、この世界に来てからのトレーニングの悩み、タンパク質の重要性、補給のタイミングの議論、マシントレーニングによる追い込み。いくらでも話はできた。
気づいたらミャオさんとフィンさんが寝ていた。マニアックな話にはあまり興味が無いようだ。
「結局はマッチョ殿が肉体を鍛え上げることが好きだったということ以外、異世界のことは分からなかったな。」ジェイさんの顔に笑顔が戻ってきた。
「トレーニングという単語も初めて聞きましたし、マッチョさんの知識のおかげで特に僕たち二人は精霊に力を借りても反動が小さくなったんです。お話自体は興味深かったんですが、まったく別の世界のお話も聞けると思っていたんですよね。」
どうにも私は筋トレの話になると熱くなってしまう。私は少しだけ自分が居た世界の話をした。
「魔物が襲ってこない世界というのも羨ましいものだな・・・」
「辛いですけれど作りましょう、そういう世界を。たとえ数百年だとしても・・・」
ほとんど筋トレの話しかしていないが、この二人はうまいことハラが座ったようだ。
ふと思い立って夜空を見上げてみる。この世界にも月はあるし星もある。私が居た世界の星がどういう配置だったのか憶えていない。私は自分の肉体ばかりを見ていて、世界の在り方や星のまたたきなど真剣に見たことが無かった。それほどまでにトレーニングに夢中になっていたとも言えるし、あまりにも視野が狭いまま生きて来たという気もする。
明日、私たちは魔王と戦う。
大精霊の触媒となり封印に協力した幾人もの人たちも、こういう落ち着かない夜を迎えたのだろう
魔王の封印方法については絶句していた。魔王と戦い魔力を切れさせ、その瞬間に大精霊の力で魔王をこの大陸に封印する。その時から私は大精霊の力が続く限り、この大地に魔王を封印し続ける。封印が成功しようが失敗しようが、私はもう帰れないのだ。
「マッチョさん・・・あんまりじゃないですか・・・」
ロキさんは泣きそうだ。
「・・・どうにかならぬのか?」
「他に方法があればいいんですが・・・」
「そういうのはイヤだニャァ・・・」
「私もです。いかに大精霊に選ばれたからといっても・・・残される側も辛いですよ。」
だが、他にも伝えなければいけない話がある。
「もう一つ大事な話があるんです。精霊の力が弱まっているという話はしましたね?これが最後の魔王封印になるかもしれません。」
「最後ってどういうことなのかニャ?」
「数百年後になるでしょうが、再び魔王を封印するほどの力を大精霊が持っていないということです。」
また静かになってしまった。
我々は魔王を封印しにこの地までやってきた。だが封印が成功しても根本的な解決にはならないのだ。
「魔王の封印なんて止めて帰ってしまいましょうか?マッチョさんが犠牲になるなんて・・・」
「魔王がこの大陸にいる限り、魔物はより多くより強力なものが出てくるはずです。辛いですがやはり封印はしなくてはいけません。私たちの責務です。」
「だーかーらー、そういうのはイヤだニャァ・・・」
「ロキ殿、ミャオ殿。それ以上は言わないでくれないか・・・我も揺らぐ・・・」
いいタイミングでジェイさんが止めてくれた。私も悲しむ仲間の姿を見て揺らぎそうになった。
「そんなに悪くなかったですよ、私の人生。前の世界で一度死んだはずなのにいい仲間に巡り合えましたし。トレーニングも続けられました。それにこの身体です。一生を賭けてもこの肉体を体験することはできなかったでしょう。」
実際に今の私の身体を作りあげようと思ったところで、人の力でどうにかなる類のものでは無い。筋肉ではなく腱や関節の方が耐えられないだろう。トレーニーであった時の私は人間という生物だったのだ。種としての限界をトレーニングで超えることはできない。
「マッチョ殿。マッチョ殿が居た世界の話を聞かせてもらえないだろうか?そもそもその世界ではマッチョ殿のように筋肉についての知識や鍛錬法をよく知っているのが普通なのだろうか?」
私は夢中になって筋トレの話をした。ランドクルーザー岡田との出会い、トレーニーとしての日々、この世界に来てからのトレーニングの悩み、タンパク質の重要性、補給のタイミングの議論、マシントレーニングによる追い込み。いくらでも話はできた。
気づいたらミャオさんとフィンさんが寝ていた。マニアックな話にはあまり興味が無いようだ。
「結局はマッチョ殿が肉体を鍛え上げることが好きだったということ以外、異世界のことは分からなかったな。」ジェイさんの顔に笑顔が戻ってきた。
「トレーニングという単語も初めて聞きましたし、マッチョさんの知識のおかげで特に僕たち二人は精霊に力を借りても反動が小さくなったんです。お話自体は興味深かったんですが、まったく別の世界のお話も聞けると思っていたんですよね。」
どうにも私は筋トレの話になると熱くなってしまう。私は少しだけ自分が居た世界の話をした。
「魔物が襲ってこない世界というのも羨ましいものだな・・・」
「辛いですけれど作りましょう、そういう世界を。たとえ数百年だとしても・・・」
ほとんど筋トレの話しかしていないが、この二人はうまいことハラが座ったようだ。
ふと思い立って夜空を見上げてみる。この世界にも月はあるし星もある。私が居た世界の星がどういう配置だったのか憶えていない。私は自分の肉体ばかりを見ていて、世界の在り方や星のまたたきなど真剣に見たことが無かった。それほどまでにトレーニングに夢中になっていたとも言えるし、あまりにも視野が狭いまま生きて来たという気もする。
明日、私たちは魔王と戦う。
大精霊の触媒となり封印に協力した幾人もの人たちも、こういう落ち着かない夜を迎えたのだろう
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