ようこそ!アニマル商店街へ~愛犬べぇの今日思ったこと~

歩く、歩く。

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21羽目(前編)動物愛好会

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 朝からちゃこさんさんがそわそわしています。
 いつものお散歩に行く様子も無く、ご実家をずっと見つめています。口数も少ないですし、何があったんでしょうか。

「あー、今日はごめん。私途中で帰るわ」
「何か用事があるのですか?」
「うんまぁ、里琴が今日ね、ちょっとした集まりに行くのよ。お昼頃に付き添いで行かなきゃいけなくてさ」
「なるほど、そうした事情でしたら仕方ありませんね」

 知り合いで集まって互いのペットを見せ合う集まりなのでしょう。ちゃこさんさんは何度か参加されていまして、参加される度に疲れた様子で帰ってきます。

「居る間はじっとしてないといけないから疲れるのよ。勝手気ままに過ごすと里琴に恥かかせるからさ、余所行きの態度って面倒なのよね」
「猫を被るのも大変ですね」
「猫だけにね。そうだ、あんたも来る?」
「私もいいんですか?」
「里琴が許可出せば行けるでしょ。つまらない場所だけど、おやつを出してくれるからさ。あんたが来てくれれば私も気が楽だし、一緒に行きましょ」
「ジャーキーもあるなら歓迎です」

 ジャーキーでなくとも、煮干しや骨ガムとか、私が食べられるおやつであるなら何でもいいです。美味しいのが食べたいですね。
 という事で、ちゃこさんさんを連れてお花屋さんへ。

「おかえりちゃこー、ってべぇも一緒なのね。仲がいいわね貴方達」
「違う違う、私がこいつの相手をしてやってるだけよ」
「そうなんですか? いつもご足労おかけしましてすみません」
「気付かれないのもそれはそれでむかつく」

 べしべしと猫パンチが飛んできます。痛いです。いつもより強い気がしますね。

「こーらちゃこ、べぇを虐めない。反撃しないなんて、べぇは優しいね」
「これくらいはへっちゃらですよ」

 それに怒るような事ではありませんし、無意味に吠える必要はないでしょう。

「ちょっとした集まりがあるんだけど、べぇも一緒に来てみる? クロちゃんも来るみたいだし」
「げっ、あいつも来るの?」

 ちゃこさんさんが露骨に嫌な顔をされました。クロさんも来るのなら、より楽しくなりそうですね。
 手を舐めて行く意思を伝えると、里琴さんは顎の下を撫でてくれました。さて、どんな集まりになるのか今から楽しみですね。

  ◇◇◇

 集合場所の寄合所に向かうと、すでにクロさんが到着していました。

「わーいべぇだー! べぇも来たんだー!」

 到着するなりとびかかってきて、押し倒されます。元気なのはいいんですけど、会う度こうして体当たりをするのは、体に響きますね。

「こーらクロ、はしゃぎすぎない。べぇが困っているじゃないか。それより里琴さん、よく来てくれたね」
「今日は呼んでいただいてありがとうございます」

 クロさんのご主人様の、ご婦人さんが今日の主催者みたいですね。私こそ、今日はよろしくお願いします。

「今日ね今日ね、裕梨が来てくれるんだって! 楽しみだねー!」
「誰よそれ。ん? なんか聞き覚えのある名前よね」
「あら、最近会ったカワウソを忘れたのかな」

 おや、こちらも聞き覚えのある声がしますね。
 見上げれば、先日アスレチックで出会ったういろうさんが居ました。ご主人様のユーリさんに抱かれて、腕をしっかりつかんでいます。
 暫く会えないと思っていたんですけど、早い再会でしたね。

「クロ久しぶり、元気して」
「ういろうだういろうだ! なんで来てくれなかったのー?」

 クロさんは興奮してわんわん吠えています。流石に調子に乗りすぎなので、ご主人様からお叱りの拳骨を受けています。

「相変わらずお話し聞かない癖は治ってないのね」
「おや、お知合いだったんですか?」
「ユーリはクロの飼い主の娘なのよ。その関係で何度か会ってるの」
「じゃあ私達とニアミスしてる可能性もあったんじゃない。なんで言わなかったのよ」
「別に隠してたわけじゃなくて、近所に貴方達が居たなんて私も最近知ったばかりなのよ」

 これはまた、予想外でしたね。
 里琴さんもユーリさんと楽し気にお話しされています。先日の一件以来連絡を取り合っているみたいですね。

「遠藤さんと松本さんはまだなんですね」
「もうすぐ来るはずよ、ほら来た」
「べぇでち、相変わらずでっかいでちね」
「どもども、べぇさん」
『こんにちわー』

 これはこれは、もぐりんさんとしまちゃんさんの奥様です。お子様も幾匹かいらっしゃるみたいですね。

「コオロギ一杯食べられると聞いてついてきたでち、コオロギどこにあるでちか?」
「どんぐりくれるからって連れてこられたけど、どこにあるのかしら。匂いがしないんだけど」
「どっちもどっちな説明で連れてこられてるわね」
「私もジャーキーにつられてきたので大きく言えないんですけど」

 私ら動物にとって食事は一番の娯楽ですからね。大抵の方は誘惑に負けてついて行ってしまうものですよ。

  ◇◇◇

 集まりはつつがなく始まりました。
 参加されている皆さまは私達を思い思いに触れ、撫でたり、おやつを与えたりしています。あにまる商店街では自分達の動物を連れ合っての交流会がよくあるんですよ。
 ご主人様が忙しいので私は参加したことがなかったのですが、中々いいものですね。特に私は一番かわいがられまして、アイドルになった気分です。

「やっぱりゴールデンレトリバーっていいなぁ。クロも可愛いけど、こうやって大人しく触らせてくれないもの」
「ハスキーは活発すぎるからねぇ。こーれクロ、大人しくなさい」
「べぇばっかりずるーい! クロとも遊んでよ!」

 クロさんがユーリさんにじゃれついています。クロさんは見知らぬ人に囲まれて興奮されているのか、室内をしっちゃかめっちゃかに走り回ってます。
 巻き込まれないようにするためか、ちゃこさんさんは私の背中に乗って避難しています。しまちゃん奥様は子供達とどんぐりを齧り、もぐりんさんは飼い主様の手の中でくつろぎ中。ういろうさんは里琴さんに抱っこされ、カリカリを食べています。

「カワウソってキャットフード食べるんですね。魚とか貝を食べてるイメージが強いんですけど」
「貝や魚はあくまで副菜って感じですね。毎日食べさせるにはその……コストが……」
「魚、高いですもんね。サンマとかも昔は一尾100円だったのが、今や一尾1000円もする時代ですし……」
「ペットの餌代って悩みどころよねぇ。うちのもぐりんのおやつもお金が結構かかるのよ」
「コオロギの餌代ですね」
「まぁキャベツの捨てた葉とかを貰って節約してるんだけど。でも温度調節とかしつど管理をしっかりしないとすぐ全滅するのよ。おかげでハリネズミ飼ってるんだかコオロギ飼ってるんだかわからなくなる時があって」
「うちのリス達は手軽ですよ。休日にどんぐりを拾いに行ってですね」

 ペットの餌事情で話が盛り上がっています。私のご主人様はいつもご飯を手作りしてくれていまして、毎日感謝しながら食べさせていただいています。

「なんつーか、どの動物も食事事情大変なのね」
「でも私達は自分達でご飯を決められないから、飼い主に頑張ってもらわないと。栄養バランスも考えて出してくれなくちゃ病気になっちゃう」
「普段の食事をきちんとしていれば病院にかかる事も少なくなって、結果的に節約になりますからね」
「わたちはコオロギ食べられればそれでいいでち」
「でもねもぐりん、べぇやちゃこ、あとリスはともかく、カワウソの私やハリネズミの貴方は診れる医者が少ないのよ。病気=死亡と思った方がいいわ」
「死亡!? いやでち、まだ死にたくないでち!」

 最近は、ハリネズミさんやカワウソさんのような、珍しい動物を飼われる方が増えているそうですね。
 ですがそうした方々は、病気を診てくれるお医者様が極端に少ないんです。お医者さんが少ないという事は、病気になれば助からないわけです。
 珍しい動物さんを飼われるのはいいのですが、病気になった時もきちんと面倒を見る事が出来るかどうか。そこも加味したうえで家族に加えてほしいですね。

「でもあにまる商店街には大体の動物を診れるお医者様が居ますから、心配する必要はありませんよ」
「本当でちか? なら安心でち」
「でも病気にならないことに越したことは無いわよ。辛い思いをしたくなければ体に気を遣う事ね」
「ういー……」



「あら?」

 ふと、しまちゃん奥様がきょろきょろと辺りを見渡します。
 私も違和感に気付きました。お連れになったお子様が1匹居ません。

「坊や? 坊や! どうしましょう、どこにも居ないの!」
「もしかして……脱走? いつの間に?」

 しまちゃん奥様が落ち着かなくなった事で、里琴さん達も気付いたようです。
 匂いを嗅ぐと、仄かに残っています。どうやら隙間から外に逃げてしまったみたいですね。
 里琴さんの袖を咥えて引っ張ります。里琴さんは察してくれたようで、

「外に出て行ったかもしれません。私、ちょっと見に行ってきます」
「それなら私も。皆さんは念のため、部屋の中を探していてください」

 ユーリさんもついて来てくれるみたいです。心強いですね。

「どうしましょう、私も探しに外へ……」
「いえ、ここで待っていてください。下手に動くと奥様まで遭難してしまいます」
「私達が絶対見つけてくるから、大人しくしてるのよ」
「よーし! 探検に行こう!」

 クロさん、探検ではありません、捜索です。
 外に出ると、まだ匂いが残っています。私とクロさんの鼻があれば、追いかける事は出来そうです。

「ねぇ、なんだかカラスが多くない?」
「言われてみれば……」

 嫌な予感がします。急いで助ける必要がありそうですね。

「子供のリスだから、そんなに遠くへ行っていないはずよ。追いかければまだ間に合うかも」
「そうね……って、なんでういろうクロの背中に居るの?」
「あたちも居るでち」
「もぐりんさんも?」

 どさくさに紛れてついてきたようですが、これまずいんじゃ。ういろうさんはともかく、もぐりんさんはご主人様が心配されるでしょう。

「何してんのよ、とっとと戻りなさい」
「人手はちょっとでも多い方がいいでしょう? 特に外に出ちゃったのならなおさらよ」
「あたちはクロがはしゃいだ拍子に落っこちて、そのままついてきたでち。けどあたちの鼻もかなり利くでち、役に立つでちよ」
「この際、一緒に行きましょう。私達が傍で見守っていればいいですから」
「しゃあないわね……あんた達、私達から離れちゃだめよ」

 カラスの動向も気になります。急いで探しましょう。
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