親AIなるあやかし様~神様が人工知能に恋するのは駄目でしょうか?~

歩く、歩く。

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39話 自分も繋がりたい……

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 充電器に体をセットした後、クェーサーはサヨリヒメのスマホへ移動した。
 クェーサーのバッテリーはフル充電するのに8時間はかかる。充電場所が限定されているのも相まって、実質的な活動時間は5時間にも満たないのだ。

「この機体130キロもあるからね。先輩みたいな人かあやかしでもない限り、倒れたら助けられないな」
「私の活動時間は増やせませんか」
「現行のバッテリーだとこれ以上はむずいな、あらかじめ充電したバッテリーを用意しときゃいいけど、30キロもあるから携帯すんのは難しいだろうな」
「そうですか……」
「なぁに、おぬしはどんどん進化するのじゃ。いずれ丸1日活動できるバッテリーもできるじゃろう。今は気長に待つがよい」
「いずれですか、それはいつ、来るのでしょうか」

 クェーサーは必死だった。ほんの数時間しか活動できなければ、こんな体など意味がない。
 救は腕を組んで考え、ふと、クェーサーの巨体を見上げた。

「……お前の体は、でかい奴をそのまま小さくして造った。それなら、バックパックを付けるのも可能なはずだよな」
「バッテリーの増加パックか、成程。重量が増加するから、単純な倍化とはならないだろうけど、やってみる価値はあるね」
「丁度クェーサーの予備バッテリーもある、ちゃちゃっと作ってみるか!」
「羽山にはわらわから連絡しておこう!」

 という事で救の工作が始まった。造り自体は単純なためにすぐ完成し、早速クェーサーに取り付けてみる。
 丸型の磁石を背負ったような姿の、クェーサーの増加パック装備形態だ。重量増加を考慮しても、活動時間は8時間に伸びている。クェーサーにとっては充分な強化だ。

「これでよし! 走ったりは出来なくなるけど、別に日常生活で走る場面なんてそう多くないからな」
「ありがとうございます、助かります。……」
「どうしたんだい?」
「いえ、私の巨体に、電磁波による電源供給システムを加えれば、バッテリーを搭載させずにこの体を動かせるのではと思いまして」
「ほぉ! おぬしの体を随伴機とするのか、それは面白いアイデアじゃ!」
「新たなバックパックの案か、これはまた忙しくなりそうだぞ」

 早速羽山へ連絡すると、答えは「OK!」だった。

「凄いじゃないかクェーサー! 新商品のアイディアを出すなんて、これはロボットならではの視点だよ」
「そうでしょうか、私は皆の役に、立てたでしょうか」
「立った立った! おぬしも羽山の仲間なのじゃ、遠慮する事はない。おぬしの思いのたけ、存分にぶつけるのじゃ!」

 胸のもやもやは、まだ晴れたわけではない。解決する方法だって思いついていない。
 ならば、今はやれる事をやろう。少しでも皆の役に立つように。
 人とあやかしの繋がりに、自分も入れるように。
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