「くっ、殺せ!」と屈服した女騎士を拾ったので虐待することにした。

歩く、歩く。

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80話 セレヴィと歴史考察をしてみた

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 滝つぼの後も、ガレオンはセレヴィを連れまわした。
 樹齢五千年の大樹、ドラゴンの頭のような形の巨岩、螺旋状の砂岩で形成された渓谷。長い年月をかけて造られた芸術の数々にセレヴィは感動しっぱなしだ。
 自然公園の各地にはビジターセンターがあり、休憩がてら立ち寄っては、保護された動物を見せてもらったり、お揃いの根付を買ったりと、セレヴィは満喫していた。

「よし、そろそろメインイベントといくか」

 簡単な昼食を取った後、ガレオンは公園の中心部を指した。
 中心部には広大な湖があり、そこに話していた遺跡があるそうだ。

「一般開放してもいい場所なのか」
「あらかた調べ終えたからな、観光名所として整備しているのさ」
「なら気兼ねなくていいな。どんな遺物なんだ」
「そうだな、ある意味、歴史の構造が分かる場所と言えるだろうな」
「随分大きな場所だな?」
「ま、知った所でどうとなるわけではないさ。気楽に見物するといい」
「気楽に出来るかなぁ……」

 そう言われては身構えてしまう。心しながら湖へ行くと、形容しがたい遺跡が見えてきた。
 見た目は、真っ黒な石碑のようだ。青い線が複雑に、絡み合うように刻まれていて、脈動するかのように点滅している。
 この世界で使われている技術じゃない、別の世界のテクノロジーだ。

「言っておくが、あれはこの世界の技術だった物だ」
「だった?」
「失われた技術、ロストテクノロジーと言うやつだな。俺ですら再現できなくてな、活用するにもリスクコントロールが出来ないから、放置するしかなかった」
「魔界にはそんな物があるのか……」
「人間界には無くて当たり前だがな」

 随分含みのある言い回しである。浮き橋を渡って遺跡に向かい、セレヴィは早速壁に触れてみた。
 すべすべしていて、熱くも無ければ冷たくもない。硬さも柔らかさも、凹凸すら感じず、変な質感だ。水面を見ると、更に大きな物体へ繋がっているのが分かる。
 内部は光源がないのに明るい。どこから光が出ているのか分からないのに、不思議な場所である。

「外見より奥行きがある。見た目と体積が一致していない。なんだこれは」
「大昔、それこそ俺すらも生まれる以前に存在した、科学技術の産物だ。高度に発達した科学技術は魔法と見分けがつかなくなるらしい」
「こんな物が科学……生物の知恵から造られた物だと言うのか……にわかには、信じられないな」
「その信じられない技術の塊が現実にあるんだ、信じてもらわないと困る。それにセレヴィも、これ以前にその科学技術を目の当たりにしているんだぞ」
「記憶にないが」
「ヒガナだ。あいつはこの遺跡と同時期に造られた生物兵器なんだよ」

 セレヴィは足を止めた。

「……ヒガナが古代兵器だとは、聞いていた。しかしここと同時期なのは、聞いていない」
「分かったのが最近で、世間にもまだ発表していない事だからな。奴を捕縛してから、幾人かの研究者に調べさせて判明したんだ。その過程で、より驚く事も分かった。セレヴィ達の祖先は、元を辿ると魔界から移住した者達なんだ」
「なんだって!?」

 唐突な知らせにセレヴィは仰天した。ガレオンは一旦話を止め、奥へ進んだ。
 内部は多くの部屋が存在しており、船を思わせた。大部屋が沢山設置されていて、多数の人々を運搬できる造りになっていた。

「まるで、避難船だな」
「正解だ。こいつはヒガナ達から逃げるために造られた箱舟でな、使えれば別の世界へ移動するのも可能だ」
「……これを造った時代、何があったんだ? そもそもヒガナ達古代兵器は何を目的として造られた物なんだ? 第一これだけの文明を誇りながら……国も法もない荒れた世界となったのは、なぜなんだ?」
「どう説明するか……折角遺物の中に居るんだ、ここの設備を利用して、ちょっとした授業をするか」

 ガレオンが遺物の装置に触れると、壁に映像が浮かび上がった。
 映像には、障壁の中で巨大な生命体が激しくぶつかり合う姿が映っている。その様を見て、沢山の人々が熱狂していた。

「結論から言えば、ヒガナ達はこの世界から生命体を抹殺するために造られた兵器だ。となれば必然的に当時の情勢が分かるだろう、戦争だ。だが今の時代の戦争とは様式が大きく違った。当時の戦争はより高度と言うか、チェスのようなゲーム感覚で行われていたらしい」
「……それって、ヒガナ達を戦場に繰り出しての、代理戦争をしていたって事か?」
「その通りだ。自国で造った無人兵器をぶつけ合い、勝者の国が政権を握る。誰の血も流れない、当時としては画期的なアイディアだったはずだ」

「何とも言えないな……そもそも、戦争と言う行為そのものが人道に反したものだろう」
「正論だな、だが正論で世の中は動けない。セレヴィも良く分かっているはずだろう」
「ああ……貴族社会で生きる中で、常々感じ続けていたよ」

「最初こそ、ゴーレムのような角ばった人形をぶつけ合う物だったそうだが、エンタメ性を求めたんだろうな。血肉を持ち、撃たれれば悲鳴を上げて倒れる、よりリアルな生存競争を見るために生物兵器を造るようになったらしい」
「非効率的すぎるが……」
「利益が出るならどうであろうと造る、利権が絡むなら余計にな。セレヴィも良く分かるだろう? 利権の甘い汁を吸っている連中の頭の中を」

 確かに。既得権益に拘る奴らは目先の利益だけに飛びついて、その裏にある多くのデメリットを見て見ぬふりをする。自分達の行動によって世間にどれだけの悪影響が出るのかすら考えず、楽観的な考えだけで動くケダモノだ。

「ヒガナ達の存在は外交的に強大なジョーカーとなり、次第に性能をより高度に、より過激に発展させていった。当時の者達はヒガナ達によって莫大な利益を得て、奴らの開発の過程で得た多くの技術が生活を豊かな物にしていた。だが」

 次にガレオンが見せた映像には、生物兵器が人々を襲う姿が映されていた。彼らに与えられた過剰な武装の数々は、たった一発で数千もの命を奪っていく。

「「自分達なら制御できる」、そんな甘い楽観論と利益重視で高性能を求め続けた結果、兵器達は反乱を起こした。ヒガナを見れば分かるだろう? 奴らは会話ができるほどに高度な知性を持たされたんだ、自分達の境遇に不満を抱くに決まっている」
「自分達の力もどれほどの物か当然理解しているわけだし、創造主に歯向かうには十分な材料が揃っていたんだな」
「あまりに強大化した奴らに対抗できず、人々は蹂躙され続けた。そこでとある計画が立ち上がったんだ。魔界を捨てて、別の世界へ逃げる箱舟計画がな」

「別の世界へ逃げる……人間界にヒガナ達は居ない……もしかして、その箱舟計画の行き先は人間界、なのか?」
「ああ。当時は選民思想が激しかった時代でな、セレヴィ達人間種が覇権を握っていたようだ。その特権階級の連中が逃げるために造られた船らしい。まぁ全員が脱出できたわけじゃなく、いくつかの船はこいつのように撃ち落とされたようだがな」

 水に沈んだ区域の前へ到着した。どうやら船体を真っ二つにされているようで、先へ進めそうにない。

「生き残った僅かな人類が、私達の時代へ繋いでいったのか……しかし道理で人間界にゴブリンやエルフが居ないわけだ。この世界に置き去りにしていったのだから。存在自体は物語や絵画として、断片的に遺っているが……」
「一方の魔界は古代兵器の侵攻によって文明は崩壊、秩序を失って大荒れの時代に入った。その時代が俺の青春時代だな」

「……いや、驚いたな。私の祖先がまさか、こんな形で魔界から離れたなんて。でもなんで魔法が使えなくなったんだろう。昔魔界に居たなら使えるよな?」
「退化したんじゃないか。そもそも人間界にはマナが存在しないから、魔法自体使えないしな」
「いやでも、ガレオンは使えたじゃないか」

「体に蓄えていた分を使ってな。俺でも人間界では二週間しか魔法を使えないから、あまり行きたい世界ではないな」
「そうなのか……しかし驚いたものだ、まさか私の先祖が魔界出身だったとは」

 確かに歴史の構造が分かる場所だ。人間界自体、セレヴィの祖先がガレオンの祖先を見捨てて出来上がった世界だったとは。大昔からあの世界は進歩していないらしい。
 加えて、新たな疑問も浮かんだ。

「ショックでも受けたか?」
「んー、そう言われても、大昔の事だしな。それに人間界に未練はないし、戻りたくない。すっかり魔界が大好きになってしまったから。学びを得られたのは、楽しかったよ」
「ふん、楽しめたのなら連れて来た甲斐があったというものだ」

 その後は船内を回り、歴史研究デートとしゃれこんだ。
 ガレオンと当時起こった事を考察するのは楽しかったが、セレヴィは微かに不安を感じつつあった。
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