勇者パーティを引退したのに、勇者が連れ戻そうと追いかけ回してくるんだが

歩く、歩く。

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15話 敗北する賢者(笑)

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 ガンダルフに乗っての旅は、快適その物だぜ。
 馬よりも遥かに早く走れるから、風景が一瞬で無数の線に変わっていく。スタミナも馬の数倍だから、休憩なしで何時間も走ってくれる。

 何よりも、もっふもふな毛皮が気持ち良すぎてなぁ……まるで極上のクッションにでも乗って走っているみたいだぜ。

「乗馬は何度かした事あるけど、ガンダルフは全然疲れないね」
「毛皮がいい塩梅に柔らかいから、衝撃がないんだよ。それに、揺れが少ないよう丁寧に走ってくれているからな。んでもってアマンダたん? そろそろトリップから戻っておいで」
「えへへぇ……がるるのもふもふ、最高ぉ……」

 俺様の後ろに乗っているアマンダたんは、がるるのもふもふ加減にうっとりしていて、移動中ずっとしまりのない顔をしている。
 よっぽどガンダルフが大好きなのねぇ。ちょっと嫉妬しちゃうわ俺ちゃん。

 ま、それはさておいて。見えてきたぜ次の街が。
 ヘルバリアから南に向かって移動し、到着したのは、レンガ造りの家々が並ぶ街、カジャンガ。義手を作ったら真っ先に行こうと思っていた場所だ。

 街の規模としては中々に大きく、人の出入りもかなりの物。というのも理由があり、ここには俺様の大好きな施設がある。そいつがカジャンガ最大の観光名所になっているのさ。
 ……アマンダたんはがるるに夢中だ、リサちゃんも街を興味津々に眺めていて隙だらけ。となれば抜け出すのは今しかない!

「とうっ!」
「え? あ! ちょっとどこ行くのよ!?」

 二人の隙を突いて逃げ出した俺様は、真っ先にカジャンガ中央にある大広場へ向かった。
 そこにあるのは、男の欲望渦巻くギャンブルの聖地、競馬場だ!
 このカジャンガには、国内でも有数の競馬場が存在している。でもって今日は特大級のレースがあり、レートが通常よりも跳ね上がっているのだ!

「ふっふっふ、一攫千金夢見てのスリルがたまらねぇんだこれが」

 見てろよ俺様の選馬眼、大賢者ハワード様がこの街の金全部巻き上げてやるぜ!

  ◇◇◇

「だーっ!? なんでそこでメンタルジェイドが飛び出してくるんだよちくしょー!」

 大穴一点買いの結果は、見事な大負けでございましたっとくらぁ。
 周りで勝者が沸き立つ中、敗者である俺はがっくりうなだれている。畜生、最強賢者であるはずの俺様が敗北の辛酸を味わうなんてな……。

「カジャンガについて早々何してんのあんたは」
「申し訳ありません、私ががるるのもふもふに気を取られている隙に……」

 ようやっとハワードガールズの二人が追い付いてきた。アマンダたんの弱点、もふもふを上手く突いて逃げ出せたはいいものの……この結果じゃあなぁ……。

「まぁお金あるんだろうし、多少の息抜きはいいけどさ。ギャンブルは身を滅ぼすからほどほどにしておきなさいよ?」
「……金ならねぇよ」
「は?」
「だから、有り金全部使っちまったよ。すかんぴんだ」

 何しろ全財産を大穴につぎ込んじまったからなぁ。おかげで魔法袋がダイエットに大成功、ガリガリに痩せこけちまったぜ。

「……一体どんな賭け方してんのよ馬鹿ぁぁぁぁぁっ!」
「たった1レースで全額使うとはどのような神経しているのですか!」
「いやそれはその、いいじゃねぇか! 俺様の金は俺様の金だ! 一発当たればそれこそ国家予算並みの金が手に入るわけで」

 皆まで言わされず、ボッコボコにされるかわいそうな俺様。斧とハンマーで滅多打ちにされて、焼かれる直前のハンバーグみたいな気分になるぜ。

「今日の宿どうしよっか。折角街に来たのに野宿? このド阿呆のせいで金銀財宝が無価値な紙束に変わっちゃったもんね」
「ここはハワードに責任を取ってもらいましょう。肝臓の一つでも売れば二泊分にはなるかと」
「肝臓抉り取られたら俺様でも死ぬわ。まぁ俺様のレバー食ったらビンビン絶倫状態間違いないだろうがな。はっはっは!」

 なんて軽口叩いたらまた殴られた。俺様でユッケでも作るつもりかてめぇら。

「ここは責任取って金作ってきなさいよ。あんた冒険者でしょ? 今すぐ依頼こなして宿代稼いできなさい!」
「えー……」

 冒険者の依頼に面白い奴なんかあるかねぇ。野郎の依頼なんかやりたくねぇし、魔物の討伐ならやってやってもいいが、一撃で死ぬようなゴミ掃除じゃ味気ないしなぁ。
 できる事なら美女のボディガードなんて依頼を受けたいもんなんだが。なぁんて思っていたらだ。

「むっ! 俺様の【獲物サーチ】に反応ありだ」
「えっ、何かあったの?」
「リサさん、ハワードがスキルで探しているのは敵ではありません。女性です」

「アマンダたん大正解! 俺ちゃん【獲物サーチ】で好みの女の子を常に探し続けているのだ!」

「私の義手を下らない事に使うな!」
「俺様にとっては大事な仕事だ、今日の一発ノルマをこなすためには、文字通り獲物を探し続けなきゃならないわけでな」
「んなもん探すなら仕事を探せクソ親父」
「ああん、蔑みの視線ごちそうさまです」

 でも不自然だな、【獲物サーチ】に引っかかってる女の子は、街から離れていくんだが。それも、相当な速さで。
 なぁんかきな臭いな。って事で競馬場の屋根に上り、周囲を見渡すと、悲鳴が聞こえた。

「……これは事件だな」

 憲兵が早馬を追いかけている。その馬には、可憐な美女を抱えた悪漢が居るじゃねぇか。
 憲兵を振り切って、悪漢が街を離れていく。いい逃げ足だ、俺に見つからなければ、誘拐成功していただろうなぁ。

「Come onがるる、仕事だ! アマンダは周囲を警戒、不審な輩が居ないか探せ!」
―がるるっ!
「かしこまりました」

 指笛を聞いてがるるが飛んでくる。颯爽と乗り込み、街を飛び出した。
 情報収集はアマンダに任せておけばいい、俺様は俺様の役割をこなすだけさ。

「追走劇とはヒリヒリしてくるぜ、エキサイティングなチェイスを期待しようか!」

 事件はとことん楽しまないとなぁ、俺様の刺激的なスローライフの演出を頼むぜ誘拐犯!
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