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54話 レベル999
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「新聞に昨日、セピアさんがザナドゥ幹部と戦ったって記事が載っていたんです。それで私達、大急ぎで転移でやってきたんです」
「全く驚いたよ、まさかあのオネェ店長がハワードさんだったなんて。少し離れている間にどれだけ強くなっているのさあのおっさん……」
勇者パーティの二人から事の顛末を聞き、アマンダ達はザナドゥの飛空艇を見上げた。
今頃カインはハワードと再会した頃だろう。塔の魔人と戦っていなければ、きっと感動の瞬間だったろうに。
「カイン君に意地悪しすぎましたねハワード、でも貴方もきっと喜んでいるでしょう?」
ハワードはカインをとても可愛がっていた。傍で見ていて微笑ましく思えるほどに。
それだけ彼を大事に想っていたからこそ、彼は勇者パーティを引退したのだ。でもカインはハワードの気遣いを振り切って、彼のためだけに、ここまで来たのだ。
「表に出さないだけで、ハワードもカイン大好きだもん。相思相愛って奴かな?」
「それ言ったら、ハワードさんは絶対否定すると思うけどね」
「だよねぇ。結構照れ屋で面倒な奴だしね」
リサとヨハンは苦笑した。
「ハワードさんとカインが出会った今、もう不安も心配もありませんね」
「うむ。賢者と勇者の二人には、塔の魔人と言えど勝てるはずがない」
「なんだか、相手が可愛そうになりますね」
哀れみを込めたクロノアに、コハクとセピアが頷いた。
アマンダは優しく微笑むとがるるを撫で、
「さ、思い切り楽しんできてください。こんなハプニングを楽しむのが、貴方のスローライフなのでしょう」
―がるるっ
がるるもハワードとカインを応援するように吠えた。今二人はどんな顔で、再会を楽しんでいるのだろうか。アマンダは微笑みながらそう思った。
◇◇◇
「じじょおぉおぉおぉおぉおぉおぉ~~~~~!! ずっどおじだいもうじでおりまじだぁぁぁぁぁぁぁ~~~!!!」
「だーっ! 涙と鼻水と涎塗れの顔で抱き着こうとすんじゃねぇ気持ちわりぃ!」
「ぼんもののじじょうだぁぁぁ~~~! じじょお~じじょおぉおぉおぉおぉお~~!! ずっと、ず~っとあいだがったぁぁぁ~~~! うぇっぐ! ぐじゅ! ふぇぇ~ん!」
「なんちゅう声で泣き喚いてんだよてめーは! やめろやめろ近い近い! 顔がどろっどろじゃねぇか、せめて拭け! ぎゃー!!?? 背中に回り込むな抱き着くな首筋に顔埋めんな純粋に気持ち悪ぃってんだよ!」
「くんかくんかすーはーすーはー! 師匠のにほひ……なんて落ち着く……あれ、師匠葉巻止められたのですか? 煙臭くないですね。でも不摂生な生活はやめた方がいいですよ」
「体臭で俺の生活状況分かるのかよ!? ふぎゃあ!? 首筋舐めるなクソファッキン!」
カインの首根っこを掴んで投げ飛ばす。この野郎、背中がてめぇの分泌物でぐちゃぐちゃになっちまったじゃねぇか……!
「やっと師匠成分を補充できたぁ……でもこの程度じゃ全然埋め合わせなんてできませんからね! あとでデートしてください、ラドラには確かトロピカルジュース売ってたはずですし、一緒に飲みましょう! ハートマークのペアストローが目玉なんですよ!」
「真顔で気色悪い事言うな! って何近づいて右腕触ってんだてめぇ……」
「かっこいい! これが師匠の新しい腕ですか? 翼のレリーフが最高じゃないですか! 力強くて、師匠にぴったりの義手ですよ! さっすがリサさん、俺の師匠の魅力を最高に引き出す腕を作ってくれるなぁ、うんうん!」
「おいこら、今「俺の師匠」とか抜かしやがったな。どんだけこじらせてんだよ、少し見ないうちに色々悪化しやがってこの馬鹿弟子が……!」
前から俺様への愛が酷かったが、ここまでくると最早病名のある精神疾患だ。どんだけ俺様大好きなんだよ、ったくよぉ……。
『貴様ら……俺を置いてイチャコラするなぁ!』
「誰が誰とイチャコラしてんだこらぁ!」
「そうだ! 俺と師匠は遥か昔からラブラブなんだぞ!」
「てめぇ話噛み合ってないから少し黙ってろ!」
もうやだこの勇者、誰だこいつ育てやがったのは! 俺だよクソッタレ!
「ところで師匠、あいつは誰ですか。強大な力を感じますが」
「お前俺様以外眼中になかったんかい。あいつは塔の魔人、俺様とお前を殺して、アザレア王国を支配しようってんだとよ」
「なんですって?」
カインの目つきが変わり、剣に手をかけ戦闘態勢を取った。
よーやっとスイッチ入ったようだな、これで話を進められそうだ。
『こんなへぼ勇者に魔王はやられたのか……どうやら、この世界のレベルは大幅に落ちたらしい。ハワード、貴様の右腕の代償とやらは随分と軽かったようだな』
「……なんだと?」
カインの声のトーンが急激に落ちた。
途端、塔の魔人がしり込みする。
目を吊り上げ、抜刀したカインは、さっきの腑抜けぶりが嘘のような威圧感を放っている。どうやら俺様への罵倒が、こいつの逆鱗に触れちまったようだな。
「今なんて言った……お前! 師匠がどんな思いで、俺達を守ったと思っている!」
「stopカイン。あいつに語る価値はねぇよ、大事なアルバムが汚れちまうぜ」
カインはハッとして、怒りを収めた。
「全く、お前は若すぎるな。俺様のために怒ってくれるのは嬉しいけどよ」
「し、師匠……!」
「ただまぁ、俺様も人の事言えねぇみてぇだ。弱いくせに俺様の愛弟子をへぼ呼ばわりしたカスに、随分と怒りを感じちまったからな」
「俺達、似た者同士ですね」
「だな。よし! 話すんのは後回しだ。お前を巻き込むつもりはなかったが、どうせ突っぱねてもついて来るだろ?」
「当然です! 世界で一番尊敬する師匠にやっと追いついたのに、ここでまたさようならなんて嫌ですよ! もっと師匠といちゃつきたいですし!」
「俺様の彼女かお前は……だが、一つ勘違いしているな。まだお前は俺様に追いついてなんかねぇよ。この程度で師匠越え出来たと思ったら大間違いだ。そいつを……塔の魔人退治で分からせてやるさ」
ってなわけで、カインと一緒にジョーカーへ歩いていく。
「悪いな、待たせちまって。その分寿命も延びたし、最後の時間は堪能できただろう?」
『来るか! だが、勇者と合流したからと言って、この塔の魔人に勝てると思うな! なぜならこの俺は! かつてアザレア王国を滅亡寸前まで追い詰め! 勇者ですら手の付けられなかった怪物だ!』
「過去の栄光語って悦に浸ってんじゃねぇよ、もういつの時代の自慢話だ?」
「時間の流れをご存じでないようだね。君のブームはとっくに終わっている、今流行の最先端に立っているのはこの俺、勇者カインと」
「この俺様、賢者ハワードだ」
『だ、が……俺はレベル999! 貴様らと同じ力を持った……持った!』
「もう口を閉じた方がいい、格が下がるよ。なんとなく、君の目的が分かってきたかな」
「てめぇはただ自分の力を自慢するためだけに世界を支配しようとしてるだけだろ? 目標は壮大なくせに、目的は随分ちっぽけな奴だ」
『何を言う、力とは知らしめ、畏怖させるための物だ! 貴様らもそうだろう、その強大な力を隠さず示し続けている、俺と貴様らになんの違いもあるものか!』
「俺達は自分の力を自慢するために使っていない。強大な力に伴う責任を理解し、大切な人達のために使っているんだ」
「苦しむ誰かを救う事ほど楽しいもんは他にない。そいつがお前さんに分かるかな?」
『な……な……!』
「第一てめぇ、さっき俺様が言った事覚えているのか? 俺様はまだ戦ってすらねぇ。お前との殴り合いは、俺様にとっては子猫のじゃれ合いみたいなもんだ」
「俺も君からは全く恐さを感じないな。申し訳ないけど、君に負ける気は一切しないよ」
『ぐ……に、人間如きが……人間如きが! この塔の魔人たるジョーカーに口答えをするでないわぁ!』
ジョーカーの体が軋みを上げたかと思うと、奴の体が巨大化を始める。背中から腕が四本も生えて、顔立ちも牙が鋭く伸びた、怪物その物に変貌する。それだけにとどまらず、周囲にありとあらゆる武具を具現化させ、翼まで生えてきた。
そいつがお前の本当の姿、全ての力を開放した状態ってわけか。
ははっ、人をがっかりさせる天才だなてめぇ。その程度で勇者と賢者に勝つつもりか?
「特別サービスだ、俺様とカインの本気を見せてやる」
「本気でやるのは魔王戦以来ですね。五分で片付けましょう」
「いんや、一分だ」
『ほざけぇぇぇぇぇっ!』
ジョーカーが腕を振り下ろしてきた。そいつを俺とカインは、
拳と剣の一撃で、消し飛ばした。
よろめき、ジョーカーがたたらを踏んだ。その一瞬で俺達は、奴の周囲を飛び回った。
腕を殴り壊し、胴体を切り刻み、武具を粉砕して、翼を切断する。ジョーカーは追従どころか、俺達の姿を見る事すらできないでいた。
『馬鹿な……なぜ、なぜこんなにも差がある!? 同じレベルなのに、どうして貴様らの方が強いのだ!?』
「君の能力値が低すぎるんだ。同レベルでも俺達のステータスは君の数倍に達している。昔と現代のレベル999では質が違う。それだけの話だよ」
「てめぇはとっくの昔に流行が終わったアンティークに過ぎねぇのさ。後ろしか振り向けないカビの生えたガラクタに、俺達と戦う資格はない!」
俺とカインはいつも前を、未来を向いて走っている。お前のように過ぎ去った時間に縋りついて、明日を見ようとしない奴に!
『俺達が負けるはずないんだよ!』
ジョーカーの顎にアッパーを叩き込み、奴の体を宙に浮かした。
すぐさまカインがジョーカーの背後へ飛び上がると、どてっぱらを突き抜けて風穴を開ける。俺様がカインの肩を足場に跳び、トンネルを殴りながら通り抜けた。
抵抗すら許さぬ猛攻に魔人が膝をつく。俺達は一瞬、アイコンタクトを取った。
―カイン!
―分かっていますよ!
俺は義手に、カインは剣に魔力を込める。凝縮された力が眩い光となってあふれ出し、大気を揺らした。
「おらあああああああっ!」
「せやあああああああっ!」
拳の一撃と剣の一突きが、全く同じタイミングで叩き込まれる。こいつが時代遅れの骨とう品を打ち砕く、賢者と勇者の一撃だ!
『はあああああああああああっ!!』
互いの攻撃を振り切ると、ジョーカーが跡形もなく消滅した。
悲鳴も残さず、過去の栄光がチリとなる。最後、奴の魂と思わしき黒い霧が立ち上った。
『こ……んな……俺は……塔の魔人……世界で最も……強き……も……の……!』
最後の最後までかつての自分に未練を残し、魔人はこの世を去った。
未来にワクワクできない奴が、俺達に勝てるわけがないさ。俺様もカインも、常に明日を楽しみに生きているんだ。
今の自分を謳歌して、未来の自分に期待する。それが俺達とお前の決定的な差になったのさ。
「はー……これでザナドゥもおしまいだな。すっきりした気分だぜ」
「ええ。でも俺は、ちょっと自分にがっかりしてしまいました。最後の一撃、師匠の力で押し切っちゃいましたね。やっぱり俺はまだまだのようです」
「んー……まぁ別に、がっかりする必要はねぇだろ。さっきのセッションで腕前上がってんのを感じたぜ、俺様と離れている間も腕を磨いていたようだな」
「勿論です! だって俺、師匠のようになりたいですから。それに、貴方の傍に居たいですから。……だから不安なんです。師匠が俺から離れて、別の人の物になってしまわないか」
「さいですか。勇者に愛されすぎだぜ、悪い気分じゃねぇけどな。手ぇ上げな、カイン」
「? はい」
呆けた顔の馬鹿弟子と、思い切りハイタッチをしてやる。ちと力入れすぎたか、手がビリビリするぜ。
「俺様はこの世でただ一人の傘下にしか入るつもりはねぇよ。他でもない、勇者カインの傘下にな。パーティを引退してもそれは絶対変わらねぇ。この答えじゃ、不満かい?」
「いえ……満足です!」
さっきまでの勇壮さが嘘のように、子供のような笑顔を見せてくる。甘えん坊で泣き虫で、とても勇者とは思えないガキ臭い奴だ。
けどそんなガキ臭い奴だからこそ、俺様は信じられるんだ。
俺様の魂を預けられる、唯一の男だとな。
「全く驚いたよ、まさかあのオネェ店長がハワードさんだったなんて。少し離れている間にどれだけ強くなっているのさあのおっさん……」
勇者パーティの二人から事の顛末を聞き、アマンダ達はザナドゥの飛空艇を見上げた。
今頃カインはハワードと再会した頃だろう。塔の魔人と戦っていなければ、きっと感動の瞬間だったろうに。
「カイン君に意地悪しすぎましたねハワード、でも貴方もきっと喜んでいるでしょう?」
ハワードはカインをとても可愛がっていた。傍で見ていて微笑ましく思えるほどに。
それだけ彼を大事に想っていたからこそ、彼は勇者パーティを引退したのだ。でもカインはハワードの気遣いを振り切って、彼のためだけに、ここまで来たのだ。
「表に出さないだけで、ハワードもカイン大好きだもん。相思相愛って奴かな?」
「それ言ったら、ハワードさんは絶対否定すると思うけどね」
「だよねぇ。結構照れ屋で面倒な奴だしね」
リサとヨハンは苦笑した。
「ハワードさんとカインが出会った今、もう不安も心配もありませんね」
「うむ。賢者と勇者の二人には、塔の魔人と言えど勝てるはずがない」
「なんだか、相手が可愛そうになりますね」
哀れみを込めたクロノアに、コハクとセピアが頷いた。
アマンダは優しく微笑むとがるるを撫で、
「さ、思い切り楽しんできてください。こんなハプニングを楽しむのが、貴方のスローライフなのでしょう」
―がるるっ
がるるもハワードとカインを応援するように吠えた。今二人はどんな顔で、再会を楽しんでいるのだろうか。アマンダは微笑みながらそう思った。
◇◇◇
「じじょおぉおぉおぉおぉおぉおぉ~~~~~!! ずっどおじだいもうじでおりまじだぁぁぁぁぁぁぁ~~~!!!」
「だーっ! 涙と鼻水と涎塗れの顔で抱き着こうとすんじゃねぇ気持ちわりぃ!」
「ぼんもののじじょうだぁぁぁ~~~! じじょお~じじょおぉおぉおぉおぉお~~!! ずっと、ず~っとあいだがったぁぁぁ~~~! うぇっぐ! ぐじゅ! ふぇぇ~ん!」
「なんちゅう声で泣き喚いてんだよてめーは! やめろやめろ近い近い! 顔がどろっどろじゃねぇか、せめて拭け! ぎゃー!!?? 背中に回り込むな抱き着くな首筋に顔埋めんな純粋に気持ち悪ぃってんだよ!」
「くんかくんかすーはーすーはー! 師匠のにほひ……なんて落ち着く……あれ、師匠葉巻止められたのですか? 煙臭くないですね。でも不摂生な生活はやめた方がいいですよ」
「体臭で俺の生活状況分かるのかよ!? ふぎゃあ!? 首筋舐めるなクソファッキン!」
カインの首根っこを掴んで投げ飛ばす。この野郎、背中がてめぇの分泌物でぐちゃぐちゃになっちまったじゃねぇか……!
「やっと師匠成分を補充できたぁ……でもこの程度じゃ全然埋め合わせなんてできませんからね! あとでデートしてください、ラドラには確かトロピカルジュース売ってたはずですし、一緒に飲みましょう! ハートマークのペアストローが目玉なんですよ!」
「真顔で気色悪い事言うな! って何近づいて右腕触ってんだてめぇ……」
「かっこいい! これが師匠の新しい腕ですか? 翼のレリーフが最高じゃないですか! 力強くて、師匠にぴったりの義手ですよ! さっすがリサさん、俺の師匠の魅力を最高に引き出す腕を作ってくれるなぁ、うんうん!」
「おいこら、今「俺の師匠」とか抜かしやがったな。どんだけこじらせてんだよ、少し見ないうちに色々悪化しやがってこの馬鹿弟子が……!」
前から俺様への愛が酷かったが、ここまでくると最早病名のある精神疾患だ。どんだけ俺様大好きなんだよ、ったくよぉ……。
『貴様ら……俺を置いてイチャコラするなぁ!』
「誰が誰とイチャコラしてんだこらぁ!」
「そうだ! 俺と師匠は遥か昔からラブラブなんだぞ!」
「てめぇ話噛み合ってないから少し黙ってろ!」
もうやだこの勇者、誰だこいつ育てやがったのは! 俺だよクソッタレ!
「ところで師匠、あいつは誰ですか。強大な力を感じますが」
「お前俺様以外眼中になかったんかい。あいつは塔の魔人、俺様とお前を殺して、アザレア王国を支配しようってんだとよ」
「なんですって?」
カインの目つきが変わり、剣に手をかけ戦闘態勢を取った。
よーやっとスイッチ入ったようだな、これで話を進められそうだ。
『こんなへぼ勇者に魔王はやられたのか……どうやら、この世界のレベルは大幅に落ちたらしい。ハワード、貴様の右腕の代償とやらは随分と軽かったようだな』
「……なんだと?」
カインの声のトーンが急激に落ちた。
途端、塔の魔人がしり込みする。
目を吊り上げ、抜刀したカインは、さっきの腑抜けぶりが嘘のような威圧感を放っている。どうやら俺様への罵倒が、こいつの逆鱗に触れちまったようだな。
「今なんて言った……お前! 師匠がどんな思いで、俺達を守ったと思っている!」
「stopカイン。あいつに語る価値はねぇよ、大事なアルバムが汚れちまうぜ」
カインはハッとして、怒りを収めた。
「全く、お前は若すぎるな。俺様のために怒ってくれるのは嬉しいけどよ」
「し、師匠……!」
「ただまぁ、俺様も人の事言えねぇみてぇだ。弱いくせに俺様の愛弟子をへぼ呼ばわりしたカスに、随分と怒りを感じちまったからな」
「俺達、似た者同士ですね」
「だな。よし! 話すんのは後回しだ。お前を巻き込むつもりはなかったが、どうせ突っぱねてもついて来るだろ?」
「当然です! 世界で一番尊敬する師匠にやっと追いついたのに、ここでまたさようならなんて嫌ですよ! もっと師匠といちゃつきたいですし!」
「俺様の彼女かお前は……だが、一つ勘違いしているな。まだお前は俺様に追いついてなんかねぇよ。この程度で師匠越え出来たと思ったら大間違いだ。そいつを……塔の魔人退治で分からせてやるさ」
ってなわけで、カインと一緒にジョーカーへ歩いていく。
「悪いな、待たせちまって。その分寿命も延びたし、最後の時間は堪能できただろう?」
『来るか! だが、勇者と合流したからと言って、この塔の魔人に勝てると思うな! なぜならこの俺は! かつてアザレア王国を滅亡寸前まで追い詰め! 勇者ですら手の付けられなかった怪物だ!』
「過去の栄光語って悦に浸ってんじゃねぇよ、もういつの時代の自慢話だ?」
「時間の流れをご存じでないようだね。君のブームはとっくに終わっている、今流行の最先端に立っているのはこの俺、勇者カインと」
「この俺様、賢者ハワードだ」
『だ、が……俺はレベル999! 貴様らと同じ力を持った……持った!』
「もう口を閉じた方がいい、格が下がるよ。なんとなく、君の目的が分かってきたかな」
「てめぇはただ自分の力を自慢するためだけに世界を支配しようとしてるだけだろ? 目標は壮大なくせに、目的は随分ちっぽけな奴だ」
『何を言う、力とは知らしめ、畏怖させるための物だ! 貴様らもそうだろう、その強大な力を隠さず示し続けている、俺と貴様らになんの違いもあるものか!』
「俺達は自分の力を自慢するために使っていない。強大な力に伴う責任を理解し、大切な人達のために使っているんだ」
「苦しむ誰かを救う事ほど楽しいもんは他にない。そいつがお前さんに分かるかな?」
『な……な……!』
「第一てめぇ、さっき俺様が言った事覚えているのか? 俺様はまだ戦ってすらねぇ。お前との殴り合いは、俺様にとっては子猫のじゃれ合いみたいなもんだ」
「俺も君からは全く恐さを感じないな。申し訳ないけど、君に負ける気は一切しないよ」
『ぐ……に、人間如きが……人間如きが! この塔の魔人たるジョーカーに口答えをするでないわぁ!』
ジョーカーの体が軋みを上げたかと思うと、奴の体が巨大化を始める。背中から腕が四本も生えて、顔立ちも牙が鋭く伸びた、怪物その物に変貌する。それだけにとどまらず、周囲にありとあらゆる武具を具現化させ、翼まで生えてきた。
そいつがお前の本当の姿、全ての力を開放した状態ってわけか。
ははっ、人をがっかりさせる天才だなてめぇ。その程度で勇者と賢者に勝つつもりか?
「特別サービスだ、俺様とカインの本気を見せてやる」
「本気でやるのは魔王戦以来ですね。五分で片付けましょう」
「いんや、一分だ」
『ほざけぇぇぇぇぇっ!』
ジョーカーが腕を振り下ろしてきた。そいつを俺とカインは、
拳と剣の一撃で、消し飛ばした。
よろめき、ジョーカーがたたらを踏んだ。その一瞬で俺達は、奴の周囲を飛び回った。
腕を殴り壊し、胴体を切り刻み、武具を粉砕して、翼を切断する。ジョーカーは追従どころか、俺達の姿を見る事すらできないでいた。
『馬鹿な……なぜ、なぜこんなにも差がある!? 同じレベルなのに、どうして貴様らの方が強いのだ!?』
「君の能力値が低すぎるんだ。同レベルでも俺達のステータスは君の数倍に達している。昔と現代のレベル999では質が違う。それだけの話だよ」
「てめぇはとっくの昔に流行が終わったアンティークに過ぎねぇのさ。後ろしか振り向けないカビの生えたガラクタに、俺達と戦う資格はない!」
俺とカインはいつも前を、未来を向いて走っている。お前のように過ぎ去った時間に縋りついて、明日を見ようとしない奴に!
『俺達が負けるはずないんだよ!』
ジョーカーの顎にアッパーを叩き込み、奴の体を宙に浮かした。
すぐさまカインがジョーカーの背後へ飛び上がると、どてっぱらを突き抜けて風穴を開ける。俺様がカインの肩を足場に跳び、トンネルを殴りながら通り抜けた。
抵抗すら許さぬ猛攻に魔人が膝をつく。俺達は一瞬、アイコンタクトを取った。
―カイン!
―分かっていますよ!
俺は義手に、カインは剣に魔力を込める。凝縮された力が眩い光となってあふれ出し、大気を揺らした。
「おらあああああああっ!」
「せやあああああああっ!」
拳の一撃と剣の一突きが、全く同じタイミングで叩き込まれる。こいつが時代遅れの骨とう品を打ち砕く、賢者と勇者の一撃だ!
『はあああああああああああっ!!』
互いの攻撃を振り切ると、ジョーカーが跡形もなく消滅した。
悲鳴も残さず、過去の栄光がチリとなる。最後、奴の魂と思わしき黒い霧が立ち上った。
『こ……んな……俺は……塔の魔人……世界で最も……強き……も……の……!』
最後の最後までかつての自分に未練を残し、魔人はこの世を去った。
未来にワクワクできない奴が、俺達に勝てるわけがないさ。俺様もカインも、常に明日を楽しみに生きているんだ。
今の自分を謳歌して、未来の自分に期待する。それが俺達とお前の決定的な差になったのさ。
「はー……これでザナドゥもおしまいだな。すっきりした気分だぜ」
「ええ。でも俺は、ちょっと自分にがっかりしてしまいました。最後の一撃、師匠の力で押し切っちゃいましたね。やっぱり俺はまだまだのようです」
「んー……まぁ別に、がっかりする必要はねぇだろ。さっきのセッションで腕前上がってんのを感じたぜ、俺様と離れている間も腕を磨いていたようだな」
「勿論です! だって俺、師匠のようになりたいですから。それに、貴方の傍に居たいですから。……だから不安なんです。師匠が俺から離れて、別の人の物になってしまわないか」
「さいですか。勇者に愛されすぎだぜ、悪い気分じゃねぇけどな。手ぇ上げな、カイン」
「? はい」
呆けた顔の馬鹿弟子と、思い切りハイタッチをしてやる。ちと力入れすぎたか、手がビリビリするぜ。
「俺様はこの世でただ一人の傘下にしか入るつもりはねぇよ。他でもない、勇者カインの傘下にな。パーティを引退してもそれは絶対変わらねぇ。この答えじゃ、不満かい?」
「いえ……満足です!」
さっきまでの勇壮さが嘘のように、子供のような笑顔を見せてくる。甘えん坊で泣き虫で、とても勇者とは思えないガキ臭い奴だ。
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俺様の魂を預けられる、唯一の男だとな。
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釘を使わない頑丈な家具、水汲み不要の自動ポンプ、冬でもポカポカの床暖房。
魔法文明が見落としていた「手間暇かけた技術」は、不便な辺境生活を快適な楽園へと変えていく。
やがてその温かい家には、 傷ついた銀髪の狼少女や、 素直になれないツンデレ黒猫、 人見知りな犬耳の鍛冶師が集まってきて――。
「エリス姉、あったか~い……」「……悔しいけど、この家から出られないわね」
これは、不器用なシスターが、壊れた家と、傷ついた心を修繕していく物語。 優しくて温かい、手作りのスローライフ・ファンタジー!
(※一方その頃、メンテナンス係を失った勇者パーティの装備はボロボロになり、冷たい野営で後悔の日々を送るのですが……それはまた別のお話)
荷物持ちを追放したら、酷い目にあった件について。
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しかし――
彼が切り捨てた仲間こそが、
実はパーティを陰で支えていたレアスキル持ちだった。
事実に気づいた時にはもう遅い。
道に迷い、魔獣に襲われ、些細な任務すらまともにこなせない。
“荷物持ちがいなくなった瞬間”から、
アレクスの日常は静かに崩壊していく。
短絡的な判断で、かけがえのない存在を手放した戦士。
そんな彼と再び肩を並べることになったのは――
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ノー天気で鈍感な僧侶
そして天性の才を秘めた愛くるしい弟子レンジャー
かつての仲間たちと共に、アレクスはもう一度歩き出す。
自らの愚かさと向き合い、後悔し、懺悔し、それでも進むために。
これは、
“間違いを犯した男が、仲間と共に再び立ち上がる”
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ハーレム要素多め。
※隔日更新予定です。10話前後での完結予定で構成していましたが、多くの方に見られているため10話以降も製作中です。
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物語を楽しむ邪魔をしてしまい申し訳ないですorz
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