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65話 過去の借りを返済した
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呼吸した瞬間、ヒガナは斬首され殺された。
蘇生直後に逃げたら臓物を引き出されて惨殺された。
また甦らされ、すぐに舌を引っこ抜かれて殺された。
また甦らされ、今度は全身を槍で貫かれて殺された。
また甦らされ、小さな龍に噛みつかれ全身を毒に犯され殺された。
甦らされ殺され甦らされ殺され……ヒガナは何度も生死をループさせられ、恐怖と苦痛から逃げられない。
「さて、聞こう。次はどう殺されたい?」
ガレオンはヒガナの頭を掴むなり、頭蓋骨を砕いた。また死んだヒガナを「肉体錬成」で蘇生させ、翼に槍を突き刺し磔にした。
「悪いな、この姿だとカップ一つ持てなくなるんだ。力加減が出来なくてな。さっきみたいに、捕まえたつもりが握り潰してしまうのさ」
ガレオンは世間話をするような、気軽な口調だった。反対にヒガナはガチガチ嘴を震わせ、ガレオンを恐れていた。
こんな力は予想だにしていなかった。同じ時間を同じように過ごしたはずなのに、ガレオンの成長があまりにも暴力的すぎる。
何よりヒガナの心を削っているのが、奴が未だ本気を出していないという事だ。
力を解放しても尚、マックスパワーの二割しか使っていない。それだけの力でヒガナを赤子扱いしているのだ。
どう足掻いても、ガレオンには絶対勝てない。揺るぎないリアルを目の当たりにして、ヒガナのプライドは崩れていた。
いいや、ガレオンを殺す手段はある。四回殺される覚悟をすればだが。
『うぐおおおっ!』
まずは翼を槍から解放するなり体を粉みじんにされた。蘇生後にばたつきながら巨岩へ上り、嗾けられた龍に体内を食い破られた。また蘇生されたら、背骨を引き抜かれて殺されてしまう。
その直前に、ヒガナはセレヴィの位置を確認した。
セレヴィは両手を結び、ガレオンを見守っている。魔王に守られている安心感からか、警戒心が薄れていた。
蘇生後、動いて位置を調整するなり、八つ裂きにされて岩に埋め込まれ、四回目の死を経験する。蘇生するなり、ヒガナはセレヴィへ音速の羽を飛ばした。
この短距離だ、いかにガレオンと言えども防げないだろう。セレヴィはガレオン最大の弱点、重点的に攻めれば勝機はある。
「誰が手を出していいと言った?」
ヒガナの目論見はあっけなく崩れ去った。
ガレオンは光速で追いつき、羽を払いのけた。目に静かに揺らめく怒りを携え、
「セレヴィに触れるのは断じて許さん。セレヴィは貴様ごとき下賤な輩が触れていい存在ではない。この女に触れていいのは、俺だけだ」
「俺の女に近づくな」
ヒガナは怖気立った。自分の触れたのが、取り返しのつかない怪物の逆鱗だったのだと、今さらになって思い知る。
逃げなければ殺される、だがどうやって逃げればいい? こんな化け物から逃走するなど出来るわけがない。
せめて数秒でいい、ガレオンの思考をかき乱せればまだ、チャンスはあると言うのに。
追い詰められたヒガナは縋るように背後を見て、目を瞬いた。
こちらへ向かってくる霊体が居たのだ。奴を使えば、逃げられるはずだ。
ヒガナは薄く笑い、霊体を呼び寄せた。ガレオンの前に、奴の意中の相手だったイナンナを出現させた。
『奴を殺せ!』
降霊術で呼び出した霊は絶対服従の身となり、ヒガナの思い通りに操れる。攻撃命令を下せば霊体は物理的な干渉が可能になり、不死身の兵隊として利用できるのだ。
イナンナがガレオンを殺せるとは思っていない。この命令を与えれば、いかにガレオンとて彼女を無視できなくなる。
『アスタ……!』
「…………!」
イナンナの呼びかけにガレオンが反応した。僅かに生まれたガレオンの動揺を突き、ヒガナは逃走を図った。
イナンナを盾に撤退するしかない。力を蓄え、次こそはガレオンを殺してやる。
『おい、何逃げようとしているんだ?』
ところが、イナンナが思わぬ行動に出ていた。
ヒガナに逆らい、拳を振り上げ攻撃を仕掛けてきたのだ。ヒガナとの絶対服従は解けていないにも関わらずだ。
『貴様、誰に逆らおうとしている!? やめろ! やめないか!』
『あたしを誰だと思っている? イナンナ・レ・アシュトレトに指図出来るのは、ガレオンだけだ!』
渾身の右拳が打ちおろされ、ヒガナの体がバウンドする。苦悶に歪むヒガナの瞳に、鬼神の姿が映った。
言葉すらかけようとしなかった。セレヴィに手を出したばかりか、再三に渡ってイナンナを弄んだ。ガレオンの聖域を土足で荒らし続けたヒガナには、最早死すら生ぬるい。
「〈従え〉」
ガレオンが命令を下すなり、ヒガナに奴隷の刻印が刻まれた。直後、ヒガナの全身に筆舌に尽くしがたい激痛が走った。
体が内側から爆発し続けているような感覚だ。心臓と脳も何度となく破裂しているにも関わらず、ヒガナは死ぬ事が出来なかった。
「黙れ、動くな」
悲鳴も身じろぎも、「服従」の呪法で封じられてしまう。体を破壊される苦しみから逃れられず、ヒガナはその場にうずくまるしか出来なくなった。
「「肉体錬成」で貴様の体を作り変えた。痛覚を数万倍にし、内臓が急速に破壊と再生を繰り返すようにな。だが死なないよう不死の体にもしてやった、感謝しろ」
感謝しろ? ふざけるな! 心の中で歯向かうのが精いっぱいだ。
「まぁ俺もそこまで鬼じゃない。貴様の醜態を他の奴に見せるわけにいかないからな、特別な場所へ移してやる。二度と外へ出られない独房にな」
ガレオンはヒガナに手を当て、
「さらばだヒガナ、もう会う事はないだろう」
「封印」を施した。
◇◇◇
気が付くとヒガナは真っ白な空間に居た。
そこは音もない。光も暗闇もない。物体に触れる感じもない。時間の経過すら分からない。一切の感覚を遮断された、何もない空間だった。
当然ヒガナはガレオンに命じられ、身動きどころかうめき声すら上げられない。体の内側の激痛のみが、唯一許された感触だった。
いつまでここに居ればいい? ヒガナは必死に脱出の手を考えたが、こんな何もない場所で何ができる? そもそも身動きが取れないんだぞ。
死ねば苦痛から抜けられるだろうが、ガレオンにより不死にされ、自死すら許されない。終わりのない永遠に囚われ、ヒガナは追い詰められた。
助けてくれ! もう二度と悪い事はしないと誓う! これまでの比例全てを詫びる! 何でもするからここから出してくれ! お願いだ、誰か助けてくれ!
ヒガナの心の悲鳴は誰にも届かない。ガレオンに脳を弄られたせいで、発狂すら許されなかった。
ヒガナに与えられた、文字通り自身の生を食われ続ける罰。他者の命を食い物にしてきた者に相応しい末路だった。
蘇生直後に逃げたら臓物を引き出されて惨殺された。
また甦らされ、すぐに舌を引っこ抜かれて殺された。
また甦らされ、今度は全身を槍で貫かれて殺された。
また甦らされ、小さな龍に噛みつかれ全身を毒に犯され殺された。
甦らされ殺され甦らされ殺され……ヒガナは何度も生死をループさせられ、恐怖と苦痛から逃げられない。
「さて、聞こう。次はどう殺されたい?」
ガレオンはヒガナの頭を掴むなり、頭蓋骨を砕いた。また死んだヒガナを「肉体錬成」で蘇生させ、翼に槍を突き刺し磔にした。
「悪いな、この姿だとカップ一つ持てなくなるんだ。力加減が出来なくてな。さっきみたいに、捕まえたつもりが握り潰してしまうのさ」
ガレオンは世間話をするような、気軽な口調だった。反対にヒガナはガチガチ嘴を震わせ、ガレオンを恐れていた。
こんな力は予想だにしていなかった。同じ時間を同じように過ごしたはずなのに、ガレオンの成長があまりにも暴力的すぎる。
何よりヒガナの心を削っているのが、奴が未だ本気を出していないという事だ。
力を解放しても尚、マックスパワーの二割しか使っていない。それだけの力でヒガナを赤子扱いしているのだ。
どう足掻いても、ガレオンには絶対勝てない。揺るぎないリアルを目の当たりにして、ヒガナのプライドは崩れていた。
いいや、ガレオンを殺す手段はある。四回殺される覚悟をすればだが。
『うぐおおおっ!』
まずは翼を槍から解放するなり体を粉みじんにされた。蘇生後にばたつきながら巨岩へ上り、嗾けられた龍に体内を食い破られた。また蘇生されたら、背骨を引き抜かれて殺されてしまう。
その直前に、ヒガナはセレヴィの位置を確認した。
セレヴィは両手を結び、ガレオンを見守っている。魔王に守られている安心感からか、警戒心が薄れていた。
蘇生後、動いて位置を調整するなり、八つ裂きにされて岩に埋め込まれ、四回目の死を経験する。蘇生するなり、ヒガナはセレヴィへ音速の羽を飛ばした。
この短距離だ、いかにガレオンと言えども防げないだろう。セレヴィはガレオン最大の弱点、重点的に攻めれば勝機はある。
「誰が手を出していいと言った?」
ヒガナの目論見はあっけなく崩れ去った。
ガレオンは光速で追いつき、羽を払いのけた。目に静かに揺らめく怒りを携え、
「セレヴィに触れるのは断じて許さん。セレヴィは貴様ごとき下賤な輩が触れていい存在ではない。この女に触れていいのは、俺だけだ」
「俺の女に近づくな」
ヒガナは怖気立った。自分の触れたのが、取り返しのつかない怪物の逆鱗だったのだと、今さらになって思い知る。
逃げなければ殺される、だがどうやって逃げればいい? こんな化け物から逃走するなど出来るわけがない。
せめて数秒でいい、ガレオンの思考をかき乱せればまだ、チャンスはあると言うのに。
追い詰められたヒガナは縋るように背後を見て、目を瞬いた。
こちらへ向かってくる霊体が居たのだ。奴を使えば、逃げられるはずだ。
ヒガナは薄く笑い、霊体を呼び寄せた。ガレオンの前に、奴の意中の相手だったイナンナを出現させた。
『奴を殺せ!』
降霊術で呼び出した霊は絶対服従の身となり、ヒガナの思い通りに操れる。攻撃命令を下せば霊体は物理的な干渉が可能になり、不死身の兵隊として利用できるのだ。
イナンナがガレオンを殺せるとは思っていない。この命令を与えれば、いかにガレオンとて彼女を無視できなくなる。
『アスタ……!』
「…………!」
イナンナの呼びかけにガレオンが反応した。僅かに生まれたガレオンの動揺を突き、ヒガナは逃走を図った。
イナンナを盾に撤退するしかない。力を蓄え、次こそはガレオンを殺してやる。
『おい、何逃げようとしているんだ?』
ところが、イナンナが思わぬ行動に出ていた。
ヒガナに逆らい、拳を振り上げ攻撃を仕掛けてきたのだ。ヒガナとの絶対服従は解けていないにも関わらずだ。
『貴様、誰に逆らおうとしている!? やめろ! やめないか!』
『あたしを誰だと思っている? イナンナ・レ・アシュトレトに指図出来るのは、ガレオンだけだ!』
渾身の右拳が打ちおろされ、ヒガナの体がバウンドする。苦悶に歪むヒガナの瞳に、鬼神の姿が映った。
言葉すらかけようとしなかった。セレヴィに手を出したばかりか、再三に渡ってイナンナを弄んだ。ガレオンの聖域を土足で荒らし続けたヒガナには、最早死すら生ぬるい。
「〈従え〉」
ガレオンが命令を下すなり、ヒガナに奴隷の刻印が刻まれた。直後、ヒガナの全身に筆舌に尽くしがたい激痛が走った。
体が内側から爆発し続けているような感覚だ。心臓と脳も何度となく破裂しているにも関わらず、ヒガナは死ぬ事が出来なかった。
「黙れ、動くな」
悲鳴も身じろぎも、「服従」の呪法で封じられてしまう。体を破壊される苦しみから逃れられず、ヒガナはその場にうずくまるしか出来なくなった。
「「肉体錬成」で貴様の体を作り変えた。痛覚を数万倍にし、内臓が急速に破壊と再生を繰り返すようにな。だが死なないよう不死の体にもしてやった、感謝しろ」
感謝しろ? ふざけるな! 心の中で歯向かうのが精いっぱいだ。
「まぁ俺もそこまで鬼じゃない。貴様の醜態を他の奴に見せるわけにいかないからな、特別な場所へ移してやる。二度と外へ出られない独房にな」
ガレオンはヒガナに手を当て、
「さらばだヒガナ、もう会う事はないだろう」
「封印」を施した。
◇◇◇
気が付くとヒガナは真っ白な空間に居た。
そこは音もない。光も暗闇もない。物体に触れる感じもない。時間の経過すら分からない。一切の感覚を遮断された、何もない空間だった。
当然ヒガナはガレオンに命じられ、身動きどころかうめき声すら上げられない。体の内側の激痛のみが、唯一許された感触だった。
いつまでここに居ればいい? ヒガナは必死に脱出の手を考えたが、こんな何もない場所で何ができる? そもそも身動きが取れないんだぞ。
死ねば苦痛から抜けられるだろうが、ガレオンにより不死にされ、自死すら許されない。終わりのない永遠に囚われ、ヒガナは追い詰められた。
助けてくれ! もう二度と悪い事はしないと誓う! これまでの比例全てを詫びる! 何でもするからここから出してくれ! お願いだ、誰か助けてくれ!
ヒガナの心の悲鳴は誰にも届かない。ガレオンに脳を弄られたせいで、発狂すら許されなかった。
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