「くっ、殺せ!」と屈服した女騎士を拾ったので虐待することにした。

歩く、歩く。

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91話 共に命を賭けるのが騎士の務め

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 休眠から覚めたナラクは、次の獲物を探していた。
 ナラクは古代兵器を撲滅するために生み出された決戦機だ。全ての敵を根絶やしにするまで、活動を止める事はない。
 そしてその敵の範囲は、古代兵器に留まらない。
 目につく生命体全てを撲滅するまで、ナラクは止まらない。古代兵器を優先して粉砕した後は、生きとし生ける者全て、果ては文明に至るまで。世界をリセットするまでナラクは戦い続ける。
 翼から半重力を出し、ナラクが浮き上がる。すると突然、二体の古代兵器が襲い掛かってきた。

 ナラクはビームソードで瞬殺し、続けざまに新たな古代兵器を感知する。そいつを抹殺したら、またしても次の反応が出てくる。
 まるでナラクを導くかのように、断続的に古代兵器が現れてくるが、ナラクは何の疑問も持たずに戦い続けた。
 力を持つ代わりに、ナラクの知能は著しく低い。そのため罠であろうと容易くはまってしまう弱点があった。

 誘導に従い、ナラクは人気のない海へと連れていかれる。そこならば、どれだけ暴れても被害は最小限で済む。
 ……ガレオン軍の、対ナラク戦術。いいや、戦術とすら言えない苦肉の策だ。
 古代兵器に反応するナラクの習性を利用し、魔王ガレオンが心置きなく戦える場所へ誘導し、彼の全力を持って倒す。もはやそれ以外に方法は残っていなかった。

 グングニルにて、ガレオンは時が来るのを待っていた。彼の見立てでは、ナラクと自分の力はほぼ五分だ。
 自身の力を封じてから、本当の意味で本気を出した事はない。ガレオンですら上限が分からないのだ。そんな力を振るって、果たして世界が無事でいられるだろうか。
 考えるだけ無駄か、どの道使わなければ、セレヴィの居るこの世界は消え去る。壊れてもまた直せばいいだけの話だ。

「……許せよ、セレヴィ」

 今回もまた、セレヴィは留守番だ。こう何度も繰り返して申し訳なく思うが、大事な女を守るためだ。
 後日また、埋め合わせをしないとな。そう考えた時、ノックの音が。

「失礼しますー。ノア、入りますね」
「ノアだと?」

 確かノアはガレオン城で待機させていたはずだ。思うなり扉が開き、ノアとアバドンが入ってくる。

「アバドンまで、なぜここへ来た」
「マステマに呼ばれたアルよ、グングニルの兵どうにかするの手伝え言われたアル」
「ノアはセレヴィ様の付き添いですっ。未来のお后様に荷物を持たせるわけにはいきませんので」
「……まさか」
「ああ、そのまさかだよ」

 ルシファーとマステマを従え、セレヴィがやってきた。
 なぜだ、彼女もガレオン城へ送り返したはずなのに。

「命令違反をして申し訳ありません。全責任はこのルシファーにありますので、どうか厳しいお仕置きを!」
「黙れドエム。おいセレヴィ、ここは危険だと言っただろう、今すぐに帰れ。入れ知恵したのはマステマだな、どうしてセレヴィを連れて来た」
「と言われても、主様が死んだらどこに居たって同じっすよ。安全な場所なんざありゃしねーっす。それなら、大事な人と一緒に居た方がセレヴィにとっていーんじゃねっすか?」
「俺が失敗すると思っているのか?」
「思っていない。でももう、待っているだけなのは嫌なんだ」

 セレヴィは剣を握り、胸に手を当てた。

「私は魔王の騎士だ、主に仕え、命を共にするのが使命。ガレオンと同じ比重で命を賭け、心も共にありたいんだ。だからもう、私は待ったりしない。ガレオンの居る所がどこであろうと、同じ場所に居たい。自分の見初めた女のわがままくらい、聞いてくれ」

 今回ばかりは、ガレオンは彼女を言い負かせなかった。
 ナラクが解き放たれた今、魔界に安全な場所などない。セレヴィがどこに居ようが、失敗した時点で彼女も死ぬ。

「……セレヴィ以外、席を外せ。少し、二人きりにさせろ」
「うぃーっす。んじゃ全員撤収、てっしゅー」

 マステマが皆を連れて出ていく。ノアが出ていく際に、セレヴィにカバンを渡した。
 セレヴィはカバンからミサンガを出すと、ガレオンに押し付けた。

「マステマから聞いたんだ、大事な人が戦に行く時、無事に戻ってきますようにと、髪で編んだミサンガを渡すと。昨日渡しそびれたから、今渡しておく」
「ふん、礼は言っておこう。言いつけを破って、もし道中でナラクに鉢合わせたらどうするつもりだったんだ」
「それは、そうだな、ちょっと無謀だった」
「まぁ、もう構わん。無事に俺の前に居るわけだからな。それに、セレヴィが一目見れて安心できたのもある。こんな状況だと言うのに、リラックスできたからな」
「私が役に立てたのなら光栄だ」
「セレヴィが役に立たなかったことなどない。いつでも俺は、お前に助けられている。これからもずっと、助けてもらう事になるだろうな」

 轟音が聞こえてきた。ナラクが近づいている。

「もう時間か、全くせっかちな奴だ。キスの一つくらい楽しませろ」
「そのくらいは出来るだろう?」
「確かにな」

 セレヴィと軽いキスを交わし、ガレオンはナラクとの戦いへと赴いた。
 このキスは最後にしない。生きて帰れば、この先何度も彼女と愛を育めるのだ。だから、

「行ってくる」
「ああ、いってらっしゃい」

 さよならは言わない。再会のおまじないを交わし、ガレオンは戦場へと赴いた。
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