「くっ、殺せ!」と屈服した女騎士を拾ったので虐待することにした。

歩く、歩く。

文字の大きさ
82 / 93

82話 遊びのクライマックスと言えば決まっている

しおりを挟む
 戻る頃には夕暮れになっていた。セレヴィはふらついていて、ガレオンにしがみつかないと思うように歩けずにいる。
 ガレオンが本気を出したら、全く歯が立たなかった。赤面ものの展開が多すぎて、セレヴィは思い出し照れを繰り返して幾度も爆発している。あんなの人に絶対言えない……。

「やれやれ、ちょっと全力を出しただけでこれか。まだまだ甘いな」
「……甘すぎて砂糖吐きそうでした……」

 目にハートマークが出る程度にはボロボロである。魔王の掌で踊らされる快楽、依存症になる程過激だった。

「今後の仕事に影響出たらどうするつもりだ……」
「その辺はきちんと加減している。秘書は生かさず殺さず甘やかす」
「既に甘え殺されているわっ! と言うか凄い疲れたんだが……」
「早朝から連れまわしたからな、宿に行くか」
「宿……うん」

 なぜかセレヴィは緊張していた。当然と言うか、ガレオンが取っていたのは一部屋、ダブルルームだ。
 その意味を悟ると口数が減り、頭の中で心音が聞こえてくる。ここには、誰の邪魔も入ったりしないんだ。……朝まで、誰も。

「飯まで少し時間があるし、風呂に行ってくる。セレヴィはどうするんだ?」
「へぁ!? いやぁうん、そうだな! 私も行こうかなぁ!?」
「何をてんぱってるんだお前は」
「い、いつもこんな感じだが? わつぁしはそうそうこんな感じ!」
「呂律が回ってないぞ。一旦落ち着け、深呼吸」
「ひっひっふー、ひっひっふー!」
「誰がラマーズ式呼吸をしろと言った」

 昂りすぎてセレヴィはアホになっていた。つーかこの元騎士、むっつりスケベである。
 私はこんなに意識してるのに、どうしてこいつはこんな冷静なんだよっ!

 妙な怒りを覚える程度には重症だ。怒りのおかげでどうにか治まってきたけど。
「ここの露天はいいぞ、景色がとにかく絶景だ。楽しんでこい」
「そ、そうか。それは楽しみだな、うん」
「だろう。……なんで男湯に付いて来ようとしてるんだお前は」

 セレヴィははっとした。逃げるように女湯へ駆け込み、ぽかぽかと頭を叩いた。
 ああもう、しっかりしろセレヴィ! お前はそんなはしたない女じゃないだろう!
 そうだ、いつもガレオンと執務室で二人きりになっているではないか。何を今さら意識する必要がある? そうさ、いつも通りでいいんだ。普通にしていれば何も起きは……。

「……ん?」

 ふと、持ってきた着替えに違和感が。いつもの下着となんか違う。確かめてみれば、

「……こ、これは……!」

 前にマステマと買った勝負下着ではないか。しかも奴のメモ書きが挟まっている。

『避妊はちゃんとしとけっす』

 ご丁寧に、「お守り」まで付いていた。

「…………………~~~~~~~~~~~!?!?!?!?!?」

 余計なお節介にセレヴィは沸騰し、声にならない大声を上げてしまった。

  ◇◇◇

Q:なんで「お守り」を入れたのですか?
A:「まー、も少し恋人気分楽しんでもらいたいっすからねー」
「何かおっしゃいましたマステマ様?」
「独り言っす」

  ◇◇◇

「くそぅ……マステマ、帰ったら覚えてろ……」

 ボケナスダークエルフのどや顔とサムズアップが思い浮かぶ。あいつめ、余計なお世話をしおってからに。
 とりあえず頭からお湯を被って冷静になる。温湯がかかると少しだけ思考が晴れた気がした。
 空を見上げれば、美しい天の川が見えた。目を回していて気づかなかったが、宝石をばらまいたかのような星空が広がっている。

 それに自然公園も、淡く輝いている。星の瞬きに呼応するように、精霊達が光を放っているのだ。
 ガレオンの言う通り絶景だ。この景色を見ながら浸かる風呂、最高じゃないか。
 ……改めて、遠い世界に来たと思う。魔界で骨を埋める決意はとうに固まっている。両親から受け継いだラーゼフォン家の魂は、この世界で繋いでいくんだ。

 腹をさすり、未来に思いを馳せた。ガレオンとの子供は、きっと可愛いだろうな。
 でも所帯を持つのはもう少し先がいい、まだガレオンと交際を始めたばかりだし、暫くは二人でいたいから。

「楽しみは尽きないな……」

 満足した所で出ると、丁度ガレオンと鉢合わせた。風呂上りの隙だらけなガレオンを見るのは初めてだ。
 程よく温まり薄く赤くなった筋肉質な肉体、濡れて色気を増した髪。元々素材が良すぎるから、余計に輝いて見える。
「なんだ、見とれてるのか?」
「うん……見た事ない姿だから」
「確かに奴隷どもには見せんようにしてるからな。ま、今日は特別だ。それと、俺から離れるなよ。お前が俺に抱いているのと同じ感想を俺も抱いているからな」

 セレヴィもかなり油断した姿である。彼女自身自覚はないが、容姿は相当整っている部類に含まれる。街に出れば確実に男が言い寄ってくるだろう。
 顔には出さないが、ガレオンとて気が気ではない。この魔王、セレヴィが思う程冷静ではなかったようだ。

「……なんでその感情を顔に出してくれないんだ」
「長年腹芸をやっていれば自然と隠し方も身に付くもんだ」
「私も数多の貴族達とやりあってきたつもりなんだがなぁ……」
「だがその経験は無駄ではないだろう。現に秘書業で役立っているわけだからな」
「まぁ、それならいいかな。ちょっと涼んでから食事にしないか?」
「かまわん。湯疲れがあるなら、肩にもたれてもいいぞ」
「だから回りくどい言い方はやめろ。言われ無くてもそうしてやる」

 という事でガレオンに寄りかかる。両親を失ってからというもの、セレヴィは甘えられる存在が居なかった。
 こんなに他人に気を許したのは、親以外だとガレオンが初めてかもしれない。

 ……父上、母上。この人が私の……好きな人です。

 魔王の妃になるなんて、天国の両親が聞いたら驚くだろう。でもきっと、祝福してくれるはずだ。
 両親に負けないくらい、暖かな家庭を築ければいいな。
しおりを挟む
感想 40

あなたにおすすめの小説

我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。 しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。 そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。 ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。 というか、甘やかされてません? これって、どういうことでしょう? ※後日談は激甘です。  激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。 ※小説家になろう様にも公開させて頂いております。  ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。  タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

処理中です...