「くっ、殺せ!」と屈服した女騎士を拾ったので虐待することにした。

歩く、歩く。

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90話 セレヴィが魔王への反逆を考えている。

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 翌朝、駐屯地にて、セレヴィはガレオンの無事を祈っていた。
 昨日から、彼女はずっと眠っていない。ガレオンの無事を見るまで、心が休まらないからだ。
 お願いだから、早く帰ってきてくれ。こうして待っているだけで、気が気ではない。隣にマステマが居てくれるから、辛うじて耐えられた。

「んっ? 影が見えてきたっすよ。多分あれグングニルっす」
「本当か!?」

 セレヴィは飛び上がり、グングニルの影を見て喜んだ。
 グングニルには損傷が見られない、それに船首にガレオンの姿も見えたのだ。
 彼は無事だ、と言うのになんだか、様子がおかしい。戦勝しての凱旋ではないようだ。

「なんかトラブったんすかねぇ」
「分からない、彼から聞いてみない事には……とにかく出迎えの準備だ」
「うぃーっす」

 マステマの手を借り、ガレオンの出迎えに走った。
 戻ってきたガレオンは浮かない表情で、セレヴィの肩を抱いた。それだけで、セレヴィは彼の言わんとする事が分かってしまった。

「ナラクが蘇った。すぐに対策会議を開く」
「やはりか……けどよく、無事に戻ってきてくれた」
「奴が連合どもの領地へ向かったからな、戦闘を避けられたのが大きい。理由は調査中だがな」

 ガレオンは更に詳しい状況を話してくれた。古代兵器を捕らえた箱を見せてもらうと、封印越しにも凄まじい力を感じられた。
 こんなのを相手にして、よく帰ってこれたものだ。
 会議室へ着くなり、ルシファーが報告書を持って走ってきた。

「斥候からの報告が上がりました。ナラクは連合各地に存在している、古代兵器の格納庫を襲撃しているようです」
「奴らめ、性懲りもなくまだ古代兵器を隠し持ってやがったのか。だが古代兵器を最優先で攻撃しているようだな」
「元々、その目的のために製造された兵器だからじゃないか?」
「思考回路の基本ルーティンとなっていてもおかしくないな、となれば、作戦も立てやすくなる。早急に人を集めろ! ナラク討伐作戦を決行する!」

 あまりにも早すぎる行動にセレヴィは驚いた。しかしガレオンの行動も致し方ない。
 ナラクは危険だ、放置すればどれほどの被害が広がる事になるか。何しろ相手は、一度文明を崩壊させた超兵器なのだから。
 でもまた、ガレオンは危険な場所へ向かおうとしているんだな……。

「……マステマ、ちょっといいか?」
「あん? 何か企んでるみたいっすけど」
「……二度も、留守番を命じられたんだ。もう我慢の限界だよ」

 これは私なりの、魔王への反逆だ。

  ◇◇◇

 会議室にて、ガレオンは斥候が入手したナラクの情報を解析していた。
 命がけで持ってきた、記録石に映し出される光景は、凄まじいものだった。
 連合は隠していた古代兵器を起動させ、必死になってナラクにぶつけ抵抗していた。しかしナラクには全く通用しない、体に刻み込まれた、数々の武装により、まるで紙屑のように蹴散らされていく……。

「この後が問題なのです」

 ルシファーは神妙な顔で、ナラク最大の武器の映像を見せた。
 ナラクは翼を起点にオーロラのような光を放出した。するとその光を浴びた古代兵器は勿論、連合兵達がまるでねじ切れるように殺されていく。
 建物も何もかもが融解していき、瞬く間に地獄絵図が広がった。流石のガレオンですら、顔をしかめる凄惨な光景だった。

「ナラクから高出力のマナが放出されているんです。このマナの奔流を浴びたら最後、生物だろうが何だろうが圧倒的な攻撃濃度で潰されてしまいます」
「成程な、かつて世界から文明を消し去った、ナラク最大の武装か」

 この攻撃には莫大なエネルギーを使用するのか、ナラクは地上に降り、休眠状態に入った。この間も体からビットを生み出し、周囲の警戒に当たらせている。
 まるで隙が見当たらず、参加者全員が絶句してしまう。その中でガレオンは……笑っていた。
 久しぶりの、最高の喧嘩相手じゃないか。
 最強の古代兵器ナラク、相手にとって不足はない。

「捕らえた古代兵器が利用できそうだ。ナラクが古代兵器に引かれる性質を利用し、人気のない海上へおびき出す。そこから先は、俺が対処する」
「主様……お言葉ですが、主様でもナラクの相手は、辛いのでは?」
「かもな、多少は苦戦するかもしれん。だが、俺しかやれる奴が居ないのならば行くしかない。辛いとか辛くないとかではない、俺がやらねばならない仕事だ。俺以外にナラクの相手が出来る奴は、居ないんだからな」

 それにナラクを倒せば、魔界統一も非常に楽になる。生き残った魔王達も、ナラクを倒すような化け物に歯向かう勇気はあるまい。
 圧倒的な力は壮絶な抑止力となる、ガレオンの力を完全な形で救い、魔界の救世主となれば、魔界の全てはガレオンの物となるだろう。
 イナンナと始め、セレヴィと目指す夢の結実が間近に迫っていた。

「時間は残されていない、早急に行動を始めろ。お前達の命、この俺が守ってやる」

 部下を鼓舞し、ガレオンは拳を握った。
 自分が背負うべき、数多の責務。そいつを全て乗っけて、ナラクを討伐してやる。
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