55 / 116
55話 勇者パーティ再集結?
しおりを挟む
派手な喧嘩をしたせいで、飛空艇は完全に機能停止し墜落した。
まぁ俺達なら余裕で脱出できるんだがね。一息にジャンプして戻るとするさ。
見下ろせば、王国軍の船が出ている。後始末はあいつらに任せておけばいいだろう。頭は潰したし、もうザナドゥはおしまいだ。
カインと共にラドラへ帰るなり、ヨハンとコハクが走ってくる。でもって、そのまま俺様に抱き着いてきやがった。コハクは頬にキスしてくれるし、ヨハンは泣いて喜んでくれるし、賢者冥利に尽きる奴らだぜ。
「ハワードさん! やっと会えた、なんで私達を避けてきたの? 酷いじゃない! 大好きな人に会えない苦しみ、分からないとは言わせないんだから!」
「あんたがいないせいで僕達、というより僕がどれだけ苦労してきたかわかってるのか? もう絶対離さないからなこの頼れるロクデナシ!」
「ええい離せい、コハクはともかくヨハンはべたつくんじゃねっての。俺様に会えて嬉しいのは分かるが、興奮しすぎだ」
「だって師匠をようやく捕まえる事が出来ましたもの……これで勇者パーティ再結成ですね! というわけでデートしましょう師匠!」
「お前はそればっかりか。どいつもこいつも甘えたがりで、困っちまうぜったくよぉ」
「でしたら、少しは困った顔をされてはいかがですか? そんな嬉しそうに緩んだ顔では説得力に欠けますよ」
アマンダたんを先頭に、ぞろぞろと集まってくる。俺様そんなにへらへらしてたかしらね、こいつらに会えて嬉しいのは確かだけどな。
「しかし驚きだよ。信じていたけれども、こうもあっさり塔の魔人を倒してしまうとは。やはり凄いな貴公たちは、私なんかでは、とても追いつけそうにない」
「また自分を低めているのかい? 感心しないぜセピアちゃん」
「別に低めていないさ、むしろ勇気づけられた。……ありがとうハワード、貴方のおかげで私は頑張れるようになった」
セピアちゃんは俺の胸にしなだれてくる。こんな甘えてくる彼女なんて、初めて見たぜ。
「甘え上手になったもんだ、前より魅力的になったぜ」
「そ、そうか? いや、貴方が頼ってもよいと言うから、つい……」
「俺様は大歓迎だ。だけどいいのかな? この状況で抱き着いちまって。人目あるよ?」
セピアちゃんは真っ赤になって離れちゃった。あーあ、余計な一言いうもんじゃねーぜ。
「と、とにかくだ! 協力感謝する、勇者パーティ。貴公たちのお陰でザナドゥを壊滅させることができた。改めて、お礼を言わせてくれ」
「流石の活躍でしたハワード氏! それと、姉様を救っていただいて本当にありがとうございます」
「なぁに、俺様にとっちゃ簡単な仕事だったよ。何しろ俺様は世界最強の賢者、ハワード・ロックなんだからなっ」
「はいはい、自慢話はもういいから。それよりさ、皆でお祝いしない? 勇者パーティは再結成したし、ザナドゥも居なくなった。こんなにおめでたい事が重なったんなら、今日くらい嵌め外してもいいと思うんだけど」
―ばうっ!
リサちゃんとがるるからパーティの提案か、そいつは悪くねぇな。こんだけ人数いるんだ、賑やかなパーティを楽しめそうだぜ。
「だったら、店は私が手配しておこう。世話になった礼をさせてくれ」
「ありがとさん。ほいじゃま、俺らも事後処理手伝いに行くとするか」
「はい! そのついでに、これからの事も話しましょうね」
「これから?」
「そうですよ。勇者パーティが揃ったんですよ師匠、次は何をしますか? 俺達、師匠にどこまでもついていきますよ!」
「僕もさ。ハワードさんと一緒の方が面白いし、何より楽でいいしね」
「だからハワードさん、遠慮せずなんでも言って。私達なんでもするから!」
「……お前ら、自分でやりたい事ないのか?」
「ええ、今の所は特に」
この馬鹿弟子、笑顔で何頷いてんだ。
カインと会った時から感じていたが……少し見ない間にこいつら、悪い方向に走ってやがったか。
これは俺様も、鬼にならなきゃならないようだな。
◇◇◇
事後処理を終えて夜、祝勝会は盛大に行われた。セピアちゃんが用意したのは気兼ねなくはしゃげる宿酒場で、ラドラ名産の海産物を使った料理が山と出てきやがった。
一仕事を終えた後ってのはやっぱり腹が減るもんで、俺様は出てくるもんを片っ端から食い尽くしていった。酒も美味いしよ。
「そうそう、忘れちゃだめだな。セピアちゃん、これやるよ」
「む? 随分高そうな桐の箱だな。開けても?」
「勿論」
箱を開けてセピアちゃんは驚いた。俺様からのプレゼントは、アンティークのティーカップセットだ。乳白色の上品な物で、可愛い兎の絵が描かれている。骨董屋にたまたま売ってたんだよねぇ。
「これ、どうして?」
「言ってただろ、紅茶淹れるのが趣味だって。だから終わった後に買いに行ったのさ」
「覚えていてくれたのか……」
「当然だろう? 俺様は約束を守る男だからな。嬉しくなかった?」
「嬉しいとも、大事にする」
「そうしてくれ。あとついでにもう一つ、プレゼントがあるんだよねぇ」
なぁんて話したらだ、クロノアが大急ぎでやってきた。
「姉様、陛下から緊急の書状が届きました!」
「なんだと? 内容は」
「それが……「ザナドゥ党首を一刻も早く討伐せよ」との事で。なんでも今朝方、居城に巨大な火球が飛んできて、城が半壊したと同時に陛下も重傷を負ったようでして……」
「……え?」
「このような事をするのはザナドゥに違いないと……非常事態として一刻も早くザナドゥを潰せとの命令、なのですが……」
「なんか話が、変じゃないか? まさか……」
「おっとぉ、なんで俺様を見るのかなぁ? 別に俺様なんもしてないよ? ただ昨日酒飲みついでに、ファイアボールで蹴鞠してただけさ。まぁ最後に? 思い切り蹴っ飛ばしたから? どっかに流れ弾で飛んでいったかもしれねぇけどな♪」
「ふふっ、やっぱり夜に見たファイアボールはハワードさんのだったのね。念のため、情報操作しといて正解だった。ずっと一緒に旅してたから、やりたい事が何となくわかるのよね」
「また無茶やらかした気がしたから、僕らも色々細工していたんだ。カインに魔王討伐の責任押し付けた挙句、セピアさんに酷い事を言ってたからね、こっちも腹に据えかねてたんだ」
「けどよかったですねセピアさん。ザナドゥはもう倒していますから、堂々と国王様に報告できますよ。これまで貴方にしてきた無礼を、しっかり詫びさせる事も出来ますね」
「向こうが勝手にザナドゥの仕業だと勘違いしてんなら、遠慮なく擦り付けちまいな。でもって、流行遅れの裸の王様を思い切り笑っちまえよ。たまにゃあ上司に逆襲したって、罰は当たらないさ」
「……はは、はははっ、あはははは! 全く、言葉も交わさず合わせるなんて、なんてパーティだ。ばれたらアザレア王国を敵に回してしまうぞ?」
「かまわないですよ。女性を手ひどく扱う輩は」
「たとえ王でも許さない、って事さ。どうだい? 勇者パーティからのプレゼントは」
「ああ、最高だ。とても胸がスカッとしたよ。ありがとうハワード」
「違うだろ、こういう時は」
「ざまぁみろ、クソ陛下。だな」
散々っぱらセピアをいじめてくれたんだ。国王とはいえ、きちんと報いは受けてもらうぜ。
「にしても、セピアさんばっかりずるいですよ、俺も師匠からプレゼント貰いたいです! というより結婚前提でお付き合いの程お願いします!」
「だぁからお前は俺の彼女か! コハクが居るのに浮気して、喧嘩になっても知らねぇぞ」
「大丈夫よハワードさん、私もバイだから。ハワードさんならむしろウェルカムよ?」
「それのどこを好意的に解釈すればいいのかわからねぇんだが……ヨハンよ、お前一人でこの馬鹿二人の相手を?」
「……僕の苦労、わかってくれた?」
「強く生きろよ、ロブスター食うか?」
「いただきます……」
随分焦燥しきっちゃってまぁ、これまでの苦労が目に浮かぶようだぜ。
だってのに悪いなヨハン。もう少しお前には、苦労を掛ける事になりそうだ。
「カイン、ちょっと来な。話がある」
「? はい」
カインと二人、席を外す。誰の邪魔も入らない港へ向かい、話を切り出した。
「お前、俺をパーティに戻すためにここに来た。それで間違いないな」
「はい! 俺達には師匠が必要なんです、貴方が居なければ勇者パーティは成り立ちません」
「そうか。んで? 俺を連れ戻した後はどうするつもりでいたんだ?」
「それは話した通り、師匠の思うようにしていただければ。俺達はその通りに動くだけです」
「つまりは、何にも考えてなかったわけだな」
「え、ええ。そう言われると、ちょっと苦しいですけど」
カインは肩をすぼめた。俺様はため息をつき、夜空を見上げた。
「結論から言おう。その体たらくじゃ、俺様は勇者パーティに戻れねぇ」
「えっ!? なんでですか!? 俺達は師匠の力になりたいんです、その右腕の代わりに俺達はなるって決めたんですから」
「いつ俺がそれを頼んだ? でもって、俺は右腕を無くして困っているように見えるか? 悲しんでいるように見えるか? むしろ楽しんでいるだろう。お前らの好意はむしろ余計なお世話なのさ」
「けど……」
「それよか俺はお前らの今後が心配だ。お前らは、俺に依存しすぎている。自分の人生を俺に決めてもらおうとしていて、とても自分の力で生きようって気概を感じないんだ」
カインは俺に何をしようか尋ねた。その上で俺に従うとも言った。それは俺を気遣っているんじゃない、自分達の思考を停止して、俺におぶさっているだけにすぎねぇんだ。
「最初こそお前らの足枷にならないようにと思ったが、今は違う。俺様に依存しているお前らが俺様の足枷になっちまう。特にお前が、特大級の足枷になるだろうな」
「えっ……」
「カイン、お前は俺の弟子だろう? ならなんで師匠越えをしようとしない。師匠は弟子が超えるべき壁、大人への登竜門だ。そいつに挑もうとせず、ただ後ろをついて行くだけだと? ふざけるな。追いつくどころか、ついて来る事しか考えていないお前に、俺の弟子で居る資格はない」
「師匠……そんな……!」
「だからよカイン、俺の弟子で居たければ、俺を超えてみせろ」
「……師匠?」
「俺はずっと傍で成長を見続けていた。お前は何度も俺の期待に応えて、気が付きゃ魔王を倒す勇者にまでなっていた。だからこそ、お前が俺を超えてくれるのが、何よりも楽しみなんだ。これから言うのは、師匠から弟子への、最後の試験だ。そいつを乗り越えて、俺を上回ってみせろ、勇者カイン」
「……その内容は?」
「もう一度俺を追い回して、見つけてみろ。ただし、ただ追いつくだけじゃだめだ。俺を追う中でお前は何度も、俺の背中と素晴らしさを思い知る事になるだろう。そいつを受けて何を想い、何を感じたのか。その末に何を目指す事にしたのか。全てを伝えた上で、俺を超えてみろ。この試験に合格出来たら、改めて勇者パーティに戻ってやるよ」
「本当、ですよね? 本当に俺達のパーティに戻ってきてくれますよね?」
「俺が一度でも約束を破った事があるか?」
「ありません」
「ならそいつが答えだ」
俺様は拳を突き出した。カインは頷くと、拳をぶつけてくる。
「分かりました、俺はもう一度、師匠を追いかけます。貴方が納得する答えを持って、必ず追いこしてみせますから」
「楽しみにしているぜ。だが覚悟しろよ? 俺様を超えるのは並大抵の覚悟じゃできねぇからな」
どうやら、俺様のスローライフはまだまだ終わりそうになさそうだ。
まぁ俺達なら余裕で脱出できるんだがね。一息にジャンプして戻るとするさ。
見下ろせば、王国軍の船が出ている。後始末はあいつらに任せておけばいいだろう。頭は潰したし、もうザナドゥはおしまいだ。
カインと共にラドラへ帰るなり、ヨハンとコハクが走ってくる。でもって、そのまま俺様に抱き着いてきやがった。コハクは頬にキスしてくれるし、ヨハンは泣いて喜んでくれるし、賢者冥利に尽きる奴らだぜ。
「ハワードさん! やっと会えた、なんで私達を避けてきたの? 酷いじゃない! 大好きな人に会えない苦しみ、分からないとは言わせないんだから!」
「あんたがいないせいで僕達、というより僕がどれだけ苦労してきたかわかってるのか? もう絶対離さないからなこの頼れるロクデナシ!」
「ええい離せい、コハクはともかくヨハンはべたつくんじゃねっての。俺様に会えて嬉しいのは分かるが、興奮しすぎだ」
「だって師匠をようやく捕まえる事が出来ましたもの……これで勇者パーティ再結成ですね! というわけでデートしましょう師匠!」
「お前はそればっかりか。どいつもこいつも甘えたがりで、困っちまうぜったくよぉ」
「でしたら、少しは困った顔をされてはいかがですか? そんな嬉しそうに緩んだ顔では説得力に欠けますよ」
アマンダたんを先頭に、ぞろぞろと集まってくる。俺様そんなにへらへらしてたかしらね、こいつらに会えて嬉しいのは確かだけどな。
「しかし驚きだよ。信じていたけれども、こうもあっさり塔の魔人を倒してしまうとは。やはり凄いな貴公たちは、私なんかでは、とても追いつけそうにない」
「また自分を低めているのかい? 感心しないぜセピアちゃん」
「別に低めていないさ、むしろ勇気づけられた。……ありがとうハワード、貴方のおかげで私は頑張れるようになった」
セピアちゃんは俺の胸にしなだれてくる。こんな甘えてくる彼女なんて、初めて見たぜ。
「甘え上手になったもんだ、前より魅力的になったぜ」
「そ、そうか? いや、貴方が頼ってもよいと言うから、つい……」
「俺様は大歓迎だ。だけどいいのかな? この状況で抱き着いちまって。人目あるよ?」
セピアちゃんは真っ赤になって離れちゃった。あーあ、余計な一言いうもんじゃねーぜ。
「と、とにかくだ! 協力感謝する、勇者パーティ。貴公たちのお陰でザナドゥを壊滅させることができた。改めて、お礼を言わせてくれ」
「流石の活躍でしたハワード氏! それと、姉様を救っていただいて本当にありがとうございます」
「なぁに、俺様にとっちゃ簡単な仕事だったよ。何しろ俺様は世界最強の賢者、ハワード・ロックなんだからなっ」
「はいはい、自慢話はもういいから。それよりさ、皆でお祝いしない? 勇者パーティは再結成したし、ザナドゥも居なくなった。こんなにおめでたい事が重なったんなら、今日くらい嵌め外してもいいと思うんだけど」
―ばうっ!
リサちゃんとがるるからパーティの提案か、そいつは悪くねぇな。こんだけ人数いるんだ、賑やかなパーティを楽しめそうだぜ。
「だったら、店は私が手配しておこう。世話になった礼をさせてくれ」
「ありがとさん。ほいじゃま、俺らも事後処理手伝いに行くとするか」
「はい! そのついでに、これからの事も話しましょうね」
「これから?」
「そうですよ。勇者パーティが揃ったんですよ師匠、次は何をしますか? 俺達、師匠にどこまでもついていきますよ!」
「僕もさ。ハワードさんと一緒の方が面白いし、何より楽でいいしね」
「だからハワードさん、遠慮せずなんでも言って。私達なんでもするから!」
「……お前ら、自分でやりたい事ないのか?」
「ええ、今の所は特に」
この馬鹿弟子、笑顔で何頷いてんだ。
カインと会った時から感じていたが……少し見ない間にこいつら、悪い方向に走ってやがったか。
これは俺様も、鬼にならなきゃならないようだな。
◇◇◇
事後処理を終えて夜、祝勝会は盛大に行われた。セピアちゃんが用意したのは気兼ねなくはしゃげる宿酒場で、ラドラ名産の海産物を使った料理が山と出てきやがった。
一仕事を終えた後ってのはやっぱり腹が減るもんで、俺様は出てくるもんを片っ端から食い尽くしていった。酒も美味いしよ。
「そうそう、忘れちゃだめだな。セピアちゃん、これやるよ」
「む? 随分高そうな桐の箱だな。開けても?」
「勿論」
箱を開けてセピアちゃんは驚いた。俺様からのプレゼントは、アンティークのティーカップセットだ。乳白色の上品な物で、可愛い兎の絵が描かれている。骨董屋にたまたま売ってたんだよねぇ。
「これ、どうして?」
「言ってただろ、紅茶淹れるのが趣味だって。だから終わった後に買いに行ったのさ」
「覚えていてくれたのか……」
「当然だろう? 俺様は約束を守る男だからな。嬉しくなかった?」
「嬉しいとも、大事にする」
「そうしてくれ。あとついでにもう一つ、プレゼントがあるんだよねぇ」
なぁんて話したらだ、クロノアが大急ぎでやってきた。
「姉様、陛下から緊急の書状が届きました!」
「なんだと? 内容は」
「それが……「ザナドゥ党首を一刻も早く討伐せよ」との事で。なんでも今朝方、居城に巨大な火球が飛んできて、城が半壊したと同時に陛下も重傷を負ったようでして……」
「……え?」
「このような事をするのはザナドゥに違いないと……非常事態として一刻も早くザナドゥを潰せとの命令、なのですが……」
「なんか話が、変じゃないか? まさか……」
「おっとぉ、なんで俺様を見るのかなぁ? 別に俺様なんもしてないよ? ただ昨日酒飲みついでに、ファイアボールで蹴鞠してただけさ。まぁ最後に? 思い切り蹴っ飛ばしたから? どっかに流れ弾で飛んでいったかもしれねぇけどな♪」
「ふふっ、やっぱり夜に見たファイアボールはハワードさんのだったのね。念のため、情報操作しといて正解だった。ずっと一緒に旅してたから、やりたい事が何となくわかるのよね」
「また無茶やらかした気がしたから、僕らも色々細工していたんだ。カインに魔王討伐の責任押し付けた挙句、セピアさんに酷い事を言ってたからね、こっちも腹に据えかねてたんだ」
「けどよかったですねセピアさん。ザナドゥはもう倒していますから、堂々と国王様に報告できますよ。これまで貴方にしてきた無礼を、しっかり詫びさせる事も出来ますね」
「向こうが勝手にザナドゥの仕業だと勘違いしてんなら、遠慮なく擦り付けちまいな。でもって、流行遅れの裸の王様を思い切り笑っちまえよ。たまにゃあ上司に逆襲したって、罰は当たらないさ」
「……はは、はははっ、あはははは! 全く、言葉も交わさず合わせるなんて、なんてパーティだ。ばれたらアザレア王国を敵に回してしまうぞ?」
「かまわないですよ。女性を手ひどく扱う輩は」
「たとえ王でも許さない、って事さ。どうだい? 勇者パーティからのプレゼントは」
「ああ、最高だ。とても胸がスカッとしたよ。ありがとうハワード」
「違うだろ、こういう時は」
「ざまぁみろ、クソ陛下。だな」
散々っぱらセピアをいじめてくれたんだ。国王とはいえ、きちんと報いは受けてもらうぜ。
「にしても、セピアさんばっかりずるいですよ、俺も師匠からプレゼント貰いたいです! というより結婚前提でお付き合いの程お願いします!」
「だぁからお前は俺の彼女か! コハクが居るのに浮気して、喧嘩になっても知らねぇぞ」
「大丈夫よハワードさん、私もバイだから。ハワードさんならむしろウェルカムよ?」
「それのどこを好意的に解釈すればいいのかわからねぇんだが……ヨハンよ、お前一人でこの馬鹿二人の相手を?」
「……僕の苦労、わかってくれた?」
「強く生きろよ、ロブスター食うか?」
「いただきます……」
随分焦燥しきっちゃってまぁ、これまでの苦労が目に浮かぶようだぜ。
だってのに悪いなヨハン。もう少しお前には、苦労を掛ける事になりそうだ。
「カイン、ちょっと来な。話がある」
「? はい」
カインと二人、席を外す。誰の邪魔も入らない港へ向かい、話を切り出した。
「お前、俺をパーティに戻すためにここに来た。それで間違いないな」
「はい! 俺達には師匠が必要なんです、貴方が居なければ勇者パーティは成り立ちません」
「そうか。んで? 俺を連れ戻した後はどうするつもりでいたんだ?」
「それは話した通り、師匠の思うようにしていただければ。俺達はその通りに動くだけです」
「つまりは、何にも考えてなかったわけだな」
「え、ええ。そう言われると、ちょっと苦しいですけど」
カインは肩をすぼめた。俺様はため息をつき、夜空を見上げた。
「結論から言おう。その体たらくじゃ、俺様は勇者パーティに戻れねぇ」
「えっ!? なんでですか!? 俺達は師匠の力になりたいんです、その右腕の代わりに俺達はなるって決めたんですから」
「いつ俺がそれを頼んだ? でもって、俺は右腕を無くして困っているように見えるか? 悲しんでいるように見えるか? むしろ楽しんでいるだろう。お前らの好意はむしろ余計なお世話なのさ」
「けど……」
「それよか俺はお前らの今後が心配だ。お前らは、俺に依存しすぎている。自分の人生を俺に決めてもらおうとしていて、とても自分の力で生きようって気概を感じないんだ」
カインは俺に何をしようか尋ねた。その上で俺に従うとも言った。それは俺を気遣っているんじゃない、自分達の思考を停止して、俺におぶさっているだけにすぎねぇんだ。
「最初こそお前らの足枷にならないようにと思ったが、今は違う。俺様に依存しているお前らが俺様の足枷になっちまう。特にお前が、特大級の足枷になるだろうな」
「えっ……」
「カイン、お前は俺の弟子だろう? ならなんで師匠越えをしようとしない。師匠は弟子が超えるべき壁、大人への登竜門だ。そいつに挑もうとせず、ただ後ろをついて行くだけだと? ふざけるな。追いつくどころか、ついて来る事しか考えていないお前に、俺の弟子で居る資格はない」
「師匠……そんな……!」
「だからよカイン、俺の弟子で居たければ、俺を超えてみせろ」
「……師匠?」
「俺はずっと傍で成長を見続けていた。お前は何度も俺の期待に応えて、気が付きゃ魔王を倒す勇者にまでなっていた。だからこそ、お前が俺を超えてくれるのが、何よりも楽しみなんだ。これから言うのは、師匠から弟子への、最後の試験だ。そいつを乗り越えて、俺を上回ってみせろ、勇者カイン」
「……その内容は?」
「もう一度俺を追い回して、見つけてみろ。ただし、ただ追いつくだけじゃだめだ。俺を追う中でお前は何度も、俺の背中と素晴らしさを思い知る事になるだろう。そいつを受けて何を想い、何を感じたのか。その末に何を目指す事にしたのか。全てを伝えた上で、俺を超えてみろ。この試験に合格出来たら、改めて勇者パーティに戻ってやるよ」
「本当、ですよね? 本当に俺達のパーティに戻ってきてくれますよね?」
「俺が一度でも約束を破った事があるか?」
「ありません」
「ならそいつが答えだ」
俺様は拳を突き出した。カインは頷くと、拳をぶつけてくる。
「分かりました、俺はもう一度、師匠を追いかけます。貴方が納得する答えを持って、必ず追いこしてみせますから」
「楽しみにしているぜ。だが覚悟しろよ? 俺様を超えるのは並大抵の覚悟じゃできねぇからな」
どうやら、俺様のスローライフはまだまだ終わりそうになさそうだ。
0
あなたにおすすめの小説
もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜
双葉 鳴
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」
授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。
途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。
ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。
駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。
しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。
毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。
翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。
使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった!
一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。
その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。
この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。
次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。
悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。
ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった!
<第一部:疫病編>
一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24
二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29
三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31
四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4
五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8
六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11
七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18
勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。
克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
辺境薬術師のポーションは至高 騎士団を追放されても、魔法薬がすべてを解決する
鶴井こう
ファンタジー
【書籍化しました】
余分にポーションを作らせ、横流しして金を稼いでいた王国騎士団第15番隊は、俺を追放した。
いきなり仕事を首にされ、隊を後にする俺。ひょんなことから、辺境伯の娘の怪我を助けたことから、辺境の村に招待されることに。
一方、モンスターたちのスタンピードを抑え込もうとしていた第15番隊。
しかしポーションの数が圧倒的に足りず、品質が低いポーションで回復もままならず、第15番隊の守備していた拠点から陥落し、王都は徐々にモンスターに侵略されていく。
俺はもふもふを拾ったり農地改革したり辺境の村でのんびりと過ごしていたが、徐々にその腕を買われて頼りにされることに。功績もステータスに表示されてしまい隠せないので、褒賞は甘んじて受けることにしようと思う。
『捨てられシスターと傷ついた獣の修繕日誌』~「修理が遅い」と追放されたけど、DIY知識チートで壊れた家も心も直して、幸せな家庭を築きます
エリモコピコット
ファンタジー
【12/6 日間ランキング17位!】
「魔法で直せば一瞬だ。お前の手作業は時間の無駄なんだよ」
そう言われて勇者パーティを追放されたシスター、エリス。
彼女の魔法は弱く、派手な活躍はできない。 けれど彼女には、物の声を聞く『構造把握』の力と、前世から受け継いだ『DIY(日曜大工)』の知識があった。
傷心のまま辺境の村「ココン」に流れ着いた彼女は、一軒のボロ家と出会う。 隙間風だらけの壁、腐りかけた床。けれど、エリスは目を輝かせた。
「直せる。ここを、世界で一番温かい『帰る場所』にしよう!」
釘を使わない頑丈な家具、水汲み不要の自動ポンプ、冬でもポカポカの床暖房。
魔法文明が見落としていた「手間暇かけた技術」は、不便な辺境生活を快適な楽園へと変えていく。
やがてその温かい家には、 傷ついた銀髪の狼少女や、 素直になれないツンデレ黒猫、 人見知りな犬耳の鍛冶師が集まってきて――。
「エリス姉、あったか~い……」「……悔しいけど、この家から出られないわね」
これは、不器用なシスターが、壊れた家と、傷ついた心を修繕していく物語。 優しくて温かい、手作りのスローライフ・ファンタジー!
(※一方その頃、メンテナンス係を失った勇者パーティの装備はボロボロになり、冷たい野営で後悔の日々を送るのですが……それはまた別のお話)
荷物持ちを追放したら、酷い目にあった件について。
しばたろう
ファンタジー
無能だと思い込み、荷物持ちのレンジャーを追放した戦士アレクス。
しかし――
彼が切り捨てた仲間こそが、
実はパーティを陰で支えていたレアスキル持ちだった。
事実に気づいた時にはもう遅い。
道に迷い、魔獣に襲われ、些細な任務すらまともにこなせない。
“荷物持ちがいなくなった瞬間”から、
アレクスの日常は静かに崩壊していく。
短絡的な判断で、かけがえのない存在を手放した戦士。
そんな彼と再び肩を並べることになったのは――
美しいのに中二が暴走する魔法使い
ノー天気で鈍感な僧侶
そして天性の才を秘めた愛くるしい弟子レンジャー
かつての仲間たちと共に、アレクスはもう一度歩き出す。
自らの愚かさと向き合い、後悔し、懺悔し、それでも進むために。
これは、
“間違いを犯した男が、仲間と共に再び立ち上がる”
再生の物語である。
《小説家になろうにも投稿しています》
【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜
あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」
貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。
しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった!
失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する!
辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。
これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!
S級パーティを追放された無能扱いの魔法戦士は気ままにギルド職員としてスローライフを送る
神谷ミコト
ファンタジー
【祝!4/6HOTランキング2位獲得】
元貴族の魔法剣士カイン=ポーンは、「誰よりも強くなる。」その決意から最上階と言われる100Fを目指していた。
ついにパーティ「イグニスの槍」は全人未達の90階に迫ろうとしていたが、
理不尽なパーティ追放を機に、思いがけずギルドの職員としての生活を送ることに。
今までのS級パーティとして牽引していた経験を活かし、ギルド業務。ダンジョン攻略。新人育成。そして、学園の臨時講師までそつなくこなす。
様々な経験を糧にカインはどう成長するのか。彼にとっての最強とはなんなのか。
カインが無自覚にモテながら冒険者ギルド職員としてスローライフを送るである。
ハーレム要素多め。
※隔日更新予定です。10話前後での完結予定で構成していましたが、多くの方に見られているため10話以降も製作中です。
よければ、良いね。評価、コメントお願いします。励みになりますorz
他メディアでも掲載中。他サイトにて開始一週間でジャンル別ランキング15位。HOTランキング4位達成。応援ありがとうございます。
たくさんの誤字脱字報告ありがとうございます。すべて適応させていただきます。
物語を楽しむ邪魔をしてしまい申し訳ないですorz
今後とも応援よろしくお願い致します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる