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最終話 女騎士は孕み袋として生きるしかなくなった
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「よく聞け、奴隷どもよ!」
ガレオン城にて、ガレオンは集まった領民達に演説していた。
今日は特別な日である。大勢集まった民衆の前でガレオンは、高らかに宣誓した。
「本日をもって、魔界全土はこの魔王ガレオンが制覇した!」
ナラク討伐から十五年、ガレオンは魔界の支配に成功していた。
最凶の古代兵器を討伐したとあって、対抗勢力は全員潰えた。敵が居なくなった後の統治は非常にスムーズに進み、僅か十五年で魔界全土がガレオン領へと塗り替わったのだ。
魔界の四割を支配していた時点で、倍以上の民を養える程の力を蓄えていたため、魔界全土の整備も難しくはなかった。かつてイナンナと、小さな洞窟で始めた巨大な夢は、現実の物となったのだ。
魔界統一の演説を終えたガレオンは、颯爽と踵を返し、メイドが差し出したタオルを手に取った。
「ガレオン様でもご緊張なさるんですね」
「ふん、今日が特別暑いだけだ。余計な口は慎めよ、ノア」
「失礼いたしました」
メイド長となったノアは、スカートをつまんで会釈した。
あのみそっかすがよくもまぁ昇格できたものだ。ガレオンは素直に感心した。
「アバドン、祝賀会の支度はどうなっている?」
『既に準備出来てるアルよ、いつでもオーケーアル』
「いい返事だ、ルシファー!」
『警備体制も万全です。しかし敵対勢力が居ない今、そこまで気にされる事はないのでは?』
「阿呆、敵は人だけでなく災害もあるだろう。万一が起こらんとも限らないんだ、警戒を怠るな」
『これは失礼いたしました! で、では罰として私にきつい懲罰をば!』
「却下」
ルシファーとの交信をぶち切り、ガレオンは舌打ちした。あの野郎、全く変わりゃしねぇ。
『忙しそうアルな、新しい秘書探すのどうアル?』
「馬鹿言え、俺の秘書は一人だけしか務まらん。この忙しさも数年だけの事だ、問題ない」
『愛しすぎもどうかと思うアルよ』
「抜かせ」
ガレオンは苦笑し、肩を竦めた。
後の予定は暫く空いている、二時間は暇が出来ただろうか。今ならば、会いに行けるな。
「早くお顔を見せに向かわれてはどうですか? セレヴィ様もきっと、首を長くして待っていると思いますよ」
「言われんでもそうするつもりだ。もし時間を過ぎても戻らなかったら、呼びに来い」
「かしこまりました」
ノアは苦笑し、ガレオンを見送った。彼は小走りに、愛する家族の下へ向かっていった。
◇◇◇
「おっ、噂をすればっすね」
マステマがガレオンの足音を聞きつけ、セレヴィの肩を叩いた。
セレヴィは重い腰を上げると、戻ってきた夫を迎えるべく両腕を広げた。
「お帰りなさい、ちゃんとやれた?」
「当たり前だろう、俺を誰だと思っている」
「私の自慢の旦那様」
「正解だ」
セレヴィはガレオンと抱き合い、キスを交わした。マステマは呆れたように笑いながら、眠った子を抱え直した。
「父上! 私も私も!」
ガレオンの足に、十歳となる娘がしがみついた。ガレオンはひょいと抱っこし、
「イナンナ、ちゃんと留守番できただろうな?」
「うん!」
イナンナは父親の首に腕を回し、頬を摺り寄せてくる。可愛い奴だ、目に入れても痛くない。
マステマに抱かれている五歳の息子、ハリスは涎を垂らして眠っていた。待ちくたびれてしまったようだ。
「ちちうえ……だっこ……」
「おーおー随分懐かれてるっすねぇ、一応あーしの方が世話してるんすけどねー?」
「嫉妬はみっともないぞ? 父親が子に慕われるのは当然の事だろう」
「腑に落ちねぇっす! 過ごした時間と愛情は比例しないんすか!?」
「どうどうマステマ、落ち着け」
セレヴィは微笑み、膨らんだ腹を摩った。
ナラクを倒してから数年後、領地が落ち着いてきた頃合いに二人は籍を入れた。
それからは子宝に恵まれ、幸せな時間が続いている。もう少しで、三人目の家族が増えようとしていた。
「チクショウ、三人目は絶対あーしに懐かせてやるっす。主様にこれ以上美味しい所取りさせてたまるかっす」
「セレヴィの付き人にしてから随分生意気になったな、またメイド業に戻してやろうか?」
「パワハラっすよ! 職権濫用反対っす!」
「ノアに付き人を任せても構わんのだぞ?」
「だから喧嘩はやめろ二人とも。私はマステマに子供達を世話してもらいたいよ、凄く面倒見がいいから、任せて安心できる」
「流石っす奥様! 産休中もしっかりサポートするから安心するっすよ!」
「ありがとう。私としては、もう少し秘書としての仕事をしたいんだが」
「そんな事をして母体に負担がかかったらどうする、ほんの数年だけの辛抱だ、そのくらい俺一人でどうにか出来る。丈夫な子を産むのに集中してくれ」
「分かったよ、前よりも過保護になったな」
妃になってから、ガレオンの溺愛ぶりに拍車がかかっていた。元々一途な男だったが、結婚した事で超が付く程の愛妻家へと変貌したようだ。
夫に愛され、子供達にも慕われ、まるで夢の中に居る感覚だ。
「んじゃ、イナンナはあーしが預かるっす。ちょっち席外すっすよ」
「えー、私父上と遊びたい!」
「ちょっちでいいからおねーさんと一緒に来るっすよ。お仕事頑張ったパパにごほーびやらねーとっす」
「うー……分かった」
マステマに連れられ、子供達が出ていった。ガレオンと二人きりになり、セレヴィは改めてガレオンに甘えた。
「早く、一緒に仕事がしたいな。働くガレオンの姿、久しく見てないし」
「それなら子供と一緒に見学でもするか? 父親が働く姿を見せておくのも教育になる」
「いいかもしれないな。……ねぇ、ガレオン」
セレヴィは魔王に、伝えたい事が沢山あった。
でも不思議だ、こうして彼を前にすると、どう伝えればいいのか分からなくなってしまう。
だから、たった一言に全部を、彼への愛を込めるとしよう。
「私は今、世界で一番幸せだ。……愛してるよ、私だけの魔王様」
~Fin~
ガレオン城にて、ガレオンは集まった領民達に演説していた。
今日は特別な日である。大勢集まった民衆の前でガレオンは、高らかに宣誓した。
「本日をもって、魔界全土はこの魔王ガレオンが制覇した!」
ナラク討伐から十五年、ガレオンは魔界の支配に成功していた。
最凶の古代兵器を討伐したとあって、対抗勢力は全員潰えた。敵が居なくなった後の統治は非常にスムーズに進み、僅か十五年で魔界全土がガレオン領へと塗り替わったのだ。
魔界の四割を支配していた時点で、倍以上の民を養える程の力を蓄えていたため、魔界全土の整備も難しくはなかった。かつてイナンナと、小さな洞窟で始めた巨大な夢は、現実の物となったのだ。
魔界統一の演説を終えたガレオンは、颯爽と踵を返し、メイドが差し出したタオルを手に取った。
「ガレオン様でもご緊張なさるんですね」
「ふん、今日が特別暑いだけだ。余計な口は慎めよ、ノア」
「失礼いたしました」
メイド長となったノアは、スカートをつまんで会釈した。
あのみそっかすがよくもまぁ昇格できたものだ。ガレオンは素直に感心した。
「アバドン、祝賀会の支度はどうなっている?」
『既に準備出来てるアルよ、いつでもオーケーアル』
「いい返事だ、ルシファー!」
『警備体制も万全です。しかし敵対勢力が居ない今、そこまで気にされる事はないのでは?』
「阿呆、敵は人だけでなく災害もあるだろう。万一が起こらんとも限らないんだ、警戒を怠るな」
『これは失礼いたしました! で、では罰として私にきつい懲罰をば!』
「却下」
ルシファーとの交信をぶち切り、ガレオンは舌打ちした。あの野郎、全く変わりゃしねぇ。
『忙しそうアルな、新しい秘書探すのどうアル?』
「馬鹿言え、俺の秘書は一人だけしか務まらん。この忙しさも数年だけの事だ、問題ない」
『愛しすぎもどうかと思うアルよ』
「抜かせ」
ガレオンは苦笑し、肩を竦めた。
後の予定は暫く空いている、二時間は暇が出来ただろうか。今ならば、会いに行けるな。
「早くお顔を見せに向かわれてはどうですか? セレヴィ様もきっと、首を長くして待っていると思いますよ」
「言われんでもそうするつもりだ。もし時間を過ぎても戻らなかったら、呼びに来い」
「かしこまりました」
ノアは苦笑し、ガレオンを見送った。彼は小走りに、愛する家族の下へ向かっていった。
◇◇◇
「おっ、噂をすればっすね」
マステマがガレオンの足音を聞きつけ、セレヴィの肩を叩いた。
セレヴィは重い腰を上げると、戻ってきた夫を迎えるべく両腕を広げた。
「お帰りなさい、ちゃんとやれた?」
「当たり前だろう、俺を誰だと思っている」
「私の自慢の旦那様」
「正解だ」
セレヴィはガレオンと抱き合い、キスを交わした。マステマは呆れたように笑いながら、眠った子を抱え直した。
「父上! 私も私も!」
ガレオンの足に、十歳となる娘がしがみついた。ガレオンはひょいと抱っこし、
「イナンナ、ちゃんと留守番できただろうな?」
「うん!」
イナンナは父親の首に腕を回し、頬を摺り寄せてくる。可愛い奴だ、目に入れても痛くない。
マステマに抱かれている五歳の息子、ハリスは涎を垂らして眠っていた。待ちくたびれてしまったようだ。
「ちちうえ……だっこ……」
「おーおー随分懐かれてるっすねぇ、一応あーしの方が世話してるんすけどねー?」
「嫉妬はみっともないぞ? 父親が子に慕われるのは当然の事だろう」
「腑に落ちねぇっす! 過ごした時間と愛情は比例しないんすか!?」
「どうどうマステマ、落ち着け」
セレヴィは微笑み、膨らんだ腹を摩った。
ナラクを倒してから数年後、領地が落ち着いてきた頃合いに二人は籍を入れた。
それからは子宝に恵まれ、幸せな時間が続いている。もう少しで、三人目の家族が増えようとしていた。
「チクショウ、三人目は絶対あーしに懐かせてやるっす。主様にこれ以上美味しい所取りさせてたまるかっす」
「セレヴィの付き人にしてから随分生意気になったな、またメイド業に戻してやろうか?」
「パワハラっすよ! 職権濫用反対っす!」
「ノアに付き人を任せても構わんのだぞ?」
「だから喧嘩はやめろ二人とも。私はマステマに子供達を世話してもらいたいよ、凄く面倒見がいいから、任せて安心できる」
「流石っす奥様! 産休中もしっかりサポートするから安心するっすよ!」
「ありがとう。私としては、もう少し秘書としての仕事をしたいんだが」
「そんな事をして母体に負担がかかったらどうする、ほんの数年だけの辛抱だ、そのくらい俺一人でどうにか出来る。丈夫な子を産むのに集中してくれ」
「分かったよ、前よりも過保護になったな」
妃になってから、ガレオンの溺愛ぶりに拍車がかかっていた。元々一途な男だったが、結婚した事で超が付く程の愛妻家へと変貌したようだ。
夫に愛され、子供達にも慕われ、まるで夢の中に居る感覚だ。
「んじゃ、イナンナはあーしが預かるっす。ちょっち席外すっすよ」
「えー、私父上と遊びたい!」
「ちょっちでいいからおねーさんと一緒に来るっすよ。お仕事頑張ったパパにごほーびやらねーとっす」
「うー……分かった」
マステマに連れられ、子供達が出ていった。ガレオンと二人きりになり、セレヴィは改めてガレオンに甘えた。
「早く、一緒に仕事がしたいな。働くガレオンの姿、久しく見てないし」
「それなら子供と一緒に見学でもするか? 父親が働く姿を見せておくのも教育になる」
「いいかもしれないな。……ねぇ、ガレオン」
セレヴィは魔王に、伝えたい事が沢山あった。
でも不思議だ、こうして彼を前にすると、どう伝えればいいのか分からなくなってしまう。
だから、たった一言に全部を、彼への愛を込めるとしよう。
「私は今、世界で一番幸せだ。……愛してるよ、私だけの魔王様」
~Fin~
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