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27話 立ち上がれ、教師として
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靄を潜り抜けるなり、すぐに別の空間が視界に広がった。
やわらかいカーペットに転がり込んだ浩二は、半身を起こした。
つれてこられたのは、随分とかび臭いにおいがする場所だった。天井まで到達するほどに積まれた本棚と、ぎっしり詰め込まれた書物が並んだ、図書館のような場所だ。宙に浮くランプが薄明るく図書を照らし、本の背表紙を映している。
床に散らばった本を崩しながら、浩二は立ち上がった。
「琴音、居るか?」
「うん……ここだよ」
琴音は浩二の服を摘み、身を寄せてきた。
ここがヘルの根城らしいが、地獄の支配者にしては大人しい場所だ。浩二は空飛ぶランプをひとつ捕まえ、明り取りにした。
「ここ、どこだろう……」
「……俺が聞きたいよ」
浩二は本棚を照らし、背表紙を見てみた。
本は全て、古代ノルド語で書かれていた。普通なら、まず読むことすらかなわないような物のはずだが……。
「……ムスペルヘイム、の書?」
背表紙の文字が、浩二には読めた。試しに本を取り開くと、こちらもまた、同じく読める。内容は難解すぎるが、部分部分で分かる所がある。この本はどうやら、北欧神話の地獄に引き込む呪いの書物のようだ。
一度だけ、ばるきりーさんから同じような本を読まされた事がある。けどその時は一文字たりとも理解できなかった。
浩二は手当たりしだいに本を読み、その全てが理解できた。なぜだ、なんで急に読めるようになったんだ?
「いきなりどうしたのこうちゃん?」
「いや、それは……」
気味が悪かった。記憶にないのに、ここの本は全部、一度読んだ記憶があるからだ。しかしその記憶は浩二の物ではない。誰か別の、何者かの記憶が交じり合っていた。
誰だ、俺の頭にいるのは。
「ここの本だから、読めるのさ」
頭に直接、ヘルの声が響いてきた。浩二は本を捨て、身構えた。
「ここは、オーディンの隠し書庫という奴だ。ここにある本は全て、オーディンでなければ読み解けない代物でな」
「そんな本、なんで俺が読めるんだよ」
「特異点だから。それ以外にあるまい」
「……特異点って、なんだよ? それとこれと、何の関係があるんだ」
「それを知ってどうする?」
ヘルははっきりと、浩二の発言を切り捨てた。
浩二は警戒し、一歩後ずさった。その足元に、どこからともなくナイフが飛び、床に突き刺さった。
ナイフが刺さった場所は腐食し、朽ちていく。背筋が冷え、浩二は息を呑んだ。
いきなり、殺しにかかってきやがった。
「そうだな、では、ゲームをしてみようか」
室内に、指を鳴らす音が響いた。直後、大量のナイフが浮かび上がり、浩二と琴音を取り囲んだ。
「このナイフは、しめて千本はあるかな? 一本ずつ撃ちだすから、避け続けてみろ。生きてここまで来れたら、褒美に教えてやろう」
「悪趣味……何様のつもりだお前」
「口の利き方には気をつけるといい」
いきなり後ろのナイフが飛んできた。ギリギリで回避した浩二は、琴音を抱き寄せた。
「本当なら、この場に来た瞬間殺してもよかったのだよ。だがそれでは興ざめでつまらんからな、少し、遊んでやろうと思ったまでだ。忘れるな、貴様らの命は、吾の内にある事を」
「っぐそ!」
どのみち逃げ場はない……前に行く以外に、浩二に選択肢はなかった。
浩二は琴音を抱え、ナイフの雨に身をねじ込んだ。
掠りでもすれば肉体が腐り落ちる刃を避け続け、浩二はヘルの居場所へと走った。限界以上に神経を尖らせ、ナイフ一本一本の動きを先読みし、着実に距離を詰めていく。
しかし浩二はよくても、琴音は避けきれず、一本が彼女のブレザーの裾を掠めた。すぐさま服が腐食し、皮膚にまで浸透しようとした。
「くそっ!」
浩二は琴音からブレザーを剥ぎ取った。その隙に浩二の背後から、三本のナイフが飛んでくる!
「なめんなっ!」
ナイフを蹴り飛ばした浩二だが、靴が腐り始めた。すぐに靴を脱ぎ捨てるも、今度は浩二のブレザーにナイフが掠り、腐食していく。
少しずつ、こちらの身につけている物がそぎ落とされていく。自分のブレザーを捨て、浩二は唇を噛んだ。
どうすればいい。浩二は辺りを見て、ふとナイフが刺さった本を見つけた。本は腐っておらず、そのままの状態を保っている。ここの本はどうやら魔法によるプロテクトがかかっているらしい。
……賭けるしかない。
浩二は、走りながら近くの本を拾い上げた。
「うっおおおおおおおおおおおおおおおらぁあああああああ!」
そして琴音を抱え上げ、本でナイフを叩き落としながら一気呵成に走り出した!
飛んでくるナイフを本で片っ端から叩き落とし、ヘルの下へと突き進む。決死の覚悟で走っていくと、開けた場所が見えてきた。
あそこだ、あそこがゴールだ!
後ろで最後のナイフが飛んでくる。浩二は振り向きざまに本を投げつけ、最後のナイフを打ち落とした。
「ま、前!」
琴音の警告に振り向き、浩二は目を見開いた。追加でナイフが一本、浩二に飛んできたのだ。もうナイフを弾ける物がない……避けられない!
「……諦め、るかぁっ!」
浩二は最後の力で、無理な姿勢のまま前へと飛んだ。ナイフの軌道から寸での所で逃れ、無様だが、広場へと転がり込む。
琴音が腕から落ち、床に倒れた。服は多少乱れているが、ナイフは一本も掠っていない。どうにか守りぬけた。
安心する浩二だが、すぐに考えを改めた。状況は、悪くなる一方だから。
「ヘルに、近づいちまったな……」
どのみち、ヘルならどこにいようが察知してくるだろうが。
重い体に鞭を打ち、浩二は立ち上がった。
「人間にしてはしぶといな、浩二。伊達にラーズグリーズの師事を受けているわけではないか」
ヘルは感心したように言った。
「何もかも、思い通りにさせてたまるかよ。それより、ゲームは俺の勝ちだ。ザマミロ」
「ゲームは確かに貴様の勝ちだな。ほめてやろう」
浩二のせめてもの抵抗は、ヘルには効果がなかった。
「なら、約束は守ろう。その程度の礼節は果たしてやろうぞ。こちらへ来い」
室内を飛んでいたランプが整列し、道を作った。ランプが作る道の先はぼんやりと光り、広いスペースがあるのが伺えた。
分かる。あそこに、ヘルが居る。俺を待っている。浩二は意を決し、琴音の手を取った。
「行けるか?」
「うん、大丈夫」
琴音は気丈に頷いた。浩二は息を整え、歩を進めた。
程なく、円形の広場に到着した。広場には婉曲したテーブルと椅子が並べられ、中央に巨大な台座が安置されており、そこにヘルが座っていた。
ヘルは冷徹な印象を受ける女だった。上半身だけを覆う鎧に漆黒のマントを羽織っており、足は死体のように腐っている。微笑を称え浩二を伺う目は、獲物を狙う猛禽類のようでもある。
ただ、浩二はヘルよりも、後ろに刺さっている槍に目を奪われていた。
浩二の二倍はあるであろう、非常に長い槍だった。エメラルドのような深緑の柄は光を吸い込んで艶かしく輝き、気品に溢れている。穂先は透き通った水色をしており、クリスタルを連想させる形状になっていた。宝石で造られたような美しい槍。見た事はなくても、槍の銘が、浩二の頭に浮かんできた。
「……グングニル」
「左様。これがオーディンの槍、グングニルだ」
ヘルは底冷えするような声で、浩二を歓迎した。細い指でグングニルを撫で、慈しむように眺めた。
「どうだ、美しい物だろう。吾は様々な武具を見てきたが、これほどまでに美しい武器は他とないぞ」
「……もう、手に入れていたのか」
「そうだ。まぁ、手に入れたといっても、吾ではこれを使う事ができぬ。貴様がいなければ、この槍は本来の機能が戻らないのだ。
さて、与太話はこれくらいにしよう。死ぬ前の土産として先ほどのゲームの褒美をくれてやる、貴様の質問に、いくつか答えてやるぞ。さぁ、なんでも尋ねるといい」
妖しく笑うヘルに、浩二は尋ねた。
ヘルは獲物を弄び、楽しんでいる。自分の力に絶対の自信を持っているから、浩二をすぐに殺さず、転がして遊んでいた。
浩二が出来る唯一の抵抗は、少しでも時間を稼ぐしかない。
「お前、それを使ってどうするつもりだ、何を目的として、オーディンを襲ったんだ」
「目的など単純だ、元々は、ユグドラシルを手に入れるためにこの槍を欲したのだ」
ユグドラシル、北欧神話の世界の舞台である、超巨大な世界樹の事である。
「吾はニブルヘイムを統括していた者だが、どうにも吾には手狭でな。吾にふさわしきは広大なる世界、あんな薄暗い最下層の世界ではないのだ。だからより広い世界、つまりはユグドラシルを手にいれ、支配したかった。そのためには、強大な力が必要となる。だからオーディンの持つグングニルを欲したわけさ。
だが今は、さまざまな世界が交じり合った統合世界が目の前に広がっている。こいつを手に入れれば、ユグドラシル以上の世界が手に入る。この世界を思うままに動かせると思うと、興奮してこないか? 吾はこの世界を吾が物としたいのだ。だからこの槍が欲しい。簡単な事だ」
「……ようは、世界征服かよ。神様の癖に、俗っぽい欲求だな」
「何を言う、神とて欲はあるものだぞ? ギリシャのゼウスを見てみろ、奴は己の性欲にかまけて幾人もの人間をたぶらかしただろう。インドのシヴァを見てみろ、奴は妻との結婚を反対された時、八つ当たりで世界を焼いたのだぞ。各々の世界の最高神ですら、このような俗欲に塗れているのだ。ならば吾が世界を求めて力を得ようとするのも、至極自然だと思わないか?」
ヘルは当然のように言い放った。あまりに身勝手な欲求に、浩二は苛立った。
「……それと俺に、どんな関係があるんだよ」
浩二は言葉の中に、静かに怒りを込めた。
「それを使うのに、俺が必要なんだろ? 特異点とかいう、俺が。なんで俺を狙い続ける、特異点って何だ。約束は守るんだろ、答えろ、ヘル」
「そう焦るな。教えてやるから、大人しくしていろ」
ヘルはゆっくりと首をもたげた。
「この世界の成り立ちについては、ラーズグリーズから聞いただろう? だが奴の話では、奴自身も知りえない裏話がある。
多数の世界が結合する瞬間、全ての世界は一度、グングニルに集まり、切っ先に触れた。その接地面自体は針先程度だが、そこに偶然、一人だけ、かぶさった幼児がいたのさ。
グングニルに触れた人間には、ほんの僅かだが、力が流れ込んだ。記憶にはないか? たとえば……本来使えないはずの物が使えたり、相容れない存在に指示を下せたり。まぁ一番わかりやすいのは、読めないはずの本が読めたりとかかな? オーディンの、隠し書庫の本がな」
「…………」
浩二の脳裏に、いくつかの記憶が浮かんだ。
浩二はヴァルハラにおいて、オーディンにしか使えない武器を使う事ができた。リンドブルム騒動では、明らかに浩二の呼びかけに、ワルキューレ達が応じていた。ここの本も、オーディンの手がかかった物だから、浩二は読む事ができた。
何よりも、ばるきりーさんの行動。あの人は浩二が命令した事に対し、逆らう事無く素直に応じ続けていた。
「あるようだな、思い当たる節が。限りなく弱いが、貴様の中には、グングニルを介してオーディンの力が流れ込んでいる。だが重要なのはそこじゃない。世界が交わる瞬間、グングニルは大量の力を放出した。本来なら放出した力はグングニルが回収するのだが、その際に、人間のような不純物に混ざってしまったせいで、本来戻るはずだった力が人間の中に留まってしまったのさ。これが何を意味するかわかるか、室井浩二。
オーディンの力として、貴様にグングニルの力が宿った。それが真相だよ。ほんの僅かでも力が戻らなければ、グングニルは機能しない。いわば貴様は、グングニルの一部とも言うべき存在なのだ。この世界を作った槍の一部が、貴様なんだよ」
「…………」
「貴様を殺せば、貴様の中の力がグングニルに戻るのだ。故に私は貴様を狙っていたというわけだな。グングニルが戻った暁には、生身の体を取り戻し、世界を我が物にする。そのために貴様が必要なのさ」
自分がグングニルの一部。世界が統合した瞬間、槍に触れた者。それが、特異点の真相。己の手を見て、浩二は握りしめた。
多少なりとも、衝撃はある。しかし、思うほどの物ではなかった。
「……だとしても、俺は俺だ」
結衣の言葉が、力になる。結衣は言った、俺らしく生きろと。どんな力があろうとも、他の人と違おうとも、俺は俺なんだ。
結衣のおかげで、自身を素直に受け入れられる。
「特異点だろうが、俺である事に変わりはない。そう、言ってくれた奴が居るんでな」
浩二は静かに言い、ヘルを睨んだ。
ヘルは、僅かに苛立ちを見せた。見下していた人間に言い返された事で、奴のプライドが、刺激されたらしい。
「気に食わぬ目だ。人間ごときが克己し、憎しみを乗り越えおって……気に入らん、気に入らん……気に入らん! 吾が長い時をかけて円熟させた憎しみ、なぜ消し去った!」
「どういう事だよ、それ」
「しれた事、グングニルを復活させるためだ。グングニルを復活させるには儀式が必要でな、贄を長い時間、強い感情に狂わせた上で殺し、その心臓を捧げねばならんのだ。
そのために私は、貴様に強い憎しみの感情を与え続けたのさ。
貴様がグングニルの贄にふさわしくなるよう、一体どれほどの年月をかけたと思っている。貴様が憎しみを抱き、力を蓄えられるよう整えるのに、どれだけの苦労を重ねたと思っているのだ! なけなしの魔力を使い、人間どもを操るのに、どれほどの血を吐いてきたか、貴様に分かるのか!」
「……人間を、操る……俺の、憎しみ……!」
浩二の頭に、一瞬にして血が上った。
「まさか……まさか! 天木を追い詰めた連中を扇動したのは……!」
「そうだよ! 吾だ! 貴様が憎しみを抱いてくれるよう、念入りに根回しを重ねたのだよ!」
「……お前が、天木を、殺したのか……ヘルゥゥゥゥッ!」
ヘルはその手に、炎の剣を生み出した。
「貴様のせいで、吾はグングニルを使えずにいる。失った血肉を、未だに取り戻せずに居るのだぞ! 目の前に血肉を取り戻す力があるのに、こんな血肉の通わぬ傀儡の、仮初の体に甘んじているのだ! この屈辱が分かるか? 肉体を持たぬ存在などゴミも同然なのだ! 吾はヘル、極寒地獄の支配者! 頂点に立つ者だ! それがこんな虫けらのような体に甘んじるなど、あってはならんのだ!
そのために一体、どれだけの苦労を重ねたと思っている……貴様の心を憎しみに染めるために、何年もの歳月を重ねたと思っている!」
ヘルは執念に満ちた目を向け、浩二に剣を向けた。
「我が悲願の為、その身をよこせ特異点! 吾が受けた屈辱を、倍にして返してくれるわ!」
「……そんな自分勝手な理由のために、お前は何をしやがった!」
浩二は怒りのまま、ヘルに叫んだ。
こいつのせいで、結衣は殺された……身勝手な理由のせいであいつは死んだ! 浩二が許せるはずがない。
こいつは、結衣の仇そのものだ!
「憎しみが沸騰したな」
ヘルの顔が、急に笑みで満ちた。
刹那、ヘルの姿が消える。炎の残渣が軌跡を作り、ヘルが動いたのを物語る。
浩二の首元に、炎の刃があてがわれた。ようやく気付く頃には遅く、熱を持った切っ先が、喉笛を切り裂こうとしていた。
ヘルの狂喜に満ちた顔が、視野いっぱいに映る。浩二の頭に、明確な死が浮かび上がった。
次の瞬間、空間が破れ、高速で槍が飛んできた。槍はヘルと浩二の間に割って入り、床を打ち砕く。
そして間髪入れず、銀の影が現れて、
「ぬぅおぉあぁっ!」
ヘルの横っ面に、渾身の拳を叩き込んだ。
「助けに来たぞ……我が生徒よ!」
生徒の危機を救うべく、最高の教師……ばるきりーさんが、ここに降臨した。
やわらかいカーペットに転がり込んだ浩二は、半身を起こした。
つれてこられたのは、随分とかび臭いにおいがする場所だった。天井まで到達するほどに積まれた本棚と、ぎっしり詰め込まれた書物が並んだ、図書館のような場所だ。宙に浮くランプが薄明るく図書を照らし、本の背表紙を映している。
床に散らばった本を崩しながら、浩二は立ち上がった。
「琴音、居るか?」
「うん……ここだよ」
琴音は浩二の服を摘み、身を寄せてきた。
ここがヘルの根城らしいが、地獄の支配者にしては大人しい場所だ。浩二は空飛ぶランプをひとつ捕まえ、明り取りにした。
「ここ、どこだろう……」
「……俺が聞きたいよ」
浩二は本棚を照らし、背表紙を見てみた。
本は全て、古代ノルド語で書かれていた。普通なら、まず読むことすらかなわないような物のはずだが……。
「……ムスペルヘイム、の書?」
背表紙の文字が、浩二には読めた。試しに本を取り開くと、こちらもまた、同じく読める。内容は難解すぎるが、部分部分で分かる所がある。この本はどうやら、北欧神話の地獄に引き込む呪いの書物のようだ。
一度だけ、ばるきりーさんから同じような本を読まされた事がある。けどその時は一文字たりとも理解できなかった。
浩二は手当たりしだいに本を読み、その全てが理解できた。なぜだ、なんで急に読めるようになったんだ?
「いきなりどうしたのこうちゃん?」
「いや、それは……」
気味が悪かった。記憶にないのに、ここの本は全部、一度読んだ記憶があるからだ。しかしその記憶は浩二の物ではない。誰か別の、何者かの記憶が交じり合っていた。
誰だ、俺の頭にいるのは。
「ここの本だから、読めるのさ」
頭に直接、ヘルの声が響いてきた。浩二は本を捨て、身構えた。
「ここは、オーディンの隠し書庫という奴だ。ここにある本は全て、オーディンでなければ読み解けない代物でな」
「そんな本、なんで俺が読めるんだよ」
「特異点だから。それ以外にあるまい」
「……特異点って、なんだよ? それとこれと、何の関係があるんだ」
「それを知ってどうする?」
ヘルははっきりと、浩二の発言を切り捨てた。
浩二は警戒し、一歩後ずさった。その足元に、どこからともなくナイフが飛び、床に突き刺さった。
ナイフが刺さった場所は腐食し、朽ちていく。背筋が冷え、浩二は息を呑んだ。
いきなり、殺しにかかってきやがった。
「そうだな、では、ゲームをしてみようか」
室内に、指を鳴らす音が響いた。直後、大量のナイフが浮かび上がり、浩二と琴音を取り囲んだ。
「このナイフは、しめて千本はあるかな? 一本ずつ撃ちだすから、避け続けてみろ。生きてここまで来れたら、褒美に教えてやろう」
「悪趣味……何様のつもりだお前」
「口の利き方には気をつけるといい」
いきなり後ろのナイフが飛んできた。ギリギリで回避した浩二は、琴音を抱き寄せた。
「本当なら、この場に来た瞬間殺してもよかったのだよ。だがそれでは興ざめでつまらんからな、少し、遊んでやろうと思ったまでだ。忘れるな、貴様らの命は、吾の内にある事を」
「っぐそ!」
どのみち逃げ場はない……前に行く以外に、浩二に選択肢はなかった。
浩二は琴音を抱え、ナイフの雨に身をねじ込んだ。
掠りでもすれば肉体が腐り落ちる刃を避け続け、浩二はヘルの居場所へと走った。限界以上に神経を尖らせ、ナイフ一本一本の動きを先読みし、着実に距離を詰めていく。
しかし浩二はよくても、琴音は避けきれず、一本が彼女のブレザーの裾を掠めた。すぐさま服が腐食し、皮膚にまで浸透しようとした。
「くそっ!」
浩二は琴音からブレザーを剥ぎ取った。その隙に浩二の背後から、三本のナイフが飛んでくる!
「なめんなっ!」
ナイフを蹴り飛ばした浩二だが、靴が腐り始めた。すぐに靴を脱ぎ捨てるも、今度は浩二のブレザーにナイフが掠り、腐食していく。
少しずつ、こちらの身につけている物がそぎ落とされていく。自分のブレザーを捨て、浩二は唇を噛んだ。
どうすればいい。浩二は辺りを見て、ふとナイフが刺さった本を見つけた。本は腐っておらず、そのままの状態を保っている。ここの本はどうやら魔法によるプロテクトがかかっているらしい。
……賭けるしかない。
浩二は、走りながら近くの本を拾い上げた。
「うっおおおおおおおおおおおおおおおらぁあああああああ!」
そして琴音を抱え上げ、本でナイフを叩き落としながら一気呵成に走り出した!
飛んでくるナイフを本で片っ端から叩き落とし、ヘルの下へと突き進む。決死の覚悟で走っていくと、開けた場所が見えてきた。
あそこだ、あそこがゴールだ!
後ろで最後のナイフが飛んでくる。浩二は振り向きざまに本を投げつけ、最後のナイフを打ち落とした。
「ま、前!」
琴音の警告に振り向き、浩二は目を見開いた。追加でナイフが一本、浩二に飛んできたのだ。もうナイフを弾ける物がない……避けられない!
「……諦め、るかぁっ!」
浩二は最後の力で、無理な姿勢のまま前へと飛んだ。ナイフの軌道から寸での所で逃れ、無様だが、広場へと転がり込む。
琴音が腕から落ち、床に倒れた。服は多少乱れているが、ナイフは一本も掠っていない。どうにか守りぬけた。
安心する浩二だが、すぐに考えを改めた。状況は、悪くなる一方だから。
「ヘルに、近づいちまったな……」
どのみち、ヘルならどこにいようが察知してくるだろうが。
重い体に鞭を打ち、浩二は立ち上がった。
「人間にしてはしぶといな、浩二。伊達にラーズグリーズの師事を受けているわけではないか」
ヘルは感心したように言った。
「何もかも、思い通りにさせてたまるかよ。それより、ゲームは俺の勝ちだ。ザマミロ」
「ゲームは確かに貴様の勝ちだな。ほめてやろう」
浩二のせめてもの抵抗は、ヘルには効果がなかった。
「なら、約束は守ろう。その程度の礼節は果たしてやろうぞ。こちらへ来い」
室内を飛んでいたランプが整列し、道を作った。ランプが作る道の先はぼんやりと光り、広いスペースがあるのが伺えた。
分かる。あそこに、ヘルが居る。俺を待っている。浩二は意を決し、琴音の手を取った。
「行けるか?」
「うん、大丈夫」
琴音は気丈に頷いた。浩二は息を整え、歩を進めた。
程なく、円形の広場に到着した。広場には婉曲したテーブルと椅子が並べられ、中央に巨大な台座が安置されており、そこにヘルが座っていた。
ヘルは冷徹な印象を受ける女だった。上半身だけを覆う鎧に漆黒のマントを羽織っており、足は死体のように腐っている。微笑を称え浩二を伺う目は、獲物を狙う猛禽類のようでもある。
ただ、浩二はヘルよりも、後ろに刺さっている槍に目を奪われていた。
浩二の二倍はあるであろう、非常に長い槍だった。エメラルドのような深緑の柄は光を吸い込んで艶かしく輝き、気品に溢れている。穂先は透き通った水色をしており、クリスタルを連想させる形状になっていた。宝石で造られたような美しい槍。見た事はなくても、槍の銘が、浩二の頭に浮かんできた。
「……グングニル」
「左様。これがオーディンの槍、グングニルだ」
ヘルは底冷えするような声で、浩二を歓迎した。細い指でグングニルを撫で、慈しむように眺めた。
「どうだ、美しい物だろう。吾は様々な武具を見てきたが、これほどまでに美しい武器は他とないぞ」
「……もう、手に入れていたのか」
「そうだ。まぁ、手に入れたといっても、吾ではこれを使う事ができぬ。貴様がいなければ、この槍は本来の機能が戻らないのだ。
さて、与太話はこれくらいにしよう。死ぬ前の土産として先ほどのゲームの褒美をくれてやる、貴様の質問に、いくつか答えてやるぞ。さぁ、なんでも尋ねるといい」
妖しく笑うヘルに、浩二は尋ねた。
ヘルは獲物を弄び、楽しんでいる。自分の力に絶対の自信を持っているから、浩二をすぐに殺さず、転がして遊んでいた。
浩二が出来る唯一の抵抗は、少しでも時間を稼ぐしかない。
「お前、それを使ってどうするつもりだ、何を目的として、オーディンを襲ったんだ」
「目的など単純だ、元々は、ユグドラシルを手に入れるためにこの槍を欲したのだ」
ユグドラシル、北欧神話の世界の舞台である、超巨大な世界樹の事である。
「吾はニブルヘイムを統括していた者だが、どうにも吾には手狭でな。吾にふさわしきは広大なる世界、あんな薄暗い最下層の世界ではないのだ。だからより広い世界、つまりはユグドラシルを手にいれ、支配したかった。そのためには、強大な力が必要となる。だからオーディンの持つグングニルを欲したわけさ。
だが今は、さまざまな世界が交じり合った統合世界が目の前に広がっている。こいつを手に入れれば、ユグドラシル以上の世界が手に入る。この世界を思うままに動かせると思うと、興奮してこないか? 吾はこの世界を吾が物としたいのだ。だからこの槍が欲しい。簡単な事だ」
「……ようは、世界征服かよ。神様の癖に、俗っぽい欲求だな」
「何を言う、神とて欲はあるものだぞ? ギリシャのゼウスを見てみろ、奴は己の性欲にかまけて幾人もの人間をたぶらかしただろう。インドのシヴァを見てみろ、奴は妻との結婚を反対された時、八つ当たりで世界を焼いたのだぞ。各々の世界の最高神ですら、このような俗欲に塗れているのだ。ならば吾が世界を求めて力を得ようとするのも、至極自然だと思わないか?」
ヘルは当然のように言い放った。あまりに身勝手な欲求に、浩二は苛立った。
「……それと俺に、どんな関係があるんだよ」
浩二は言葉の中に、静かに怒りを込めた。
「それを使うのに、俺が必要なんだろ? 特異点とかいう、俺が。なんで俺を狙い続ける、特異点って何だ。約束は守るんだろ、答えろ、ヘル」
「そう焦るな。教えてやるから、大人しくしていろ」
ヘルはゆっくりと首をもたげた。
「この世界の成り立ちについては、ラーズグリーズから聞いただろう? だが奴の話では、奴自身も知りえない裏話がある。
多数の世界が結合する瞬間、全ての世界は一度、グングニルに集まり、切っ先に触れた。その接地面自体は針先程度だが、そこに偶然、一人だけ、かぶさった幼児がいたのさ。
グングニルに触れた人間には、ほんの僅かだが、力が流れ込んだ。記憶にはないか? たとえば……本来使えないはずの物が使えたり、相容れない存在に指示を下せたり。まぁ一番わかりやすいのは、読めないはずの本が読めたりとかかな? オーディンの、隠し書庫の本がな」
「…………」
浩二の脳裏に、いくつかの記憶が浮かんだ。
浩二はヴァルハラにおいて、オーディンにしか使えない武器を使う事ができた。リンドブルム騒動では、明らかに浩二の呼びかけに、ワルキューレ達が応じていた。ここの本も、オーディンの手がかかった物だから、浩二は読む事ができた。
何よりも、ばるきりーさんの行動。あの人は浩二が命令した事に対し、逆らう事無く素直に応じ続けていた。
「あるようだな、思い当たる節が。限りなく弱いが、貴様の中には、グングニルを介してオーディンの力が流れ込んでいる。だが重要なのはそこじゃない。世界が交わる瞬間、グングニルは大量の力を放出した。本来なら放出した力はグングニルが回収するのだが、その際に、人間のような不純物に混ざってしまったせいで、本来戻るはずだった力が人間の中に留まってしまったのさ。これが何を意味するかわかるか、室井浩二。
オーディンの力として、貴様にグングニルの力が宿った。それが真相だよ。ほんの僅かでも力が戻らなければ、グングニルは機能しない。いわば貴様は、グングニルの一部とも言うべき存在なのだ。この世界を作った槍の一部が、貴様なんだよ」
「…………」
「貴様を殺せば、貴様の中の力がグングニルに戻るのだ。故に私は貴様を狙っていたというわけだな。グングニルが戻った暁には、生身の体を取り戻し、世界を我が物にする。そのために貴様が必要なのさ」
自分がグングニルの一部。世界が統合した瞬間、槍に触れた者。それが、特異点の真相。己の手を見て、浩二は握りしめた。
多少なりとも、衝撃はある。しかし、思うほどの物ではなかった。
「……だとしても、俺は俺だ」
結衣の言葉が、力になる。結衣は言った、俺らしく生きろと。どんな力があろうとも、他の人と違おうとも、俺は俺なんだ。
結衣のおかげで、自身を素直に受け入れられる。
「特異点だろうが、俺である事に変わりはない。そう、言ってくれた奴が居るんでな」
浩二は静かに言い、ヘルを睨んだ。
ヘルは、僅かに苛立ちを見せた。見下していた人間に言い返された事で、奴のプライドが、刺激されたらしい。
「気に食わぬ目だ。人間ごときが克己し、憎しみを乗り越えおって……気に入らん、気に入らん……気に入らん! 吾が長い時をかけて円熟させた憎しみ、なぜ消し去った!」
「どういう事だよ、それ」
「しれた事、グングニルを復活させるためだ。グングニルを復活させるには儀式が必要でな、贄を長い時間、強い感情に狂わせた上で殺し、その心臓を捧げねばならんのだ。
そのために私は、貴様に強い憎しみの感情を与え続けたのさ。
貴様がグングニルの贄にふさわしくなるよう、一体どれほどの年月をかけたと思っている。貴様が憎しみを抱き、力を蓄えられるよう整えるのに、どれだけの苦労を重ねたと思っているのだ! なけなしの魔力を使い、人間どもを操るのに、どれほどの血を吐いてきたか、貴様に分かるのか!」
「……人間を、操る……俺の、憎しみ……!」
浩二の頭に、一瞬にして血が上った。
「まさか……まさか! 天木を追い詰めた連中を扇動したのは……!」
「そうだよ! 吾だ! 貴様が憎しみを抱いてくれるよう、念入りに根回しを重ねたのだよ!」
「……お前が、天木を、殺したのか……ヘルゥゥゥゥッ!」
ヘルはその手に、炎の剣を生み出した。
「貴様のせいで、吾はグングニルを使えずにいる。失った血肉を、未だに取り戻せずに居るのだぞ! 目の前に血肉を取り戻す力があるのに、こんな血肉の通わぬ傀儡の、仮初の体に甘んじているのだ! この屈辱が分かるか? 肉体を持たぬ存在などゴミも同然なのだ! 吾はヘル、極寒地獄の支配者! 頂点に立つ者だ! それがこんな虫けらのような体に甘んじるなど、あってはならんのだ!
そのために一体、どれだけの苦労を重ねたと思っている……貴様の心を憎しみに染めるために、何年もの歳月を重ねたと思っている!」
ヘルは執念に満ちた目を向け、浩二に剣を向けた。
「我が悲願の為、その身をよこせ特異点! 吾が受けた屈辱を、倍にして返してくれるわ!」
「……そんな自分勝手な理由のために、お前は何をしやがった!」
浩二は怒りのまま、ヘルに叫んだ。
こいつのせいで、結衣は殺された……身勝手な理由のせいであいつは死んだ! 浩二が許せるはずがない。
こいつは、結衣の仇そのものだ!
「憎しみが沸騰したな」
ヘルの顔が、急に笑みで満ちた。
刹那、ヘルの姿が消える。炎の残渣が軌跡を作り、ヘルが動いたのを物語る。
浩二の首元に、炎の刃があてがわれた。ようやく気付く頃には遅く、熱を持った切っ先が、喉笛を切り裂こうとしていた。
ヘルの狂喜に満ちた顔が、視野いっぱいに映る。浩二の頭に、明確な死が浮かび上がった。
次の瞬間、空間が破れ、高速で槍が飛んできた。槍はヘルと浩二の間に割って入り、床を打ち砕く。
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