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164話 コープの野望
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〈ディック視点〉
「自己、結婚計画?」
フェイスとシラヌイのコピー体に魂を移したコープを、僕は戦慄きながら睨みつけた。
本当に、二人と瓜二つだ。その目に狂気さえはらんでいなければの話だけど。
コープの心が宿った二人の体は、タガが外れたような笑みをたたえ、僕らに歩み寄っていた。
「おお……新しい女性の僕、僕はどうして、コープなの?」
「それは僕が、コープだからさ。そして新しい男の僕、僕はどうしてコープなの?」
「それは勿論、僕が君の愛するコープだからだよ。愛する僕!」
コープは自分同士で口付けを交わす。醜悪な光景に僕らは顔をしかめた。
その姿で、そんな醜い事をするな。僕の大事な人達を、汚すんじゃない!
「自己結婚計画とはなんだ、貴様はそれを通して何を成そうとしている!」
『うふふ、勿論教えてあげるよ。僕はね……子供のころからずっと、ずっと! 僕自身が大好きだったんだよ!』
二人のコープが同時に叫ぶ。両手を広げ、まるで戯曲のような仕草で僕らに語り続けた。
「物心ついた僕が最初に鏡を見た時、全身に衝撃が走ったんだ。こんな素敵な人がこんな所にいるなんて! そう心が叫んだんだよ」
「でもすぐに僕は、それが僕自身だと気付いたんだ。僕はその時からこう思ったんだよ、僕自身と結婚したいとね!」
瞬間、僕らは唖然とした。どれだけくだらない事を考えたんだと。
それでもコープは嬉々として語り続ける。まるで、自分の考えがこの上ない最高の物だと言わんばかりに。
「でもそんなのは無理だろう? だってこの世に僕はたった一人しかいないんだから。でもねぇ、僕は本当に頭がいいんだ。すぐにいい案を思いついたんだよ。ねぇ僕」
「そうだよ僕。一人しかいないなら増やしてしまえばいいんだ。もう一人、女性の僕を生み出しさえすれば、僕は僕と結婚できるじゃないか!」
「それにどうせ増やすなら、姿も変えてしまえばいいじゃない。素のままの僕でも充分素敵だけど、どうせならより素敵な僕に変えてしまえばいいじゃない!」
「だから僕は体を着替えようと思ったんだ、より綺麗な容姿を持った人の体にね! そしてイザヨイは僕の理想的な容姿をしていた、どうしても新しい僕として着替えたかったんだ。そこであの病気を利用して、イザヨイを手に入れようと思ったのさ」
自慢するように語るコープに、僕は我慢の限界を突破した。
「ふざけるな! そんな事のために、お前はどれだけの人を犠牲にした!」
「ん? 犠牲じゃないよ、僕のために協力してくれた大事な友達じゃないか」
「そうそう! 僕の理想を叶えるための、尊い仲間たちさ」
「こいつ……どこまで腐っている……! その、お前の計画のために……どうして母さんが犠牲にならなきゃならなかった!」
「ああ、それはね。この病気こそが僕の計画の最終段階に到達するための道のりだからだよ」
二人のコープが、凶悪に笑い出す。母さんを利用して果たそうとした、途方もなく腹の立つ理由を話し始めた。
「あの病気の特効薬を飲ませるためさ。実はねぇ、この魂を移植する技術をより煮詰め、発展させた物があってさぁ。それがこれなんだよ」
コープが出した小瓶には、紫色の液体が詰まっている。その瓶を僕らに見せびらかしたコープは、にやりとした。
「あの病気には、魂と体の結びつきを緩ませる作用があるんだ。そこへこの薬……僕の魂のコピーを溶かした特効薬を与えることで、あら不思議! その人物の魂を僕に上書きさせる事が出来るのさ!」
「その実験のためにイザヨイに病気を与えたんだ。ちゃんと僕の魂を上書きできるのかってね。でも失敗しちゃってさぁ、イザヨイが居なくなった後、どこに彼女が行ったのかわからなくなっちゃったんだ。いやぁ、失敗しちゃったねぇ」
コープは悪びれる事なく、息子である僕の前で語り続ける。母さんの、死の真相を……!
ふざけるな……お前のそんな欲望のために、母さんを利用したのか……? そんな遊び感覚で、僕の大切な人を、奪ったのか!!!
「だからまぁ、仕方ないんで他の人で実験してさぁ。それで成功したから万事オッケーだよねぇ」
「……死ね!」
もうこいつの話は聞く価値がない! ケリをつけるべく、刀を握りとびかかった!
だけど、イザヨイの姿のコープが間に出てきて、一瞬手が止まってしまう。
いくら偽物でも、大事な人の姿をした相手を切る事は、出来ない。
「優しいねぇ、優しいねぇディック! そんな君には是非とも計画のゴールを見守ってほしいなぁ!」
「エンディミオンが協力してくれたからこそ実現できる計画なんだ、どうか心待ちにしてくれるかい!」
フェイスのコープが手を翳すと、龍王剣ディアボロスが現れる。フェイスから奪った剣を振るうと、僕らは風圧で吹き飛ばされた。
こいつ、エンディミオンから力を受けて、フェイス以上の力を得ている。
「驚いたかい? エンディミオンのお陰で僕は、世界一強くなったんだ! 君達が一斉にかかってきても、まず勝ち目はないよ!」
「そしてどうか見守ってくれよ、世界中の病気にかかっている人々を救い、僕に変える計画を! 自己結婚計画最終段階のスタートだ!」
コープが剣を突き立てると、床が割れ、僕らは落ちていく。
「くそっ……フェイス!」
「来るな、馬鹿野郎……!」
フェイスは落ちながら、僕らから離れていく。そしたら彼に、追いかけていく影が向かっていく。
「フェイスっ!」
それは、アプサラスだった。
落ちていくフェイスを懸命に追いかけ、抱きしめる。そのまま二人で別の場所へ居なくなってしまう。
そして僕らはまた、離れ離れになってしまった。
「自己、結婚計画?」
フェイスとシラヌイのコピー体に魂を移したコープを、僕は戦慄きながら睨みつけた。
本当に、二人と瓜二つだ。その目に狂気さえはらんでいなければの話だけど。
コープの心が宿った二人の体は、タガが外れたような笑みをたたえ、僕らに歩み寄っていた。
「おお……新しい女性の僕、僕はどうして、コープなの?」
「それは僕が、コープだからさ。そして新しい男の僕、僕はどうしてコープなの?」
「それは勿論、僕が君の愛するコープだからだよ。愛する僕!」
コープは自分同士で口付けを交わす。醜悪な光景に僕らは顔をしかめた。
その姿で、そんな醜い事をするな。僕の大事な人達を、汚すんじゃない!
「自己結婚計画とはなんだ、貴様はそれを通して何を成そうとしている!」
『うふふ、勿論教えてあげるよ。僕はね……子供のころからずっと、ずっと! 僕自身が大好きだったんだよ!』
二人のコープが同時に叫ぶ。両手を広げ、まるで戯曲のような仕草で僕らに語り続けた。
「物心ついた僕が最初に鏡を見た時、全身に衝撃が走ったんだ。こんな素敵な人がこんな所にいるなんて! そう心が叫んだんだよ」
「でもすぐに僕は、それが僕自身だと気付いたんだ。僕はその時からこう思ったんだよ、僕自身と結婚したいとね!」
瞬間、僕らは唖然とした。どれだけくだらない事を考えたんだと。
それでもコープは嬉々として語り続ける。まるで、自分の考えがこの上ない最高の物だと言わんばかりに。
「でもそんなのは無理だろう? だってこの世に僕はたった一人しかいないんだから。でもねぇ、僕は本当に頭がいいんだ。すぐにいい案を思いついたんだよ。ねぇ僕」
「そうだよ僕。一人しかいないなら増やしてしまえばいいんだ。もう一人、女性の僕を生み出しさえすれば、僕は僕と結婚できるじゃないか!」
「それにどうせ増やすなら、姿も変えてしまえばいいじゃない。素のままの僕でも充分素敵だけど、どうせならより素敵な僕に変えてしまえばいいじゃない!」
「だから僕は体を着替えようと思ったんだ、より綺麗な容姿を持った人の体にね! そしてイザヨイは僕の理想的な容姿をしていた、どうしても新しい僕として着替えたかったんだ。そこであの病気を利用して、イザヨイを手に入れようと思ったのさ」
自慢するように語るコープに、僕は我慢の限界を突破した。
「ふざけるな! そんな事のために、お前はどれだけの人を犠牲にした!」
「ん? 犠牲じゃないよ、僕のために協力してくれた大事な友達じゃないか」
「そうそう! 僕の理想を叶えるための、尊い仲間たちさ」
「こいつ……どこまで腐っている……! その、お前の計画のために……どうして母さんが犠牲にならなきゃならなかった!」
「ああ、それはね。この病気こそが僕の計画の最終段階に到達するための道のりだからだよ」
二人のコープが、凶悪に笑い出す。母さんを利用して果たそうとした、途方もなく腹の立つ理由を話し始めた。
「あの病気の特効薬を飲ませるためさ。実はねぇ、この魂を移植する技術をより煮詰め、発展させた物があってさぁ。それがこれなんだよ」
コープが出した小瓶には、紫色の液体が詰まっている。その瓶を僕らに見せびらかしたコープは、にやりとした。
「あの病気には、魂と体の結びつきを緩ませる作用があるんだ。そこへこの薬……僕の魂のコピーを溶かした特効薬を与えることで、あら不思議! その人物の魂を僕に上書きさせる事が出来るのさ!」
「その実験のためにイザヨイに病気を与えたんだ。ちゃんと僕の魂を上書きできるのかってね。でも失敗しちゃってさぁ、イザヨイが居なくなった後、どこに彼女が行ったのかわからなくなっちゃったんだ。いやぁ、失敗しちゃったねぇ」
コープは悪びれる事なく、息子である僕の前で語り続ける。母さんの、死の真相を……!
ふざけるな……お前のそんな欲望のために、母さんを利用したのか……? そんな遊び感覚で、僕の大切な人を、奪ったのか!!!
「だからまぁ、仕方ないんで他の人で実験してさぁ。それで成功したから万事オッケーだよねぇ」
「……死ね!」
もうこいつの話は聞く価値がない! ケリをつけるべく、刀を握りとびかかった!
だけど、イザヨイの姿のコープが間に出てきて、一瞬手が止まってしまう。
いくら偽物でも、大事な人の姿をした相手を切る事は、出来ない。
「優しいねぇ、優しいねぇディック! そんな君には是非とも計画のゴールを見守ってほしいなぁ!」
「エンディミオンが協力してくれたからこそ実現できる計画なんだ、どうか心待ちにしてくれるかい!」
フェイスのコープが手を翳すと、龍王剣ディアボロスが現れる。フェイスから奪った剣を振るうと、僕らは風圧で吹き飛ばされた。
こいつ、エンディミオンから力を受けて、フェイス以上の力を得ている。
「驚いたかい? エンディミオンのお陰で僕は、世界一強くなったんだ! 君達が一斉にかかってきても、まず勝ち目はないよ!」
「そしてどうか見守ってくれよ、世界中の病気にかかっている人々を救い、僕に変える計画を! 自己結婚計画最終段階のスタートだ!」
コープが剣を突き立てると、床が割れ、僕らは落ちていく。
「くそっ……フェイス!」
「来るな、馬鹿野郎……!」
フェイスは落ちながら、僕らから離れていく。そしたら彼に、追いかけていく影が向かっていく。
「フェイスっ!」
それは、アプサラスだった。
落ちていくフェイスを懸命に追いかけ、抱きしめる。そのまま二人で別の場所へ居なくなってしまう。
そして僕らはまた、離れ離れになってしまった。
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