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1話 女騎士を拾ったので虐待する事にした。
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圧倒的な力の差だった。鎧は砕け、剣は折れ、茶色の髪は自らの血で汚れてしまった。
セレヴィ・F・ラーゼフォンは膝を突き、絶望をにじませた瞳で男を見上げた。彼はオールバックの黒髪を撫でながら、悠然と目を細めた。
燕尾服を纏った、気品ある男である。嘲るような笑みを浮かべているが、それすらも見惚れてしまうほどの美に満ちた、人ならざる存在だ。
魔王ガレオン、それが奴の名である。
突如として人間界に現れた脅威に、リティシア王国は王国騎士団を派遣した。セレヴィ率いる、国内最強の精鋭部隊による討伐戦である。
しかし、ガレオンには勝負にすらならなかった。
奴が手を振るだけで大地が抉れるほどの衝撃波が起こり、睨まれるだけで足がすくんで動けなくなる。一分も持たず百人の騎士が倒れ、壊滅に陥っていた。
このままでは、皆が殺される……!
「総員撤退! 一刻も早くここを去れ、私が時間を稼ぐ!」
「しかしそれでは、セレヴィ様が!」
「私にかまうな! 行け!」
セレヴィは一人剣を取り、ガレオンへ立ち向かった。
仲間達はセレヴィを置いて撤退を始める。一秒でも時間を稼ぐべく、セレヴィはガレオンに食い下がった。
たとえ剣が折れても、誇りまでは折れやしない。ラーゼフォン家の名に懸けて、なんとしても魔王を止めなければ。
使命感が、貴族の誇りが、セレヴィに力を与えたのだろうか。ガレオンと互角の戦いを繰り広げ、見事仲間達が撤退するまでの時間は稼げた。
しかしセレヴィは力尽き、とうとう倒れてしまった。
指一本も動かない……ガレオンを前に逃げるなんて無理だ。でも、仲間は逃がせた。私の使命は、果たせたのだ。
ガレオンはセレヴィの頬に手を伸ばした。ああ、自分はもう、死ぬのか……。
魔王の手にかかるくらいなら、自ら命を絶つ。だがもう、自決するだけの力は残っていない。奴のなすがままだ。
「くっ、殺せ……!」
「それはお前の命を、俺に渡すという事か? 潔い女だ、気に入ったぞ、その高潔なる魂を」
ガレオンは邪悪な笑みを浮かべるなり、セレヴィに深いキスを落とした。
あまりに濃密なキスにセレヴィは仰天した。直後、体に異変が起こる。
心臓が激しく動き、痙攣が起こる。まるで自分が別の何かに作り替えられてしまうような恐怖を感じ、セレヴィは青ざめた。
「望み通り、お前を殺してやろう。契約は成立した!」
「く……そぉ……!」
意識が薄れていく。ガレオンの高笑いが、いつまでも耳に響いている。
セレヴィの命は途絶え、闇に堕ちていった。
◇◇◇
桃の香りに誘われ、セレヴィは目を覚ました。
体が軽くて温かい、ふわふわする。なんだかいい気分だ。
誰かが肌を撫でているのか、少しこそばゆい。でもとても心地よくて、また眠ってしまいそうだ。
大事な何かを忘れているような気がするけれど、なんだったっけ。
そうだ、私はガレオンと戦って、奴に殺されたはず。じゃあここは、天国なのだろうか。
「はーい頭洗うっすよー」
間延びした声の後、わしゃわしゃと髪を撫でられた。頭にお湯を掛けられて、やっとセレヴィは覚醒した。
どこだここは、なんで私は湯あみをしているんだ?
セレヴィが居るのは浴場だった。桃色の湯に満ちたユニットバスへ入れられ、多数のメイドに洗身されている。
それも、ダークエルフのメイドにだ。
その中の一人が顔を覗き込んでくる。うすぼんやりとした目をした、気だるげなダークエルフだ。
「あー、目ぇ覚ましたんすねー。グッドモーニン、髪切った?」
「切ってない! なんだ貴様ら、私に触れるな!」
「おーおーサービスしてやってるっつーのに、随分な言い草っすねぇ。つーかこんな状況で暴れてどうにかなると思ってんすか? 脳みそちゃんと入ってるっすかー?」
「この不届き者! たたっ切ってやる!」
勇ましい声に反して体が動かない。まさか、この湯のせいで動けないのか。
特殊な毒薬でも入れているのだろう。私をなぶり殺しにするつもりだな、卑怯者め。
「なんか勘違いしてるみたいっすから言っとくっすけど、単にあーたが変異したばかりで動けないだけっす。これアロマ風呂、リラックス効果の高い薬草てきとーにぶち込んでるから疲れ取れるっすよ」
「いやきちんと分量守って風呂を焚け……変異?」
「そーっす。あーた、主様に体作り替えられたんすよ。鏡で確認してくださいっす」
鏡を見るなり、セレヴィは目を見開いた。
耳が魔族のように尖り、小さな牙が生えている。首には黒い入れ墨のような模様が入り、喉元にひし形のマークが刻まれていた。
「な、なんだこれ……!」
「さーなんすかね、面倒くさいんで主様から聞いてくださいっす。それよかかゆい所とかねーっすかー?」
「もうちょっと右。じゃなくて! ここはどこだ! 私はどうして湯あみなんぞしているんだ! ガレオンはどこだ!? 貴様は何者だ! 私の体に何をした! 質問に答えろ!」
「あーうるさ。とりあえず眠ってくださーいっす」
エルフが指を鳴らすなり、睡魔に襲われる。セレヴィは懸命に堪え、意識を保った。
しかし、悔しいが気持ちがいい。アロマ風呂は想像以上にセレヴィを癒し、体も動けるようになった。
湯あみ後に着替えを渡されるなり、セレヴィは絶句した。
「な、なんだこれは」
「何って、服っすよ。文句あるんすか奴隷のくせに」
「奴隷って言った? 今奴隷って言ったよな?」
「その首のマークは主様の奴隷の証っす。今のあーたはあーしより身分低いんすよ、奴隷の分際であーしに逆らうなークソ女がーやーいやーい」
「いやお前だって奴隷じゃないのか、同じマーク付いてるし。じゃなくて、だったらなんでこんな服を用意する!?」
上質な布で作られた服だった。肌ざわりは絹よりも滑らかで、とても軽く、上品な装飾が施されている。貴族のセレヴィでも、これだけの品は見たことがない。
「こんなの申し訳なくて着れるか! もっと簡素なの持ってこい、奴隷らしいの寄越せ!」
「ぐだぐだ言わずにとっとと着ろっす」
有無を言わさず着せられた。奴隷なのにこんな服、罰が当たってしまうぞ。
「なーんでそんなにびくびくしてんすか、いーじゃねーっすかぼろ布纏うより」
「奴隷なのにこんなの着せられて、落ち着いていられるか……なんのつもりだ、こんな上等なのを着せて私を辱める気か」
「奴隷だろうが身なりを整えろ、俺の品位に関わる」
はっとし、セレヴィは振り返った。
いつの間にかガレオンが居る。セレヴィを見下すように眺め、顎に手を掛けられた。
「貴様、私を愚弄する気か。私は騎士だ、私を奴隷としたのなら、それらしく扱え」
「黙れ」
マークが光り、セレヴィは話せなくなる。マークがある限り、ガレオンに絶対服従するようだ。
「どうやら、自分の身分を思い知ってもらわねばならないようだな。覚悟しておけ」
何をする気だ。ガレオンの不敵な笑みを前に、セレヴィは震えた。
セレヴィ・F・ラーゼフォンは膝を突き、絶望をにじませた瞳で男を見上げた。彼はオールバックの黒髪を撫でながら、悠然と目を細めた。
燕尾服を纏った、気品ある男である。嘲るような笑みを浮かべているが、それすらも見惚れてしまうほどの美に満ちた、人ならざる存在だ。
魔王ガレオン、それが奴の名である。
突如として人間界に現れた脅威に、リティシア王国は王国騎士団を派遣した。セレヴィ率いる、国内最強の精鋭部隊による討伐戦である。
しかし、ガレオンには勝負にすらならなかった。
奴が手を振るだけで大地が抉れるほどの衝撃波が起こり、睨まれるだけで足がすくんで動けなくなる。一分も持たず百人の騎士が倒れ、壊滅に陥っていた。
このままでは、皆が殺される……!
「総員撤退! 一刻も早くここを去れ、私が時間を稼ぐ!」
「しかしそれでは、セレヴィ様が!」
「私にかまうな! 行け!」
セレヴィは一人剣を取り、ガレオンへ立ち向かった。
仲間達はセレヴィを置いて撤退を始める。一秒でも時間を稼ぐべく、セレヴィはガレオンに食い下がった。
たとえ剣が折れても、誇りまでは折れやしない。ラーゼフォン家の名に懸けて、なんとしても魔王を止めなければ。
使命感が、貴族の誇りが、セレヴィに力を与えたのだろうか。ガレオンと互角の戦いを繰り広げ、見事仲間達が撤退するまでの時間は稼げた。
しかしセレヴィは力尽き、とうとう倒れてしまった。
指一本も動かない……ガレオンを前に逃げるなんて無理だ。でも、仲間は逃がせた。私の使命は、果たせたのだ。
ガレオンはセレヴィの頬に手を伸ばした。ああ、自分はもう、死ぬのか……。
魔王の手にかかるくらいなら、自ら命を絶つ。だがもう、自決するだけの力は残っていない。奴のなすがままだ。
「くっ、殺せ……!」
「それはお前の命を、俺に渡すという事か? 潔い女だ、気に入ったぞ、その高潔なる魂を」
ガレオンは邪悪な笑みを浮かべるなり、セレヴィに深いキスを落とした。
あまりに濃密なキスにセレヴィは仰天した。直後、体に異変が起こる。
心臓が激しく動き、痙攣が起こる。まるで自分が別の何かに作り替えられてしまうような恐怖を感じ、セレヴィは青ざめた。
「望み通り、お前を殺してやろう。契約は成立した!」
「く……そぉ……!」
意識が薄れていく。ガレオンの高笑いが、いつまでも耳に響いている。
セレヴィの命は途絶え、闇に堕ちていった。
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桃の香りに誘われ、セレヴィは目を覚ました。
体が軽くて温かい、ふわふわする。なんだかいい気分だ。
誰かが肌を撫でているのか、少しこそばゆい。でもとても心地よくて、また眠ってしまいそうだ。
大事な何かを忘れているような気がするけれど、なんだったっけ。
そうだ、私はガレオンと戦って、奴に殺されたはず。じゃあここは、天国なのだろうか。
「はーい頭洗うっすよー」
間延びした声の後、わしゃわしゃと髪を撫でられた。頭にお湯を掛けられて、やっとセレヴィは覚醒した。
どこだここは、なんで私は湯あみをしているんだ?
セレヴィが居るのは浴場だった。桃色の湯に満ちたユニットバスへ入れられ、多数のメイドに洗身されている。
それも、ダークエルフのメイドにだ。
その中の一人が顔を覗き込んでくる。うすぼんやりとした目をした、気だるげなダークエルフだ。
「あー、目ぇ覚ましたんすねー。グッドモーニン、髪切った?」
「切ってない! なんだ貴様ら、私に触れるな!」
「おーおーサービスしてやってるっつーのに、随分な言い草っすねぇ。つーかこんな状況で暴れてどうにかなると思ってんすか? 脳みそちゃんと入ってるっすかー?」
「この不届き者! たたっ切ってやる!」
勇ましい声に反して体が動かない。まさか、この湯のせいで動けないのか。
特殊な毒薬でも入れているのだろう。私をなぶり殺しにするつもりだな、卑怯者め。
「なんか勘違いしてるみたいっすから言っとくっすけど、単にあーたが変異したばかりで動けないだけっす。これアロマ風呂、リラックス効果の高い薬草てきとーにぶち込んでるから疲れ取れるっすよ」
「いやきちんと分量守って風呂を焚け……変異?」
「そーっす。あーた、主様に体作り替えられたんすよ。鏡で確認してくださいっす」
鏡を見るなり、セレヴィは目を見開いた。
耳が魔族のように尖り、小さな牙が生えている。首には黒い入れ墨のような模様が入り、喉元にひし形のマークが刻まれていた。
「な、なんだこれ……!」
「さーなんすかね、面倒くさいんで主様から聞いてくださいっす。それよかかゆい所とかねーっすかー?」
「もうちょっと右。じゃなくて! ここはどこだ! 私はどうして湯あみなんぞしているんだ! ガレオンはどこだ!? 貴様は何者だ! 私の体に何をした! 質問に答えろ!」
「あーうるさ。とりあえず眠ってくださーいっす」
エルフが指を鳴らすなり、睡魔に襲われる。セレヴィは懸命に堪え、意識を保った。
しかし、悔しいが気持ちがいい。アロマ風呂は想像以上にセレヴィを癒し、体も動けるようになった。
湯あみ後に着替えを渡されるなり、セレヴィは絶句した。
「な、なんだこれは」
「何って、服っすよ。文句あるんすか奴隷のくせに」
「奴隷って言った? 今奴隷って言ったよな?」
「その首のマークは主様の奴隷の証っす。今のあーたはあーしより身分低いんすよ、奴隷の分際であーしに逆らうなークソ女がーやーいやーい」
「いやお前だって奴隷じゃないのか、同じマーク付いてるし。じゃなくて、だったらなんでこんな服を用意する!?」
上質な布で作られた服だった。肌ざわりは絹よりも滑らかで、とても軽く、上品な装飾が施されている。貴族のセレヴィでも、これだけの品は見たことがない。
「こんなの申し訳なくて着れるか! もっと簡素なの持ってこい、奴隷らしいの寄越せ!」
「ぐだぐだ言わずにとっとと着ろっす」
有無を言わさず着せられた。奴隷なのにこんな服、罰が当たってしまうぞ。
「なーんでそんなにびくびくしてんすか、いーじゃねーっすかぼろ布纏うより」
「奴隷なのにこんなの着せられて、落ち着いていられるか……なんのつもりだ、こんな上等なのを着せて私を辱める気か」
「奴隷だろうが身なりを整えろ、俺の品位に関わる」
はっとし、セレヴィは振り返った。
いつの間にかガレオンが居る。セレヴィを見下すように眺め、顎に手を掛けられた。
「貴様、私を愚弄する気か。私は騎士だ、私を奴隷としたのなら、それらしく扱え」
「黙れ」
マークが光り、セレヴィは話せなくなる。マークがある限り、ガレオンに絶対服従するようだ。
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