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46話 女騎士は隠れて何をしているのやら
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終業後もノアは騒がしく、セレヴィに付きまとっていた。
日中ガレオンに独占されていたのが癪だったのか、オフの時間だけでもセレヴィを独り占めしたいらしい。文句を垂れつつも慕ってくれるのは嬉しいものだ。
「まぁ、嬉しいのはいいんだが……相変わらず自由な奴だ」
現在、ノアはセレヴィのベッドを占拠し、ぐーすか寝こけている。職場見学での疲れもあったのだろうが、これじゃあセレヴィが眠れなかった。
でもいいか、これから魔法の練習だし、うるさいのが居なくて助かる。
ガレオンに見つからないようルシファーの部屋へ向かうと、彼女は待ってましたと言わんばかりにセレヴィを抱きしめ、熱烈歓迎してくれた。
「ようこそセレヴィ嬢、本日も二人きりの激しい夜を過ごそうじゃないか!」
「分かったから離してくれ、なんか身の危険を感じる……」
「ハグくらいいいではないか。それにマステマからつまみ食いしないようきつく釘を刺されているからね、無粋な真似はしたいけどしないと約束しよう」
「……マステマにちょっと豪華なお土産買ってやるか……」
マステマが手を回していなければどうなっていた事か。戻ったら礼を言っておかねば。
「さて! 早速授業を始めよう。昨日の時点でセレヴィ嬢は基礎の全ては出来ている段階だったね」
「ああ、そよ風どころか突風を打てるようになっていたとは思わなかったが、とりあえず凝縮からの放出は出来るようになったよ」
「最初だからね、上手く出来なくて当然さ。いずれ細かなコントロールが出来るようになるとも。では本日は特性の利用に関して教授しようじゃないか」
「マステマの眠らせる魔法や、ルシファーの洗脳魔法だな」
「左様。特性を利用した魔法は凝縮から放出の過程にもう一つ、「抽出」を加えて出来るようになるのさ。まずはお手本を見せよう」
ルシファーは闇属性を示す紫の結晶を作ると、結晶から色を抜き出し、より濃い紫の光を生み出した。これが「抽出」か。
「マナには属性ごとに特性があるのは学んだね。水属性なら精神を癒す、闇属性なら精神を操る、風属性なら体を癒す、雷属性なら物体の強化。これらを使うには、このように一度凝縮したマナから特性を抽出する必要があるんだ」
「察するに、マナをただ凝縮するだけでは余計な成分が混じってしまうから、特性を引き出せないみたいだな」
「その通り。物質を出すにはそれを構成するため多くの成分が必要になるからね。各属性が持っている特性を利用するには、必要な成分だけを取り出す作業を行わねばならないのさ」
「要するに、水から酸素と水素を取り出すようなものか。段々イメージが湧いてきたぞ」
「いいね、君は賢い娘だ。教え甲斐があるよ」
ルシファーに褒められ、セレヴィは照れたように笑った。これで変態でなければいい人なんだけどな。
「君のマナにはどんな特性があるのだろうね、興味が尽きないよ」
「風属性だから癒しの力を持っているんだろう?」
「そう単純な話じゃあないのさ。癒しの力と一言に言っても、傷を癒すのが得意なのか、疲労を取るのが得意なのか、傷を癒すにも外科的なのか内科的なのか。とにかく細かく枝分かれしているんだ。風属性だからって全部の癒しの力が使えるのではなく、自分の特性に見合った力しか使えないんだよ」
「となると、一人につき一つしか使えないみたいだな」
「その通り。使えるのは一つでも、使いこなせば沢山の事が出来るようになるのさ。アバドンを例にしよう。彼は炎属性で、「活性化」の魔法を持っている。彼はこの能力を駆使して捌いた先から調理は勿論、時間が必要な加工品を即座に作り出せるんだ」
以前、熊を生きたまま捌いてソーセージや燻製肉を作ったのを思い出す。「活性化」の魔法で、熟成の速度を大幅に高めていたのだろう。調理の際にも、旨味成分を活性化させて味を良くしているのかもしれない。
「座学はここまでにして、早速「抽出」を試してみよう。まずは結晶を出してくれるかな」
言われた通り、セレヴィは結晶を出した。そしたらルシファーから、卵をイメージするよう言われた。
結晶はガラス質の殻の中に、大量の魔力が詰まっているのだそうだ。「抽出」は外側の殻を壊さないよう、中身のみを取り出す作業らしい。殻を壊してしまうと必要ない成分も溶け出してしまい、特性を使えなくなるのだとか。
にしてもこれは難しい。ちょっとでも気を緩めると結晶が解けてしまい、セレヴィは何度も失敗した。
「くそっ、またか。この結晶、見た目によらず薄氷みたいに脆いな」
「かなり繊細なコントロールが必要になるからね、始めはこんなものさ。そうだな、君の特性が何なのかだけは調べておこうか。私が君のマナを「抽出」すればそれくらいは出来るよ」
言うや否や、ルシファーが背後から抱きすくめてきた。フェザータッチで肩を撫でられ、危機感を覚えたセレヴィは彼女を押しのけた。
マステマよりも教え方は上手いのに、時折本気で貞操を狙ってくるから気が抜けない。
ともあれルシファーが抽出をしてくれたため、セレヴィの特性が判明した。
「「疲労の回復」だね。主様の秘書として相応しい特性じゃないか」
「ん……でもガレオンって疲れを感じたりしているのか? 全然そんな素振りが見えないが」
「主様は疲労を知覚する速度を遅くしているのさ。実際はとても疲れをためているだろう。君が疲れを癒す魔法を使えるようになれば、主様の負担もぐっと減ると思うよ」
「そうか……それはちょっと、やる気が出てくるな」
ちょっとどころかかなりやる気が出てきていた。ガレオンの力になれるのなら、セレヴィはなんだって頑張れる気がした。
「よし! 何としても今夜中には「抽出」を出来るようにするぞ。指導頼む、ルシファー」
「うーん、それはいいんだが……やっぱ何か物足りないなぁ。君の足にキスをさせてくれたらもっと頑張れるのだが」
「やめろ」
「なら私の顔を踏みつけてくれ」
「だからやめろ」
「だったら私の頬を思いっきりひっぱたいてくれ」
「やめろっつってんだろこのドマゾ(怒)」
「おふっ! そうだ、その調子で私を罵倒してくれ! ついでに私をお仕置きしてくれると最高なんだがっ!」
「だからやらないって言っているだろうがっ!」
やっぱこいつに教わったの失敗だったかな。激しく後悔するセレヴィであった。
日中ガレオンに独占されていたのが癪だったのか、オフの時間だけでもセレヴィを独り占めしたいらしい。文句を垂れつつも慕ってくれるのは嬉しいものだ。
「まぁ、嬉しいのはいいんだが……相変わらず自由な奴だ」
現在、ノアはセレヴィのベッドを占拠し、ぐーすか寝こけている。職場見学での疲れもあったのだろうが、これじゃあセレヴィが眠れなかった。
でもいいか、これから魔法の練習だし、うるさいのが居なくて助かる。
ガレオンに見つからないようルシファーの部屋へ向かうと、彼女は待ってましたと言わんばかりにセレヴィを抱きしめ、熱烈歓迎してくれた。
「ようこそセレヴィ嬢、本日も二人きりの激しい夜を過ごそうじゃないか!」
「分かったから離してくれ、なんか身の危険を感じる……」
「ハグくらいいいではないか。それにマステマからつまみ食いしないようきつく釘を刺されているからね、無粋な真似はしたいけどしないと約束しよう」
「……マステマにちょっと豪華なお土産買ってやるか……」
マステマが手を回していなければどうなっていた事か。戻ったら礼を言っておかねば。
「さて! 早速授業を始めよう。昨日の時点でセレヴィ嬢は基礎の全ては出来ている段階だったね」
「ああ、そよ風どころか突風を打てるようになっていたとは思わなかったが、とりあえず凝縮からの放出は出来るようになったよ」
「最初だからね、上手く出来なくて当然さ。いずれ細かなコントロールが出来るようになるとも。では本日は特性の利用に関して教授しようじゃないか」
「マステマの眠らせる魔法や、ルシファーの洗脳魔法だな」
「左様。特性を利用した魔法は凝縮から放出の過程にもう一つ、「抽出」を加えて出来るようになるのさ。まずはお手本を見せよう」
ルシファーは闇属性を示す紫の結晶を作ると、結晶から色を抜き出し、より濃い紫の光を生み出した。これが「抽出」か。
「マナには属性ごとに特性があるのは学んだね。水属性なら精神を癒す、闇属性なら精神を操る、風属性なら体を癒す、雷属性なら物体の強化。これらを使うには、このように一度凝縮したマナから特性を抽出する必要があるんだ」
「察するに、マナをただ凝縮するだけでは余計な成分が混じってしまうから、特性を引き出せないみたいだな」
「その通り。物質を出すにはそれを構成するため多くの成分が必要になるからね。各属性が持っている特性を利用するには、必要な成分だけを取り出す作業を行わねばならないのさ」
「要するに、水から酸素と水素を取り出すようなものか。段々イメージが湧いてきたぞ」
「いいね、君は賢い娘だ。教え甲斐があるよ」
ルシファーに褒められ、セレヴィは照れたように笑った。これで変態でなければいい人なんだけどな。
「君のマナにはどんな特性があるのだろうね、興味が尽きないよ」
「風属性だから癒しの力を持っているんだろう?」
「そう単純な話じゃあないのさ。癒しの力と一言に言っても、傷を癒すのが得意なのか、疲労を取るのが得意なのか、傷を癒すにも外科的なのか内科的なのか。とにかく細かく枝分かれしているんだ。風属性だからって全部の癒しの力が使えるのではなく、自分の特性に見合った力しか使えないんだよ」
「となると、一人につき一つしか使えないみたいだな」
「その通り。使えるのは一つでも、使いこなせば沢山の事が出来るようになるのさ。アバドンを例にしよう。彼は炎属性で、「活性化」の魔法を持っている。彼はこの能力を駆使して捌いた先から調理は勿論、時間が必要な加工品を即座に作り出せるんだ」
以前、熊を生きたまま捌いてソーセージや燻製肉を作ったのを思い出す。「活性化」の魔法で、熟成の速度を大幅に高めていたのだろう。調理の際にも、旨味成分を活性化させて味を良くしているのかもしれない。
「座学はここまでにして、早速「抽出」を試してみよう。まずは結晶を出してくれるかな」
言われた通り、セレヴィは結晶を出した。そしたらルシファーから、卵をイメージするよう言われた。
結晶はガラス質の殻の中に、大量の魔力が詰まっているのだそうだ。「抽出」は外側の殻を壊さないよう、中身のみを取り出す作業らしい。殻を壊してしまうと必要ない成分も溶け出してしまい、特性を使えなくなるのだとか。
にしてもこれは難しい。ちょっとでも気を緩めると結晶が解けてしまい、セレヴィは何度も失敗した。
「くそっ、またか。この結晶、見た目によらず薄氷みたいに脆いな」
「かなり繊細なコントロールが必要になるからね、始めはこんなものさ。そうだな、君の特性が何なのかだけは調べておこうか。私が君のマナを「抽出」すればそれくらいは出来るよ」
言うや否や、ルシファーが背後から抱きすくめてきた。フェザータッチで肩を撫でられ、危機感を覚えたセレヴィは彼女を押しのけた。
マステマよりも教え方は上手いのに、時折本気で貞操を狙ってくるから気が抜けない。
ともあれルシファーが抽出をしてくれたため、セレヴィの特性が判明した。
「「疲労の回復」だね。主様の秘書として相応しい特性じゃないか」
「ん……でもガレオンって疲れを感じたりしているのか? 全然そんな素振りが見えないが」
「主様は疲労を知覚する速度を遅くしているのさ。実際はとても疲れをためているだろう。君が疲れを癒す魔法を使えるようになれば、主様の負担もぐっと減ると思うよ」
「そうか……それはちょっと、やる気が出てくるな」
ちょっとどころかかなりやる気が出てきていた。ガレオンの力になれるのなら、セレヴィはなんだって頑張れる気がした。
「よし! 何としても今夜中には「抽出」を出来るようにするぞ。指導頼む、ルシファー」
「うーん、それはいいんだが……やっぱ何か物足りないなぁ。君の足にキスをさせてくれたらもっと頑張れるのだが」
「やめろ」
「なら私の顔を踏みつけてくれ」
「だからやめろ」
「だったら私の頬を思いっきりひっぱたいてくれ」
「やめろっつってんだろこのドマゾ(怒)」
「おふっ! そうだ、その調子で私を罵倒してくれ! ついでに私をお仕置きしてくれると最高なんだがっ!」
「だからやらないって言っているだろうがっ!」
やっぱこいつに教わったの失敗だったかな。激しく後悔するセレヴィであった。
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