ブラック企業「勇者パーティ」をクビになったら、魔王四天王が嫁になりました。~転職先はホワイト企業な魔王軍〜

歩く、歩く。

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87話 エルフと魔王軍VSドラゴンと人間軍

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<ラズリ視点>

『ばっはっは! 流石はエルフ軍最強の巫女だ、やるではないか!』

 地上最強の生物、ディアボロス……想像以上の化け物だ。
 空を蹴り、全身全霊の一撃を何発も叩き込んでいる。だけど龍王は堪えた様子が無い、なんてタフネスだ。
 ディアボロスの爪をかわし、どてっぱらに蹴りを叩き込む。真正面から直撃したけど、やっぱりダメージは薄い……。

『この内臓に響くかのような一打、ますます気に入った! さぁ、もっと踊れ! 我が血肉を歓喜で満たしてくれ!』
「根っからの戦闘狂め!」

 ディアボロスが巨大な火球を撃ち出した。ギリギリで回避すると、轟音と共に山が爆発し、山脈が溶けて消えた。
 そのまま山火事に発展し、黒煙が上がる。私の拳圧よりも遥かに威力が高い。

『かぁーっ! やっぱ二日酔いではあの程度の威力しか出ないか』
「なんだと?」
『ワシが万全ならばクレーターが出来ていたわ、やはりハンデがあると苦しいのぉ』
「そんな、遊び半分で我々を襲ったのか」
『当然。我が生涯、常に戦場。戦いの中にこそわが青春はある。だが、近頃はハンデをつけねば戦いにならん奴らが多くてな。貴様なら、万全で戦っても面白いだろうがなぁ』

 ディアボロスがにやりとする。くそ、とことんまでエルフをなめているな。
 だけどハンデ付きでも相当な相手だ。果たして私は勝てるだろうか……否!
 エルフの国にはワードがいる、私の敗北は、愛する人の死を意味する。ならば、何があろうと絶対に勝たねばならないんだ!

「それは同時に、ディックに対しても言えるか」

 彼がフェイスを撃退しなければ、同様にエルフの国は終わる。勇者はそれだけ脅威の存在だ。
 ディアボロスは私が必ず倒す、だからディック、頼む。その無敵の勇者を倒してくれ!

  ◇◇◇
<シラヌイ視点>

 ディックとフェイスは、激しい剣戟戦を続けていた。
 フェイスは新たに手に入れた龍王剣を駆使してディックに迫り、時折エンディミオンでフェイントをかけ、圧を掛けている。
 だけどディックは互角以上に戦っていた。
 ゾーンに入っていないにも関わらず、ハヌマーンと刀を駆使して一進一退の戦いを繰り広げている。私から見て、両者の実力はほぼ拮抗していた。

「勇者様! 今援護に」
「向かわせるわけないでしょう」

 でもって私は、邪魔な勇者パーティの女どもをまとめて相手にしていた。
 女剣士をファイアウォールでけん制し、炎の鳥を何羽も召喚して火の粉を降らせる。世界樹はラピスが守っているから、何にも気にせず魔法が使えるわ。

「ええい、相手が四天王でも、しょせん最弱! 勇者パーティの魔法使いとして」
「御託はいいから魔法を使いなさい」

 ぐだぐだ煩い女魔法使いにファイアボールを叩き込む。戦いは肩書でも、口先でもない。自分の力で強さを証明する物よ。

「うぐっ、なんて威力……でも炎が相手なら水で勝てるはず! ウォーターブラスト!」
「馬鹿ね、どうして炎が水に負けるのよ」

 知ってるかしら、水は火に当たると蒸発するのよ。
 魔法使いが出した水流に炎をぶつけ、一瞬で蒸発させる。水蒸気爆発で魔法使いが吹っ飛んだ。
 ごめんなさい、レベルが違いすぎたわ。色んな魔法が使えるようだけど、そんな目移りした魔法使いが、一つの事を極限まで練り上げた魔法使いに勝てるわけがないのよ。

「傷ついたらすぐに教えて、私が回復するから!」
「おおっと、そいつはちょっと勘弁してほしいな」

 女僧侶が回復魔法を使おうとした時、ワイルが胡椒玉で詠唱を止めた。

「おんのれぇ、ワイル・D・スワン!」
「怒るなって、美女が台無しになるよ。それとクマちゃんパンツはやめた方がよくない?」
「え? な、ああ!? パンツ盗まれた!?」

 襲ってくる女剣士は「シャッフル」で位置を入れ替える事で対応し、「スナッチ」で装備や靴、果ては下着を奪って行動を阻害していた。
 戦闘は門外漢と言っていたけど、立ち回りがなかなか上手い。魔導具を駆使して相手の出足を止め、魔法使いの私を援護している。
 自分の体を盾にするのではなく、小手先の技術で翻弄し、壁役になっていた。

『私達の国を、勇者に壊されるもんかっ!』

 そしてラピスが枝葉を操り、勇者パーティを打ち据えた。
 刃のような葉が襲い掛かり、枝が鞭のように振り降ろされる。私達の猛攻にたまらず後退し、勇者パーティは沈黙した。

「こいつら、弱いわね」
「確かになぁ。全員いい女だが、俺に翻弄されるようじゃおしまいさ」

 ワイルも飄々と同意する。息切れしていないけど、あんた本当に戦闘苦手なの?
 それはさておき、所詮フェイスが自分の夜の相手をするためだけにそろえた女だ、実力なんて二束三文よ。
 恐れるに足る相手じゃない、とっとと倒してディックを援護しなくちゃ。

「せいっ!」
「くのぉ!」

 その時だった。激しい金属音が鳴り、ディックに視線を向けた。
 彼はゾーンに入っている。でもそれは、フェイスも同じだった。

「てめぇ、どうしてゾーンを使える」
「お前こそ、なぜその力を隠していた」
「隠してたんじゃねぇ、俺も最近入れるようになっただけだ。てめぇを殺すためにな!」

 ディックを倒すためだけに、ゾーンの境地に入ったというの? どれだけ執着燃やしてんのよ、あのクソ勇者。
 にしても、龍王剣ディアボロス。厄介な剣だわ。
 魔導具じゃないからハヌマーンの隙を突く事が出来る上、剣自体の性能も相当な物。一振り毎に空気が切り裂かれ、真空に空気が吸い込まれる爆音が轟いている。
 その上、剣の軌跡に黒いオーラがまとわりついている。オーラは時間差で飛ぶ斬撃となり、ディックに波状攻撃を仕掛けていた。

「煌刃剣!」

 けどディックだって負けていない。オーラの斬撃を煌力の剣でかき消して食らいついているし、イザヨイさんの力を受けた刀は、ディアボロスに負けない名刀、互角以上に戦えている。
 エンディミオンはハヌマーンでけん制しているから決め手にならない。力量に殆ど差がついておらず、勝負の決め手が全く見えなかった。

「本当にムカつく野郎だ。つい最近まで俺より遥かに弱い雑魚だってのに、いつの間にか俺とタメ張る力を身に着けやがって。……うぜぇが、認めるしかねぇな」

 フェイスはため息交じりにつぶやいた。あの勇者が、正当にディックを評価している。
 意外な発言に驚き、私は攻撃の手を止めた。その隙に魔法使いが雷魔法を撃ってくるけど、

「あんたは黙りなさい」

 勘違いしないでほしいわね。別に油断したわけじゃない、あんたら如き、よそ見していても勝てるのよ。
 四天王シラヌイを侮った事、きちんと後悔してもらわないとね。

「闊槭>髯阪j繧阪?∫⊃蜴??辟斐?ア昴′蝟ー繧峨≧縺ケ縺埼ュゅ?縺昴%縺ォ縺ゅk縲∵ュ灘万縺帙h縲∫汲蝟懊○繧医?n迯??迚吶〒逕倡セ弱↑繧玖エ?r鬟溘i縺?ース縺上☆縺後>縺??」

 古代魔法の詠唱に勇者パーティが怯え始める。思い知りなさい、これが私とあんたらの、女としての格の違いよ。

「縺?〒繧医?∬ヲ九∴縺悶k辟斐?迚吶?、繧ケ繝舌繝茨シ!」

 勇者パーティに巨大な炎の牙が襲い掛かる。次元を食いちぎる炎の魔物よ、食われれば魂もろとも冥界に引きずり込まれるわ。
 だけど、女剣士がオベリスクを振るうと、呼び出した魔物が一刀両断された。

「お、おお……これが輝龍剣、オベリスクの力……」

 あのね、ぶった切った本人が驚いてどうすんのよ。
 私の古代魔法に心が折れたか、勇者パーティの戦意が無くなった。もうあいつらは気にする必要はないわ、格付けはすんだもの。
 でもかなりの名剣みたいね、オベリスクって剣も。正直、あの女剣士が持つにはもったいないレベルの力だわ。

「おいディック、てめぇが初めてだよ、ここまで俺と戦える奴は」

 だけどまだ、フェイスだけは終わっていない。
 エンディミオンを握りしめ、深呼吸をしている。丹田に意識を集めた深呼吸だ。

「だがな、俺は勇者だ。勇者はこの世で、一番強くなくちゃならねぇ……だからよ、お前はここで消えろ。強者は二人も要らねぇ、最強はこの俺、ただ一人でいいんだよ」

 瞬間、エンディミオンが輝きだした。
 同時にフェイスの体も変異を始める。全身に鎧が召喚されて装備され、体が異形の者に変わりだした。

「あれって、バルドフで見せた……」
「魔導具の、覚醒の力」
「翼の屑どもから聞いたか。そうだよ、こいつがエンディミオンの真の力だ。光栄に思いな、この力で殺される事を』

 フェイスの変異が終わった。
 まるで天使のような六枚の翼を携え、屈強かつ神々しい、硬質の白い肌を持つ、美しい怪物へと姿を変えている。身にまとった白銀の鎧も相まって、物語に出てくる勇者のような、勇壮な姿になっていた。

「これが、勇者フェイスの、真の力……!」
「エンディミオンと一体化した姿か」

 ディックが刀を握り直す。フェイスはエンディミオンを突きつけ、

『五秒、これがお前の寿命だ』

 ディックに襲い掛かる。次の瞬間、
 ハヌマーンの防御を打ち破り、エンディミオンの斬撃が、ディックの胴を捉えていた。
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